第六感
「ふむ、とりあえず首だけ切ればいいのだろう?」
巨大蛙の動きを黒い糸で封じつつ、千那が確認してくる。いいんだが、あの巨体を拘束できるって強度凄いな。感心した俺に気をよくしたのか調子に乗り出した。
「ふふん?このまま生きたまま解体も出来るぞ?」
「やらんでいいわ」「アイタッ!?」
頭を叩いて止める、女の子は殴らない主義だが、俺の何かが宿っているせいか自分に突っ込んでる感じなのでノーカンだノーカン、そもそもこいつ性別あるのか謎だ。
「そもそもお前痛みないだろ?」
「何を言うか!乙女は心を痛めるのだろう!?」
「中途半端な知識すぎて、何が何だかわかんねえよ」
違うのか?とぶつぶついいながら放置していた蛙型の首を落とす千那。言ってることとやってることの差が凄まじい、乙女が悩みながら巨大蛙の首を落としている。
「シュールすぎる・・・」
「たつくん蛙さんお薬になるって本当?」
「そんなことを本で読んだ気がするんだよ、まぁチェッカー君で調べられる限り調べたらいいだろ?急ぎの旅じゃないしな」
「それにしてもおっきいね」
前に真っ二つにした蛙と同じくらいか。前のは川にそのまま流したから何も調べなかったんだよな。蛙といえば、薬局の前に置いてあったくらいだし何か薬になる・・・と思う。
今いる位置は雨と川のせいで湿地になった手前だ、明日は湿地に沿って北にいって川に接したら異空間で向こう岸にいく予定だ。
あくまで手段は予定だ、志乃の状態による。無理そうなら筏でもなんでも、それこそ一時的に川をせき止める・・・水を吹き飛ばして、駆け抜けるとか。出来る出来ないかはともかくとしてだ。とにかく志乃の負担にならないように気をつけよう。
とりあえず、湿地帯からはぐれていた巨大蛙がいたので、ふと薬の材料に使えるんじゃね?と思って千那に仕留めてもらったところだ。
そのまま千那に皮を剥いで貰い、滑ってる・・・油?気になったので、優奈にいって皮についていた液体を調べてもらう。
「う~ん、切り傷とか・・・止血には使えるだろうけど、薬としては今イチ?どちらかと言うと、手入れとか油そのものとしての用途が多そう?」
「油・・・燃えるのか?」
「そのままじゃ燃えないみたいだよ?」
「まぁ、そりゃそうか・・・食用油とか燃えるわけじゃないからな」
「そうなの?」
「そうだよ・・・優奈?頼むから火力足りないからって焚き火に油投入して爆発させるなよ?」
「し、しないよ!?」
目を逸らしながら言うんじゃねえ、やった後かやる予定だったか知らんが優奈に料理は水と油な気がする。あ、上手いこと言った。
「達也?何か馬鹿なこと考えてるみたいだけど、千那が待ってるわよ?」
美香に言われて思い出し千那の解体を見た。終わってた。何か綺麗に皮が剥がれているんだが、血とかどうなってんだこれ?
「うむ、我ながら素晴らしい出来栄え!」
「あ、あぁ・・・これ血とかなかったのか?」
「いや、あったぞ?」
「いつの間に抜いたんだ?」
「抜いたというか、吸い取った」
「吸い取る・・・そんなことも出来るのか千那」
「ふふん!これでも魔王だからな!」
元な・・・何だよ?そんなキラキラした瞳で見つめられても・・・褒めればいいんだろ褒めれば。
「おーよしよしよしよしよし」
「ぬ、ぬぅ?達也の愛情表現は過激なのだな」
「・・・少しは照れろよ」
「なに!?ここは照れるところだったのか!?」
顔と頭を揉みくちゃにしたのに何で嬉しそうなんだよ。俺の方が照れて止めてしまった。
何か不服そうだが、雪とか蒼ならともかく人型は恥ずかしいんだぞ?
「なら何でしたのよ?」
「怒るかと思って」
「なぜ、怒るのだ?達也の世界では一般的な愛情表現なのだろう?」
「知識が中途半端なせいで羞恥心がなくなっている!」
「それより、もうしてくれるのか?」
止めろ!見た目美少女中身、魔王+俺とか誰得だ!上目遣いを止めろ!
「むぅ、まぁよい、それで優奈?ちぇっかーくんとやらは終わったのか?」
「千那ちゃんが血抜きもしてくれたから調べるの簡単だったよ」
「優奈、内臓系は大丈夫なのね」
「うん、命を奪って利用させてもらってるんだもん、感謝の気持ちは忘れちゃいけないよね!」
「そういう意味じゃないんだけど、間違ってないから何も言えないわよ」
「とにかく、使える部位はあったのか?」
「ん~殆どが食用にも微妙だったけど、毒袋と石くらいかな?薬に使えるの」
「毒に石?」
「うん、毒の方はまぁ、酸性?溶解液っていうみたい。加工とかにも使えるかな?石の方は削って水に混ぜると解熱効果があるみたい」
「んじゃ、それだけ取り出して・・・取り出したのか」
見れば毒袋と思わしき部位とピンポン玉程の黄色い石を優奈が、異次元ボックスに仕舞っていた。
相変わらずと言うか、とことん冒険者に必要なことは出来るんだな。料理もある意味必須だと思うんだけど。
「ん、たつ今日はここで寝る?」
「日も暮れてきたしそうしようか」
結局湿地帯に出来た川はそのまま南の方に流れて支流となったらしい。こうやって自然が出来上がっていくのは見ていて面白いな。ゲームとかだったら1年が1秒とかだったりするけど、現実じゃぁ変化をそうは拝めない。
南の方は岩場、乾いた大地だから何年かしたら緑豊かな地になったりするかもな。
「薪は一杯あるから困ってないけど・・・ここら辺は全部腐っちゃってるね?」
「チチチチ・・・」「クルルル・・・」
「そんな落ち込まないでも、確かに最近まともな薪拾えてないけどさ」
自分達の仕事が出来ないと落ち込む二人、まぁこんだけ時化っていたら仕方ない。
「薬の材料になりそうな・・・なさそうだな」
「う~ん、ここら辺いったい植物自体が駄目になってるね。湿地に対応した植物が生えるまでは無理そう・・・たつくんどうしたの?」
俺は驚愕が止まらない、最近の優奈は何と言うか・・・そう
「優奈がまともなことを言っている!」
「な、なにおー!?」
することもないので見回りだけして野営地に戻ることにした。そのまま何もなく次の日を迎えた。
さて、川に接してるとこまでは来たけど。志乃の様子は・・・問題ないように見えるけど、巨人型の腕を切った後の夜を考えると・・・袖を引かれた。
「ん、たつ、これみて」
志乃が両手を掲げると両手の先にそれぞれ一つずつ異空間が現れた。・・・おう?二つってことは短距離?あぁ問題なく出せるってことか?
「ん、ちがう・・・こっちは閉じれる、こっちは閉じれない」
「うん?もしかして異次元ボックスみたいにしたのか?」
「うん」
つまり、物体が通過中は閉じることが出来ない異空間を作ったってことか?確かにそれは凄いが、二つ同時に起動してないか?
「ん、レベル3になって2つ開けられるようになった」
「そっか・・・これ、二つに違いはあるのか?」
「閉じれるのギザギザ、閉じれないのキッチリ」
「お、おう?」
志乃に促され皆で観察する。はい、違いがわかる人ー?全員首を振った。志乃さん志乃さん違いがわかりませんよ?
「ん、ちゃんとみる!」
どうやら拘りがかなりあるようだ、まぁ自分のトラウマ克服の為に頑張った成果を見せているんだから気持ちはわからんでもない・・・でもな見た目に違いは・・・見た目?
”気配察知 強”
違うな・・・気配じゃわからん、感知系・・・両目変化・・・違うか?感知・・・素直に”感知強化”おお?これは第六感とかいうやつか?それを視覚化したものだろうか、俺の目・・・違うな新しい五感、つまり第六感という感覚器官?ややこしいな!?まぁそんな第六感には世界が違って映る・・・というか感じる?が正しいか。
見ているわけじゃないんだけど、目に映るような気がするというか・・・えっとなんだこれ?
「ふむ・・・達也がまた人間を辞めおったぞ?」
「どういうこと千那ちゃん?」
「言葉通りだな、こやつ本当に人間か?」
千那達の声も耳で聞いているというよりは感じるというか、せ、説明難しいですね?
視線を川にやると所々に色が違っているように感じる、多分あのあたりに何か、魔物やら魚がいるんじゃないか?仲間達を見渡しても誰が誰かとはわかるが、顔の詳細がはっきりしない、顔どころか服装や身長といった情報が見当たらない、わかるのはそれぞれが持っている力の大きさ、やたら優奈のがでかいのは見なかったことにしよう。元魔王様より大きいですね。
それに空気中を漂うモノが多いな、目に見えないことから力を持った何かとしかわからない。そういえば力と言っているが・・・名称決めた方がいいかね?それこそ魔力とか生命力とか、まぁ今はいい。
「ん、たつが・・・おかしくなった・・・・・・元から?」
「し、志乃ちゃん!そうだけど!駄目だよ本人に言っちゃ!」
「優奈も大概だと思うわよ・・・どっちの意味でもね」
「みっちゃんひどい!」
「ヂヂヂヂヂヂ」 ―パンッ―
痛っ!?えっとこれは冬華か、冬華に叩かれたが・・・さっさと戻れってことか?戻るのはいいが当初の目的をっと。
ふむ、確かに左手側に出てる異空間らしき力はギザギザしているな、右手のは安定してるという感じだ確かにキッチリしてる。つまりあえて不安定にして物質が通ってる最中でも強制的に閉じられるのがギザギザしている、多分不安定だからギザギザしてるんだろうな。そんで、きちんと安定させて事故暴発を防ぐ何かを設定してるが為に安定していてキッチリ固定されていると。なるほど。
”肉体変化 解除”消耗は・・・ないな、慣れない感覚に気疲れした程度か。
「わかった、左手がギザギザ、右手がキッチリな?」
「ん、そう!」
滅茶苦茶嬉しそうに抱きついてきた。ってわー!?ギザギザは安定してない為か動きまわってるよ!?
「ん、あぶない消す・・・」
「と、とにかく良く頑張った、偉い偉い」
「ん、もっと」
気が済むまで褒めてやった後、本番に入る。とは言っても志乃と俺しか感知できないキッチリ異空間をあけるだけだけどな。
「ん、あけた」
志乃が手前に異空間を開ける、遠くに・・・志乃曰くギリギリだったそうだが川の向こうに黒いものが見える。
”感知強化”
「よし、キッチリしてる、じゃぁ俺から通るから順次通ってきてくれ、最後は冬華と志乃な?」
「ん」「ヂヂヂヂヂ」
二人が頷いたのを見て蒼と一緒に通る。
一瞬の視界がぶれる感覚を我慢して、目を閉じることなく向こう側にたどり着いた。
”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知””範囲強化”
蒼と一緒に周囲の気配を探る・・・あ、やべ誰かいるわ。
複数の気配が林の向こうにあるな、どんどん減ってるけど。
「たつくんどうしたの?向こうに何かいるの?」
「ん、あ、あぁ・・・全員こちら側に来たか?」
「ん、たつ無事についた」
「そうだな」
今日の志乃は感情表現豊かだな、撫でてやると嬉しそうだ。俺の意識は林の向こうの・・・誰かといったのは人がいることがわかっているからだ。多分その人が魔物を殲滅しているのだろう。キエエエエエエイと言う声が聞こえるし。一瞬猿の鳴き声かと思ったが、そうじゃなさそうだ。
「達也?何か聞こえた気がするのだけど・・・」
「ウッキー?って聞こえたよ?」
「ん、ゆうなおさるさん?」
「どうだろうね?」
「いや、人が林の向こう側で戦っているみたいだな」
「何とよ?」
「それは・・・わからん」
「そう、それでどうするのよ?」
「様子だけでも見に行くか・・・俺一人でとりあえず見てくる、冬華、千那ここは任せたぞ」
「ヂヂヂヂヂ」「了解だ、達也」
林を抜けると、結構な量の魚人の死体と・・・刀を振り回していた侍がいた。どうも、俺が到着した時に斬ったのが最後の魚人だったらしく、今は鞘に収められているようだが。
着流しの浴衣みたいな格好で、笠を片手に魚人に手を合わせている・・・髷だ、ちょん髷だ。いや、後ろで縛ってるだけだからちょん髷じゃないか。とにかく見事な額を見せている・・・あ、気付かれた?
変な人じゃないといいなぁ。




