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弱者の一撃天を穿つ  作者: 文学おじさん
【第一章】牙を研ぐ弱者
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5話・よろしく泣き虫さん

少し文章の書き方を変えたのですが見やすくなったでしょうか?

 ドカッ!バキッ!「ギュピィッ!」

 「さぁ斗真、今日の夜から白魔法の訓練を始めるわよ!」


 プリムとの戦闘の最中に言う事なのか?

 少し不快な顔をしながら俺はミリィを見る。

 プリム2体が俺の周りをギュピギュピ叫びながら走り回っている。

 一体は隙あらば直ぐにでも飛び掛って来そうな勢いである、もう一体は様子を見ている様な気がする。

 ミリィは手を出す気は無いらしい。

 それは俺が今後少しでもまともに戦えるようになればいいと思うミリィの親心のようなものらしい。


 これ程に迷惑な親切を俺は産まれてこの方受けた事が無い。


 「いや流石にこれは不味いよ…2体はキツイって…」


 プルムの突進を剣でいなしながら言う。

 気合よ気合!と、少し後ろの方で叫んでいる妖精にいつか仕返しをしようと固く心に誓う。


 「落ち着け、いくら2体だからってプルムはプルムだろっ攻撃は単調、真っ直ぐ突っ込んで来た所を躱して斬る!これだけだっ」


 自分に言い聞かす様に言い放つ。

 その瞬間プルムが後ろ脚にグッと力を入れる仕草を見せる、そして俺に向かい突進をしかけて来た。


 いける、これなら躱せる!

 俺はさっと横に飛ぶ、瞬間プルムが焦るような表情をした。


 「先ずは一体!」

 プルムの胴体目掛け垂直に剣を振るう。

 手に嫌な感触が走る、次の瞬間プルムの体から血が吹き出し倒れる。


 顔をしかめながら剣の柄を強く握り直しもう一体のプルムの正面に立つ。

 片割れを殺され動揺するプルム、既に戦意を失っている様にも見える。


 もしかしたら逃げてくれるかもしれない…そう思った瞬間だんだった。

 ギュピィッ!!

 プルムが自分を奮い立たせる様に叫びこちらに向かって突進して来た。

 少し油断していた俺は咄嗟の事に焦り体勢を崩してしまう。


 ヤバイっ…そう思った瞬間である。




 「…………なる敵を貫け!ウインドスピアッ!!」


 目の前のプルムが風の槍に串刺しにされ吹き飛ぶ。

 「どうして油断したの?!私が助けなきゃ怪我じゃすまなかったわよ!」


 その言葉に俺は下を向いてしまう。

 油断…それはこの世界では死に直結する愚かな行為。

 もしくたらプルムは逃げ、無駄に命を奪う必要は無いかもしれないと言う慢心。

 俺は馬鹿だ、楽天家の大馬鹿野郎だ。


 「ごめん…次からは気をつけるよ…」

 俺の言葉にミリィも納得はいかないが許してくれたようだった。

 少しレベルが上がりスキルを身につけたからと言って油断するのは止めよう。

 俺はまた生きる為の教訓を一つ得たのだった。




 それからは口数少なく森の中を歩いた。

 何故かミリィも少しだけ気まづそうにしている。


 「怒ってる?」


 しかし返事は無い。

 やっぱり怒っているらしい、本当に俺は駄目駄目だ…


 「…んぱいするじゃない…」


 ミリィが何かを言っているがいまいち聞き取れない俺は困った顔をしてしまう。


 「心配するじゃないっ!!斗真に怪我なんてしてほしくないっ!」


 少しだけ目を赤くしたミリィが震える声で言う。

 どうやら泣いていたようだ。

 俺はミリィに相当な心配をさせてしまっていたらしい、いつも明るくズケズケ物を言うミリィのその悲しい表情と震えた声に自分がどれだけミリィに大切にされているかを悟らせた。


 「本当にごめんミリィ、もう油断しないし馬鹿な事もしない…だから…」


 そこまで言ってミリィに口を抑えられる。


 「謝って欲しい何ておもってないからっ2体と戦わせた私も悪いんだし…だっだから仲直りしましょう」

 ニカッと笑うミリィ。

 あぁ、そう言えば2体と戦う羽目になったのはミリィのせいだったななんて、その笑顔の前では言える筈も無かった。


 そしてまた夜が訪れる。

 「さぁ白魔法の訓練よ斗真!」

 昼間の事が嘘のように元気いっぱいに言ってくる。



 白魔法の特訓は指に少しだけ傷を付け、それを治すと言うものだった。

 しかし緑魔法と違い全く要領が掴めない。

 ミリィの説明を聞き何度も挑戦するが出来なかった。


 「今日はもう止めにしましょうよ、これ以上続けたら明日に響くわ」

 その言葉に小さく頷き休む事にした。




 朝起きると直ぐに二人は歩き出す、ミリィが言うにはもうすぐ出口らしい。

 数回プリムに遭遇したが、前回の反省を生かし油断すること無くプリム達の命を刈り取っていった。




 「見えてきたわよ出口が」

 ミリィの指差す方向に視線を向けると平原のようなものが見えた。

 ん?平原が見えるけど何か揺らいで無いか?

 何度も目を擦りながら見ていると

 「あれが結界よ、向こう側からはこちらが見えなくなっているのよ」

 凄いな結界、あまり意味は分からないがどうやら森と平原の境界に張ってある結界が揺らいで見えているらしい。


 長かったな…たった数日なのに凄く長く感じた。

 間違いなく今まで生きて来た中で一番濃い数日間だった。


 でもこれでお別れか…俺はミリィへと視線を向ける。

 ミリィもそれに気付いたのかこちらに飛んでくる。


 「斗真…あのね…」


 あぁ、わかっているさみなまで言うなみなまで。

 別れの挨拶と言うのは寂しいものだ。

 あまり聞きたくないのだ、この世界に来て不安に押し潰されそうになっていた俺に初めて出来た友達であり命の恩人のミリィ。

 最後くらいカッコよく俺に別れの挨拶を言わせてくれ…


 「ミリィ待ってくれ!」

 俺の言葉にビクッとするミリィ。

 「せめて別れの挨拶位俺から言わせてくれよ」

 え?と、不思議そうな顔をするミリィ。

 「違う違う斗真そうじゃないから!」

 次は俺が、え?と不思議そうな顔をする。



 俺の不思議そうにする顔を見て少しだけミリィが笑う。

 「あのね斗真…良かったら貴方の旅に私も同行させてもらえないかしら?」


 聞き間違いだろうか?いや聞き間違いだろう。

 まさかそんな筈は無いよな、ミリィが俺の旅に同行してくれるなんてな事があるわけない。

 あまりに寂しくて俺の心が作り出した虚言だろう、なんて事を考えていると



 「斗真は弱過ぎるのよ…このまま行かせても直ぐに死んじゃいそうだからもう少しましになるまで私が面倒見てあげるわよ!」

 なぜかミリィの頬が赤くなっているように見えたのは気のせいだろうか?


 「え?いっ良いのかミリィ?フェアリーフォレストの外に出ちゃうんだぞ?!」


 フェアリーフォレストは天敵のいない妖精にとっての楽園と言っていた、それなのに。



 「初めて出来た人間の友達を助けるのに理由がいるかい?」

 どこぞで聞いた事があるような臭い台詞だった。

 でも何でだろう

 言葉が出てこない

 嬉しくてはしゃぎ回るような事も出来ない



 ただ1つ、斗真の頬を一つの滴が伝った。

 「うっうっぐすん…よ゛ろ゛し゛く゛ミ゛リ゛ィー!!」

 涙と鼻水でぐじゃぐじゃの俺に優しく微笑む妖精ミリィ。

 俺は暖かな気持ちに包まれながら森を抜けるのだった。

アドバイスや指摘、批判等有りましたら宜しくお願いします。

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