変な人
目の前の着流しの服を着て頭を後ろで縛っている武士だか侍だかわからん人を見る。あちらも気付いたようでこちらに声を掛けて来た。
「とりあえず斬ってよいか?」
第一声で変な人確定したよ。
「いやいやいやいやいや!?やっぱり変な人かよ!」
「失礼な小僧じゃな・・・やっぱり斬るか」
「何だこの人!?」
「それに、変な人といえば主もだろう?変な格好しおってからに、もしや流行の傾くとかいうやつか?」
俺が変な格好って、あぁ時代が違う人だから価値観も違うのか、当たり前じゃん。
「かぶく?・・・まさか戦国時代とかその辺の人?」
「だから変な人ではないというに・・・やはり斬るか」
「人斬りかあんた!」
戦闘狂とか言わないよな?何で俺は声掛けてしまったのだろう?今も俺を観察するような目で見ているし。何か視線が鋭い。
「小僧もそれなりに腕に自信はあるようだな?」
腕と言われても確かに文字通り肉体変化が武器ですけど。
「・・・刀とか武器には自信ない」
「その言い方だと素手・・・古武道か何かか?」
「いや・・・純粋な殴り合い?」
そう言った途端、鋭かった目が興味をなくしたかのように手元に落ちた。え?俺が悪いの?いやいや、俺は戦闘狂ではありません。
とりあえず自己紹介くらいはしてみるか。
「俺は如月達也と言います・・・名前伺ってもいいですか?」
先に名を名乗ったのが良い方向に効いたのか、出で住まいを正して侍っぽい人は挨拶を返してくれた。
「あっしは奥寺宗治だ」
あっし・・・まぁ人それぞれか、見たところ俺と同年代に見えるけど・・・まぁ昔の人の一人称なんて知らないわな。名前はわかった、後確認しておきたいのは
「そうですか・・・えっと、この魚人は奥寺さんが?」
「宗治でいい、あっしも達也と呼ぼう」
「いきなりですね?宗治さんが「宗治でいいと言ったであろう」・・・宗治が斬った・・・まぁ見ればわかるんですけど」
この場に生きてるの宗治しかいないしな。
「確かに見たまんまだな」
やっぱりか、よし・・・戻ろう。
「そうですか・・・では、これで失礼」
「まぁ待て」
止められてしまった、全力で逃げるか?・・・いや、逃げたとして捕まった場合に宗治が悪人で強者だったら面倒なことになりそう。相手の出方を伺って・・・
「お主仲間おるだろ?」
あれ?やっぱりここで一戦交えといた方がいいかな?
「ほう?」
俺の変化を感じとったのか、宗治も刀に手を添え・・・一触即発の雰囲気が出来る。
しばらくにらみ合いが続いたが唐突に宗治の方から力を抜いた。
「無理だろ」
「・・・無理?」
勝てないと言う意味だろうか?
「あぁいやあっしの独り言だ。というよりそう身構えるな、別に危害を加えるつもりはない、あっしも同行させてもらえんか?」
さすがに素性の知れぬ方を同行させるのはな。
「それこそ無理ですけど?」
「そう言うな、目的地はあるのか?」
「・・・いえ、気ままな旅ですね」
優奈達も戻ってこない俺を心配してなのか好奇心かは知らんが、様子を見に来て・・・宗治も気付いているなもしかして
「感知系?」
「む、なんだ?」
感知系で強そうって面倒なタイプだな。
「いえ・・・宗治は目的はないんですか?」
「ないな、つい最近までいた村も追い出されて・・・いや、別に悪さをした訳じゃないぞ?」
追い出されたと言われて、思わず身構えたら宗治が身の上話を話し始め・・・なるほど村長の気持ちもわからんでもないが・・・最大戦力を一時の感情で村から出すとか・・・いや、別にいいけど。まぁ今の話だけで判断は出来ないけど、追いかけられるようりは目の届く範囲がいいかな、とりあえず優奈達に聞いてみるか。
「なるほど・・・わかりました。一応仲間に聞いてみますけど、女の子が多いので・・・」
ってあ・・・何で俺は構成メンバーの情報出してんだよ、宗治笑ってやがるし!
「何笑ってるんですか、はぁ・・・まぁ女の子が多いのでおっさんなんて嫌!とか臭いから嫌!!とか言われたら諦めてくださいね?」
意趣返しのつもりで世のおじさんが気にすることを言ってやる。おーおー慌てだした。といっても宗治はそんなおじさんには見えないけど。
「待て!?臭いとは何だ!?」
「年頃の娘はそんなもんですよ」
そのうち一緒にいるのも嫌!とか言われるんだぜ?優奈達に言われたら・・・死のう。あ、駄目だこの視点は怒られる視点だった。だ、大丈夫だよな?とりあえず宗治に断ってから優奈達の方へ向う。
優奈達は冬華に止められたのか、宗治が見えない位置、でも俺には感知出来る距離にいた。
「あ、たつくんおかえり~、どうだったの?千那ちゃんと冬華さんがこれ以上は近づいちゃ駄目っていうから」
「そうだな・・・なんていうか、俺くらいの青年が向こうにいて魚人達を一人で殲滅してた」
「それで、その人はどうしたの?」
「俺達と一緒に旅をしたい・・・って言うんだけど、俺だけ決められないから戻ってきた」
「ん、なかまふえる?」
「かもしれないってことだ。志乃達が嫌なら断ってくるけど」
「そうねぇ・・・見たこともないのに拒否するのも失礼よね?」
「それは何とも言えない」
「達也の見る限り危ない人ではないの?」
「それも何とも・・・魚人と戦ってるのを見たわけじゃないから、強さも正確にはわからないけど・・・かなり強いとは思う」
「達也が言うならそうなんでしょうけど・・・話合うまで待てるなら乱暴な人でもないんでしょ?」
「う~ん、何とも?」
「ヂヂヂヂヂヂ」
「そうだな、冬華の言うとおりだ、とりあえず会ってみればいいだろ?」
千那も冬華達の言ってることがわかるらしい、とにかく会えばいいと言うのは、まぁ賛成だ。とりあえず宗治の元へ戻ることにする。
宗治のところに戻ってくると・・・何故か褌一丁になった宗治が川で水浴びをしていた。暖かくなってきたとはいえ、半そで短パンとか馬鹿のすることだ。俺は戦闘の時だけだ!
「「きゃ、きゃーーーー!?」」
「ん、さむくないの?」
「し、志乃!見ちゃ駄目よ!」
3人娘、1人は2人に抱えられるように逃げていった。
千那はマジマジと見て一言。
「達也?ああいう下着の方が良いのか?・・・なぜ叩く」
馬鹿言ってんじゃねえ!そりゃ昔は褌の女性もいたかもしれんが・・・パンツがあるならパンツを履けばいいだろ!
いや、そんなことより宗治だ、寒中水泳にでも目覚めたのかこいつ?
「何やってんだ宗治?」
宗治に呆れていると、褌のまま宗治は俺の方を見て・・・待て、何でお前が呆れた目をする?
「な、なんだよその目は」
「いや?女子供は・・・まぁともかくとしてまさか獣趣味があると「ブッコロスゾ!」・・・なんだ違うのか?」
宗治に怒ると、傍にいた冬華と雪、蒼が俺の発言が不服なのか襲って・・・噛むな!
3人との格闘のすえ勝利した俺は、宗治に服を着させ3人娘を呼び戻すまで多大な労力を支払った。疲れた。
「なんか、達也、疲れておらんか?」
「誰のせいだ!」
「あっしのせいにされても?」
今は焚き火を挟んで宗治と対話をしているところだ。優奈と美香は俺の後ろに隠れているけど、隠れるなら冬華の方がいいんじゃない?二人分くらい軽く隠せる横幅ッグホ!?ぐぐぐ、勘がいいやつめ。
「ん、そうじはなかまになる?」
「そうだな、志乃はあっしを仲間にしてくれるんで?」
「ん、別にいい」
「おぉそりゃありがとうよ」
宗治が志乃を撫でようとするが、志乃はそれを避ける。
「・・・志乃、仲間にしてくれるんじゃなかったので?」
「ん、なでちゃだめ、なかまはいい」
「・・・達也、お主・・・」
「何で俺を残念な奴を見る目で見る!」
「ん、たつなでて?」
「え?この状況で?」
「なでて?」
「はい」
宗治の目がさらに・・・ええい、志乃に好かれなくて残念でしたね!
志乃が認めたからか、優奈は持ち前の人見知りのなさですぐに宗治と仲良くなっていた。美香は適当な距離をとっているみたいだが、とりあえずは文句はないようだ。冬華達、獣人組も問題ないみたいだな。
「達也?千那には確認しないのか?」
「千那も文句ないだろ?」
「ぬぅ・・・それでも聞いて欲しいのだ」
「わかったわかった、悪かったよ」
どうも、生まれたばかりなのか、構ってやらないとすぐ拗ねるなこいつ。元魔王のくせに。
夜の見張り番は俺と宗治になった、なぜか千那もいるが膝の上で丸くなるな。別に夜番は必要ないんだけど、まぁ話を作る機会が欲しかっただけだ。ワニ騎士達を見送り・・・宗治が目を丸くしていたのは面白かった。
「今のは物の怪の類か?なんていったか?陰陽師の式神とかいうやつか?あっし初めてみたぞ?」
「ただのぬいぐるみなんだけど・・・まぁ式神みたいなもんか」
「なんと、美香は陰陽師であったか」
「違うようなそうなような?」
「それで?達也は何が聞きたいのだ?」
「ん~、いや旅に何でついてきたがったのかなと」
「ふむ、達也はあっしの体に気付いておるのか?」
「まぁ、さっき訓練ついでに宗治見たら気付いたというか何と言うか」
感知強化を夕食後練習していたのだが、ふと宗治を見てみたら、全身が・・・何か黒いモノに侵されていたのが感じ取れた。どうやら心臓あたりから発生しているようだが、あれは何だろうと思ってはいた。病かどうかはわからない、もしかしたら宗治独特の力なのかもしれないと考えてはいたが、この様子だと病の方か。
「達也の察しの通り、あっしの体は病に侵されておる」
「一応治療できるかもしれない薬や治療法があるけど?」
神水薬のストックはないが、高品質ポーションと俺の白腕があるけど。
「さっき優奈にちぇっかーくんなるもので調べてもらったよ、どうにも薬で治るものではないらしい」
「あぁだからさっきションボリしてたのか」
一緒に寝ようとも言わず落ち込んだままテントに入っていったけど、そういうことか。健康チェックは欠かさないのな。
それにしても優奈の薬で駄目か、持病系は回復出来ないとかかね?ん?ケーナのは回復したよな?柳のおかげってのも大きいとは思うけど。
「なんで達也まで落ち込むのだ、あっしは別に治してくれとは言っておらんだろ」
「一応・・・俺も治療出来る腕、文字通り腕があるんだけど試してみるか?」
「ふむ、まぁ達也が納得出来るならすればよかろ」
自分のことなのに、達観してる奴だなぁ。”右腕変化 白”俺の右腕を凝視する宗治をよそに心臓上あたりに右手をあて・・・
「・・・弾かれた?」
「ふむ?駄目そうだな」
何だ今の?右手を当てる前に弾かれ・・・いや、右手が勝手に拒否した?触れるのを?
「いやいや、もっかい!」
「・・・往生際が悪い奴だ」
もう一度左手で抑えつつ、ぬ・・・駄目だ、近づけることも困難になって・・・あ、変化が解けた。触れた。
「ふむ、お主の右手は変異しとるのか?」
「俺の能力で、治療用の腕なんだけど、宗治の治療は無理そうだ・・・すまん」
「だから、あっしは期待して・・・いや、言い方が悪いな。あっしとしては自分の病には十分向き合った、余命少ないことは自分だからこそわかるのだ。達也達が気にすることじゃない」
むしろ気にされるのは不愉快だとでも言いたげだ。死ぬのが確定してるのにこちらに気を配るとか、俺には想像・・・いや、出来るわけないし、それこそ不愉快に思われるか。
「じゃぁどうするんだ?旅に同行するのは決まったことだけど、どこか行きたい所とかあるのか?」
「いや、そもそもここは別の国らしいからな、達也達も位置がわかっておらんのだろう?」
「まぁ・・・そうだけどね」
「それに旅に同行したいっていったのは何となくだ。その内いつの間にか居なくなると思うぞ」
「はた迷惑な」
いや、死に際を見られたくないのはわかる。お互い思うところはあるが、苦笑するに留める。別に宗治は死にたい訳じゃない。治療は諦めてるが、生を諦めてないなら俺から何か言う必要はないな。
「そうだな、刀を持っている身としては、出来れば自分の望む形で死にたいものだ」
「というと?殺し合いとか戦いの中で死にたいとか?」
「いやいや、あっしは殺し合いも争いも、それこそ人殺しは好みはせん」
「・・・じゃぁなんだ?刀を託したいとか?」
「それはなくもないがな・・・(あっしがしたいのは斬りあいだ)」
何か小声で、俺の強化した聴力でさえ捉えることが出来ないほどの小声で宗治が何か言ったが、聞き返しても答えてくれなかった。




