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非公開中  作者: するめいか
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11話「ハッピーとバッドは紙一重」

「ヴィーレ! しっかりして! 死んじゃ嫌よ!」


 俺はとうとう透明化した敵の攻撃を食らってしまった。腹を一突き、剣のように変化させた手で貫かれて。

 とめどなく血が流れるが、イズの回復呪文によってなんとかギリギリ意識を保っていられた。


 他の三人は魔物の相手をしている。俺の返り血が付着したらしく、相手の位置が分かるようになっていたのだ。


 だけど、このままだとやがて俺達は負ける。何か、何か手を打たないと。


「ヴィーレ!」


 痛みに耐えながら思考し続けていたら、この場にいないはずの、ある男の声が聞こえた。


「カズ……ヤ……?」


「ごめん、少し借りるよ? すぐ僕も治療に参加するから!」


 そう言ってカズヤは俺の指から月輪の指輪を抜き、どこかへ駆けていった。


「あ……?」


 顔を動かしてその方向を見ると、レイブン達が倒れている。目立った怪我はないが、ひどく苦しそうだ。顔色もおかしい。


「頼むよ……頼む……」


 カズヤがぶつぶつと呟きながら彼らの指に指輪を嵌めていく。

 すると、つけられた人から表情が穏やかになっていき、しばらくすると彼らは立ち上がった。さっきまでの容態が嘘のようだ。


 周りが見えていなかったのか、全員が困惑しており、状況の把握に勤めている。


「あ、ありがとう。助かった。数十日ぶりに死ぬところだったな」


「それにしても、ここは何ですの? ……あっ。あそこ、魔物がいますわよ!」


「兄さんが苦戦しています。加勢しましょう」


 三人は状況もよく分からぬままエル達のもとへ向かった。

 アルル、エル、ネメス。ちゃんとドレインの呪文のことを説明してやってくれよ。


 自分の怪我から目を背けつつ別の心配をしていると、指輪を嵌めたカズヤがまた駆け寄ってきた。指輪を俺の手に握らせ、片手を傷口にかざす。


「ごめん、すぐに治すね! もう少しの辛抱だよ!」


 彼が加わったことにより、回復速度が格段に上がった。代わりに気分が悪くなるが、いつかされた拷問に比べればマシな方だ。


 数十秒かけて、ようやく塞がりかけていた傷口が完全に治癒する。まだジンジンと痛むが、起き上がることもできた。


「ありがとう。どうしてここにいるのかって質問は、後でも良いよな?」


「うん、これが済んだら説明するよ。それで、ヴィーレにイズさん。あれは何なの?」


「魔物よ。王族が研究して作った、完全体とかいう名前のね」


「あいつは無尽蔵の魔力を持ち、触れた者の魔力や呪文を吸収する呪文を使う。それに加えて攻撃がまるで効かないという、アホが考えた化け物みたいな能力を有していやがる」


「なるほど……」


 彼はじっとネメス達の戦う様子を見ている。その先ではやはり、攻撃を受けてもすぐに再生する魔物がいた。無駄だと悟ったのか、既にインビジブルは解いている。


「あれ、オートヒールじゃないかな……」


 カズヤの呟きに得心したイズが息を吐く。


「呪文だったのね……。だけど、そうだとしてもどうにもできないわ。あいつ、無詠唱で呪文を使えるのよ。妨害ができないの」


「……いや、僕に考えがある。奴をもう一度攻撃してくれない?」


「大丈夫なの?」


「多分。でも、成功する可能性はあると思う」


「……ああ、それでいい。だがお前、大丈夫か? なんだか調子が悪いようだが」


 カズヤはさっきから尋常じゃない量の汗をかいている。ふらふらしているし、息も荒い。かなり体調が悪そうだ。


「う、うん……。ここに来た時から、なぜか立っているだけでも魔力を消費していっているんだ。でも、大丈夫。倒れないうちにケリをつけよう」


「……分かった、お前を信じる。よし、行くぞ!」


 俺は大剣を構え、カズヤやイズと共に魔物のもとへ走り出した。







 魔物は凄まじい速度で壁や天井を跳ね回り、攻撃を回避しながら反撃の機会を窺っている。速すぎて近距離攻撃は追いつかず、遠距離攻撃は当たらない。


「おい、聞いてくれ! 全員で一気に畳み掛ける! 次の攻撃に全力を注いでくれ!」


 俺の指示に全員が返事を返す。


 俺達が近くまで来たのを確認すると、レイチェルがエルとネメスに呼びかけた。


「兄さん、ネメス、お願いします。〈スローモーション〉」


 静かに告げ、呪文で敵の動きを遅くする。まだ速いけれど、捉えられないほどではない。おかげで攻撃が当てやすくなった。


「任せろ、妹よ! 〈アサシンズナイフ〉!」


「〈モデリング〉! イズお姉ちゃん、ウィッチお姉ちゃん! よろしく!」


 強化された短剣と一本の矢が勢いよく放たれた。それは魔物の両足を貫通し、転ばせることに成功する。

 しかし奴はすぐに元の姿へと戻ろうと、散らばった破片を吸収しだした。


「これで終わらせるわよ、〈フローズンスノウ〉!」


「〈スリングストーン〉! レイブン、頼みましたわ!」


 回復しきる前に、数えきれないほどの氷と石の鎖が敵の体に絡みつく。魔物はまだ粘るつもりらしく、トランスの呪文で拘束から抜け出そうとするが、そう簡単には逃がさない。


「お嬢さん、派手にやってやれ!」


 レイブンによる赤い放電が魔物を襲う。僅かにではあるが、奴の動きを止めることができた。そこにアルルが肉薄する。


「ヴィーレ! 幼なじみのコンビネーション見せちゃうよっ! 〈インビンシブル〉!」


 すれ違いざまの一閃。ハルバードで敵の首をはねたのだ。

 その首が宙を舞う頃には、俺は魔物の真上から全体重をのせて大剣を振り下ろしていた。


「カズヤ! 最後はお前だ!」


 頭も体もまとめてぶった切る。体が四つに分かれた魔物へ、彼はとどめの呪文を放った。


「みんな、ありがとう! 〈キャンセル〉!」


 彼の声が部屋に響くと同時に、銀人形の体は地面に落ち、跡形もなく消滅した。

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