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斬りあい

―奥寺宗治―


 達也に借りたテントはとんでもないな。外の冷たい風を遮るのに中の熱は適度に逃がしてくれる。おかげで寝苦しさも覚えずに久々によく眠れた。村の時は藁の上で雑魚寝だったからな。おまけに借りた布団はやたら柔らかくて、そのまま沈み込んでしまうかと思ったわ。最初は戸惑いはしたが冷静に考えると寝具一つとっても達也達の国との技術差は凄まじいものがありそうだ。まぁだからといって何だ?という話だが。間者の真似事はする必要もないしな、仕えた国はとうに滅んだ。不思議と名前は思い出せぬが、城主のことはうっすら覚えておる。


 あれはいい男であった。年下だったが、親戚が悉く討ち死にする中、あっしを連れて戦場いくさばを駆け回り大いに首級くびをあげたものだ。


 だけどまぁさすがに数の優位は覆せず城まで追い込まれてしもうた。あっしも潔く城主と一緒に死ぬつもりであったが、城主に刀を託されてしもうた。先祖代々伝わるこの刀・・・名をなんといったか?もう思い出せぬ。城主にとってもあっしにとっても斬りあいは刀が必要だ。その刀・・・命を託されたのならあっしは恥を忍んで生きる必要がある。


 死体に囲まれ炎上する天守閣を眺め・・・託された命を掲げたなぁ。


 それから先は只管斬って斬って斬りまくる日々だった。武士を斬った、浪人を斬った、老人も斬った、女も斬った、童だけは斬らんかったが。それは刀を持っていなかっただけで刀を持って斬りあいとなれば容赦はしなかっただろう。


 いつ頃からだろうか・・・いや、生まれた時から・・・ものごころついた時から・・・師匠に剣を教わる時から・・・城主と意気投合した戦場にいた時から・・・自分の体が病に侵されているのを常に感じていた。幸い誰にも悟られることはなかったが。別に吐血するわけでも体調が悪いわけでもなかった。とにかく自分を蝕むものがあることは感じていた。


 どこにいたって、どこで斬りあっていたって、いつ死ぬ?今日か?明日か?いや来年か?と病に問いながら刀を振るってきた。来年まで持つきもするし、明日には死ぬきが、いや、すぐにでも死ぬ気がする。そんな病を抱えてあっしは斬りあった(生きてきた)







「ぬ・・・見張りは任せてるとはいえ・・・完全に寝てしもうた。歳か?いやいや、この布団がいかん」


 これこそ狐に化かされているようなものだ。この布団一枚で何表の米になることやら。呆れつつも感謝し、布団を畳んで、てんと?なるものから外に出る。


 誰も起きてはおらんようだ・・・ん?いや達也がおるな、千那といったか?外国人らしき少女とこんな朝から一体・・・っは!まさか!?


 あっしは笑みを隠せず刀を引っつかんで達也をつける。気配は間者時代に培った全てを活かし消しきった。


「ふふふ、まさか本命は金髪嬢ちゃんだったとは!」


―――





―達也―


 ぶるっと身震いする・・・朝はさすがに冷えるな・・・心配するように千那が寄り添って、オイコラ


「抱きつくな」

「ぬ?寒いのであろう?・・・あぁそうか裸で温めあうのが作法であったな」

「脱ごうとするな!」

「どちらにせよ脱がねば出来んであろうが」

「そうかもしれないけど、何か違う・・・」


 訝しげな千那から目を逸らし、とにかく服を脱いでもらって・・・いやいや?


「脱ぐ必要ねえだろ!?」

「ぬ・・・気付いたか」

「とっとと変化へんげしろ」

「まったく、魔王使いが荒い」


 文句をいいつつ俺が差し出した左手に巻きつくように溶けるように体を液状化させ纏わりつく千那。


”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”


 最近は千那の武器化での訓練もしている。どうも俺のイメージが武器の切れ味・重さ・硬度に影響するらしく、武器として使うなら実際に使いまくり試すほかない。千那単体でも戦えるのはわかってはいるけど、千那もこの訓練は嫌いではないようだ。俺としては自分のイメージで武器が作れるのだから楽しいことこの上ない。


 飛び道具とかは鎖系のものはともかく、銃といったものは内部構造がわからないせいか、形状を模してもただの鈍器にしかならなかった。筒から何かを出せと言っても「変態か達也!?」としか返ってこなかった。解せぬ。


 服を畳んで・・・なんつうパンツ履いていやがる・・・とにかく適当に畳んで石の上にでも置いておく。


「さて・・・とりあえずいつも通り一通りやろうか」


 剣から始め、槍・鎌・斧・鎖鎌・ハンマーといった物に変化させ、変化の度にある程度振ってみる。冬華も武器の使い方は教えられないっていうしな・・・我流でなんとかするしかない。基本的に肉体変化に任せてる部分があるから改善したくはあるんだけど。


 武器の他にも体に纏わりつかせて鎧にしてみたり・・・上半身のみな?下半身までやると妙に興奮して俺の意志を無視するから腕と胸までに止めている。


 あえて形状を固定化せずに液状のまま針の剣山を生み出して、岩を刺してみたりも出来る。どちらかというとこの使い方の方が一番威力が出るんだけどな。


「大分、スムーズになってきたの」

「まぁ、伝えるのも思念?か何かを通してだから微調整も簡単だしな」

「それにしても、ようこんなに使い方が思いつくの?」

「そこはほら・・・聞くな」


 厨二はいくつになっても武器を考える・・・だよな?


 いつものメニューを一通り終えたあたりで、ふと宗治が持っていた刀を思い出す。そういえば、日本人といえば鉄板で使いたがる刀を忘れていたな・・・。


「ふむ?このイメージは・・・あぁちょん髷の奴のか」

「宗治だ名前は覚えろ」


 窘めつつ、刀に変化してもらう・・・鞘はないけど、さすがに俺も日本人、特に違和感なく鍔はない刀に変化させることができた。


 少し曲線を描いており、波うった刀身が綺麗だ。「本当か!?」お前じゃない・・・いや、千那ではあるか。とにかく、これこそ厨二のきわ・・・っ!?


―――







―宗治―


 おおう?千那が脱ぎ始めたぞ!こ、これは優奈にでも告げ口するか?・・・ぬ、達也が止めおった、いいところでおのれ・・・ぬ?今度は千那が・・・溶け・・・おおおおお?どうなっておる?溶けて黒くなった千那が達也に巻きつき、あれは剣か?剣になって達也が振り回し始めた。


 それから槍・鎌・斧・鎖鎌・大きな金槌といった普通なものから奇抜なもの、あっしも知らない武器なのか?それは?といった物まで様々な物が達也の手に現れては、適当に振り回されておる。


 一目見てわかる、あやつ何の武芸も収めておらん。かといって体が振り回されているわけではなく、体は必要以上にぶれておらん、よほど身体能力が高いと見える。


 しばらく眺め続けると武器での訓練は終えたのか盾や鎧といったものに変わった。武器ならともかく防御には興味なかったので、このまま立ち去ろうと考えて背を向ける。


 最後に一度振り返ると達也が刀を持っていた。


 自然と笑みが零れる・・・


 あぁだめだ、あれはいい刀だ・・・


 どれほどの名工が手に掛けたかは知らないが・・・


 あれほどの刀・・・


 あれほどの刀を持ったものと・・・


 斬りあい・・・


 斬りあいたい・・・


 斬り・・・





 我慢しきれず、気配を消すのを忘れ刀を抜きつつ達也に上段から斬りかかる。


―――






―達也―


 ガキンッ!


 唐突な殺気?いや闘気を感じ振り返れば、刀を振り下ろしている宗治が目に入り咄嗟に千那()で受け止める。


「宗治!?」


 何か壮絶な笑顔で斬りかかってくるんだけど!?何!?何ごと!?


「何だよ!達也!-キンッ!‐いい刀!‐カンッ!‐持ってるじゃねえか!」


 刀って繊細なもので打ち合うとすぐに脆くなるんじゃなかったっけ?千那は黒塊を取り込んでるのもあって岩に叩き付けても刃こぼれしないが、いやしたとしても再生するし。宗治が持ってるのは普通の刀のはずだよな?なんで千那()と打ちあって折れない!?


「ははは!いいな!やれるでないか!武器を扱ったことがない!?そんなことはない!お前ならいつでも剣豪と成れるだろうよ!」


 くっそ・・・反応強化一つじゃきつい・・・変更”反応強化””反応強化””脚力強化””思考加速”腕力はそれほど必要ない、とにかく斬られないように機動力と反応力は優先的に変化する。


「ほう!?まだいけるか!?そうだ!そうだよな!いいな!ついてこいよ!?」


 答える余裕がない。まるで小枝を扱うかのように、滅多打ちにしてくる宗治の猛撃を受けるので精一杯だ。こちらから打ち込もうにも、どうやって打ち込めばいいのかわからん。


『ふむ?宗治はどうしたのだ?何やら楽しそうであるが』


 お前暢気だな!?殺されんぞ!?


『いや?別に殺気はないから殺す気はないのではないか?ほれ、達也でいうところの・・・じゃれあい?』


”反応強化””反応強化””反応強化””思考加速”


「こんな凶悪な!じゃれあいが!あるかああああああ!」

「ほっ!?」


 ようやく宗治を引き剥がすことが出来た。必要だったのは力じゃない宗治の技術と速度に対応出来るものだ。


「ふむ・・・本当に武器を使った戦いが達也の得意分野ではないのか?」

「・・・はぁはぁ・・・そうだよ、俺は自分自身での戦いの方が得意だよ・・・ふぅ」

「それにしたってなぁ・・・まぁいい、そうだ、いい!さぁ!さぁ!さぁさぁさぁ!」


 喜喜として嬉嬉として鬼気として斬りかかってくる宗治、さらに速度・・・いや、これは・・・


「ほら、いくぞ!?旋風陣・壱の型・・・かまいたあああああちぃぃぃ!」


 俺の膝よりも低く・・・しゃがみながら宗治が突撃してきて俺の脚を薙ぎ払うように刀を横薙ぎにしてきたので、千那()で弾く、受け止めてはいけない気がする。


「そうだ!それでいい!」


 弾いた千那()を追いかけるように宗治の刀が追従する・・・よくわからんが、打ち合わせるのはまずい気がする。


「次だ!旋風陣・参の型・・・つむじぃぃぃぃぃまいぃぃぃぃぃ!」


 避けようにもどうしても刀で受け止めなければならず、仕方なしに弾こうとするも打ち合った瞬間、まるで磁石のように宗治の刀と千那()がくっついた。


『ぬ?これは・・・あ、やばい気がするぞ達也?』


 本当に暢気だなお前!?くっついた宗治の刀が溶けたかのように千那()にまとわりついてくる。錯覚にしても異常だな!?


「ほれほれほれ!?引き剥がさないと大変だぞ!?火炎陣・参の型・・・ほむらぁあああああ!」


 俺の目には宗治の刀が千那()に纏わりついたように見えるまま宗治が刀を跳ね上げてきた。腕力ではない何かで・・・これは冬華の合手か!?


「おとしぃぃぃぃ!」


 打ち上げられたと錯覚した俺は下に踏ん張ったせいで対応できなかった。いつの間にか刀は離れていて、宗治が俺に刀を振り下ろしていた。


「くっそ・・・」


 加速させている時間の中、ゆっくりと宗治の刀が俺を切り裂こうとするのを・・・千那()の柄、それも柄先で


「があああああああああ!」


 受け止めた、危ねえ!間に合った!


「ははは!いいな!今のを受けるか!・・・ぬ!?」


 柄先で宗治の刃を受け止めたまま・・・離さないように離せないように力を分配する。


『お?出来るようになったの?合手』


 冬華との手押し相撲じゃ一度も出来たことはないんだけど・・・千那の中に俺がいるせいか、細かい感覚を共有することで成功した。


「ははははは!今の一撃でつむじ舞を盗んだか!いいな!そうだ!それだ!いいぞいいぞいいぞ!」


 鍔で宗治の刀を回すように捻り宗治から刀を奪おうとするも、先に宗治の方から手を離してきた。


「つむじ舞は手を離されることに注意するんだな!ほれ!ほれほれほれほれほれ!」


 ただの刀では重力に従って落ちるだけだ、開放された刀を宗治は再度掴み、突きを連発してくる。


「はは!はははっ!よくかわす!よく動く!それじゃまず足だな!火炎陣・壱の型!」


 宗治が俺から一歩だけ距離をと・・・違う逆だ!一歩俺に近づいていつのまに!?


「かげろおぉぉぉぉぉぉ!」


 宗治の頭は見えるが刀が見えない、自分の体で死角を作るとか何だそれ!?


『ふむ・・・千那からは見えるから勝手に動かすぞ?』


「ばらいぃぃぃぃぃ―ガンッ!―・・・見えぬはずなのに止めるか!」


 勝手に千那()が動いて止めてくれたようだ。一歩下がると足を切り払ったかのように残心をした宗治がこちらを・・・楽しそうな笑顔で見てくる。


「楽しそうですね?宗治さん?」

「楽しいぜ!?お前は!?達也は楽しくないのか!?」

「あんまり、楽しくないよ?」

「そうか!まぁ関係ないな!次だ!旋風陣・五の型・・・粉塵隠」


 とうとつにテンションを落とした宗治が消えた。は?消えた!?


『・・・達也?対応せぬのか?』


 対応って・・・お前は見えるのか?


『なるほど、対象の個人から気配を完全に消す技か・・・こやつも本当に人間か?とりあえずほれ右に薙ぎ払え・・・今!』


 千那()に従って、千那()を右に薙ぎはら・・・「ほ!?」宗治が唐突に現れ地面に尻餅をついている。


「・・・どうやって気付いた?」

「・・・俺には裏技があるんだよ」

「対個人で見破られたのは初めてだ!」

「そうですか・・・まだやるの?」

「当たり前だ!ここからは奥義を使うしかないな!」

「え~」

「つべこべいうな!業火陣・猛火!」


 何の型とか言わないの!?宗治の刀が燃え始め、燃えた!?刀だよな!?


「燃えるのかそれ!?」

「ここに来てから出来るようになったのだ!いくぞ!業火!円舞!連撃喰斬れんげきくうざん!」


 いっぱい食べそうな名前だな!宗治が燃える刀を手の中で一回転させると炎が円の形で切り離され、それがさらに別れて合計8つの炎の円輪が出来、それぞれ俺を追尾しはじめた。なんだそれ!?


「お前こそ魔法使い・・・いや陰陽師じゃねえか!」

「いやいや、ここに来てから出来るようになったと言ったろ?ほれ?どうするんだ?」


 最初に到達した円輪をさけると地面に沈んで・・・地面が白熱して溶けてます。何℃あんの!?これ、千那()で受けたら溶ける?


『これくらいじゃ溶けはせんよ、たたっ斬ってやれ』


 まじ今日の千那半端なく役に立つな!残り7つの円輪をたたき斬ってやる。多少熱いが、千那()は無事だ。


「・・・達也の持つ刀も異常だな・・・そういえば千那かそれ?」

「あぁそうだよ、一応女だし斬るのやめる?」

「いやいや、そんないい()持って、何を寝ぼけておる?氷刃・烈牙王れっがおう!」


 今度は刀身に霜がおり、切っ先の先の地面が凍ってるし。魔剣?刀だから魔刀か何かかそれ?


「いくぞ!」


 こないで欲しいのですが・・・あれは受けてもいいの?


『暑かったから調度いいのではないか?』


 そういわれて思いなおし宗治の剣を避けることに専念する。間違っても千那()では受けないように。


「ほう!?知識もあるのだな!」

「さすがの千那でも壊れそうだからな」


 熱せられている物質にいきなり冷水をかけるみたいなもんだ。対応に気付いた宗治がまた動きを止める。まだあんの?


「・・・達也の方が冷めてきてしもうたな、ちょっと斬られて本気だそうぞ?」

「やなこったい・・・一応訓練のつもりなんだから殺し合いはしない」

「当たり前だ、殺し合いをしたいんじゃない斬りあいがしたんだ」


 斬りあい?殺し合いとどう違うんだ?


「おい、宗治?」

「少し本気にさせないとなぁ!?修羅・権能刀語(きりあい!」


 おや・・・?宗治の雰囲気がさらに変わって・・・めんどくさそう。


微妙なとこですが切ります。すみませぬ。

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