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非公開中  作者: するめいか
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0話後編「試される勇気」

「よう、和也」


 夢の中だ。闇の中から聞き覚えのある声が聞こえる。かなり眠そう、というか怠そうな声色だった。


 頬をつねろうとするが、それすら敵わない。それならばと口の中を噛んでみたが、力を込めても目は覚めない。


「お前、いつまで続けるつもりだ? そろそろ限界だろ。面白い企画を考えて、みんなを遊びに誘ってさ……」


 声の主、イスターさんはこちらへ質問を投げかけてくるが、僕には答えられない。口が開かないのだ。

 彼の姿も見えない。一方的に暗がりから声が投げられてくるだけの状況。


 ここ最近、僕は変な夢を見続けていた。その全てに共通していた点がある。僕達がやってきた冒険を、もう一度やるということだ。


 色々な夢があった。


 皆の年齢が変わる夢。性別が変わる夢。使える呪文が変わる夢。

 僕の記憶があるまま始まる夢。消えてから始まる夢。

 それぞれの関係性が変化している夢。悪魔が人間に戦争を仕掛ける夢。

 皆の性格が真逆だなんて強烈な夢もあった。


 それらが誰かによって意図的に見せられている物だったであろうことに思い至ったのは最近だ。


 初めはノエルの悪戯かと考えていたけど、もしかしたら、それらはイスターさんがやった事なのかもしれないな。


 まあ何にせよ、どうやら今回は説教されるだけの夢みたいだ。夢から覚めたら、彼にどういうつもりか聞かないと。


「楽しいよな? アイツらだってきっと同じだろうよ。でも、お前だってたまには休みたいんじゃないか?」


 僕の返答が無くとも、彼は構わず話を続ける。


 どうやらこちらの事情は筒抜けらしい。けれど、休憩なんて許されていないんだ。


 ヴィーレにも手伝ってもらっている。これが僕なりの戦い方なのだから、最後まで貫き通したい。


「まあ、悪くはねえよ。『冒険が終わろうが、お前らの生活が愉快だったら物語は終わらない』だっけか? その発想は悪くねえのさ。だがよ……」


 辺りに点々と青い炎が灯る。声のする方には、小さな黒い箱が一つ置いてあった。録音機能のある、ただの塊のようだ。


「お前の行動の意図を知ったら、サタン達はどう思うだろうな?」


 心がざわつく。もしかして、ばらす気か? ……いや、でも彼にはそんなことしたって何のメリットも無いはずだ。


「あー、別にそんなつもりはねえよ。オレが言いたいのは、今のままだといつか破綻するぜってことだ」


 ……分かってる。分かってるさ。だけど、それでも今諦めていい理由にはならないはずだ。


 僕はもう決めた。ここで彼らのために一生を過ごす。


「……本当に、本当にそれで良いんだな?」


 勿論。僕が元いた世界にもう未練はない、とは言えないけれど、既に踏ん切りはついた。


 心の中で答えると、彼はいつもみたいに悪役みたいな笑い方をする。


「へへっ、そうかい。じゃあ見せてみろよ、お前の勇気をな」


 言い終えると同時に炎がふっと消える。再び黒が辺りに充満した。僕の意識はそれに応じるように遠のいていく。


「長い長いチュートリアル、ご苦労さん」


 自分の体が緩やかに倒れていく。仰向けになった後、開いていた目が強制的に閉ざされた。


「次で『もしも』の夢は終わりだ」


 最後に聞こえたのは、そんな意味深な言葉だった。







「オレの持論なんだが、運命ってのは誰がどうあがこうが変わらねえと思うんだ。カミサマって奴が、この世界を創ったのだとしたら、オレ達には自由の獲得も選ぶ権利もない」


「故に、全ての事柄には理由があると考えていいだろう。であるならば、一つだけ確認してみたいことがあるんだ」


「どうしてお前は召還されたのかって疑問さ」


「何度も時間が繰り返され、その中で幾度と無く召還の呪文を唱えたにも関わらず、なぜかオレの娘のもとにはいつもお前が現れた」


「なぜかって? そりゃあ、理由があるんだろうよ」


「文武両道、容姿端麗、温厚篤実。少なくとも向こうの世界ではそうだった人物がここに来た理由ってのは、何だと思う?」


「へへへへ」


「ネメスは冒険を通して、閉ざしていた心を解き放つ勇気を得た」


「イズは一人でいること以外の選択肢を見つけ、エルは魔物への憎悪から抜け出した」


「レイチェルは感情を知り、レイブンは仲間に頼ることを覚えたらしい」


「サタンとノエルは勇者(ヴィーレ)のおかげで孤独を克服しようとしている。アダムは自らの過ちに気付くことができたんだ」


「ウィッチは言うまでもなく、初めから完璧だな」


「そしてヴィーレとアルルは互いへの依存から抜け出し、それぞれ大切な友達を見つけた」


「……なぁ、教えてくれよ。あの冒険や今までの生活を経て、お前は一体何を得たんだ? 主人公たる双葉(フタバ)和也(カズヤ)は、この物語でどう成長したっていうんだよ?」


「大切な仲間だって、立ち向かう強さだって、慈愛の心だって、お前は向こうの世界にいる時から持ち合わせていたんだろ?」


「当たり前だ。双葉和也は元々そういう人間だった。だからこそ、この問いは重要なんだ。他の奴らは成長してるのに、よりによってお前がそれをしないのは嘘だろう」


「主人公とかいう奴らにとって、成長することは義務みたいなものなんだから」


「……まあ精々頑張って、死ぬ前にその答えを見つけるこったな」


「もしも見つけられないようなら、お前の冒険はそこまでだぜ」

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