森の中
俺が落ちたのは森の中だった。
「ってぇ・・・」
当たり前だが、体の節々が痛い。
五体満足か確かめる。よし、大丈夫そうだな。
「よっ、と・・・」
反動をつけて起き上がる。
「っ!!」
右足に激痛が走る。折れてるわけではなさそうだが・・・。
「いつまでもここにいるわけにはいかないしな」
ざっと周りを見渡し、俺はかすかなけもの道を歩き始めた。
しばらく歩いていると。
(人影・・・?)
俺より少し背の低い人のような影が草むらの向こうに見えた。
「あの・・・」
人里がないか聞こうと口を開く。そして、振り向いたその影は
プキ?
(ご、ゴブリン!?でも、羽がないし・・・。いや、そんなこと考えてる場合じゃない!)
俺は右足を引きずっている状態で、しかも丸腰。対してゴブリン(仮)は棍棒まで持っている。ぜってぇ、かてねぇ!
プキャーーーー!
「うわ!」
振り下ろされた棍棒を左に飛んでよける。
「っ~~~」(とにかく逃げろ!)
スカイタウンでは一応騎士団所属だったんだけどな・・・。情けない。
右足はどうとでもなるが、丸腰じゃあ無理だ。
「ってぇ!囲まれた!?」
ぐるりとまわりを見回すと四方八方からゴブリンが迫ってきていた。
(―――どう、するか・・・。いちかばちかっ)
ゴブリンの包囲網の少しの隙間を走り抜ける。
ピギャァー!
ぷぎゃーーー!
「なんで、そんなに襲ってくんだよ!」
そうして逃げ回っていた。そのとき、
「いてえっ!」
思いっきりずっこけた。その少しの隙にゴブリンに間を詰められる。
(もう、だめか・・・)
最後の悪あがきをしてやろうと手を動かすと、何かが手に触れる。
(!、これは・・・)
ピキャー!!
俺の脳天めがけて振り下ろされる棍棒。
ガキィンッ
プキ?
「間抜け面だな、ゴブリンさんよ!」
そう叫び、切り捨てる。手に触れたのは、剣。初めて握ったはずなのに、すごく手になじむ、使いやすい剣。淡い赤色で柄の真ん中には真っ赤なルビーがはまっていた。
「さぁ、こい!」
そういって、何十匹と集まってきていたゴブリンたちに向き合った。
「結構、苦戦したな・・・。無理しすぎたか」
折り重なるゴブリンたちの死体に寄りかかり休む。右足に激痛が走っている。
「はぁ・・・。どうするかな」
さっきてにした剣を見つめぼやく。
「周りは真っ暗だし、今日はここで野宿かな」
周りの安全を確認し、安心すると一気に疲れが押し寄せすぐに眠ってしまった。
『ゆっくり寝とけ。明日から忙しいぞ。ユウ』
『おい!起きろ!朝だぞ!』
「うるさいな・・・。って、は?」
あるはずのない声に驚き目を覚ます。
『お、おきたか』
声を発しているのは全長二十センチ程度の精霊と称するのが似合う何かだった。
「・・・何?お前」
『誰、じゃなくて何、なんだな』
腕を組んで苦笑する。何、であってると思う。
『俺はルイ。お前が昨日手にした剣の精霊だ』
「剣の精霊・・・?」
どこかでそんなような話を聞いたことがある気がするな。どこだっけ?
「まさか、カルミナ様の・・・?」
『あぁ』
あの、カルミナ様が選んだ勇者へと贈られると謳われたルビーの剣?
「なら、これ、元に・・・」
『戻す必要ないだろう』
あわてて、後ろを振り向く俺に鋭くつっこむルイ。
『あの、カルミナ様だぞ?勇者以外にこの剣を手にすることを許すわけないだろう』
「つまりは、俺があの、勇者だと?」
ありえないと思いつつ聞く。深くうなずかれた。
「まじか・・・」
『カルミナ様に選ばれる栄誉だぞ。うれしくないのか?』
「なんで、俺なんだ?」
『スカイタウンからこの大地に落ちてくるなんてふつうない。カルミナ様が結界を張ってるからな。その結界を通り抜けて落ちてくるなんてカルミナ様自身か、選ばれた人間しかありえないんだよ』
そんな、つまり昔落ちて行ったあの人は・・・。
「あ、自己紹介まだだったな。俺は・・・」
『ユウ、だろ?知ってる。いこうぜ』
「え?は?ちょ、どこに行く気だよ!?」
俺はルイを追いかけて森を抜けた。