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ヘビとトカゲ

「ん、たつおはよう・・・手はなした」

「おはよう、志乃が寝てから離したぞ?」

「ん・・・はなしちゃやだ」


 朝から様子がおかしい志乃を撫で・・・着替えの手伝いも要求されたのでパパッと終わらせて、外に出る。


 双子のお願いは稽古だった、曰くこと姉にも訓練してもらってるけど、こと姉もこの世界に来てから戦いはじめたせいか、女性故の優しさか、どうも手をぬいているように感じるらしい。双子としてはこと姉の役に立ちたいのに手を抜かれては面白くない。そこで俺に白羽の矢を立てたとのことだ。

 自分達が勝てなかった白炎を服従させたくらいの強さなら、稽古をつけられる強さはあるだろうし、何より身内以外は容赦しなさそうと言われた。いや、そうだけどさ・・・でも俺だって何の訓練も受けてないし、この世界で始めて戦ったぞと言うと


「大丈夫!そもそもこと姉以外には身内に攻撃しちゃいけないんだ私達」

「大抵一発で吹き飛ぶか、グチャグチャになるね」

「「達也兄さん丈夫そうだから大丈夫大丈夫」」


 ここだけ聞くと的になってくれと言ってるようにしか聞こえないけど・・・細かいところは冬華に修正を任せることにして、俺も訓練で戦えるなら経験をしておくべきだろうと判断して了承した。能力者との戦いは今まで全部殺し合いだったからな。

 どちらにせよ町に帰ってからだな。


「たつくんおはよう!・・・志乃ちゃんどうしたの?昨日から・・・寂しいの?」

「ん、ゆうなにはわからない」

「むぅ?もう仕方ないなぁ・・・よいしょっと」

「ん・・・離して」

「ちょっと私と秘密の話をしよう~」


 俺にしがみついていた志乃を抱えて優奈が出たばっかりのテントに入っていった。

 しばらくすると二人は出てきて志乃が落ち着いて、普段の志乃に戻っていたんだが、なにを話したんだ?


「もぅ、たつくん志乃ちゃん不安にさせたら駄目だよ?」

「お、おう、すまん」


 女の子は謎がいっぱいですな、どうやって機嫌とればいいのかお兄さんさっぱりだよ。





「あれがアルラン?」

「うわぁなんというか」

「「まさにファンタジー」」

「だよね!?そう思うよね!?」


 元気な優奈が先導するように双子の案内をはじめてしまった、一応冬華がすぐ傍についているけど、双子も異世界に来たことでテンションがあがるタイプだったらしく、優奈と意気投合してしまった。嫌な予感しかしないから仲良くしてほしくないのは・・・いや、仲良いのはいいことだよ、うん。


「達也?やっぱり重い?」

「え?あぁいや、大丈夫軽いから・・・いや、ここで重いって言ったら怒るだろ?」


 ほっぺを掴まないでくれ、志乃は蒼に乗っている。美香も頑張ってはいたが、今は俺の背中に乗っている。志乃を乗せたときもいい匂いするけど、美香はそれに加えて背中に当たる感触がGOODですな!男子諸君!羨ましいか?ハッハッハ、すまんな一人用なんだこれ、残念ながら君達と変わってあげることは出来ない。


「兄貴を無性に殴りたい・・・疲れていても殴りたい」

「ケイ・・・やれ・・・俺も手伝おう」

「おう・・・さすがの俺もヤるときはヤってやるんだ」

「はぁ・・・お前ら・・・疲労困憊なのに元気だな」


 オルトとレイクに加えて、ケイにカームを加えて残念4人衆になりかけている・・・いや達也の方も心情が見えずとも残念に見える。ともかく一向はアルランが見えるところまで到着した。





 さっそく町長さん達に報告する。


「おぉ塩を見つけたか!でかしたフリッツ!」

「いや、例によってキサラギが見つけたんだがな、とにかく町が使う分には困らん量があった。というより他の町との取引に使える量はあったな」

「それにあの大量の石はいい建材になる」

 

 町長ボードルはこれで町としてはこれからも生存が可能であることに大喜びだ、達也達が来てから暗かった未来がどんどん明るくなっているようだ、とボードルは思った。話によると白炎という竜・・・竜なんて御伽噺でも聞かなくなったものだが、フリッツやウォルも達也が手懐けているのを見たというので、間違いないのだろう。守護してくれるとのことだが、あくまで達也と主従契約を結んでいるということは肝に命じないといけない。特に実際に塩を取りに行く人選は慎重に選ぶ必要があるなとボードルと司祭は考える。


「それで、その双子は別の町から来たということですな?」


 達也は塩の角に関しては伏せて、双子は自分達と同じように調査をしていたと話した。双子側には塩はもう必要ないことを説明するが・・・塩が必要ない人間なんていないから、無理やり誤魔化した。とはいっても、ボードル達からしてみれば達也と個人的に付き合いがあるものに追求なんて出来ない。フリッツやウォルは何か知っているようだが、聞くにしても後になるだろう。出来れば聞きたくないが、と意見は一致していた。





「ゴルって人はいないんですね」

「あぁ、さっきまで居たんだが用が出来たとかいって自宅に戻ったぞ」

「トムスさんは鉱石に興味がある感じですか?」

「あったりまえだろ!ユウナの嬢ちゃんが見せてくれた鉄の純度を見たら、鍛冶に関わるもの・・・いや、目ざとい商人でも目の色を変えるだろうよ」

「あぁ優奈が集めてた黒いやつってやっぱり鉄だったんですか」

「表面であれだけの鉄が出るってことは掘ったら凄いことになりそうだな・・・問題は塩を取れる場所と近いことか」

「錆びるとか?」

「それもあるが、下手に掘ると洞窟が潰れかねん、鉄はなくても死にはしないが塩となるとな」


 何にせよ生粋の商人らしいゴル何とかさんがいなくて良かった、ま~たひと悶着起こるだろ。


「それでタツヤよぅ?この双子はどうすんだ?お前が連れていってやんのか?」

「いや、こいつらこれでそれなりに戦えますよ、帰るだけですし問題ないでしょう。その前に訓練する約束してますけど」

「あん?・・・殺すなよ?」

「俺を何だと思ってるんですか」


 言葉には出さないがトムスさんは目で俺に語りかけてくる、曰くやり過ぎるなよと。俺を何だと思ってるんだ!


 双子の回復を待たないと訓練も何もないので、2、3日は様子見だ。俺も休息が必要だし。

 双子まではさすがにルッド宅に入りきらないので、ケーナ、ボードル町長に二人は預けておいた。柳に監視させるという目的もある。聞いたところでは俺以外には負けはしないだろうと言ってたし。こと姉はどうかは知らんが。

 まぁあの双子もケーナを気に入ったようだから、下手なことはしないとは思うけどな。







 帰ってから2日程がたった、優奈は朝からエネス婆さんのところへ行った、護衛は冬華に頼んだ。どちらにせよ高速横回転は私がやる!と息巻いていたけど、雪と蒼もついていった。双子はケーナを連れて毎日俺達に・・・ルッド宅にやってくる。

 俺達は訓練参加不可なので、大人しくしていたんだけど、大きなノックと共にいやな予感がした。


「おう、キサラギ!白炎様が来たんだが・・・キサラギを出せと言っておられるのだ」


 フリッツさんが迎えたルッドさんを押しのけて俺の襟首を掴んで引き摺る。いやいや、自分で歩きますって。


「ん、たつびゃくえんきた?」

「お昼ご飯前に来て欲しくなかわったわ・・・とりあえず優奈に伝えておきましょうか」

「おに~ちゃん?何が来たの?」

「ん、えなびゃくえん」

「シノちゃんびゃくえんって?」


 とりあえず見たいならついて来ればいいさ。





 町の南門の前で白い竜・・・白炎が佇んでいる、町長と司祭さんに紹介する必要もあるから一緒についてきてもらった。


「で?お前は何で来たの?」


『達也が来いといったのではないか・・・』


「そうだっけ?あぁお前体調悪いからって言ってたな、どちらかと言うとこっちから顔合わせに行こうとは思ってたけど」


『それで、この人間達が白炎の住処に来るのか?』


「あ~ボードルさんボードルさんどうなんです?誰を派遣するんですか?」


 俺の呼び声に反応してボードルさんが出てくる。気持ちはわかるけどビビらなくても襲ってはこないよ。


「そ、そうですな・・・ええっと白炎様でしたか?誰が行くとはまだ決めておらんのですが、如何いたしましょう?」


『ぬ・・・決めてないのか・・・』


『ではこうしましょう、塩を取りにいく人間に私が適当な加護をかけます。竜なら私の加護を感じ取れるはずです』


 俺の傍で様子を見ていたケーナから柳が出てきた、最初から出てろよ。白炎は力量を読み取ろうとしているのかジッと柳を見ている。


『達也・・・こいつが我に勝てそうな人間・・・とやらか?』


「ケーナと柳のセットでだけどな」


『達也、この白炎を見くびっておらぬか?誰がこんな蛇に負けるものか』


『ほう?なんですかこのトカゲはタツヤ様?』


「あ、めんどくさい雰囲気」


 竜と蛇がにらみ合いを始めた。がすぐに柳の身体が薄くなり・・・さらに小さくなっていく。


『ケ、ケーナ!?何故私の力を抑え・・・いえ、そんなこと出来たのですか!?』


「だめだよ喧嘩しちゃ!どっちもたつにいに名前つけてもらったんでしょ?たつにい喧嘩は嫌いだよ?」


『ふんっ!達也ならともかく、こんな蛇にでかい顔をされるとは、この白炎我慢ならぬ!』


『はっ!タツヤ様に名前をつけて頂いたのは私が先です、先輩は敬うものでは?』


『『ぐぬぬぬぬぬ』』


 そこまで言い争ったところで柳が完全に消えた。思念だけが聞こえる。


『ぬぅ・・・ケーナいつのまにこんな力の制御を・・・これでは具現化も出来ません』


「もぅ!喧嘩はめっ!だよヤナギ」


『くくく、完全に使役されてるではないか、精霊とはいえ所詮細長いだけだな』


「むぅ・・・こっちのおっきなトカゲさん口悪いねたつにい」


『な!人間ごときがこの白炎をトカゲ呼ばわりだと?達也!この人間は我に害を為した!食い殺す!』


 俺がやってもいいけど、ケーナがやりたいみたいだ・・・俺を見上げてきたので一つ頷いてやる、ついでに手を繋いでやり”右腕変化 白”服で見えないように繋いだ手を変化させて繋げる。一度やったせいかケーナとはすぐに繋がることが出来た。いや、多分受け入れ側の意識の問題かもしれない。

 とにかく、回復中のケーナの生命力やら何やらを使わせたくないので肩代わりしてやる。


「ありがとたつにい・・・えっとびゃくえんさん?ううん、びゃくえん!柳のご主人様としても、たつにいの為にもお仕置きします!」


『ふっ!ふははははははは!この白炎、達也の例があるから見た目で判断はしないが、いくらなんでも幼子にしつけられる言われはないわ!侮辱するのも大概・・・に・・・たいが・・・』


 ケーナから白い霧・・・霧というよりは煙というか、濃密すぎて白い物質が出てるようにしか見えない。それがケーナの周りを漂い・・・ある程度集まったところで白炎に纏わりつきはじめた。


『ま、待て!?これは達也と似てる・・・あれは嫌だ!び、白炎が悪かった!待て!待つのだ!は、話せばわかあああああああああああああああ!!!』


 纏わりついた白い霧のようなものは、白炎を包み・・・どんどん小さくなっていく。叫び声も同時に小さくなっていく。大体半分くらいになっただろうか?そろそろいいんじゃないかと思い繋がりを切ってケーナにもういいんじゃないか?と声を掛ける。というか、あれ生きてるの?

 ケーナが頷き白い霧が霧散した。同時に元の大きさの白炎が出てきた。


『に、人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い・・・ケーナ様ケーナ様ケーナ様・・・ぶつぶつ』


「あう、たつにいやりすぎた?」

「あれくらいでいいんじゃないか?とりあえず柳出してくれるか?」

「うん」


『ふっいい様ですねぇトカゲ?これに懲りたら・・・何ですか、ケーナ?え?イタタタタタタ!?あ、はい私が悪いと思います!イタタタタ!ゆ、許してください!』


「もぅ仲良くしないとだめだよ?」


『『ハイ、ナカヨクシマス』』


「こいつら人間より上位の生命体のはずなんだけどなぁ・・・とにかく柳の加護で目印にはなるんだろ?」


『は、はい、タツヤ様・・・私の加護くらい感じ取れるんだろ?トカゲ?あ、待ってくださいケーナ!えっとビャクエンでしたか?』


『ふんっ貴様の気配は覚えたからな貴様の加護持ちがきたら適当にいたぶって・・・待て、達也その腕はイケナイわかった!や、柳だったな?りょ、了解した!』


「メンドクサイやつらだな・・・柳の加護持ちじゃなくて話もしない好戦的な奴が来たら容赦はしないでいいぞ白炎」


『わかった、クソヘビヤナギの加護がかかってるやつは持て成す』


『よろしくお願いしますよアホトカゲビャクエン殿』


「むぅ・・・たつにいこれ仲良くなれるのかな?」

「まぁ、憎まれ口ならそのうち仲良くなるんじゃないか?」


 喧嘩するほど仲がいいとはいうし。


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