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アルランへの訪問者6

― リス族(雄)リーダー ―


「くっ!これも食べられぬ物か!」


 拾った木の実を捨てる。拾って齧るまでは食べられるものかがわからない。腹が減った。出口がわからない。それよりも何かを食べたい。


キノコを見つけたので齧って見る、駄目だこれも食べてはいけないものだ。俺はキノコを捨てる。拾わないと食べられるものかわからない。空腹が辛い。どこに進めばいいか見当もつかない。いつから食べていないのか忘れた。


怪物を殺したので齧って見る、うげぇ、食べたものを口から吐き出す。俺は肉を捨てる。齧って見るまでは食い物になるかわからない。腹の音が止まらない。道が見当たらない。そもそも何かを食べたことがないのかもしれない。


 拾った・・・。齧る・・・。吐く・・・。拾わないと・・・。腹が痛い・・・。ここはどこだ・・・。俺はどうして・・・。


 





 俺が目を覚ましたのは、人間を襲った日から3日程経った後らしい。見ていた部下に聞くとひたすら苦しそうな表情で、食べ、吐き、腹と繰り返し呻いていたと言っていた。他の者は1日で目を覚ましたものもいれば2日程で目を覚ました者もいたらしい。俺が一番最後に起きたそうだ。


 今いるのはどこかの家だろうか。部下の話ではたくさんの部屋に総勢30程のリス族が押し込められている。ただ建物は隣あっていると言っていた。お腹は空いているが特に気にならなかった。


「ボス、どうやら外に出してもらえるそうですが」

「俺はもうボスじゃない」


 部下だった者に答えて、仲間に続いて外に出る。


 外には人間と、元仲間であったリス族の雌達がいた。女の人間と子供の人間を見た俺達は一斉に五体投地をした。そうしないといけない気がした。


「えっと・・・あれ?まこねぇまだ怒ってる?」

「いやいや、僕は何もしてないよ?彼等が勝手にしているよ?」


 困惑している子供の人間に立ってくれと言われて、俺達は恐る恐る立つ。人間の子供の横に、人間のリーダーという男が話し始めた。


「娘が失礼をしたようで『お父様、ケーナは悪くありませんよ?』そ、それはもちろんです!あぁいや、ええっと・・・そ、そうじゃ、それでリス族のえっと・・・男の方なのですよね?貴方達はこれからどうなさいますか?ケーナもアイダ殿ももう贖罪は済んでいると言っておるのですが」


 許してもらえたのか・・・自分達の何が勘に触ったのか知らないが、これからは従属していかねばなるまい、自然と俺達は膝をつき族長に対する臣下の礼をする。


「チッチチチチチチッチチチ(我ら一同貴方方に従います)」


『・・・ケーナ、ちょっとお灸をすえすぎたかもしれませんね』


「え~?たつにいも太鼓判おしてたもん!」

「ふふっ、達也が大好きだねケーナ?」

「まこねえも大好きだよ!」

「ふふっ、ありがとう」


 ケーナの頭を撫でる真を横目にボードルはそれならと提案する。


「それならカエデ殿にそちらの人たちは任せた方が良いですかな?」


 聞かれたカエデと呼ばれたシリウス族長後釜の雌はビクッとして、俺達を見る。俺達は新たなシリウス族長に臣下の礼をとり、沙汰を待つ。


「チチチ・・・チチチチ?(私が族長で構わないのですか?)」


 何を異なことを、シリウス族長を引き継いだのなら貴方が族長です。それに我ら一同は貴方達の臣下です。敬語は不要です。


 と伝えると困惑したように、とりあえず食事をとってくださいと案内された。ありがたくと一同は礼を失せずに追従する。



――



 ボードルはリス族(雄)達の様子を見て、演技とかではなく実際にカエデに従っているのを見て、ほっと安心したように息をついた。そしてケーナと真を見ながら改めて確認する。


「カエデ殿とわだかまりがあると聞いていましたが、本当に大丈夫なのですかな?」

「大丈夫だよパパ!ケーナがお仕置きしたもん!」

「そうだね、一応確認できる範囲では悪意はなかったと思いますよ」


『その辺は私も保証します。とりあえずは改心しているようですね』


「手段は聞きませぬが・・・ケーナあんまり危ないことはしないでおくれ?」

「あ、ごめんなさい・・・パパ・・・」


 しゅんとするケーナに慌ててボードルは抱き寄せて宥める。


「いやいや!別に怒ってるわけじゃないのだ、確かにヤナギ様関係なしにケーナは強いみたいじゃが、それでもパパとしては心配なのだ・・・わかるかの?」

「うん、たつにいもパパに心配かける駄目って言われてたからケーナ反省する」


 ボードルとしては達也の約束を破ってまで力を行使したので、ケーナの精神状態を心配したのだが、力に溺れたとかではないことも確認できたので、ようやく安心できた瞬間だった。


 なにせ、騒ぎを聞きつけケーナが当事者になっていると聞いて血相を変えて来たときには、娘が神々しく変わった容姿で何やら力を行使しているではないか、自分達の娘はどうなったのだ!?と一時は取り乱し、フリッツ達に抑えられたりもしたのだが、ケーナの容姿が戻り3日経った今でも心配でたまらなかったのだ。


「ケーナ結局あの姿は何だったんだい?」


 ついでだに聞くように真がケーナに質問する。


「ん~たつにいは使いやすいイメージでやればいいって!」

「うん?能力行使の時に姿を変える・・・もしくは能力発動に必要なのがあの姿ってことかな?」


『概ねはその解釈でいいと思います。ただ、別にあの姿になる必要はありませんけどね。ユウナ様にてんにょ?なるもののを描いてもらってケーナが気に入ったのですよ』


「天女?」


 言われてあの時確かに羽衣みたいに白い霧がまとっていたなと思い出し納得する。羽衣っぽいだけで羽衣ではないが、まぁささいな問題だろう。


「確かにケーナ天女さんみたいだったね」

「ほんと!?かわいかった?」


 どうやらケーナは天女を可愛いものとして認識しているらしい。天女って綺麗系じゃなかったっけ?と思いつつもケーナを褒めまくる真である。


「でも、まこねえもすっごくかっこよかったよ?」

「え~?女の子にかっこいいはないんじゃないケーナ?」

「たつにいのは怖いけど、まこねえのはかっこよかったよ~」

「まだいうのかい?この口かな~?」

「ふふぇ!?ふぇ、ふぇふぇふぇ!」







「むぅまこねえもどっか行っちゃうの?」

「ここで暮らす訳にはいかないからね・・・今は、ケーナも仲良くなってくれたし、わかるだろう?」

「むぅ・・・遊びにいっていい?」

「ケーナがかい?それは・・・構わないけど一人じゃ、実力はともかく危ないと思うよ?」

「たつにいに連れてってもらう!」

「あはは、それならいいよ?でも達也は先に僕達の方に来る予定なんでしょ?」

「そ、そうだった!ヤナギどうしよう!?」


『タツヤ様のことですから、すんなりとマコト様の所へ行くとは思えないんですよね、それにケーナ?ケイ殿が強くならないと駄目だったのでは?』


「そうだった!ケイにぃじゃむりかなぁ・・・」


 ケイに同情しつつ頭を抱えるケーナを撫でながら、確かにトラブルメイカーと言うわけではないが、色々巻き込まれやすいね彼と真も頷く。


『それにユウナ様の意思で厄介ごとは積極的に関わることにしているそうなので』


「それはまた・・・優奈ちゃんは何でそんなことを考えているんだい?」

「なんかねギルド?作るから困ってる人は助ける!だって!」

「ギルド・・・?」


 柳が経緯を掻い摘んで説明すると、傍にいた双子がそうそうと真に補足する。


「なるほど、冒険者ギルド・・・ね。町の交流を広める面でも有用かもしれないね」


 そう言いながらも胸中では否定気味な真だ。例え十分な冒険者が揃ったとしても、国・・・いや、町が揃わない限りは難しいだろう。同時に町や集団それに強力な力を持つ個人に影響を持った人物がいれば可能かもしれないとも考える。もしかして達也は優奈の為にその立ち位置を目指しているのだろうかと考えるも、一度しか会ってはいないが3人娘を守る意思は感じられた。さすがにそこまで積極的に中心に立つと危険が増すし、優奈が気が済むまで付き合うあたりだろうと結論した。


「たつにい達帰ってきたら私もギルド手伝うの!」

「そう・・・僕もどうすればいいか考えておくね」

「ほんと!?まこねえとたつにいいたら、魔物さん大丈夫だね!」


 そこへ栞を中心とした荷造り班が準備できたと声をかける。


 アルラン側は達也と同程度の戦力を持つ真と友誼をもつことに否定的な意見は出なかった。リス族が増えたとしても食料は潤沢だったので、真達に提供することにした。真としては代金を払えないので、拒否したかったが集団の長としては受け取った。というよりエネスに懇々と諭されたのも大きい。栞の能力では栞しか収納が出来なかったので2日程かかってしまったが、何とか受け取った物資を収納出来たので今日出発となったのだ。


 そうして、真達はアルランから自分達の町へ戻っていったのであった。







 帰途途中、子供達の様子を見ながら真は考える。かなり無理をさせてしまったが、顔を見る限りは来て良かったなと。確かにトラウマを再発させそうになった子もいたが、エネスに見てもらえたのは大きかった。いつもよりかなり安定していると念でも確かめられたので、真としては物資以上の価値はあったと考える。


「ことちゃんことちゃん」


 思案する真に奏が隣から声をかける。今、真達が乗っているのは荷馬車だ。ただし馬はない。真が能力で引いている状態だ。体力をつけたい子は積極的に歩くし、小さな子は真や奏の膝の上や、荷馬車の中でくつろいでいるようだ。


「なんだい奏?」

「そろそろ私達のグループも名前付ける?」

「「そうそう!達也兄さんにも聞かれたよ?」」


 そういえば町の名前もわからなかったなと真は思案し、それなら皆で考えようか?と提案するも碌な意見が出てこなかった。


「定番だと[ことちゃん親衛隊、ことちゃん一派、真団]とかかな?」

「とかかなじゃないよ奏・・・何でいちいち僕の名前をいれるんだい・・・」

「こと姉[第8師団特殊能力機動部隊]とかかっこよくない!?」

「遥・・・かっこよくないし・・・どこから第8がきたの?それに師団って規模じゃないよ?」

「そうだよ、かっこよさでいったら[殲滅の般若とか鬼神女神とイタタタタタタタ!?ギブ!ギブー!?」


 馬車と並走していた彼方が真を見ながら失礼な名前を口走ると、彼方は頭を抑えるように空中でジタバタする。真が能力で彼方の頭にアイアンクローをしているのだ。


「こーねぇー」

「うん、どうしたんだい?」


 真の膝の上にいた子も考えたらしく、真の注意を引いてきたので、彼方を開放し「ぎにゃ!?」落とした後、その子と顔を見合わせる。


「あのねーおしろがいいと、おもうー」

「お城?何でお城がいいんだい?」

「んーこーねぇーおうじょさま?」

「僕が王女様なのかい?まぁ王女はともかくとしてお城かぁ、今回旅したし[旅する城]にでもしとく?」

「「「「「はい、決定」」」」」


 真が呟いた途端、聞いていた子は一斉に賛成を表明し小さな子は旅するお城~っと即興で歌いだす。


「・・・もしかしなくても僕が言ったらそれにするつもりだったのかい?」

「リーダー、ううん王女様はことちゃんだから、ことちゃんが決めたならそれで決定かな?それとも他に考えてたのあるの?」

「特に思いつかなかったし、奏達がいいなら僕はいいけど・・・王女はやめて?」

「え~?ことちゃん綺麗でカッコイイから王女様とか似合うよ?」

「・・・じゃぁ奏は綺麗で可愛いから王子様ね?」

「え、ええ!?そこはお姫様じゃないの!?」

「いやいや、物語には王子様は必須でしょう?」

「や、やだー!」


 真達がどんなに騒いでも誰も襲わない。真が感知し、こちらを襲おうとする意思を見せた瞬間に押し潰され肉塊になっている。真達が去った方向の魔物が殲滅されるのにそう時間はかからなかった。

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