表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非公開中  作者: するめいか
80/104

1話「終わりの始まり」

 





【どんなに辛くても諦めないで。世界の運命は、全て君にかかっているんだから】








 目を覚ますと見知らぬ天井が見えた。

 いや、ちょっとだけ見覚えがあるような気もする。だけど間違いなく僕の寝室のそれではない。


 僕はさっきまで夢の中でイスターさんの話を聞いていたはず……。


 もしかして、これも夢なのか?


 背中に伝わる床の感触はふかふかだ。

 あぁ、違う。これは床じゃない。ベッドだ。僕はベッドに寝かされているんだ。


 とりあえず、現状を確認しよう。体を起こして周りを見る。

 誰もいないな。広めではあるが、おそらく宿屋の一人部屋だ。窓の外はまだ暗く、(ふくろう)の声だけが聞こえる。


 ここでいくつかの異変に気付く。魔力量がかなり下がっているのだ。おまけに服も初期装備のジャージである。


 そして最大の変化点、それは呪文がおかしいことだ。

 コピーできる呪文二つ、オートセーブ、ロード、それにチェックが使えることになっている。この三つはコピーしたものではないようだね。


 オートセーブってのはゲームみたいに自動でセーブする呪文なんだろうか。基本的に『オート』ってついてるのは詠唱する必要が無い呪文ばかりだけど。


「いつもの事ながら、分からないことだらけだなぁ」


 魔力が下がってる感じがするってことは、やはり今回も初めから始まるのか。

 だけど、イスターさんのあの言葉が気になるな。「もしもの話は最後だ」とか言っていたっけ?


 ということは十中八九、彼がこの夢の謎に関係しているのは間違いないだろうね。だけど、どうしてそんな事をするんだか。


 考え込んでいると部屋の扉が開いた。一人の少女が入ってくる。片手に紙袋を抱えており、ウェーブのかかった髪が揺れていた。


 扉を閉めると、ようやくこちらに気がついたようで、優しく笑いかけてくる。


「あら、起きましたのね。気分はどうですか?」


「ウィッチ! ここはどこ? 今はどういう状況なの?」


「ちょっと、どうして私の名前知ってるんですの……。ま、まあ、いいですわ。私の質問は後にして、とりあえず事情を説明しましょうか」


 それから彼女は順番に話していった。魔物たちを統べる王、魔王を倒すために自分達が冒険に出ていること。

 勇者の証をユーダンクで授与され、そこから出発する際にアルストフィア村が襲われていることを知り、急いで駆けつけたこと。

 戦いにはなんとか勝利し、今いるここは村の宿だということ。


「なるほど……」


 つまり今回はウィッチと勇者のヴィーレ、そして僕で冒険をするということか? メンバーに不安があるけど、大丈夫だろうか。


 僕の心配を別の何かと勘違いしたのか、ウィッチが不意に目を伏せる。袋の中から出した果物を切っている手を止めた。その表情はとても暗い。


「簡単に受け入れられないのも仕方ありませんわ。私もまさか人間が召喚されるだなんて思ってなかったんですの……。関係ないあなたをこんなに危険な事に巻き込んでしまって、本当に申し訳ないですわ……」


「い、いや。別に迷惑なんかじゃないよ! 異世界とか、憧れてたしね。ハハハ……」


 ビックリした、ウィッチがこんなに落ち込むなんて。そりゃ、本来の世界とは明らかに状況は違うだろうけど。本当に気の毒に思ってくれているようだ。


 あれ? てことは、正しい歴史での彼女はスパイ作戦なんて危険じゃないと思っていたんだろうか。

 よく考えたら、あの世話焼きのウィッチが当時はまだ魔力の低かった僕を一人で任務に行かせたのってどこか違和感あるな。


 そんな思考を巡らせていると、部屋の扉がノックされる。


「はーい。入っていいですわよ」


 ウィッチの返事を聞いた後、想像もしなかった人物が室内に入ってきた。


「あぁ、そういえば言ってませんでしたわね。彼女が私達人類の希望、第二次人魔大戦の勇者ですわ」


 ウィッチがその人の背を押しながら紹介する。彼女は一歩前に出て勢いよく、そして深く礼をした。


「わたしはトリス町から来たネメスです! 使い魔さん、これからよろしくお願いしますっ!」







 あれから頭が混乱しまくった僕は、さらに詳しく彼女達に事情を聞いた。


 話によると、この夢の設定、大まかな部分は前回と変わりないみたいだ。

 だけど、この世界では勇者に選ばれたのがネメスらしい。そしてその仲間はウィッチだけ。


 それでは戦力が足りないからと使い魔を召喚しようとしたところ、眠った僕が出てきたらしい。


 確かに筋が通っているようにも聞こえなくはないが……。戦力が本当に不安だな。

 いつも夢の世界には何かしらの変化があったが、これはさながらハードモードってところだろうか。


「それにしても、ヴィーレやエル達は一体どこに……」


 本来ここにいるはずだった彼らの行方が気になる。そんな僕の呟きに、ネメスが瞬時に反応した。


「あれ? カズヤさん、ヴィーレお兄ちゃんのこと知ってるんですか?」


「え……? う、うん。ちょっとね……」


「そうなんですか? ヴィーレお兄ちゃんは、わたしのお兄ちゃんなんですよ! エンジェルズってところで生活してるんです」


 なんだって? や、ヤバい。次々に新しい情報が入ってくる。


 エンジェルズに二人が住んでいる? あそこは孤児院みたいなとこだったはずだし、『お兄ちゃん』というのは実の兄って意味ではないよね?


「そ、そうなんだ。是非会ってみたいね……」


「はい! これからも仲良くしてあげてくださいね!」


 僕の適当な相槌にも笑顔で返すネメス。無邪気な性格はこっちでも変わらないらしい。


 うーん、みんなにはこれから会えるのかなぁ。情報が全然足りないよ……。


 ……そうだ。頼りになるかは分からないけど、一応あれを試してみよう。


 僕は彼女へ向けてチェックを使用した。なぜかチェックだけは無詠唱で使えるな。本当に、何なんだろう。この夢の目的は一体どういうものなんだ?


 そんな疑問も、出てきた文字が吹き飛ばしてくれた。


【レベル542・デンガルとアダムには気をつけろ】


 え、何このメッセージ。ネメスと関係無いうえに凄く不穏なんですけど。レベルも初期にしては高すぎる。


 気になるのでウィッチも調べてみた。


【レベル745・イズとエルが君達の助けを待っている】


 思わず顔をしかめる。これは、どういうことなんだ? あの二人が助けを待っている? イズさん達は何らかの危険な状態にあるのか?


 疑問に思いながらも好奇心と使命感に駆られ、自分もチェックする。


【レベル1・本当の物語の幕開けだ】


 嘘でしょ……。最弱じゃないか。これじゃせっかくのロードも使えない。魔物一匹にすら勝てるかどうか怪しいぞ。


 どうやら、かなり厳しい戦いが始まるらしい。アルルやレイチェル、サタンにノエル、レイブンはどうしているんだろう。アトナ達のことも心配だ。


 気になる事は山ほどあるけれど、今は考えるより行動した方が良さそうだな。

 結局、僕の目標は前と変わらない。誰一人として死なせず、幸せなエンディングに辿り着くだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ