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弱者の一撃天を穿つ  作者: 文学おじさん
【第一章】牙を研ぐ弱者
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7話・選択の時

少し過剰に書き過ぎたかも知れないので後日修整するかもしれません

すいません<(_ _)>

 「なんだい、もう行くのかい?」

 名残惜しそうにマリナが言う。


 「はい、目的が定まったからにはのんびりもしていられませんからね」

 何て事を行っているがこの村に来てから既に四日が経っていた。

 お礼も兼ねてこの村名産のナリ茶畑で剪定(せんてい)の手伝いをしたり、ラースに計算を教えたりして過ごしていた。


 おかしいと思っただろう?そう、何故か知らないが俺はこの世界の文字の読み書きが出来たんだ。

 深く考えても意味など分かる筈も無く、何となくで流しておいた。

 この世界に来てから学んだ事の一つが、悩むな!である。

 悩んでも分からない事は分からないのだから。


 勿論スキル習得の為の訓練も継続的に行い、俺は何とか棒術・投擲術・鑑定・気配感知・白魔法を習得する事が出来た。

 鑑定に至っては、目に魔力を集中し内容を読み取る事だけを延々と行った。

 あぁ辛かった。

 目に魔力を集めるだけでも相当な集中力を使う。

 訓練の後は一日中ゲームをした後の様な痛みが眼球を襲ってくるんだもんな…


 気配感知に至っては森からの道中で少しだがコツのようなものは掴めていたので、少し感覚を澄ますと、生き物の気配を読み取る事が出来る様になっていた。

 まぁ、二メートル位何ですがね…

 でも習得するにはしたのでとりあえずは十分である。

 そして習得した新たなスキルの事で嬉しい事が一つあった。

 友人との遊びに夢中になったラースが村から出てしまいプリムに襲われると言う事が起きた。

 何とか助ける事は出来たが、肩にはそれなりに大きな傷を負っていた。

 村の人やマリナさんは慌てて薬草を掻き集め出したが、運悪く備蓄してある薬草がほぼ底を尽きかけていたいたのだ。

 だから俺は覚えたての白魔法を使ってみた。

 完全に治す事は出来なかったが、ミリィが駆け付けるまでの時間稼ぎは出来た。

 急いで飛んできたミリィがすぐに白魔法を唱えた。

 「傷付き倒れし者を癒したまえ、ヒール」

 みるみるうちにラースの傷口が塞がり苦痛に歪んでいた顔は穏やかになっていった、それから小さな寝息を立て始めた。


 俺達は村人や、マリナから次々にお礼を言われた。

 俺はあまり役に立てなかったからと言うと

 「斗真がヒールを掛けていなかったら間違いなく間に合わなかったわよ」とミリィに言われた。

 素直に嬉しかった。

 俺の大切な家族を自分の手で守れたのだから。




 「少ないけど餞別だよっ」

 マリナが渡してきたのはずっしりと重い麻袋だった。


 「受け取れませんよっ!泊めて頂いた上にご飯まで毎日食べさせてもらってお金もだなんてっ」


 俺はお金の入った麻袋をマリナに返そうとした。

 「馬鹿言うんじゃないよっこれは二人が働いた正当な報酬さ、働いたらお金を貰う。

それが当たり前なのさ、まっ少しだけうちの息子を助けてくれたお礼も入ってるんだけどね」


 満面の笑みでマリナさんが言う。

 「兄ちゃん達行っちまうのかよ…」



 マリナの後ろに隠れていた人物が寂しそうな顔で出てきた。

 「ラースも色々とありがとう、またすぐに会えるよ」

 俺が笑顔で言うと、ラースも嬉しそうに「だよなっだよなっ」と、人懐っこく笑っていた。

 この四日間で何故かめちゃくちゃラースに懐かれていた、多分マリナが俺を本当の家族のように扱ってくれていたからだろう。

 ラースも俺を本当の兄のように慕ってくれるようになった。


 勿論俺もラースを本当の弟だと思っている。

 やんちゃで口は悪いが、実は寂しがり屋で友達思いで、何より家族を大切にする。

 ラースは本当に良い弟だ。


 「それでは行ってきます」

 「行ってくるわねー」


 名残惜しいが別れの挨拶を口にする。

 「兄ちゃん兄ちゃん!母ちゃんの事は俺が守るから安心して行ってきなよ!」


 目を真っ赤にしたラースが唇を震わせながら言う。

 「ラーズがいるがらあんじんじでいげるびぉ…」

 「ラースが我慢してんのに斗真が泣いてどうすんのよっ!!」

 何て言っているミリィの目も少しだけ赤くなっていた。

 それを見ながらマリナは、全くうちのチビ共は…と後ろを向き…

 「ぎをじゅげでいぐんだじょぉ!!」

 号泣していた。




 「さぁ斗真、気合い入れて行くわよっ!」


 「あぁ、俺は強くならなきゃいけないからねっ」


     生きるために!


 俺達が今目指しているのはリービルの村から北にあるレイオルドと言う街だ。

 商業や工業も発展しており街としてはかなりでかいらしい。

 勿論目的のギルドもそこにある。


 リービルの村から数キロと言った所で異変が起きる。

 「斗真、構えなさい。何体かいるわ」

 ミリィに言われ俺はさっと剣を抜き構える。


 遠くの方に緑色をした生き物が何体か見えた。

 もしかしてこれは…


 「ゴブリンか?」

 俺が言うと、ミリィが良く分かったわねと返事をしてきた。

 ゴブリン三体が少しずつこちらに向かって歩いてくる。

 一体は棍棒の様な物を持ち、他の二体は錆に覆われた古びた剣を携えていた。


 「アイツら頭悪い癖に武器を使うし団体で現れるから面倒なのよね」

 嫌そうな顔をしながら言う。

 「二体は私が相手をするわ、斗真…やれる?」


 少し不安げに聞かれる。

 「問題ないよ」

 柄を強く握り直し答えると、ミリィも頷き詠唱の姿勢を取る。

 少し強めの魔法で一気にかたをつけるらしく長めの詠唱に入る。

 俺は棍棒を持ったゴブリンを2体から離すように先導する。

 よしっかかった!

 棍棒を持つゴブリンだけが斗真を標的と定め追い掛けてきた。

 落ち着け俺。

 焦らなければ勝てる。

 何時ものように自分に言い聞かせ剣を構える。

   「グアァっ!!」

 ゴブリンが叫び棍棒を振り上げながら近付いてくる。

 まずは、棍棒を捌く。

 ゴブリンが振り下ろして来た棍棒を剣先で横に弾き捌く。

 体制を崩したゴブリンの顔面目掛けて蹴りを入れる。

 ゴブリンはよろけ鼻から血を流して怒っているいるような素振りを見せる。

 怒ったか?好都合だよ。

 焦れば負ける、冷静さを欠けば尚更だ。

 何度も焦りミスを犯している斗真は、それを改善する為に努力をしてきた、だからこそ落ち着いている。

 冷静に状況を把握し、落ち着いて周りが見えている。

 主導権は斗真が握っているのだ。

 心の乱れは死に直結するぞ…

 小さく呟きゴブリンに向けて駆け出す。


 ゴブリンは斗真が目の前に来るなり棍棒を掲げる。

 斗真は直後止まり、棍棒を振り抜かせて無防備になったゴブリンの首に向け剣を突き立てる。

 ザクッ…剣は吸い込まれる様にゴブリンの首に刺さり絶命させる。

 少し前まではこうはいかなかった。

 覚悟を決めた覚悟を決めたと何度も言っていた斗真だが、実際に覚悟を決めれたのはリービル村からだろう。

 冒険者になると決めたあの日から、普段にもまして剣術と格闘術の訓練に励んだのだから。

 それは形として現れ、現在斗真の剣術スキルはD格闘術スキルもDまで上昇していた。


 「強くなってる…よな?」

 斗真自身も今回の戦闘で手応えを感じているようだ。


 「遅いわよ斗真!もっとテキパキ倒しなさい!」


 少しだけ自分の成長を喜んでいた斗真だが、その言葉にハッとなる。

 「ミリィと比べないでよ…」


 ミリィは風の魔法で開始直後に二体を切り裂き戦闘を終わらせていた。

 恐ろしい戦闘妖精である。


 「でっでもまぁ、ととっ斗真にしては良く頑張ったんじゃないかしら!」


 貶されているのか、褒められていれのかいまいち分からないがとりあえずお礼だけは言っておく。

 それよりも何でミリィの顔が赤くなっているかの方が気になるんだが。

 まぁ詠唱して息でも上がったんだろうと1人で勝手に納得した。


 「少しだけ休憩しましょうか?」


 俺の肩からミリィが聞いてきた。

 あまり焦って進んでも無駄に体力を消耗するだけだしな…

 「そうだね、あそこに岩があるからあの影で休もうか」


 少し大きめの気の影に腰掛け休憩を取る事にした。

 マリナさんが持たせてくれたお弁当を二人で食べる。

 いつもの少し固いパンにこんがり焼いたベーコンと野菜を挟んである。

 やっぱり美味いなぁ…

 俺はマリナさんに感謝しながはサンドイッチの様な物を頬張った。


 いきなりミリィが顔をしかめ周囲を見渡す。


 「どうしたのミリィ?」


 「落ち着いて聞いてね斗真…囲まれてるわ」


 私が警戒を怠ったばかりにごめんなさいとミリィに言われるが、ミリィを責める事何て俺に出来る筈も無い。

 いつも何時もミリィに助けられてばかりいるのだから。


 「ミリィのせいじゃないよ、それよりもどれくらいいるの?」

 少しだけ上擦った声で聞く。


 「ざっと20体って所かしらね…」


 どうやら本当に不味い事になっているようだ…

 でも、分かってる事が一つだけある。


 「ミリィ一人なら逃げれるよね?」

 俺は震える身体を何とか黙らせて、平静を装いミリィに尋ねる。


 ミリィは俺の言葉を聞くとキッと鋭い目付きで睨み付けてきた。


 「ふざけないでよっ!次そんな事言ったら絶好よ!」


 ミリィは声を荒げ本当に怒っていた。

 でもどうすれば良いんだよ、俺と言う足でまといを連れながら20体もの魔物と戦うと言うのか?

 いくら優秀な魔法使いであるミリィであったとしても詠唱中は無防備だ。

 前線に出て、敵を引き付け詠唱の時間を稼がなくてはいけない剣士はゴブリン一体を倒すのがやっとのポンコツ剣士なのだから。


 「なぁミリィ…」


 「嫌よっ!斗真を見殺しに何て出来ない!!」


 ミリィの決意は固い。

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!

 ない知恵を絞り尽くせ!

 二人が生き抜く道を!

 死地を超える一手を!




 そして弱者は立つ。

 決意に満ちた眼差しで。

 生きる為の戦いへ望むんだ。


 「ミリィ、話があるんだ」


 「見捨てないわよっ何度もいわ…」


 「違う!!生きる為だ!俺が囮になる」

 ミリィは拒否するかの様に顔を背ける。

 だがこれしかないのだ、二人で生き残る道は。

 無い頭を絞り考え抜いた結果がこれなのだ。

 「俺が囮になる、どれだけの魔物を引き付けられるかわからないけど…でも死ぬ気は無い。

俺が敵を惹きつけている間にミリィには一番強い呪文を詠唱してもらう。

 他にいくらでも手はあるのかもしれないけど…

 これが俺に出来る最善なんだ。

 因みになんだけど、どれくらい詠唱に時間がかかる?」


 俺の真剣な眼差しを受けてミリィも覚悟を決めた様に答える。


 「私が魔法を撃って敵を撹乱、それに乗じて斗真が逃げる。

 それじゃ駄目なの?

 100%上手く行くとは言えないけど…」


 悔しそうに唇を噛むミリィ…

 「逃げて失敗して死ぬ、逃げずに戦って死ぬ、俺は臆病で何の役にも立たないけど。

 弱い奴にも弱い奴の維持があるんだ。

 だからもし死ぬとしたら、俺は後者を選ぶよ」


 強がりだ、本当は怖い。

 今でも足が震え、涙を堪えた目は赤くなっている。


 「5分よ…5分だけ耐えて…そして約束して

 死なないって」

 「なっ何だ五分か!余裕だな!」


 死なないよ、何て事は言えなかった。

 生き残る確率が低い事は、自分が1番分かっているのだから。


 精一杯の強がり。

 壊れそうな心に喝を入れる。


 「行こうミリィ、生きる為に」

 剣の柄を強く握り、こちらに向かって走ってくるゴブリンの群れに突っ込む。

 出し惜しみはしない。

 最初から全力だ。

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!


 だから俺は…

 「お前らを斬る!!」

 それは剣術とは呼べるものではなかった

 まるで子供が駄々をこねて腕を振り回しているかのような動き。

 だからこそ目立ち、引き付ける。

 全てのゴブリンが斗真目掛けて押し寄せる。


 ミリィ…頼んだよ…

 心の中で小さく呟いた斗真は、ゴブリンの群れを引き連れて離れていく。


 「我は風を統べし者我は風を抱くもの…」

 ミリィは中級魔法の中でもっとも威力の高い魔法を詠唱していた。

 魔法の詠唱は相当に精神を集中しなければいけない。

 もしも集中を途切れさせれば反動で魔力の暴走が起きるからだ。

 本来ならばすぐにでも斗真の元に駆け付けたい、斗真を助けたい。

 でもそれは叶わない、妖精の単純な肉体の強さなんてたかが知れているのだから。

 だからこそミリィは集中する、一つ一つの言葉を紡ぎ、術式を構築していく。

 人間族の魔道士では絶対に到達する事の出来ない速度で魔力を練り上げていく。

 斗真を助ける、二人で生き抜く。

 ただそれだけの為に。




 既に斗真は満身創痍であった。

 背中は切り付けられ、腕は打ち付けられ、一体何本の骨が折れているかすら分からない状態である。


 あれ?おかしいな…眠たくないのに目が霞む。

 痛みも無いし、あぁ俺失敗したのかな?

 ミリィ怒るかな?

 マリナさんも怒るかな?

 ラースは泣いちゃうかな?

 嫌だなぁ…また直ぐ会えるって言ったのに。

 嘘つきとか言われるのかな?


 何て事を考えているとどんどん意識が遠のいて行くのを感じる。


 「………天空を舞い!!敵を滅せよ!!ウインドニアトリトリス(雷を纏う暴風)」


 直後凄まじい轟音と共に雷の様な物がゴブリン達を包み一瞬にして灰にする。


 「斗真ぁ!!斗真ぁ!!」


 泣きながら俺の名前を叫ぶミリィが視界に入る。

 「俺、生きてるの?」

 満身創痍、いやそんな言葉では生温い程にボロボロである。

 後少し魔法の完成が遅れていたら斗真は死んでいただろう。

 ミリィの泣き叫ぶ声を聞きながら斗真の意識は闇に沈んでいった。

誤字などありましたら連絡頂けると嬉しいです。

アドバイスや指摘、批判などありましたら宜しくお願いします<(_ _)>

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