双子
「達也兄さんはい、あーん」
「遥ずるい!僕もあーん」
「「あーん」」
「自分で食うわ!」
疲れてるんだから、さっさとご飯終わらせて寝かせてくれ。夜の見張りは白炎がやってくれるらしいから、今日の見張り番ないんだから。
『任せておけ、この白炎がいればそこらの魔物は寄ってこないとは思うがな』
「たつくんあーん」
「ん、たつたべる」
「張り合わなくていいんだけど、わかった食べるよ・・・」
双子に張り合うのはいいが、優先するのはお前らだから安心しろって。
「(何か、雨の後から本当に積極的になったわね・・・)」
「なんだよ美香?」
「何でもないわよ」
「レイク、俺は無性に今キサラギを殴りたい」
「気持ちはわかる、ヤるか?」
「俺も兄貴を無性に殴りたい!」
「俺も強力しよう」
「「「カーム!」」」
「落ち着けお前ら」
いきりたつ4人をフリッツが諌める。まぁフリッツから見ても砂糖が口から出てきそうなくらい甘ったるい空間になっているが・・・無駄死にをさせる訳にもいかない。
「どちらにしろお前らじゃどうにもならん、大人しく飯食って寝ろ」
「「「「ぐぐぐぐぐ」」」」
ウォルが容赦なく言葉で叩き切ってくれたおかげで、死人はでないですんだ。
白炎も連れていこうと思ったが、俺の力を馴染ませる為に動きたくないと言うので、ここの守護を任せてアルランに戻ることにした。俺の匂いがついていれば、守護対象とみなすというので服の切れ端か何かを町長に渡せばとりあえずいいだろう。まぁ顔を覚えた(龍的には気配を覚えた)フリッツさんあたりが行けば済むだろうけど。
「へぇ・・・やっぱりお前ら1卵生だったのか」
「まぁ見ての通りだよね」
「瓜二つでしょ?」
「「たまに悪戯できるんだ」」
「でも、こと姉には見抜かれるんだろ?」
「こと姉は無理だね」
「でも達也兄さんもわかるんだよね?」
「「強い人にはなぜかバレる」」
志乃を背負って、双子と並んで岩場を乗り越えていく。結構消耗してるので、戦闘は冬華とワニ君達に任せている。龍も含めて3人に力を流したからか回復が遅い気がする。といっても動けないってことはないし、なにより優奈の回復薬が効いた。俺に飲ませ続けたのは高品質3級だったらしい、致命傷も治すと豪語するだけあって、かなり回復できた。まぁ一本しか作れていない高品質を使わせてしまったのは痛かったけど。
「う~ん、この石がなぜか薬になるのか・・・あれ、これ石じゃなくて植物の化石なんだ・・・」
優奈はこれっぽっちも気にしてないようだけど、というか3級でごめんなさいとか言ってたけどな。双子が中品質で血液以外は回復したのを考えると、高品質ってゲームでいうところの完全回復薬とか神の薬に近いものがある気がする。がめつい人に見られたら誘拐されそうだよなぁ・・・いや、うちのメンツ俺以外誘拐してからの利用価値が高いな。
優奈は未知の調合で、そのうち不老薬くらい作りそうだし、志乃は長距離転移と異次元ボックスで交易したらとんでもないことになりそうだし、美香はワニ君を量産したら軍とも戦えるだろうな。
「ん、たつしんぱいしすぎ」
「・・・ナンノコトカナ」
「なるようになる」
「ソウカモネ」
双子の体力もそうだが、俺達側の体力消費も激しかったため町につくのは明日になりそうだ。
「ふむ・・・キサラギ達はともかくとしてお前らだらしないぞ」
ウォルは眼前の疲れて動けなくなっている4人をみやる。ケイ、カーム、オルト、レイクの四人だ。誤算だったのはカームが森以外では体力面でも策敵面でも役に立たなかったことだ。いや、だからどうしたというわけではないが。どちらにしろ、戦闘したり怪我をしているキサラギ達ならともかく、こいつらはただ歩いていただけだ。まぁフリッツもかろうじて動けるといったところだが。
仕方ないので途中で野営することになった。野営の時でもしばらく倒れた奴等は使い物にならなかったが。
「見張りってなに?達也兄さん」
「・・・お前ら今までどうしてたんだ?」
「え?適当に寝転がってたよ!」
「森の時は木の上とか洞窟だね」
「「キャンプみたいで楽しかった」」
「よく、襲われずにここまで来たなお前ら」
呆れた、こいつら襲撃とか警戒せずに今まで夜を過ごしていたらしい。まぁ二人しかいないから交代も辛いかもしれないけど・・・これからはきちんとするように・・・いや。
「こと姉に怒られたくなければ、見張りはきちんとした方がいいぞ」
「「怒られたくない!」」
「じゃぁがんばれ」
「「やり方教えて?」」
やり方って・・・焚き火を絶やさないようにして周囲を見回すだけなんだが・・・仕方ないのでフリッツさんに言って一番目を俺と双子にしてもらった。
「ん、たつ・・・ここでねていい?」
「いいっていいたいところだけど、岩場だからな・・・体痛くなるからテントで寝ておいで」
「ん・・・だめ?」
「寝付くまではいてやるからテントで寝な」
せっかく下が固い地面の為、多めに布団を出して下を柔らかくしたのに俺の傍で寝たら意味ないだろ。一緒にいたいのはわからんでもないが、今は外だからテントで寝てくれ。
「ん・・・わかった・・・」
「遥、彼方、しばらく火見ててくれよ」
「「りょ~かい」」
達也がぐずる志乃を連れてテントに入っていった。
「もしかして」
「僕達に」
「「ヤキモチやいたのかな?」」
「ん、たつ手にぎる」
「はいよ」
「志乃ちゃんどうしたの?」
「志乃?大丈夫よ、達也はとられたりしないわよ」
「ん、しらない」
最近の達也はやたらと接触が多くなってきたせいか、志乃は温もりを手放したくないのだ。しかも、達也に異常に懐いている双子の存在、それに達也自信も満更でもなさそうなのが志乃としては大いに気に食わなかった。優奈と美香は何で平気なんだろうと思いつつ、志乃は達也が手を握っている間は寝てやるもんかと抵抗する。5分くらいで抵抗むなしく眠ってしまったが。
「おかえり達也兄さん」
「ただいま?」
「志乃ちゃんは寝てくれたんだ?」
「昨日今日で凄い疲れてたからなぁ寝るのも早いだろ」
小さくなってきた焚き火に枝を投入する・・・小さい頃火遊びというか、キャンプでの焚き火をいじるのが楽しかったが、多分それって餌やりみたいな感じだから楽しく感じたんだろうな。燃えるものが少なくなったなら薪を投入していく・・・火が大きくなりすぎないように注意は必要だ。
「っと、それで?見張りはともかくとして何か聞きたいことあるんだろ?」
「え?別にないよ?」
「しいて言えば」
「「達也兄さんと話がしたいくらい?」」
「なんだ、裏があると考えたのに」
「あはは、漫画とか小説じゃあるまいし」
「いちいちそんな想像してるの?」
「「もしかして厨二病ってやつ?」」
「やかましい・・・封印された左腕なんて知らん・・・俺は知らん」
急に落ち込んだ達也に二人は慌てる。別に達也をへこましたくて話をする機会を作ったわけではないのだ。この普通の青年・・・いや、強力な戦闘力を持つが見た目は普通の青年を双子は好きになっていたのだ。自分達を助けてくれたこと姉に似ている気がするのだ。
双子としてはこと姉と引き合わせてみたい、上手くいったら二人は意気投合してもっと強い集団になるかもしれない、そしたらこの世界に来て死んでしまったり、毎日泣いている子が少なくなるに違いない。双子はそう考える。
あぁでも双子は思う、主義主張が合わないと、一かけらのポテトチップスで殺し合いをする今の世界、そんな世界で仲良くしてくれるだろうか?こと姉が負けるとは思えないが、戦っているときの達也は異常に怖い感じがする。達也が助け出してくれた時は意識が朦朧としていたが、絶対に手をだしてはいけない部類の気配を感じた。そう・・・こと姉がキレた時のあの時と同じ感じだ。
「まぁまぁ達也兄さん、この世界じゃ厨二が最強だよ」
「僕達の仲間でも喜んでる奴が何人かいたよ」
「「チートじゃなくて泣いてる奴もいたけどね」」
「仲間で思い出した、お前らの・・・こと姉?こと姉の集団に名前とかないのか?」
「え?あ~うん、ないね。こと姉が保護しているだけだから」
「そういや、こと姉も人数が多くなってきたから必要かなって言ってたね」
「「でも、こと姉センスないからなぁ」」
「お前らなぁ・・・名付けって大変なんだぞ」
「達也兄さんはそれなりにセンスあるから大丈夫だよ」
「冬華さんに雪ちゃん、それに蒼ちゃん。そして白炎でしょ?」
「「こと姉ならリス姉、リス妹、ワンコ、そしてシロってつけるよ」」
遠くの方で誰かがくしゃみをしてないことを願い、そっと俺は目を閉じた。
「わかった名前はいいや、あの町って結構な人数いたと思うけど。全員こと姉の仲間に出来たのか?」
「全員じゃないよ、えっと」
「なんだっけ?こと姉を怒らせた人達」
「「確か伊藤?」」
「あのグループは誰にでも牙を剥いてるのかよ」
「知ってるの?」
「やばかったよね」
「「こと姉ビルごと潰したもんね」」
「・・・生きてるのか伊藤グループ」
「手傷は与えたと思うけど」
「逃げられたって言ってたよ」
「「あの時のこと姉は怖かった!」」
思い出し恐怖?でもしたのか、ガクガクと震えだす二人・・・いや急に寒くなってきたな。志乃のローブも持っていたので、俺のローブと志乃のローブを二人にかけてやる。
「わぁあったかい」
「でも達也兄さんは?」
「「もしかして・・・何とかは?」」
「やかましいわ!」
拳を上げて拳骨をやろうかと思ったが機敏な動きで焚き火を挟んで逃げやがった。
「それで?伊藤グループ以外はこと姉の仲間になったのか?」
「いや~それがさ」
「ひどいんだよ!」
「「女に従えるか!」」
「とか言う対抗グループや敵対グループがあるってことか?」
「「そうそう、でもこと姉一人で殲滅できちゃうんだよね」」
「できちゃうって・・・何人くらい相手はいるんだよ」
「「10人くらいのグループが・・・4つくらい?」」
「40人の・・・あの町の地球組って全員能力者っぽいよな、それを一人で殺せ・・・倒せると?」
「うん、柊を狙ってるからね」
「あれ?遥、柊のこと言っていいんだっけ?」
「「な、内緒ね!?」」
「あ~まぁその柊って子が・・・滅茶苦茶可愛いか・・・あぁ食料関係か」
普通に考えたら可愛いとかで、敵対しつづけるのは意味わからんな。多分食料・・・生産能力系の子をこと姉は保護してるか確保しているのだろう。
「・・・」
「・・・」
「「・・・」」
二人の目が鋭くなって一度目配せしあった。あれ?まずった?
「落ち着け、別に柊って子をどうにかするつもりも、こと姉と戦いたいわけでもない。そもそも口をすべらせたのは遥だろ?」
「柊の名前は出したけど能力のことは言ってないもん!」
「達也兄さんが予想的中させるのが悪いんだよ!」
「「つまり達也兄さんが悪い!」」
「はいはい、それで?その柊って子を引き渡せとか、俺達にも寄越せとか言ってるんだろ?」
「うん、概ねそんな感じ・・・でもね!」
「そもそも柊の能力をこと姉使わせてないよ!」
「「柊が辛そうだからね!」」
「リスクがあるのか・・・命だったら確かに重いな」
「僕達の中じゃ戦っていいって言われたのは」
「僕と遥だからね」
「「こと姉に頼ってもらったんだ!」」
「それで最優先で塩か・・・こと姉の言うとおりだな」
「「ほんと?」」
「水と塩は最優先だからな・・・食べ物は、最悪怪物がいるし」
「大体ね!柊を助けた時酷かったんだよ!」
「苦しんでるのにさっさとやれって!」
「「ぼっこぼこにしてやったよ!」」
話が飛ぶから話がわかりづらい。辛抱強く話を聞くところによると、こと姉達は柊という子を悪徳非道の悪者から救い出した。柊以外にも戦えなかったり、小さな子を保護している。戦力として数えられるのは双子とこと姉、後は訓練次第。といってもこと姉が策敵・警戒から戦闘・収集まで全てカバー出来るので問題ないとのこと。どんな化け物だこと姉って。そのこと姉もさすがに食料やら重要物資を町の外を把握するのは無理なので、双子が立候補して試験を突破し塩探しにきたとのこと。これは先日聞いたな。
「ふ~ん・・・まぁ必要ないと思うけど、俺も手くらいは貸してやれるから何かあったら頼みきていいぞ」
「「え?本当?」」
「そのこと姉ってのが町をまとめ上げてくれた方が俺としても助かるからな」
「達也兄さんは町作らないの?」
「白炎とかペットにしちゃうくらいだし」
「「王様にもなれそうだよね」」
「政治はさっぱりわからんからパスだ。とにかく今俺達が向かってるのはアルランって町なんだが、町単体じゃ生き残るのは難しいだろうからな、出来ればそこと交流を持ってほしい。アルランからは食料やら物資をこと姉側は・・・戦力か?いや、現代知識使って何か特産作ればいいさ」
こと姉は別格として、能力者の戦力はアルランからしたら欲しいとは思うが、俺のせいというかリス族に柳、そして白炎が戦力として数えられるようになったからな。それに傭兵みたいなこと現代人、しかも女性が子供を保護しながらするなんて許容はしないだろう。
「やっぱりこと姉に会ってよ?」
「いっそのこと付き合っちゃおう?」
「「もうお前ら結婚してしまえ」」
「予約があるんでパスするわ」
「な、やっぱりハーレムか!」
「リア充め!爆発しろ!」
「「私達も娶れ!」」
「遥はともかく彼方は男だろ!」
「大丈夫彼方可愛いから」
「一定の需要はあると思うよ?」
「「問題ない!大丈夫だ!」」
「問題しかねえよ!・・・ん?ワニ君・・・あぁいやヨシテルかどうした?」
両手剣もちのヨシテルが俺の膝元まで来て・・・膝の上に乗った。え?なに?
円らな瞳で俺を見上げた後、双子を牽制しはじめた。
「中身美香入ってないだろうな?」
首を振るヨシテル・・・まぁいいけどよ。
「とにかく、塩は手に入ったんだ、とっととこと姉を安心させてやれ」
「「あ、そうだお願いがあるんだ」」
「・・・お前らの思考回路は繋がってるのか?お願いって?」
「「私(僕)に稽古つけてよ」」
稽古?




