椿の思案
朝、赤子の鳴き声で眼が覚めた。
隣で寝ている鹿尾菜からではなく、家の外からや。
捨て桜のとこか。
柚子が引き取りに行くからええか。
それにしても鹿尾菜は全くといって良いほど泣かへん。
少しぐずることはあるが原因不明の号泣はない。
こんなに落ち着いた子は珍しい。
あの子いつもはすぐ行くのに、今日は遅ないか?
まぁもうそろそろ扉の開く音がするか。
あぁ、ほらほら扉開いたやん。
いってらっしゃい柚子。
あれ?
速攻扉しまったぞ。
「椿、起きて!柚子がおらん!!」
雛菊の声や。
そんなこと言われたら飛び起きるやん。
がばっと上半身をあげた拍子に赤子に布団の風が。
しまった。
赤子がぐずる。
よしよし大丈夫よごめんね。
どたばたと普段とは違う焦った足音で雛菊はすぐ昭利さんの部屋へ入っていったようだ。
すぐ三人が部屋に集まった。
「赤子の鳴き声がすると思って、なかなか出てこない柚子呼びに行こうと思ったら部屋にいてなくて。捨て桜も見にいったけど柚子がいなかったから。おかしいと思って。とにかく、柚子がいないの。」
焦りか、若干汗をかいている。
私が聞いたのは雛菊の帰宅したときの扉の音か。
雛菊の白い腕には可愛い赤子。
そっと鹿尾菜の隣においた。
今はその赤子に構っている場合ではなさそうや。




