表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/149

覆す

「それじゃ達也兄さん、ボードルさんお世話になりました」

「帰ったらこと姉に報告して」

「「暇が出来たらまた来るね?」」

「うん・・・おねえちゃん達気をつけてね?」

「「ケーナまたね?」」

「うん・・・」


 ケーナは遥にしがみついていたが、柳に促されたのか離れる。

 

 朝早くから東門にいる俺たちは双子の見送りだ。頭が痛くなったりはしてないけど、鹿肉とキノコの煮込み料理を食べたあたりから記憶がないんだよな。やはりあの舞茸もどきは・・・「関係ないわよ?」現実逃避だ料理のせいじゃないのはわかってるよ。


 とにかく、双子は俺たちに別れを告げてこと姉のところに帰っていった。その際に何度も必ずこっち来てね?と催促されたが・・・まぁこと姉に一度会うのは悪くないだろうな。




 

 泣きつかれたのか寝てしまったケーナをボードルさんに頼まれ家まで送った。まぁ離してくれなかったらから仕方ないけど。


 今日はエネ婆ちゃんところはお休み~と優奈は言うのでケーナの家に全員で行く。途中で町の人と思わしき人に箱を渡された。


「おぉ英雄殿!町の特産の葡萄です。ちょうど取れたばっかりのものなのでどうぞ」

「え?いいんですか?」

「なんのなんの、数はありますでな・・・それに取引相手もおりませんし、ワインにする以外の物は捨てなきゃいけません、保存が効くものではないので良かったらどうぞ」

「そうですか・・・では、ありがたく頂きます」


 干し葡萄とかはメンドクサイのだろうか、それより先ほどの人の呼び方に驚いた。まだ英雄殿という言い方する人がいるのか・・・それに何処かで見たような気がするんだけど・・・まぁ結構長いこといるしすれ違って印象に残っていたのかな。

 ケーナと木箱を抱えていたが、冬華が木箱の方を持ってくれた。まぁそんなに入ってないんだけど。





「あらあらケーナはやっぱり泣き疲れましたか・・・すみませんねタツヤさん」

「いえ、マーサさんむしろきちんとお別れを言ってくれて安心したくらいです」

「そうですねぇ・・・今日はどうなさるのですか?」

「特に用事ないんで・・・ケーナが起きるまではいてもいいですか?急に離れると怒りそうですし」

「それはまぁ、ありがとうございます、今お茶の用意をしますのでどうぞごゆっくり」

「あ、手伝います」

「ではお願いしようかしら美香さんには料理について聞きたいことあったのよ」

「じゃ、ちょっと行ってくるわね」


 ケーナをベットに運び柳に起きたら教えてくれて頼み居間に戻ると木箱を優奈達があけていた。一緒になって中を覗くと、なるほど葡萄だ・・・葡萄モドキではなく、ワインを作るって言っていたから葡萄なんだろう。


 一応もらいものはチェッカー君で検査することにしている。失礼かもしれんが、用心に越したことはないからな。表示されたのは【アルランで生産されている特産品、見た目通り葡萄。地球で作られているものと何も変わりない無害な葡萄・・・】と書かれている。相変わらず優奈の機械はどうなってんだ・・・呆れながらも画面を見ていたが、スクロール出来ることに気付く。


 効能でも書いてあるのかとスクロールさせる表示を見る【胃の中に入ると毒性に変わるので注意が必要、観賞用?】と書かれている・・・は?


 すぐに顔をあげると優奈があーんと一粒食べ・・・


”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強”


 とにかく強化をかけ優奈が食べたものを吐き出させようとテーブルを飛び越え・・・だめだ飲み込んでる!


「え!?え!?たつくん!?」


 優奈が驚いているが・・・いや、どんどん顔色が悪く・・・


「え・・・ご・・・た・・・つ・・・」


 崩れ落ちそうになった優奈を床に降ろす、焦ったせいか床に頭を打ち付けそうになったが冬華が支えてくれた。どうやら冬華も表示を見たようだ。冬華はおもむろに優奈の腹に手を当ててなにやら衝撃を与えた。


 だめだ、優奈が動いてない異物を吐き出させるだけの機能が・・・体に・・・つまり・・・死んで。


 ふざけんな”右腕変化 黒 液状化”右腕を黒に液状に変化させ優奈の口に突っ込む。冬華が驚いたように見ているが、気にしていられない・・・喉を通り・・・液状の腕から感覚を通して袋みたいなところにたどり着いたが・・・なんだこれ・・・ぐ・・・胃の中に入った葡萄は毒を発揮するとあったが・・・まさか揮発性か?液状化してる腕を通して何かが浸食しようとしてくる、それを無視して袋の中にあった固形物を根こそぎ腕に取り込み優奈の体内から腕を引き抜いた。


「ヂヂヂヂヂ!?」


 取り込んだ腕を戻そうとしたが・・・戻すと毒を出しているらしい葡萄も一緒に排出してしまうだろう、腕はそのままに・・・オサエラエルダケ、オサエヨウ・・・頼んだ、とにかく優奈だ。


 ”左腕変化 白”俺のすることを察した冬華は優奈の胸元を引き裂いてくれた、脱がす時間なんてない、露になった乳房の上・・・心臓あたりに左腕を置き、繋がりを作る。


 受け入れ側の気持ちの問題なのか一瞬で繋がりを作れた、白炎の時よりも双子の時よりも太く繋がりを作ることが出来た。それを通して優奈の体に生命力とか力とか言っていられない。自分自身を流す感じで優奈と繋がる。




―たつくん?―


 よし、まだ・・・かろうじて生きてるな?とにかく毒らしきもんは俺が全部回収する。どこが苦しいかわかるか?


―駄目だよ・・・神水薬エリクサーもエネ婆ちゃんのうちだもん、たつくん死んじゃう―


 そういや、そんなの出来たと言ってたな・・・まぁ安心しろ優奈の回収したら急いで取りに行くから。いや冬華が取りにいってくれたみたいだぞ。


―ううん、どちらにせよ・・・私の体はもう動かないし死んじゃうと思う―


 何言ってんだ、とにかく苦しいとこは・・・あぁもう片っ端から取り替えてやる!


―たつくん・・・死ぬのやだよぅ・・・でもたつくんが死ぬのはもっとやだから・・・ごめんね・・・あれ?切れないなんで?―


 うむ・・・繋がりを勝手に切ろうとしてもさせないぞ?勝手に諦めるな馬鹿娘!


―馬鹿ってなにおー!?たつくんが死んじゃうよ!?毒取り除いたって私はもう体は死んでるよ!?―


 だから全部取り替えてると・・・男女が逆になったりならんよな?


―ええ!?私が男になっちゃうの?そしたらたつくんと恋人になれないよぅ・・・やだぁ!―


 ええい、男女が入れ替わるなら別に恋人になれるだろ!


―あ、そっかぁえへへ・・・でもみっちゃんと志乃ちゃんに悪いよぉ・・・―


 んな心配する余裕がよくあるな・・・まぁ痛みもこっちで引き受けているけど、痛みはない毒なのか。苦しさがあるくらいで力が抜けていく感じだが・・・ぐぐぐぐ。


―・・・えへへ、たつくん大好きだったよ・・・じゃあね―






 左腕を心臓の上から離し、寝てしまったらしい優奈の顔を撫でる・・・呼吸はしてるし、成功したみたいだ。俺がしたのは、自分の生命力やら何やらを優奈に流し、代わりに優奈から侵され続けていた生命力を受け取る・・・やれた俺も驚いたが、そんな感じで左腕を通して体を交換した感じだ。

 

 結果優奈はほとんど死んでいたが、蘇生に成功し・・・毒に侵され肉体変化で抵抗を続けている俺が残った。


 だけどまぁ・・・人一人に生命力渡して、毒を受け取ったのはさすがに無理だったらしい。いつのまにか床が目の前にある。痛みがない・・・カッテニシヌナ・・・いや~もう打つ手が・・・いや冬華が戻ってくるまで生き残れれば・・・ムリダナ・・・そうか・・・ベツノホウホウガアル・・・ほう・・・トリアエズ、ウケイレロ・・・仕方ねえなぁ。






 優奈が葡萄を食べて倒れ、達也が黒い右腕で優奈の口に突っ込み取り出し、白い左腕で優奈の胸を揉んだあたりで美香が騒動に気付いて居間に来た。


「え!?なにこれ・・・優奈!?どうしたの!?達也!?」

「ん・・・みか・・・これ」

「チェッカー君?・・・え?毒?え?優奈食べちゃったの!?」

「・・・うん」

「それで達也が何かしてるのね・・・大丈夫なのかしら・・・」


『オイ、クロカミ』


 誰?志乃の脳裏に思念が飛んだ・・・頭が痛い、でも大事なことらしいので我慢する。


『マオウノカク、オマエガモッテタナ?』


 痛む頭で頷く。


『ソレヲ、コイツニワタセ』


 頭が痛い・・・わかったと、志乃は異次元ボックス・・・達也が志乃一人では入っちゃ駄目と言われているボックスに入る。後で怒られるのも構わない。端っこに転がっていた黒い珠を志乃は持つ。「おお?ようやく我と話す気になったか?」何か喋っているが無視して異次元ボックスから持ち出す。


 異次元ボックスから出てくると達也が倒れて・・・口と鼻から血を流しつつ・・・今にも死にそうになっていた。美香が泣きながら血を拭っているが、どうしようもない。


『気付くのが遅れました!・・・効果は薄いと思いますが、癒水しすい!くっやはり効果が薄い!』


 柳がケーナのいた部屋から出てきた、回復魔法をかけてくれるが効果が薄いらしい。


『クロカミ、ソノカクヲ、コイツニクワセロ』


 食わせろと言われても・・・口に入りそうにない・・・食べられるとも思えない、達也の酷い状態に志乃も動揺しているのか、いつもの潔さが発揮されていない。


『待ちなさい!シノ様!?そいつの言うことに耳を傾けてはいけません!』

『ダマレシロヘビ、ダイジョウブダカラ、ソレヲコイツニ』


「ぬ、何で我をこんなにした奴が死に掛けているんだ?いや、こいついつも死に掛けてないか?」


 また珠が喋りだしたのでうるさい!と志乃は地面に落とした。


「ぬお!?割れやすいのだから、乱暴に扱って欲しくないのだが・・・ぬっ?」


 志乃が落とした珠はそのまま達也の元まで転がり・・・転がった勢いで達也に吸い込まれていった。






「ふはははははははははははははは、あははははははははははははっげほげほ・・・むせた・・・ともかく!人間とは馬鹿だな!我を取り込むとは・・・普通の核なら確かに力しかないが魔王である我は違う!魔王は何度でも蘇るものなのだ!何か知らんがこいつ死にかけではないか!・・・ぬぅ体を治すのに大分力を使いそうだが、致し方あるまい。とにかくこの体は貰った!」


 ・・・ヨクシャベルヤツダナ・・・


「な、なんだお前は!?」


 ・・・ダマッテ、トリコマレロ・・・ジカンハソウナイ・・・


「ふ、ふざけるな!我は魔王で・・・いや待てその気配あの時の・・・」


 ・・・テアラニナル・・・ハヲクイシバレ・・・


「ま、待て待て!我を・・・我をどうする気だ!・・・あ・・・あ・・・あああああ」


 ・・・アキラメロ・・・サッサトナオス・・・







 

 おや?何故か回復しはじめたな・・・いや、毒と今だ戦っているのか。口にたまった血を吐き出す。すぐさま手が口元を拭ってくれた・・・目があけられないし耳は聞こえないが、どうやらまだ死なずに済んだらしい。白炎の核を取り込んじゃったかな?と思ったが、弱弱しくも反応があるな・・・まぁギリギリまで絞りとったみたいだが、許せ白炎。俺が死んだらお前も死ぬんだろ?


「暢気なものだな!我を取り込みおったのに!まだ死にかけか!」


 脳裏で叫ぶな今度は何だ。は?魔王?あぁ千の芸を持つなんとかっていう・・・あぁあの珠って魔王の核だったのか・・・いや、核って力の源であって意思はないんじゃなかったのか?


「ふはは!魔王にそんな定石が当てはまるか!死ぬ間際に核に残りの全てを積み込んだのだ!」


 ・・・イタスギテ、カラダヲマルメタダケダロ・・・


 あぁなるほどね・・・まぁ助かったのはお前のおかげだし、礼を言うよ。ありがとう。


「ふ、ふん!お前が死んだら誰が我の体を用意するというのだ・・・べ、別にお前の体でもいいけどな!」


 悪いが、そう簡単にあげる訳には・・・ん?


「志乃・・・黒塊出してくれ」

「・・・うん」







「あぁ本当に何で死なないのですか?娘の方も蘇生してしまうし!お前はどこまで神に逆らうつもりなんです?」


 何か白い衣・・・顔が光っていて見えないな・・・そいつがいつの間にか部屋にいる。こいつは手寅と同じくらいどうしようもない感じがするな。志乃から黒塊を手探りで受け取る。


「かくなる上は・・・私が直接手を下してあげます、ありがたく思いなさい」


 何でもいい・・・とにかく防げ”肉体変化”目も開けられるようになってきた白い衣の声も聞こえるようになってきた・・・あと少しだ。


「愚かにも神の領域に手をかけようとしている愚か者よ・・・主に変わり‐---が粛清をする、消え去れ!」


 白の衣が俺に手をかかげ、俺はようやく片膝をつき黒塊を握る。白の衣の手から光が放たれ、俺はそれに合わせるつもりはなかったが、黒塊を下から掬いあげる形で向えうった。


 そいつが放った光の攻撃は永続的なものではなく弾を飛ばすタイプだったらしい、黒塊は折れたが上に弾くことに成功した。弾かれた光の弾は上に天井を丸くくり抜きながら空に飛んでいった。爆発とかしなかったのは嬉しい誤算だ。


 キンッと音を立てて当たった箇所から綺麗に折れてしまった黒塊。短い付き合いでしかなかったが、手入れも欠かさずしたし愛着を持ち始めていたのに、残念だ。それでもこの一瞬は生きながらえた。だが、次をどうする?


「・・・な、---‐級の一撃を・・・手加減したといえ・・・一撃を?防いだ?人間が?」


 白の衣は今しがた放った手を見つめ何やらぶつぶつ呟いている。


「らない・・・あぁ気に入らない・・・そうですね・・・町の一つや二つ誤差です、慈悲でそれは止めようと思った私が馬鹿でした・・・町ごと消し飛びなさ「はいはい、とりあえず私と遊んでもらおうか?」」


 唐突に黒い服の顔をヴェールで覆った女が現れ、白い衣と一緒にどこかに消え去った。あれは、見間違いでなければ手寅だよな?あいつも大概ふざけた能力だな。


「なぁあの黒い塊貰ってよいか?あれは体にちょうどいい。それと力を大分使ったというか、このままじゃ消滅するからあの右腕が欲しいのだが」


 ・・・クロカミニタノムカ・・・


 

 

 また倒れた達也の右腕が黒く変化し二つになった黒塊を飲み込んだ、そして志乃に思念が届く。


 また謎の思念を受け取った志乃は、頭を抑えながらも言われるがままに右腕の入った箱を取り出した。どうもこの思念達也のような気がするので、志乃としては抵抗はなかった、頭は痛くなるが。


 そして達也の右腕から黒い塊が出てきて左腕の入った箱に入りそれを取り込んでいく。


「えっと・・・一体全体何がどうなっているのかしら?」

「ん・・・とにかくとうか待ち?」

「そ、そうね・・・」


『ううむ・・・本当に効き目が薄い・・・精霊としての自信が揺らぎそうです』


 冬華が戻ってきて、達也と優奈に神水薬を飲ませるまで誰も喋らなくなった。 

 ちなみにマーサは何者かによって眠らせられていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ