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非公開中  作者: するめいか
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1話「長閑な異世界生活」

 とうとう主要の人物達が集まり、今まで出てきた謎がまさに紐解かれようとしている。


 そんなある日、僕はキッチンに立っていた。というのも、先日エルが言い出したことに関係があるのだけど。


「よしっ! レイ、カズヤ! 今日は城の皆に俺達が夕飯を作ってあげちゃうぞっ!」


「はい、兄さん」


 なぜこんな事になったんだ……。

 金髪兄妹は表情には大きく差があるものの、両方とも張り切っているようだった。あれからレイチェルの感情もだいぶ分かりやすくなったな。


 彼女の成長を喜ぶ気持ちもあったが、僕は本音を漏らさずにはいられなかった。


「ねえ、これ今やる必要あるのかな……」


「バァカ野郎! 家族愛を深めること以上に大事なことがあるかっ!」


 エルによく分からない理由で叱られてしまう。はいはい、本音出ましたよ。料理なんて二の次だよね……。ていうかレイチェルもさりげなく頷いてんじゃないよ。


「それに聞いたぞ、カズヤ! お前、兄の俺よりも先にレイの飯を食べたらしいな! 許せん!」


「あはは、ごめんごめん」


 エルはいつにも増してうるさかった。もう何でもいいから調理を始めてくれぇ……。


「ところでさ、エルは料理作れるの? ここには人間側の食材もあるけど、悪魔側の食材や調味料を使わないとみんなの分には足りないよ」


 悪魔側の食材には日本料理に使われる物もある。それどころか、他にも僕が元いた世界にあった料理の材料が沢山あったのだ。どちらも人間側にいた時には無かった物だった。多様性って大事だなぁ。


 そのことを考えると、あの商人は悪魔達とも通じていたんだろう。未だに正体が分からないけど、何者なんだ彼女は。


 あと今更だけど、サタン達のことを悪魔って呼んでいいのかな? 蔑称だったわりにみんなそう言ってるけど。『人間』って呼ばれるよりはマシってことなのか? 彼らにとっては人間こそが悪魔みたいなもんだろうし。


「その点については抜かりありません。私が兄さんにずっと教えてあげていました」


「ああ、スパルタだったぜ。あんなに勉強したのは人生で初めてだったな」


 彼らは準備万端みたいだ。にしてもレイチェル、仕事してる時以外ずっとエルと一緒にいる気がするんだけど、気のせいかな?


「じゃあ早速始めようか。三人だけで作るんだ、きっとすげえ時間がかかるだろう」


 エルがそう言うや否や、キッチンのドアが勢いよく開かれた。


「待て待てぇーい! このサタン様を忘れてないかい?」


 大声を出しながらサタンが出てくる。わざわざ準備してきたようでピンクの水玉エプロンを着ていた。あれ、なかなか様になってる。


「え、サタンちゃん料理できんの?」


「はい。サタン様は料理がとてもお上手です。料理だけでなく、だいたい何でも器用にこなされますよ」


「ふっふーん! どやどや!」


 代わりに答えてくれたレイチェルの言葉にサタンは胸を張る。あからさまに天狗になってるな。おバカかと思えばチェス強かったし、見た目で判断するのは今度からやめるようにしよう。


「そうなのか! 良い助っ人が来てくれたな!」


「ほんとはノエルも連れてこようと思ったんだけど、今日はヴィーレ達のとこで遊んでるらしいんだよね~」


 ノエルってパーティーの時にいた女の子だっけ? なんであのメンバーの中にいるのかと思ったけど、多分サタンが呼んだんだろうな。


 時間稼ぎの際に緊急撤退の役割もこなしていたようだけど、僕はあの時レイチェルを連れて走って逃げたし、結局あんまり関わりが無かったな。パーティーの時もすぐ帰っちゃったしね。


「まあノエルちゃんはまた今度呼べばいいだろ。そん時は俺らも付き合うぜ、な?」


「勿論です」


「そうだね。どうせ出かけることも無いし」


「ほんとっ!? 約束ねっ!」


 僕たちの言葉を聞いてサタンは喜んでくれたようだ。羽をピンと伸ばして目を輝かせている。犬の尻尾みたいだねその羽。


「おう、約束な! じゃ、まずは今日、とびっきり美味い飯をヴィーレ達やちびっ子どもに作ってやろうぜ!」


「「「おーっ!」」」







「何だこの料理は! 美味い! いくらでも食えるぞ!」


「おいヴィーレ、俺の分も食べるんじゃねえよ。ちょっとは先輩に譲れ」


「ヴィーレお兄ちゃん、オジサン! 二人で食べ過ぎだよ~!」


 魔王の間で食事を楽しむ。僕たちの自慢の品々はヴィーレ達だけでなく、子ども達にも大人気だった。


 自分が作ったものを美味しそうに食べてもらうのは幸せだなぁ。ただ、あの二人は本当に食べ過ぎだ。


 エルも大食いではあるが、自分で作っただけあって今日は控えているらしい。それでも少食のレイチェルにいくらかもらっていたけど。


「気に入ってもらったみたいで何よりだよ」


「本当に美味しいですわよ。さすが私の召し使いですわ!」


「よくこれだけの量を四人で作れたわね……。執事やメイドの人達が自信をなくさないといいけど」


「あはは……。それは困るね……」


 もしそうなったらどうしよう。交代してるとはいえ、毎日働いている彼らの為にもなったのかと思いきや、知らぬうちに逆効果になっていた。


 ま、まあその時は僕が全力でフォローしに行こう。あの人たちの料理もこれに負けないくらい美味しいし。それを毎日コンスタントに作るのは凄いことだ。


「そういえば、ノエルちゃんは帰ったのか? ヴィーレ達のとこに行ってたんじゃないのかよ?」


「あー。一応誘ったんだが、あいつにも面倒見なきゃいけない奴らがいるからな。結構前に晩飯を作りに帰ったよ。今度また訪ねてやらないとな」


「そっか。僕、そのノエルって子とまったく喋ったことないから今度会ったら話しかけてみようかな」


 僕がそう言うのを聞いてヴィーレ、イズさん、エルが苦笑した。ん? どうしたんだろう。


「そういやカズヤに紹介するの忘れてたな。今度あいつが来たら色々説明してやる」


 色々? あの子にも何かあるのかな?

 そんな疑問もみんなと会話を交わすうちにいつの間にか忘れてしまった。まあ、いずれ分かることだ。気長に待とう。

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