真似事
宗治の雰囲気が変わり、刀を中段に構え・・・視線は俺を見ている感じはしない。
「あんだけ散々騒いだのに今度は静かに・・・斬りかかってくるのかよ!」
鬼気迫る感じはなく、俺の全体を見るかのように刀を振るってくる。
強化してるからギリギリ止められるけど、速度がどんどんあがっていくな・・・手だけで刀を動かしてるせいか、それにしたって剣戟が重すぎる。宗治の刀を良く見れば仄かに赤く光っている?
隙を作ったつもりはなかった。
宗治の刀を一瞬だけ見た俺は
いつの間にか宗治を見失い
宗治が後ろに移動したのに気付いた時には
わき腹を斬られていた。
『達也?!』
「・・・ぐ」
いつ斬られた?痛みに顔顰めながら宗治から距離を・・・駄目だ見失った、今度は右腕を浅く薙がれた。動脈は斬られてないのか、血はそんなに流れていないけが。
『ぬぅ!?捉えきれぬ!』
左脚、右太腿、頬と軽く斬られ続ける。
どうなってる?粉塵隠とかいう技なら千那が対応出来るはず・・・考えてる間にも止めきれない斬撃が俺を切り裂いていく。傷自体はそこまで大したことはない、手加減されているのかこれいじょう切り込めないのかはわからないけど・・・いくらなんでも斬られすぎて腹立ってきた。
制御が難しいから使うつもりはなかったけど、もう知らん。
”感知強化”
今はこれ一つの変化で容量がいっぱいになるのか、並列して他の強化は出来ない。けどまぁ・・・宗治らしき人物の動きが見える、感じられる、対応出来る!
宗治の刀が辿る軌跡をさけ、千那を宗治に当たるように適当に薙ぐ、適当なのは全力で斬ると多分真っ二つにしてしまうからだ。
「ぬ!?」
どうやら自分が斬られたことで、集中が切れたらしい。宗治の動きが止まり、斬られた右腕を見ている。
「ほぅ・・・また雰囲気が・・・変わったな達也?」
「この状態だと手加減難しいみたいだから・・・手早くな?」
「よいな!やはり達也・・・お前はいい!」
そこからは一方的なものになった。宗治が移動する軌跡、宗治が刀を振るう奇跡・・・今では戦闘の流れが感覚でわかる俺は一方的に宗治を斬り続けるだけだ。速すぎるならともかく、速さ自体はそうでもないので、流れさえ解れば避けられる俺・・・そのうち、宗治の動きも鈍くなってきた。
確かに俺がつけた傷のせいもあるようだけど・・・宗治を蝕んでいる病が・・・
「・・・これ以上は斬りあえぬようだ」
「宗治の体・・・凄いことになってるぞ」
「・・・そうか」
昨日見た時は心臓から、体全体に流れていた黒いモノが、体のあちこちから発生している・・・今朝からなのか戦闘のせいなのかは知らないが、生きてるのが不思議なくらいだ。
「・・・達也」
「何?」
「あっしは、ここで別れる」
「そうか」
腰に常備している中品質ポーションが入った瓶を投げてやる。
「これは?」
「とりあえず、傷くらいは塞がる、振り掛けるなり飲めばいい」
「無駄な薬ではないか?」
「俺の気分の問題だ、さすがに血塗れの仲間を送り出せない」
「ふむ?まぁ確かに達也の問題でしかないが、受け取っておこう」
その場で傷を癒した宗治は、去っていった。俺の感覚では黒い塊になっていた。
「去り際の言葉も特にないのかよ」
「ふ~む、昨日仲間になったのにもうお別れか、忙しいのう?」
人型に戻るにはいいけど、とりあえず服を着ろ。
「見てもいいぞ?」
「風邪引く前に服着ろ」
「ぬ・・・そういわれると仕方ないのぅ」
いそいそと服を着始める千那をよそに・・・起きて様子を見ていた優奈達にどうやって説明するかを考えると憂鬱になる。まぁなるようになれ。
「そっか、やっぱりそうちゃん行っちゃったんだ・・・」
そ、そうちゃん?名づけるの速いな、色んな意味で落ち込んでる優奈を美香が慰めている。
「病気は仕方ないわよ、それに達也と戦えて満足したって話でしょ?」
「そうだけど、神水薬ならもしかしたら助かったかもしれないのに」
「ヂヂヂヂ、ヂヂヂヂ」
志乃も何だか寂しそうだ、俺のお腹をさすりながら何やら考え事をしている。何でお腹撫でるの?
「ん、たつそうじお腹温めなかった?」
「いや、お腹は・・・関係ないと思うけど、まぁ温めたら良くなったかもな?」
「うん」
たった一日だったけど暴風とかじゃなくて、いい風ではあったな。
またな、宗治。
―宗治―
達也の見立て通りどうやら体は限界らしい、まぁ達也に見せられるだけ技は見せたし、つむじ舞を一発で盗んだんだ、いつか全部を使えるようになるさ。別に流派を残したいってわけじゃないけど、師匠の義理立てにはいいだろう。
あっしとしては心残りはあるが、国が違うんじゃどうしようもない。
「ところで適当に歩いたが、ここはどの辺だろうな?」
独り言のつもりだったが返す言葉があった。
「あのひと、の、におい、する」
あっしの独り言への返しではなかったけどな、一応気配は感じていたが・・・なんだこいつは?人の形はしているが、化生には違いないと思うのだが。人の言葉を使っている?
「あなた、私のひと、と、たたかった、の?」
「もしかしなくても達也のことか?」
「たつや、という、の?俺のひと?」
「・・・そいつの特徴は?」
「僕のひとは、うでが、おおきく、なったり、くろ、く、なったり、するよ」
「そんな妖怪のような奴ではないな、いや?千那と一緒に戦ったならありえるか?」
でもこいつが言ってるのは自分自身が変化してるみたいな言い方だな。待てよ?黒ではないが白に変異はしたな?大きくはならんかったが。
改めて目の前の奴を観察する。人型ではあるが体長は六尺(180cm程)だろうか、化生が無理に人間の真似事をしているかのようにあべこべだ。顔はあるにはあるが、目の位置がずれとるし、鼻がない。髪の毛ではなく尻尾?みたいなものが後頭部から背中に垂れ下がっている。体全体の色が黒い、体の至るところに波打つ赤い線がある。
それでもなんとなくだが、人間になろうとしている努力というか意思が何となく感じ取れる。
「我の人、を、なめたこと、ないからわから、ない、でも、におい、は、いっしょ、だ」
「ふむ?達也の仲間か?あいつは妙に人脈あるな」
「なか、ま、ちがうよ、儂のひと、どこ、いる?」
仲間じゃないなら達也の敵?追っ手とかか?敵意がないから何ともいえんが、よくないものでもない気がする。あっしとしては一食一宿の恩義・・・斬りあいの恩義の方が大きいが、ようわからんものを達也達と引き合わせるのはな。
考え込んだあっしを、よくわからん化生はじっと観察している。一応こいつの真意を確認しておくか?
「達也と会って如何とする?」
「朕のひと、に、みて、もらう」
「見てもらう?何をだ?」
「あたいのひと、と、おなじ、に、なった」
「元は違う形でもしてたのかお主?」
「そ、う」
そう言うとよくわからんものは、いきなり変化して大きくなって・・・大きな巨人になった。お腹に目はあるし、両手の間接も滅茶苦茶だ。見た目のインパクトに目を奪われていたのか、今気づいたがこいつ右腕がない。
驚愕するあっしをよそに一通り体を動かすと巨人はたくさんの目であっしを見下ろす。
「コレダト、イッソ、ムリ?」
つまりなんだ?こやつは達也と一緒に行きたいのか?・・・確かにこんな化け物みたいな姿では一緒は難しかろう。冬華と雪のことを考えれば小さくなれば達也達なら受け入れそうだが。
「確かに無理だろうな」
「ソ、ウ」
途端体を丸めるように小さくなっていき、さっきと同じ頑張って人の形を・・・さっきよりましになったな。あっしを見てから真似したか?
「おま、え、まね、して、いい?」
「ふむ、止めはせんが・・・出来れば女子の方が受け入れてもらえるのではないか?」
あっしの脳裏には千那のことがあった、あやつも元々はこいつみたいな造形をしていたのかもしれんな、達也と同行するにあたって、あの姿かたちになったと言われれば納得出来る。それにしても達也は人外・化生にやたらと好かれるのだな。
「お、なご?」
「そうじゃな・・・あっしも暇な身、お主を弟子としてみるか」
特に理由はない、人として生をまっとうに生きられなかったあっしと、人になってまで達也と一緒になろうとしている化生、似てはいない、似てはいないが興がのった。
「でし?でし、に、なる、と、妾の人、いっしょ、いい?」
「そうだな、その姿じゃ、達也達はともかく他の者が受け入れ辛いだろう」
達也達が森の中で隠居してるならともかく、あいつらは交流を大事にしている。冬華達は飼い犬と扱えばよいかもしれんが、さすがにこやつの姿じゃ受け入れ辛いだろう。
「わか、った、あたし、は、あなた、の、で、し、なる」
「うむ、あっしは宗治という、お前の想い人は達也だな、ところでお主名前はあるのか?」
「な、い」
「そうか、いや名前は必要ないか、達也につけてもらえばいい。あやつやたらと名づけ親になっておるようだからな」
千那が嬉しそうに名前を自慢してきた時に名付けの話は聞いている。あっしとしては中々名付けとしては良いと思った。まぁ、悩むのはあっしではなく達也だな。
「ついでだ、戦い方・・・人間の戦い方も一緒に教えてやろう」
刀を達也に託す気は起きなかったが、弟子として育てあげたこやつなら託しても良いかもしれん。そんな気も起こってきておる。
あっしの命が尽きるまでには、こやつを立派な女子にしてやろう!
奥寺宗治
権能”刀語 lv3”
あかん!毎日4000文字って結構しんどい!何がしんどいって?指だよ!書けないってことはないけど、指が痛い!




