巻き込まれたい観客
「もぐもぐ・・・午後になったらもう一回やるの達也兄さん?」
「次は・・・むしゃむしゃ・・・僕達が勝つよ?」
「「ハグをしてもらう為に!」」
「いや、飯食べ終わっても、もうやらんぞ?」
えー!?という双子を見ながら、そもそも戦い方変えないと俺と戦ってもしょうがないだろと説明する。
俺の反応できない速さで攻撃するならともかく、現状俺よりも遅いし、攻撃は・・・彼方のが危ないとは思うが当たらなければ意味ないしな。体の動かし方は明日冬華に頼むとして、今日は雪の指導で型を教えてもらえばいいだろ。
「能力に頼り過ぎてるよお前ら・・・いや、俺も人のことは言えないけどな」
「でも、最初よりは戦えるようになったんだよ?」
「遥なんて空を飛べるようになったのは最近だよ?」
「「能力なかったらそもそも戦えないよ?」」
「そりゃそうだが・・・工夫次第じゃないか?」
「「工夫?」」
いや、こいつらの能力・・・名前だけ教えてもらったけど、遥がキュービック・ムーブで彼方が踊る血袋だったか?名前聞いただけだと何の能力かサッパリわからんな。キュービック・・・立体?移動?立体移動?まぁ確かにそんな感じの移動だったけど・・・遥の能力って何かを体から出すものじゃないのか?移動の方が名前だと・・・攻撃に使うには向いてないってことになるような・・・。いや、遥はまだいい。彼方の踊る血袋ってなんだ!?名前聞いても何の能力か何も思いつかねえよ!気持ち悪い名前だなとしか思わないぞ。
「達也兄さん工夫ってなに?」
「何といったらいいかな・・・別の使い方を探すのも手だぞってことだ」
「つまりどういうこと?」
「いや、それがお前らに聞いた能力名じゃ俺にもさっぱりわからん・・・」
「「駄目じゃん!」」
「まぁ・・・何だ頑張れ?」
達也は思考放棄した。正確な能力名を教えない双子がこの場合悪い、ルビの方を言ったらさっぱりわからない能力になってしまう。そもそも回転と空気砲もかなり解りづらい能力ではあるのだが。
『では、私が眷属を出すのでそれを倒していってくださいね?』
「おぉ!訓練っぽいね」
「柳さんだっけ?達也兄さんが名前つけたんだっけ?」
「「私(僕)も名づけして欲しい!」」
「自分の名前は大事にしろよ・・・それで柳?眷属って何だ?」
『見てもらった方が早いと思います・・・生まれしわが子は試練を与える”自律行動”』
また、えらく適当な文言を唱えた柳・・・その足元から土が盛り上がり人型になる。
人型に盛り上がった土は柳の横に並んでいく、総勢10体の土人形が出来上がった。
「なんというか・・・凄い弱そうなんだが?」
達也の感想も無理はない、見た目はただの土で作られた人形だ・・・確かに自律行動しているし、身長でいえば170cmくらいはあるが、所詮土人形にしかみえない。
これならワニ君・・・タダカツ達の方が訓練になるなと達也は思う。最近のタダカツ達は美香がどんどん強化していくし、それぞれの武器の訓練をかかさずにしているせいか、普通に護衛として達也も信頼してるレベルだ。4匹揃ったら白炎ともある程度は戦えるんじゃないだろうか。
『ふふふ、そう思うならとりあえず一体と戦ってみて下さいよ』
そう言われた達也は挑発に乗ることにして、1体の土人形と対峙し・・・半身になって腰を落とし”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”をかけ直し、適当に威力を落として拳を放った。
『あ、それは卑怯ですよ!?』
右足で十分に踏み込み、力を全て左手に流す感覚を維持して土人形に打ち込む、威力等は考えないでとりあえず放ったので踏み込みも浅く、中途半端な形となったがそれでもそれなりの威力は出たようだ。土人形は形を保ちながら、いや、体を崩壊させながら地面と垂直に飛んでいき、見ていた観客にぶち当たる。
「「「「ぎゃああああああああ!?」」」」
観客にとって幸運だったのは素材が土であったため、衝撃はそれほどなかった。観客にとって不幸なことはそれが達也が起こしたことだ。土とはいえ、サッカーボール大の土塊が直撃したのだ、何人かは昏倒し、何人かは痣が出来ている程だ。まぁ食らった何人かはなぜか嬉しそうな表情だったが・・・曰く、これで口実が出来たと。
『まさかと思いますが・・・それ習得したんですか?』
「いや?集中しないと撃てないしな・・・何より全力でやれん」
「達也兄さんなにそれ!?」
「何か、漫画みたいなことしなかった!?」
「「教えて!」」
「あ~うん、雪」
「チチチ?」
「指導任せた、俺はまだ教えられる程じゃない」
「チチチ!」
了解とでも言うように雪は二人に指導を始めた。しかし雪の身体が小さい為か真似しようにも上手くいかないようだ。仕方なしに体の動きだけは見せてやる。別の土人形に狙いを定めて放つ、さっきよりも力を抜いて観客がいない方向に放つ。
「理屈はわかるけど・・・」
「何で地面が凹むの?」
「「どうして、殴った相手が爆散するの?」」
「「「「「ぎゃあああああああああああ!」」」」」
「あいつら自分から突っ込みにいかなかったか?」
達也が位置調整をしているのを見た、怪我希望者は達也が動いた瞬間土人形の対角線上に走ったのだ。それはもぅ今まで訓練したのはこの為だ!とでもいうような素晴らしい疾走だった。
「ぐふ・・・いい一撃だったぜキサラギ様」
「あぁ・・・体の芯に響く一撃だったぜ、イテテ」
「こ、これでユウナちゃんに優しくふへへ」
身体強化の影響であの程度な距離なら何て言っているか何となくわかる達也としては・・・昨日のエネス婆さんの様子を見るに、期待通りには運ばないような気がしているが、言わぬが仏というやつかもしれないと思って、黙ってエネス婆さんに行く馬鹿共を見送った。
それに、さぁ次は俺達だ!とでも言うように目をギラギラさせているおっさんの相手もしてやらないといけなさそうだ。
『ふむ・・・的にしかならないようですね・・・せっかく作ったのに』
「柳、その土人形あのおじさん達に突っ込ませてやれ」
『それが良さそうですね・・・けどいいのですか?ユウナ様が大変になるだけでは?』
「いや、今日は優奈じゃないと思う・・・遥!彼方!」
「な~に達也兄さん?」
「僕たちは謎拳法の」
「「訓練中なんだけど?」」
「うん、土人形があのおじさん達襲うから、おじさん達が怪我しないように土人形だけを倒して来い、それが訓練だ・・・おじさん達が怪我しても気にしなくていいからな」
「「わかった!」」
双子が飛び出していき、土人形・・・諸共、おっさん集団をなぎ倒していく。
『鬼ですか・・・何か考えがあったんですか?』
「いや、力の加減とか強弱覚えたら強くなるんじゃね?と思ったんだが、そもそもその発想がないのかあいつら、保護対象もろともなぎ倒してるし」
ポンポンと空におじさんやら土人形やらが舞っている。飛びすぎたやつは柳が白い霧で上手く回収しているが、助けれきれないのはこれまた柳が地面を柔らかくすることで何とか重傷は避けているようだ。まぁ殺さないように地面を叩いたり直接攻撃したりはしてないが・・・いやいや土人形だけに攻撃すればいいじゃないか、何で両方とも攻撃してんだよ・・・土人形も逃げ回ってるじゃねえか。むしろおじさん達が土人形庇ってるんだけど・・・意味わかんねえな。
「ここは任せて逃げるんだ!茶色い人!」
「いやいや、人じゃないぞこれ?いや、そんなことはいい俺もここで残る!お前たちは逃げるんだ!」
「バッキャロウ!水臭いことを言うな、俺もここを死守するぜ」
「お前・・・わかった皆であの双子を止めるぞ!」
「えた~なる~」
「ふぉ~す~」
「「ブリザードー!」」
「「「「「「ぎゃあああああああああああああああ」」」」」
謎の掛け声とともに遥は空気を両手から噴出させながら地面ごと吹き飛ばす、彼方は回転を右手の平に発生させたあと地面を大きく削りながら吹き飛ばす。
結果、二人の力が合わさって、おっさん集団は守ろうとした土人形ごと吹き飛ばされた。いや、土人形は咄嗟に前に出て衝撃をいくらか殺していた。
『結局・・・何の訓練をしようとしていたんでしたっけ?』
「・・・おじさん達を上手に怪我させる・・・訓練かな」
『はた迷惑すぎます・・・いえ、そもそも彼らが怪我しようとしてるのが問題なのですね』
3日ほどこの訓練を続けていたのだが、ある時からパッタリとおじさんの見学者は減った。話によると看護師がおっさんになったから怪我したら損するだけという結果にようやく気付いたようだ。




