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第4話B

 さおりの打ち出すライトニングシェルの弾幕を掻い潜りながら、俊昭はさおりとの距離を詰める。

 ステップを踏んで地面を蹴り、弾丸を避け、地面に足がつくタイミングに合わせてアクセルを発動し、さおりに飛びかかった。

「おおおおおおおお!」

 叫びながら渾身の力で棍棒を振り下ろす。

「ぐ!」

 タイミングを計っていたさおりが杖を振った。空中で避ける術を持たない俊昭に雷が直撃し、俊昭は地面に叩きつけられる。

 さおりはそのまま5thアビリティを発動させた。自身を中心に電撃を帯びた波が広がり、起き上がりかけた俊昭に直撃する。

「くっ」

 黄色い衝撃波に弾かれた不安定な姿勢のまま、強引にアクセルを発動させ、俊昭は横に跳んだ。ライトニングシェルが真横スレスレを通り過ぎる。

 再び地面に足が着く前にまたアクセルを発動させ、待機時間が終了するのと同時に地面を蹴る。間一髪でサンダーボルトを避けた。

 地面を転がって弾丸を避けながらアクセルを発動させ、無理やりに起き上がる。

 目前に迫る弾丸を棍棒で叩き落とし、アクセルで左斜め前に跳ぶ。

 降りかかるサンダーボルトを転がって避け、起き上がる力をアクセルに乗せ、バネのように地面を蹴る。

 また転がって弾丸と雷をやり過ごし、棍棒の間合いにさおりを捉える。

「は!」

 俊昭はなぎ払うように棍棒を叩きつけた。

 しかし杖に阻まれる。

 一瞬動きを止めた俊昭に雷が振りかった。それを読んでいた俊昭は大きく右に跳んで避けた。

 地面に足がつくと同時にバネのように地面を蹴り上げて雷を避け、もう一度さおりへ突撃する。

 間合いが詰まる前に待機時間を終え、二段振り上げ打ちを叩きつけた。

「ぐぅっ」

 さおりは杖で防いだが、押し切られ、吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされながら、さおりは空中で杖を振った。サンダーボルトが一瞬の気の緩みを突かれた俊昭に直撃し、地面に叩きつける。

 俊昭は地面を蹴って起き上がりながらアクセルを発動させ、地面に落ちようとしているさおりに突撃する。

 さおりは起き上りざまにサンダーボルトを放つが、俊昭はそれを避けた。

 再び間合いを詰めた俊昭がまたなぎ払うように棍棒を叩きつける。さっきと同じようにさおりは杖で受け止め、同じようにサンダーボルトを放とうとする。

 しかし俊昭の方が早かった。棍棒を、受け止めた杖を支点に回転させ、棍棒の反対側の端点をさおりに叩きつけた。

 真横から棍棒で強打され、さおりがバランスを崩す。

 間髪挟まず、棍棒の回る向きを反転させ、反対側の端点でさおりを殴りつける。

 バウンドするように弾かれたさおりに、棍棒の反対側の端点が襲いかかる。

 そのまま俊昭は、棍棒の端点をかわるがわるさおりに叩きつけた。

 さおりはなす術なく連打され、棍棒の渾身のひと振りに吹き飛ばされた。

 俊昭の2ndアビリティで付与される補助効果、ヒットチャージは敵に攻撃を当てるたびに次の一撃の威力を増加させる効果がある。敵に攻撃を当てられ、コンボが途切れるまで際限なく攻撃の威力を高めるのだ。

 何度もさおりに攻撃を命中させた後の今の渾身の一撃は、相当な威力があった。

「うぅ……」

 ふらつきながらさおりが立ち上がる。

 三秒の待機時間をすでに終えていた俊昭は地獄突きを叩きつけようとさおりに飛びかかった。

「はあああああああああ!」

「うっ……ああああああああああああ!」

 さおりは死力を振り絞って5thアビリティを発動させた。

 地獄突きと衝撃波が激突する。

「ぐ!?」

「きゃあ!」

 バチ!という大きな音が響き渡り、二人は反対方向に吹き飛ばされた。



「……あれか? あれなのか……?」

「そうみたいね」

 もはや球体と呼べるレベルまで丸々と太った鶏(?)みたいなのがプカプカと空中に浮かんでいた。飛んでいるとは表現しがたい。体のサイズからは小さすぎる羽をパタパタとさせているが、大きさ、羽ばたきの速さ、どれをとっても飛べそうには見えない。だいたい鶏は飛ばない。

 唖然としている僕と対照的に、千歳はとくに驚いた様子もないようだ。

「あれ、足かな。もう太めの毛にしか見えないんだけど、位置的に足だよね、あれ。地面に着地した途端、折れそうなんだけど……」

「どうでもいいじゃない。そんなの。でもあれ、可愛いわね」

 フフフッと千歳が笑う。

 僕は一瞬幻覚でも見ているのかと思ってしまった。年頃の女の子らしいところを始めてみた気がしたからだ。

「何かついてる?」

「い、いや」

 無意識に千歳を見つめていたようだ。慌てて視線を逸らす。

「予想外の可愛らしさね。なんだか捕まえるのが気後れしちゃうわ」

 そうなのだ。マップ上の目的物を示すアイコンは目の前の物体を指している。どうやらあれを捕まえるのが今回のクエストらしい。

「……昨日と同じゲームをしてるとは思えない……」

 鶏(?)はこちらに気づいていないのか、のんびりとプカプカ空中を漂っている。なんとも気の抜ける眺めだ。

「はい」

 千歳にビニール袋を渡される。

「……僕がやるのね」

「当然でしょ」

 何が当然なのか分からないが、千歳には逆らえない。ビニール袋を片手に謎の物体に近づいていく。

「……わりと、高いな」

 物体は思った以上に高くを飛んでいた。ジャンプしても届くか怪しい。

(どうしよう……)

「……ん?」

 物体の鼻のあたりに鼻ちょうちんが膨らんでいた。さっきまではなかったような……

 よく見るとだんだん高度が下がってきている。まさか……

「寝てる?」

「……可愛い」

 左頬に手を当て、うっとりと呟く千歳。熱でもあるのかな? なんだか女の子みたいじゃないか。

 とりあえずこれは……

「チャンスだ」

 そっと近づき、頭の高さまで降りてきた頃を見計らって……

「それ!」

 ビニール袋を覆いかぶせるように広げる。

「コケェ!?」

「うわ!」

 想像以上の空気抵抗に手元が狂い、袋の端を当ててしまう。起こしちゃった!

「コケェ! コケ! コケ! コケ! コケ! コケ! コケ! コケェ!」

 必死に羽ばたき、信じられない勢いで高度を上げていく物体。

「待ってぇ!」

 叫びながら必死で後を追った。



「うっ」

 呻きながらふらつくように立ち上がる。

(なかなか手ごわいじゃないの……危ないところだったわね……)

 さおりは胸の中で嘆息した。さっきは冷や汗が出た。

 こんなのは初めてじゃない。そう自分に言い聞かせる。

 苦戦しないで勝てた数のほうが少ない。いつだってギリギリの戦いになって……

 それでも、自分は勝ってきた。

(あの男は、どこ?)

 辺りを見渡すが、視界に俊昭は映らない。ならば……

 直感で真後ろに蹴り飛びながら、サンダーボルトをさっき自分のいた位置に放つ。

「ぐあ!」

 俊昭が地面に叩きつけられる。

 予想通り、アクセルで飛び上がって死角となっている真上から急襲しようとしていたようだ。

 もう一度地面を蹴り、真逆の方向に飛びながらライトニングシェルを放つ。

 起き上がりながら弾丸を叩き落とした俊昭は、驚愕に目を剥いた。

 さおりは胸中でほくそ笑んだ。まさか魔法使い系である自分が、自ら距離を詰めてくるとは思わなかったのだろう。

 そのまま杖で殴りつける。

「く!」

 俊昭は棍棒で防いだ。

 空いている左手を俊昭の顔面に向ける。そのまま至近距離からライトニングシェルを放った。

「うっ」

 至近距離からの一撃を、俊昭は首をひねって避けてみせた。

 もう一発お見舞いしようとしたが、俊昭の方が早い。

 俊昭が棍棒を振る。押し負け、引き剥がされかけるが食らいつく。

 二人共が地面に倒れ、、そのままもみくちゃになって二人で転げまわる。

 俊昭がさおりを地面に押し付ける形で回転が終わった。

 必死の形相で荒い息を吐く俊昭に、さおりは余裕の微笑みで返す。

 俊昭が己の失策に気づき、飛び上がろうとするが、遅い。

 サンダーボルトが俊昭の背中を直撃する。

「ぐあっ」

 跳ね返すように俊昭の腹を蹴り上げ、さおりは起き上がりながらよろめく俊昭の腹に左手を添えた。

「味わいなさい」

 そのままライトニングシェルを叩きつける。

「うおあああああ!」

 ゼロ距離からの弾丸に吹き飛ばされる俊昭。

「くそっ」

 俊昭は顔を歪めて、痛みに耐えながら起き上がる。

 顔をあげると、

「おまけよ」

 6thアビリティの待機時間を終えたさおりが、ニヤリと笑うのが映った。

 サンダーレインが降ってきた。


(勝った……)

 内心安堵しながら、それでも地面に倒れ伏せている俊昭を油断なく睨み据えつつ、さおりは7thアビリティの待機時間が終わるのを待っていた。

 強かった。苦戦した。それでも、今回より厳しい勝負もあった。

(これで……)

 そこで一瞬気が抜けてしまったのか。対応がワンテンポ遅れた。

 俊昭が素早く起き上がり、すぐそばに落ちていた棍棒に駆け寄る。

 戦慄が体中を走り抜けた。

 だが……

(あと2秒! こちらの方が、早い!)

 俊昭が棍棒をつかみ取るのと同時に、待機時間が終わった。

(終わりよ!)

 7thアビリティを開放しようと、杖を振りながら、

 ニヤリと笑う俊昭の顔を、見た。

 俊昭が地面を棍棒でつく。

 次の瞬間、

「かはっ」

 背中に強い衝撃を受けて、さおりは背中を反るように宙を舞った。

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