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アルランへの訪問者2

 ボードルやフリッツとしては見た目で馬鹿をする者達がいるので、早々に案内をしたかったのだが、何せ真達は全員子共でしかも連日の強行軍で歩みも自然と遅くなる。それに初めて訪れた町に興味が尽きないのか歩ける子供はキョロキョロする、さらに足を止める者まで出る始末で、度々真が注意しながら進む為尚更遅くなる。


 子供だけというのも問題だが、疲れてきっている子供も多く、堂々としている真や双子がいなければ、難民の子供達にしか見えなかっただろう。


 誰にとっても幸いだったのは、町に入った真達は特に難癖つけられることなく、ボードルの案内で仮住まいまで案内された。女子共しかいない集団なら、荒くれ・ゴロツキ(そういうもの)達の格好の的になりそうなものだが、何人かの子供が浮いていることと、町に逃げ帰った男達が何か言ったのかもしれない。結果としてボードルやフリッツが懸念した被害が出なかったのは幸いだった。


 ちなみに懸念してたのはアルラン側の被害だけだ。柳の様子から真は町の英雄である達也に準じる力を持っていると、ボードルとフリッツは早々に察したのだ。達也と似た共通点として、保護対象を多数抱えていることがボードル達の不安に拍車をかけている。こういう手合いは自身より仲間や保護対象に危害を加えられた時の方が悲惨になると達也のことから学んでいた。


「ここをお借りしてもいいんですか?随分と立派に見えますが」


 真達が案内されたのは、一軒の建物。真が外から判断する限りでは酒場らしき建物だった。入ってみると正面にカウンターがあり、カウンターの手前には飲食スペースがあり、テーブルと椅子が脇に寄せられていた。カウンターの横には階段があり、どうやら二階は居住スペースになっているようだ。異世界によくある酒場+宿屋だなと双子は思った。ちなみに真は異世界モノは知らないので、ただただ感嘆するだけだった。


 もちろん現代基準でいえば、建物としては劣るし設備も現代っ子の真達からしてみれば、キャンプと変わらないだろう。それでもここに来るまでに町の建物を見てきたので、この建物が良い物だというのは何となくわかった。というより建てたばかりなのか、木の匂いが新鮮である。


「キサラギ殿に、交流するところが出てきて慌てるよりは先に作っておいたほうがいいと言われましてな。先日完成したばかりなのですよ」

「あぁなるほど・・・達也は随分とアルランに影響力があるんですね」

「そりゃ、町を救って下さった英雄ですからな。塩問題やリス族の戦力・・・色々と手を貸してもらいました」

「塩問題は何となくわかりますが、リス族とは?」

「紹介するにはタイミングが悪かったので、明日でよろしいでしょうか?彼女らも町の仕事についておるので」

「そうですか・・・っと、お礼が遅れました。ありがとうございます、こんな立派な仮宿をお借り出来るとは・・・」

「いえいえ・・・実はこれもキサラギ殿に言われたのですが。今回自分達が手を貸した分だけ外から来た者に便宜を図ってくれと言われましてな?」

「ふふっ、じゃぁ達也にも感謝します。あ、でも悪人に対しては・・・」

「えぇ、その辺はヤナギ様もおりますので大丈夫ですよ」


 無差別じゃないことに安堵する真。といっても彼らの方が大人だし、自分が心配することじゃないと思いなおす。ふと双子が大人しいなと疑問を覚え周囲を見渡す。


 双子どころか、奏も部屋にそれぞれ入っていったようで残されていたのはボードルと真だけになっていた。


「そ、それじゃ真殿もごつくろぎくだされ、明日お話を伺うという形でよろしいのですよね?」

「ええ・・・あ、はい。どちらに伺えば?」

「いえいえ、こちらから迎えのものを出しますので」

「わかりました・・・改めてありがとうございます」


 ボードルが去った後、真は厨房らしきところに入る。そこでは奏や料理担当の女の子2人が何やら竈を前に唸っていた。


「どうしたんだい?」

「あ、ことちゃん・・・これどうやって使うのかなって」

「あぁ・・・僕達カセットコンロでやってたものね、でもこれって普通に薪入れて火つけるだけじゃないかな?」

「薪は一応置いてあったから・・・えっと勝手に使っちゃってるけどまずかったかな?」

「ん~その辺も明日聞いてみるからいいよ。それで薪はあったんだよね?何がわからないの?」

「えっと、火がね?つかないの」


 火がつかない?疑問を感じながらも竈の傍にいき、一生懸命火をつけている子の後ろから覗き込む。


「・・・そりゃ、つかないよ。ライターで炙り続けるのはいいけど危ないからやめなさい」

「え~?真ねえ、これじゃ駄目なの?」

「駄目っていうか・・・そういや焚き火とかは男の子達がやっていたね」


 男の子達も手際が良いとはいえなかったが、さすがに薪から火をつけようとはしてないだろう・・・多分と真は思いながら薪を一旦外にだす。


「というか、こんなに詰め込んじゃ駄目だよ。空気は抜けないし煤だらけになっちゃうよ」


 適当な数を入れなおした真は別に置いてあった小枝と、鞄から新聞紙を取り出してみせる。小枝を薪の中央に配置しながら


「まぁ、固形燃料とか使うんでもいいんだけどね・・・出来れば覚えてね?新聞紙を捻ってから火をつけて」


新聞紙を適当な大きさに千切り、捻ってから火をつけて小枝のあるところにいれてやる。みるみる内に小枝に火が移り、次第に薪にも火が移り始める。


「「「おお~」」」

「とりあえず、こんなものかな?今日のご飯はどうするんだい奏?」

「作り置きのカレーを温めようかなって」

「わかった、じゃぁ僕はテーブルと椅子の用意をしておこうかな」

「うん、じゃぁしおりちゃんカレー出してもらえる?」


 栞と呼ばれた少女が成人男性が使うくらいの大きさの黄色い弁当箱を出す。蓋を開けると弁当箱の中には小さな鍋がぎっしりと詰まっていた。そして、栞がミニチュアのような鍋を摘み、両手で抱える。次の瞬間ミニチュアサイズだった鍋が大きくなり、栞が鍋を抱えた状態になる。13歳相応の体つきではあるが、別段鍛えてもいないので栞が抱えられる鍋はそう大きくない。栞はそれをさらに3回繰り返す。そうして鍋を合計4つ調理台に置いた。奏が蓋を開けて確認すれば、中にはカレーが入っており。温めるだけで美味しく食べられそうなのがわかる。


「ありがと、それじゃご飯炊いちゃおうか」


 栞が今度は別の弁当箱を取り出す。蓋をあけると今度はミニチュアサイズの米袋が詰まっており、2つ程取り出した。そうして、本日の真グループの料理が始まった。とはいってもご飯を炊くだけだが。






 真は飲食スペースで、椅子とテーブルを動かしていた。とはいっても真の体を使っているわけではない。真の能力は”念 lv4”でそれを使って、カウンターに頬をつけながら視線だけ送り、後は能力を使って必要な数だけ並べていく。一つ一つ動かしているわけではなく、複数同時に動かしたのですぐに終わった。手間取ったといえば、椅子の数とテーブルの配置をどうするか悩んだくらいだ。


「さて・・・出来るまでどうしようかな」


 瞬く間に終わらせてしまったので暇になってしまった真は、カウンターから離れ二階に上がる。階段をあがると部屋が6つあることがわかる。さすがに非常階段みたいなものはないが。これなら男女半分で使えばいいかな・・・と適当な部屋をノックしてみる。真は念により中にいるのは女の子だけだとわかっているので、声をかけてから入ることにした。


「真だけど入っていいかい?」

「「「いいよ~」」」


 中に入るとベットが4つ配置されており、ここは就寝スペースになっているんだなと真は考える。これならもう2,3個ベット入るかなとも。


「まこと姉~今日はもう寝ていいの?」

「ご飯食べたらね」

「あ、そういえばご飯食べてなかった」

「今、奏達がカレー温めてるから、もう少ししたら降りておいでね?」

「「「はーい」」」


 ベットで寛いでいた少女達に声をかけた後、真は別の部屋も覗いておくことにした。男の子しかおらず何やら大騒ぎしている部屋にはノック等はしない。


「「「げっ!?まこねえ!?」」」

「うん、とりあえず枕は枕として使おうね?」

「「「は、はい」」」


 この部屋も4つベットが置かれていた。もしかして全部こんな感じなのかな?と考えるが、事務的なことが出来るスペースがありそうなものだけど・・・と考えつつ、無人の部屋に入る。


「あぁなるほど、一番偉い人はここに入ってもらうことを想定していたのかな?」


 一応簡単な説明はボードルから受けたが、子供達の様子を見てボードルも早々に引き上げたので別に真は気にしていない。探索自体は嫌いじゃないしねとも思う。まぁ、能力を使えば構造なんて一発でわかるのだが、そこはほら雰囲気って大事だよね?と誰かに言い訳をしつつ部屋を見回す。


 木製の事務机以外は、普通の応接室といった感じで机が2つとソファーらしきものがテーブルを挟んで向かい合うように配置されている。


「まぁ今の僕達は取引出来るものが少ないし、まだ事務的な手続きは必要ないかな・・・別にこの町に移住するつもりもないし」


 真としてはアルランに移住するのは賛成出来なかった。文明レベルの差はその内解消出来るとはいえ、自分達は全員子供だ。真と奏は一応成人一歩手前ではあるが、見た目では判断されないだろう。真は自分の能力と戦闘力には自信はあるが、交渉や駆け引きはそれほど得意ではないことを自覚している。仲間たちにも参謀タイプはいないので、仕方なしに兼任している状態だ。


 確かに自分の戦闘力ならアルランで護衛・・・いや、傭兵の真似事は出来るとは思うが、そういうことは真の趣味じゃない。出来れば元いた町で暮らしていきたいと考えている。まぁ、子共達にも聞いてみないといけないが、自分から離れようとはしないだろうとも思う。


 それに、今回は必要があったから大人、それも成人男性がいるような所に皆で来たが、その内変調をきたす子が出ないとも限らない。町を通る際も特に精神が回復していないと判断した子はこっそりと念で気を失わせてから浮遊で運んだ。もし、起きたまま囲まれていたら何人かはおかしくなっていたかもしれない。それはこの町にとっても、自分達にも良い結果にはならないだろうと。


「達也がいたら、もっと早くに皆を保護出来たかもしれないけど・・・いや、達也のせいじゃないか」


 彼だって飛ばされた直後に3人も保護していたのだ、自分が出来たからって達也にまで求めるのは筋違いだ・・・だが、それでも、あの時一緒にいてくれればと思わずにはいられなかった。


「ことちゃん?あ、ここにいたんだ?」


 窓から外を見ていたせいか、気付くのが遅れた。振り返れば、奏が扉から真を読んでいる奏がいた。


「どうしたんだい奏?」

「どうしたって・・・もぅ、ご飯出来たよ~って言ってるのに返事ないんだもん。皆ことちゃん待ってるんだから早く早く」


 そういえば、自分がいないとご飯食べない子もいるんだったと・・・急いで階下に下りていく真である。







「「あ、ことねえ遅いよ!」」


 一番最初に真を見つけた双子を契機に一斉にお腹減った~の合唱が始まる。


「ごめんごめん・・・えっと、じゃぁいただきます」

「「「「「「いただきます」」」」」」


 総勢15名がいただきますと合唱し、ようやく食べれるとカレーを食べる子供達。真は顔を伺ってくる一番小さな娘を世話しながら自分も食べる。


「ごめんね?離れてしまって・・・起きた時怖くなかった?」

「・・・だいじょぶ・・・おねちゃんたち・・・いた」

「そう・・・ほら、食べたら一緒に遊べるから、頑張って食べよ?」

「・・・うん」


 しきりに真の顔を確認する少女を促し、食を進める。この娘が一番精神的にまずいらしく、真はかかりっきりになるが、思春期特有の嫉妬や妬みはこの集団にはないようだ。まぁ全員が全員真が大好きなのでなるべく困らせることはしないと、一致団結しているのだが、真は知らないことである。


 もっとも、困らせるつもりはなくても、役に立とうと訓練をする双子みたい子には真も困り顔ではあったが。








「皆もう寝たみたい・・・ことちゃんは寝ないの?」

「うん・・・寝てくれたみたいだし、僕ももう寝るよ」


 食事が終わり、約束どおり遊んでいると、うとうとし始めたので・・・気付かれないように能力で深い催眠をかけ、寝付かせた娘を真は撫でながら奏に答える。


 都合6つの部屋があったが一つは倉庫というか物置になっているようだったので、応接室以外を男女の二つにわけて真達は就寝することにした。といっても、性の心配をして分けたわけではなく、真がいないと眠れない子は真がいる部屋に振り分けられているが。比較的元気な子は双子がそれぞれ担当している。なので一つ部屋が余ってはいた。


「う~ん、やっぱり大人の人達多いと、息つまっちゃうみたいだね」

「そうだね・・・僕としても、安心は出来ないけどね」

「うん・・・ことちゃんも疲れてるでしょ寝よ?」

「探知センサーと結界は張り終えたしそうしよっか」


 能力でがっちがちに防備を固め終えた真も奏と一緒に横になり寝る。


「おやすみことちゃん」

「おやすみ奏」

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