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歓迎会

「おぉ・・・凄いねこれ美香姉さんも手伝ったんでしょ?」

「遥も僕も料理は微妙なんだよね、こと姉に至っては」

「「人が殺せるね!」」

「こと姉に聞かれたらそれこそ殺されるんじゃないか?」

「「言っちゃだめだよ!?」」

「震えるくらいなら言うなよ・・・」


 ガタガタ震えだした双子を見やりため息一つ・・・小さな手に口を塞がれた。


「たつにい、ためいきはめっ!」

「ん、たつ、ためいきつくとしぬ」

「死ぬの!?」


 志乃の発言に驚愕する達也をよそに、ボードルが歓迎会の旨を伝えはじめる。


「えー、本来なら町を挙げて遥殿と彼方殿を歓迎するところですが、旅路をお急ぎとのことで、本日ささやかながらも歓迎会を開きたく思い、キサラギ殿御一行もお誘いした所存です。願わくば、遥殿と彼方殿の主殿との友好を結びたいと考えておるので・・・」


 偉い人特有の長ったらしい、演説が始まる。それを見て長くなりそうだと判断したマーサが横から割り込んだ。


「・・・であって、我々アルランとしては「さぁさぁお料理が冷めてはいけませんから、皆さんどうぞ召し上がれ」・・・マーサ」

「あなた、公の場ならともかく、こんな時は一言でいいのですよ」

「む・・・それもそうかもしれんの、では乾杯!」

「「「「「「かんぱーい」」」」」


 さすがに町長ということで食材はふんだんに使えたのか豪勢だ。

 肉は保存に回されたのか少ないが、美香が手を加えたことでパーティ料理が並んでいる。

 揚げ物は油の関係でないが、オーブンが大きかったのでやりたいことが出来たと美香は説明する。


「こっちはグラタンね・・・牛乳はないみたいだから私達から出したわ、ただ海老とかがなかったから前に保存しておいた魚を使ってみたわ」

「ん、美味しい・・・みかこれなに?」

「そっちはトマトっぽい野菜があったからピザを作ってみたのよ、ただしチーズは使わないでみたわ、確か志乃が苦手だったわよね?」

「ん、ちーずはきらい・・・これは美味しい」

「それなら良かったわ」

「ミカねえこれなに?」

「それはねケーナ、ボイル焼きっていって・・・この包みを開くのよ」

「・・・おぉ!?むわっとした!」

「それで、身をほぐして・・・はい、あーん」

「あーん・・・美味しい!」


 美香の説明にマーサも感心したように感想をもらす。


「無駄に大きなオーブンがこんなに役に立つとは思いませんでしたよ」

「たくさんの料理を作る時には便利ですよ?それに大きくないと作れないものもありますから」

「そうですね、今度お料理を町の人にも教えて欲しいくらいですよ」

「それくらいなら喜んで」


 完全に主婦の会話だよなぁ・・・と達也は考えつつ目の前にある肉とキノコの煮込み料理を食べる。


「それは鹿肉とキノコの煮込みよ」

「そのまんまだな」

「それ以外に言いようがないわよ」

「美味いから何でもいいや・・・これって舞茸?」

「多分・・・舞茸じゃないかしら」

「美味いから何でもいいや・・・毒ないよな?」

「食料として置いてあったんだから大丈夫だと思うわよ」


 訝しな目で見るも美味しいので気にせず食べる達也。それをニコニコと楽しそうに眺める美香。まるで新婚夫婦みたいな空気を作ってる二人に双子が突っ込みをいれる。


「「ちょっと!私(僕)達の歓迎会なのにあーんは!?」」

「はいはい、みっちゃんの邪魔はだめだよ~はい、あ~ん」

「ん、これでもたべる、あーん」

「「なにその連携!?」」


 基本的に3人の内での甘い雰囲気を壊したりしない3人娘である。外敵が来た場合は参加していない人が防ぐという完璧な連携プレーを生み出している。普通もう少しギスギスしてもいいと思うが、協定は締結済みな3人娘である。出会った経緯と今までの流れから、誰かが独占することが3人共難しいと判断した結果だ。


「ささっこちらもお飲みになってくだされ」


 ボードルがそう言いながら達也のコップに琥珀色の液体を注いでいく。


「これは何のお酒何です?」

「ラム酒ですよ・・・この間はこれをたくさん飲まれていたのでこれがお好きなのかと」

「この間の飲んだ記憶がないんですよねぇ・・・お~ピリピリきますね」


 ボードルに注いでもらった達也は一気にそれを飲み干した。それを見てボードルは驚く。


「何かで割らなくても良かったですかの?・・・いい飲みっぷりですなぁ・・・どうぞどうぞ」

「あぁ割っていいんですか?少し濃い気がするんで何か薄めるものないですか?」

「おぉそうですか?では水か・・・果実酒がありますが」

「とりあえずお水で割ってみたら?」


 酒で酒を割るなんて認めないとばかりに美香が横から水を注いだ。達也としても飲みやすくなれば何でもいいので、礼を言って・・・やはり一息で飲み干す。


「ううむ・・・薄めたとはいえやはりいい飲みっぷりですなぁ・・・」


 一口分くらいしか入ってないのに、何をそんなに感心してるんだボードルさんは?いや、それより美香にお酌させるつもりはなかったんだけど・・・まぁ酒の飲みすぎは良くないからコントロールしてもらったほうがいいかもしれない。


 そんなことを達也は考えているが、実際には達也が使ってるのはジョッキである。木製の中ジョッキであり大体400mlだろうか、それを入れる傍から一息に飲み干している。達也としてはこの間のと比べると少量だと思っているようだが。


「え、えっと・・・達也?お料理も食べて欲しいな?」

「うん・・・これは、鹿?」

「そうね鹿とキノコの料理よ・・・美味しい?」

「美味いな、お酒も美味しく感じる」

「(しまったわ・・・ポテトとか作っとけば・・・いえ、大量の油は今使うのは・・・何かお腹にたまるものは・・・)」


 美味しく食べてくれるのはいいが、酒を飲むペースが一向に落ちない、むしろ上がっている達也。一応水や果実水で薄めているとはいえ、相当な量を飲み続けている。向かい側に座るボードルも負けじとばかりに飲むものだから、歯止めが効かない。お酒の飲み方を教えるといった町長はどこに行ったのだろうか。


「た、達也?ピザも食べて?あーん」

「んむ・・・チーズ無しのピザってありえないと思ったがありだな」

「そ、そう?えっと・・・お酒はそろそろお終いにする?ちょっと飲みすぎかな~って思うんだけど」

「何言ってんだ?少ししか入れてくれないから、全然飲んだ気がしないんだけど」


 量でいえば、ジョッキで10杯は越えているというのに、あろうことか飲んだ気がしないという始末。理性が残っているせいか、美香も大丈夫かなと心配はしつつも無理やり止めようとはしない。美香としても達也が飲みたいなら邪魔はする気はないのだ。


「ぬぅ・・・アルランウワバミ王者候補として名をはせているこのボードル!この戦い負けられぬ!」


 止めるべき酒飲みは既に酔いが回って、テンション高く宣言してる始末だ。達也が飲み方を覚える日は遠い。


「そんなに美味しいの・・・?私もちょっと・・・」


 達也がガブガブ飲むものだから未成年である美香も美味しそうに見えたのか、お酒を達也に注いだ後自分のにも注ぎ、口をつけた瞬間


”反応強化””反応強化””反応強化”


「あ、あら?」


美香の持っていたコップが消えた。

 

 美香がコップの行方を探し、見つけた時には達也がいつの間にか奪っており、さらに飲んでいるところだった。奪い取る際に能力の3重掛けをはじめて成功させていた。

 

 美香に怪我をさせないようにかつ、一滴も飲ませることなく、取られたことを気づかれないようにだ。無駄に洗練された無駄のない無駄な動きをしたのだ、無駄な進化である。


「子供は飲んじゃいけません・・・20歳からだっけ?いやいや、お酒って体によくないんだから駄目絶対!」

「達也だって飲んでるじゃないの・・・もぅ」


 文句を言いながらも嬉しそうな美香である。達也が口をつけた場所は、美香が口をつけていたところだったのを乙女の勘で確信した美香は頬を染めて達也にお酌を続ける。





 それなりに時間が経ったころ双子を阻止していた優奈がふと達也達の方を見た。


 テーブルの上にはお酒が入っていたであろう陶器の壷と料理皿が所狭しと並んでいる。美香が達也の傍にいるが、なにやらぼーっとしていて機械的に達也にお代わりを注いでいるように見える。様子が変だと思った優奈は二人の妨害を志乃に任せて達也達の方へ。


「たつくん?みっちゃん?あれ?ボードルさんは?」


 達也と一緒のテーブルにいて、張り合っていたボードルがないことに優奈は気付き・・・椅子がないことに気付いてテーブルを回り込む。


 テーブルで隠れて見えなかったがボードルが椅子ごと倒れていた・・・幸せそうな顔をして壷を抱えていた。


「ふぁっふぁっふぁ・・・まだまだですのう・・・わしゃぁまだ・・・いけ・・・むにゃむにゃ」

「・・・えっとぉ・・・?」


 ボードルは完全に酔いつぶれている・・・一応チェッカー君をボードルに当てて調べてみる優奈、表示されたのは【泥酔した中年】危険とか書いてないから大丈夫だろうと判断しマーサに声をかけ来てもらい、達也の傍に行く。


「たつくん?たつくん?」

「おう?どうした優奈・・・そろそろ歓迎会も終わりか?」

「うん・・・そうだと思うけど、みっちゃんどうしたの?」


 頬が赤いのは嬉しさとか何やらもあるみたいだが・・・これは酔っているんじゃないの?と優奈は判断し念の為チェッカー君を当ててみる、表示されたのは【みっちゃんは酔っている滅茶苦茶にする?】と親しい者は表示が変わるらしい・・・憮然とした優奈は一度チェッカー君を叩き、再度当てる【匂いで酔った模様、寝かせれば大丈夫】と表示されたので、とりあえず一安心する優奈。


 ついでに達也にも当てて・・・


「たつくん?何でよけるの?」

「え?あぁ反応強化のせいか、敏感に・・・解除っと・・・チェッカー君だっけそれ?」

「うん、ちょっと調べさせてね~」


 一度は反応強化×3により綺麗にかわした達也だったが、今度は大人しくチェッカー君を受け入れる。


 表示された内容を見て優奈は顔をしかめる。


「ちょっとみっちゃん!・・・って酔ってるんだっけ・・・もぅ!たつくん!」

「うん?どうした?」


 美香は酔いつぶれたのか達也に寄りかかり始めている、それを達也は倒れないように支え膝の上に頭を固定してやっている。羨ましく思ったが、そんなことを思っている場合じゃないと頭を振り達也に懇願するように言う。


「たつくんたつくん、みっちゃん寝ちゃってるみたいだから、もうおやすみしよ?」

「ん?あ~そうみたいだなそうするか・・・」


 酒を飲んだ達也は3人娘の言うことなら無条件に聞くようだ。特に反論もせずに美香を抱える為に肉体変化を発動する。


 ”反応強化””腕力強化””脚力強化”


 あれ?思考加速が出来ないなと?達也は思いつつも肉体変化を使い、美香を音もなく負担にならないように頭の位置に気をつけつつ、お姫様抱っこする。優奈はその動きを見てもしかしたらチェッカー君がおかしいかも?とも思ったが、テーブルに並んだ空の陶器を見て考え直す。


「よっし、じゃぁ寝るよ~志乃ちゃん、ケーナちゃん寝るよ~」

「ん、たつ・・・たつ?」

「たつにいどうしたの?なんか・・・う~ん?変だね?」


 声をかけられた志乃とケーナは達也の様子に違和感を感じ、椅子から降りて達也の後についていく。


「達也兄さん・・・」

「もしかして・・・」

「「あれで酔ってるの?」」

「うん、これ見て?」

「え?これって・・・って」

「優奈さん・・・」

「「結局惚気か!」」

「え?あ!もぅ!ここは見ちゃ駄目だよ!」

「「はいはい、ごちそうさま」」

「でね、主賓の二人には悪いんだけど・・・片付け手伝って?」

「仕方ないね、マーサさんだけに任せるわけにはいかないし」

「僕達だってボードルさんには今日までお世話になったしね」

「「あ、その前にさっきのもう一回見せて?」」

「絶対駄目!」


 一方達也は美香をベットに運んだ後、志乃とケーナも寝かしつけ自身も就寝した。


「たつにい、すごい・・・なんかカッコイイ?」

「ん、たつはいつもかっこいい・・・でも酔ってるだけみたい」

「酔ってるとカッコイイの?」

「ん、多分変なこと考えてないせい?」

「あ~なるほど」







『酒精抜くにしても・・・タツヤ様相手だと効果薄いですし、優奈様の検査によると明日には全快するみたいですし、放って起きましょうかね・・・トウカがいればもう少し何とかなったと思うのですが、仕方ないんですね』

「ちなみに何て表示されたんだい?」

 え~とどれどれ【私が■■■■■■、酔っているようだが理性は保っている。寝かせれば何とかなる。ただ、普通なら死ぬ可能性もあるので飲みすぎ注意】だそうですよ。

「その■はなんだい?」

 さぁ?優奈によって隠されましたので。

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