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学生竜騎士  作者: 雨後吹雪
一学期
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マグニフィカト

 ガロウ校長は寝てしまったしユリアさんはどこかに行ってしまったので、ちょっと気になるものがたくさんある校長室を見て回ろうかな。

 まずは本棚の列。古そうな本がこれでもかと並べられている。んー、難しい、わからなすぎる。例えばこれ、『魔法を形作る思念』。魔法なんてそれぞれの意味をなす呪語を組み合わせて言えばそれでいいと思っていたがこの本によると、『魔法を形作るのは魔力ではなく、その魔力で想像し、形作る思念と力である』。

 意味がわからん。入学したら聞いてみようかな。

 次は、壁に掛けられている神々しい武器。剣から槍、鎖鎌に至るまで大小様々な武器がある。あの宝石の埋め込まれている剣は確かガロウ校長の竜装、『ウィクトール』だったかな? あの剣で数多あまたの敵を切り捨ててきたのかぁ。この目で見る日が来るとは。そしてこの剣は多くのドラゴンの命を……

 ふつふつと怒りが湧いてくる。俺の父親——ドラゴンの仲間たちの命を消したのがこの剣。そしてガロウ校長だ。だが、それは仕方がないことだ。ドラゴンの全てが良き竜とは限らない。ドラゴンの里の竜の命までは消していないだろう。あの里なしに竜騎士は生まれない。ガロウ校長が殺したのは邪に堕ちた邪竜だけだ——のはずだ。……そのはずなんだよ。

 それに俺の母親も似たようなことをした。 母さんはドラゴンに村や家族を壊されたからドラゴンを恨んでいると事あるごとに言っていた。でも最後に必ずに、『父さんは違うよ。あの人のことは愛しているよ。もちろんお前も』そう照れ臭そうに言って頭を撫でてくれた。

 ガロウ校長にもきっと理由があるはずだ。竜騎士をやっているならドラゴンが嫌いというわけではないはずだから、ね。

 こんなことを考えたらキリがない。他の物も見てみようかね。

 深呼吸をして歩き出そうとすると何か柔らかいものを踏んだ。

 足元を見ると一匹の黒い猫が。

 今までいることに気づかなかった。半竜の聴覚を持ってしてもわからないほど静かに忍び寄るとは、此奴、できる。

 頭を撫でようとすると、

 〔おい、人間。 我に触ろうとするなど二百年早いぞ〕

 突然どこからともなく声が響いた。

「うおっ!? 誰だ! どこにいる!?」

 後ろに飛びながら構え、部屋を見回す。

 〔誰はともかく、目の前におるではないか〕

 またも声がする。今度はわかった。声を聞いているのではなく、頭の中に直接語りかけられているようだ。

 そして、俺の目の前にいるのはあの黒い猫。

「お前なのか?」

 警戒しつつ猫から離れる。何をするかわからないからな。

 〔だからそう言っておるではないか。人の割にはあまり驚かないな、お主〕

 猫は瞬きをしながらこちらを見つめてくる。

「あいにくいまは落ち着いていてね。お前魔法猫なのか?」

 一応正体を確認しておく。

 魔法猫は昔から存在してドラゴン族と同じくらいの歴史を持つ古い種族だ。魔法猫は意思の疎通ができると聞いたことがある。それに魔法も使えるとか。

 〔それは違うぞ、人よ。我は魔法猫のようなちっぽけな存在ではない。我の名はマグニフィカト。そこで居眠りしているエルフと絆を結んだドラゴンだ〕

 マグニフィカトは喉からゴロゴロと音を出した。

 ドラゴンだったのか……

「なんで猫の姿に? 不便じゃないのか?」

 猫の姿よりドラゴンの姿の方が良いことがたくさんあるはずだ。

 〔クックックッ、この姿にならねばこの部屋に入れないからな。好きで猫になっているわけではない。それにあいつは今後のことを考えて魔力を貯えている。この姿だとドラゴンの姿より魔力の消費が少ないのだ。我の余った魔力とあいつの魔力を毎日少しずつ、竜装に埋め込まれている宝石に流し込んでいるのだ〕

「魔力を流し込んで貯える? なんで? ガロウ校長は戦争でもあると思っているのか?」

 今の世界はお世辞にも平和とは言い難い。だが、戦争を起こすほど国同士の仲が悪いわけでもない。

 それに竜騎士ドラゴンライダーがいる。

 竜騎士がいる限り、魔法も使えない兵がいくらいようが関係ない。

 竜騎士は世界全てで公平な立場にある。どこかで戦争が起きれば飛んでいき即刻戦争を終わらせる——もちろん武力で。

 マグニフィカトはさっきよりも短くゴロゴロと音を鳴らす。

 〔我にはわからん。ただガロウに言われてやっているだけだからな。だが半竜・・よ、一つだけ忠告してやる。今のドラゴン族は何か不穏なものに飲まれつつある。ドラゴン族の里には近づかないほうがいいだろう〕

 そう俺に伝えると再度ゴロゴロと鳴らしてどこかに消えていった。

 ばれてる——!!

 このドラゴン俺の正体に気づいてるよ!

 だけど妙な話だ。今のドラゴン族に何が起きているかはわからんがきっと何かが起きる。それがわかっているだけでもだいぶ違いがある。

 幸い俺は明日からこの学校に入学する。

 それすれば多かれ少なかれ情報も入るだろう。

 俺の父親の安否も気になる。

 運動用のジャージのまま連れてこられたのでメモなんて持っていないから、記憶のメモに書き記しておく。

 とりあえずガロウ校長起こすかな。


次で過去の話を終わらせてみせる( ̄^ ̄)ゞ

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