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塩問題

 白炎に力を渡したものの軽い気だるさがあるくらいで、行動に支障がない。むしろ白炎の核のおかげか体力回復が早くなってる気がする。


 皆のところにたどりつき、ケイの案内で治療中のテントに入る。


「あ、たつくん!血は止まったし傷も塞がったんだけど、意識が戻らないの・・・顔も青白いし・・・どうしよう・・・」


 優奈がションボリしながらも寝かせた二人の内背中を傷つけられた子を介抱している。いや、どちらの子も血が足りてないのか青白い、左手を裂かれた子は仰向けで呻いているし、背中の切り裂かれた子はうつ伏せだが、顔を見なくても青白いことがわかる。


 とにかく、優奈の頑張りを無駄にしたくはない。


 いくぞ”両腕変化 白”仰向けの子の心臓の上に左手をうつ伏せの子の心臓の上に右手を・・・両方とも繋がりを作り・・・意識がないせいか、右の子の繋がりが薄い・・・流す力を増やし、無理やり繋がりを作る。

 

 なるほど、相手の状態で受け渡しの効率が変わるのか・・・それとも二人同時な為か、急速に体から力が抜けるのがわかる。まるで血液を流し込んでいる感じだ。


「・・・ん、たつ汗ふく」

「達也の方が青白くなってるわよ?」


 どんどん寒くなるのに汗が止まらない、志乃が拭う傍から汗が流れる。ぬぅ・・・まだか?意識が戻る必要はない、生命活動に問題ない状態になれば・・・大分、血色がよくなってきたか、頬が桜色になったあたりで左手を解除する。右の子はまだだ。


 大分力の渡し方がわかったのか、この子の体が欲しがってる部分に力を流すことができる・・・もう少し・・・もうちょっと・・・その辺りで少し頭がふらついたが美香が支えてくれた。・・・あと・・・これくらい・・・よし。


「ふぅ・・・ちょっと俺も休む、多分大丈夫だけど右の子がやばそうだったら起こしてくれ」


 と声をかけて意識を手放した。






 喉が渇いた・・・瞼は重くて上げられない・・・水が飲みたい・・・体が思うように・・・いや、1ミリも動いてないのか、声は・・・掠れていて息の音くらしか、聞こえない・・・唇に何かがあたる感触とともに少しずつ喉を何かが通っていく・・・水か・・・助かる・・・少しずつ・・・少しずつ流れていく液体とともに段々力が回復していくのを感じる。”回復強化”よし、発動できるくらいには回復してきた。誰が飲ませてくれてるんだろう、多分回復薬ポーションだよな?俺の為とはいえ、今日だけで消費しすぎな気がするが・・・採集は頑張ろう。


 ようやく瞼を上げることができた。覗き込むように見ていた四つの瞳とそれぞれ眼が合う。それと志乃だろうか、お腹に誰かがしがみついている。


「お、起きたねお兄さん?」

「こうしてみると普通のお兄さんだね?」

「「助けてくれてありがとう」」


 それぞれが発言した後、打ち合わせでもしているのかと思うくらい綺麗にハモってお礼を言ってきた。誰だこいつら・・・?


「あれ?誰こいつらって」

「顔してるよ?」

「「はるか彼方かなただよ」」


 そういわれてもどっちがどっちだか・・・顔似てるなお前ら。


「そっちが彼方で」

「あっちが遥だよ」

「「双子なんだよ僕(私)たち」」

「・・・うん?逆だろ?そっちが遥でこっちが彼方だろ?」


 何となく違うことを感じ取り、指摘してやる。治療した時に意識を繋いだせいか、気配を掴めるようになったらしい。二人はビックリしたように顔を見合わせた。というかだな悪戯するのはいいが、俺を騙してどうすんだよ。


「凄いね?こと姉以外に気付かれたよ?」

「こと姉と同じ能力ってことかな?」

「「お兄さんって能力者?」」

「うん、まぁ・・・能力者だが、多分君達が言っている、こと姉とは違う能力だろうよ・・・それはそうと今何時くらいだ?」


 遥のほうがもう夕方だよと教えてくれて、彼方は起き上がる手伝いをしてくれた後テントの外に呼びにいったようだ。残った遥はペットボトルの水を水差しに入れ替え飲ませてくれる。しがみついてる志乃を撫でつつ、怒ってるのかと思ったら寝てるだけだった。


「・・・ありがとうよ・・・遥は起き上がれるようになったのか?」

「うん、お兄さんのおかげだね。ありがとう彼方ともども助かっちゃった」

「そうか・・・それはそうと何で白炎と・・・いや、竜と戦う破目になったんだ?」

「いや~塩だ~ワーイって騒いでいたら、ドカーンッっていきなり襲われたから逃げたの」

「あぁ白炎に何かしたわけじゃないならいいよ、話しはついたし」

「そのびゃくえんってなに?ペットにしたの?」

「いや、取引をしたってだけだな・・・あぁでも主従関係にはなったのか」

「そうなんだ、何て書いてびゃくえんなの?」


 手のひらを差し出してきたので指で白炎と書いてやる。


「あははははは、くすぐったいよ~!」

「おのれぇ・・・白い炎だよ」

「あぁなるほど」


 おや、志乃が起きたようだ。志乃さん?貴方がいるのってこの二人をまだ信用してないから見張りの意味ですよね?って、雪も潰されるように寝てたんかい。


「ん、たつ・・・大丈夫?」

「おかげさまで・・・よく眠れた?」

「何のこと?」


 おや、志乃さんがごまかしという高等テクニックを覚えてしまった・・・不良への第一歩か。

 志乃のほっぺをつまみ上下に弄んでやる。


「んにぃ、うそ、ごめんなさい。たつ・・・顔わるい」

「・・・顔色な?顔悪いって顔面偏差値が低いってことになるぞ?」


 普通なはずだ!コントをしているとニヤニヤした遥につつかれた。


「もしかして・・・お兄さんの彼女さんなの?」

「それはない・・・あぁ待て志乃、え~とご、五年後ならOKだ!」


 なにがだろう?いや、誰に言い訳してんだ俺は・・・まぁ志乃の機嫌が良くなったのでよしとする。


「ん、よやくずみ、あおたがい?」

「志乃・・・ほんとに早く美香と勉強しような・・・頼むから」

「イチャイチャするなー!」


 爆発させるぞ!と怒る遥を相手していると優奈を呼んだのか彼方が帰ってきた。


「たつく~ん!」

「うおっ・・・とと、跳ぶな!危ないだろ」

「えへへ・・・ん~、大丈夫みたいだね」


 テントの入り口からダイブしてきたので受け止めてやる、志乃が潰れたが俺は悪くない。


「・・・ゆうなおもい」

「あ、ごめん志乃ちゃん、いや待って!?重いとか駄目だよ?女の子は軽いんだよ!」

「おもい!」

「なにおー!?」


 はいはい人の膝の上で喧嘩するんじゃない、彼方も苦笑いしてるじゃないか。


「仲が良いんですね、兄妹なんですか?」

「いや?この世界に来る前から赤の他人だ・・・今は違うだろ?泣きそうになるなよ」

「ん、たつはてれやさん」

「もぅ!大事な人です!って言えばいいじゃん!」

「はいはい」


 話が進まん!とりあえず遥と彼方を交えて話を聞くことにする。いや、その前に


「フリッツさん達はなんて?」

「あ、えっとね、洞窟の調査を進めてるみたい・・・そうそうたつくんの変わりに私が守ろうっておっきな竜さんがついていってくれたよ、みっちゃんと冬華さん達は食事の準備中~」

「白炎が?まだ指示も出してないのに結構良いやつだな」

「びゃくえんって名前なの?」

「つけろっていうからつけた」

「ふへ~・・・たつくん名づけ親マスターになりつつあるね」

「考えるのは凄い大変何だぞ、まぁ状況はわかった、それでこの二人に関しては何か聞いたのか?」

「ううん、キサラギが聞くのが筋だろうってフリッツさんが言ってたよ」

「さよけ」


 二人に目をやると、待ってましたとばかりに話し始めた。


「私は遥!」

「僕は彼方!」

「「双子なんだ!」」

「そ、そうか」


 この二人の独特の発声はわざとなのか?いや、どうやってだよ。双子特有の何かと思っておこう。


「まさかと思うがハモるのって能力か何かか?」

「いやいや」

「そんなわけ」

「「ないよ?」」

「狙ってやらんでいいわい・・・俺は如月達也だ」

「何歳なの?」

「20歳だな」

「おぉ僕達は14歳さ」


 優奈と同い歳か・・・。


「そうか、それでここにいたのは塩を探していたのか?」

「こと姉に頼まれたんだ」

「海か塩を含んでる岩を」

「「探してきてくれってさ」」

「ふ~ん・・・どこから来たんだ?」


 それを聞くと二人は悩みだした。どうやら町の名前がわからないらしい。もしかして俺達が最初にいた町からか?


「方角はわかるのか?」

「私が方向感覚しっかりしてるからね、大丈夫だよ!」

「僕は方向音痴だけどね」

「「いざとなったら空から探せるからね」」

「飛べるのか・・・まぁいいや、多分だけど俺達同じ町から来てると思うぞ」

「そうなの?」

「確信はないけどな・・・アルランという町は通ったのか?」

「うん?町は見なかったなぁ・・・森を抜けて岩がいっぱいのところを通ってきたから」

「そうか、よく見つけられたな」

「いや~雨降った後だったでしょ?」

「何か潮の匂いがするな~って思ったら」

「「目の前の地面がぽっかり崩れたの」」

「なるほど、雨のせいで出来た洞くつだったのか、それに溶けた塩が匂いをとらえやすくしたんだな」


 さて・・・問題はアルランとこの双子の町・・・集団との取り分の話になるんだが、どうするかな。


「遥と彼方は塩を運搬できる能力は持っているのか?」

「ううん、僕らは戦闘力が高いから」

「こと姉に頼まれたのさ」

「「見つけてくれればそれでいいってね」」

「あぁそういうことか・・・探るわけじゃないんだが、そのこと姉の仲間には運搬出来る人はいるのか?」

「う~ん、何人かいるにはいるけど」

「ここまで来るとなると」

「「こと姉が来たほうが早そう?」」

「そのこと姉ってのは凄いんだな」

「うちの最強戦力だし」

「僕らの保護者だし」

「「もうこと姉だけでいいんじゃないかな?」」

「よく二人だけの行動許したな?」

「私達が外に出たい~って」

「騒いでたら試験受けさせられて」

「「合格したから頼まれたの」」

「・・・予想するに、そのこと姉と戦って生き残ることか?」

「「正解!」」


 二人が言うには二人掛かりでカスリ傷どころか近づくことも出来なかったけど、何とか外に出るだけの力を見せられたらしい。


「にしては、二人とも死にかけたけどな?」


 意地悪をするつもりはないが、諌める為にも嫌味っぽく言ってやる。途端あからさまに二人は落ち込み二人揃って膝を抱えた。


「私達だってこと姉の役に立てるんだって」

「大変そうなこと姉を助けるんだって」

「「やっぱり駄目なのかな・・・」」

「あぁ待て待て落ち込むのはいいが、うっとおしいからやめろ」


 俺の言葉に二人は目を見開いて・・・ショックを受けたようだが。


「俺が保護者じゃないんだ、ここで落ち込んだって慰めないぞ?こと姉に頼まれたことは達成出来たんだから胸を張っとけ、確かに失敗はしたが助けられたんだから今回は成功と思っておけ。まぁ毎回助けがあると勘違いはしないようにすればいいだろ」

「むぅ・・・これが達也兄さん風の」

「激励なの?慰めてくれてるの?」

「「厳しいね!」」

「うちの子じゃなければ・・・あ~えっと、俺の庇護下にないんだから仕方ないだろ。俺はもう手のかかる女の子を3人抱えてるんだよ」

「3人って・・・」

「・・・ハーレム?」

「「爆発しろ!」」

「やかましい!」


 話がそれたな、とりあえずそのこと姉というのが代表者なら、アルランの町と協議でも何でもしてほしいんだけどな。戦力とか人数を聞くのはフェアじゃないから・・・どうするか、直接俺が会いにいってみるか?


「ん、たつばくえん帰ってきた」

白炎びゃくえんな志乃?こういう字だから覚えてあげてくれ」

「ん・・・くすぐったい・・・ん、わかった。白炎びゃくえん


『小娘が白炎の名前を気安く呼ぶでないわ』


 テントのすぐ傍まで来てたのか、近くから白炎の思念が飛んできた。とりあえずまぁ俺は笑みを顔に貼り付けて外に出る。優奈は退避ーっと言いながらしがみついてきた、退避なら離れるべきじゃないか?


『如月達也・・・ようやく起きたか、全く守護しろというから洞窟に入る許可と洞窟内の魔物は殺してやったが・・・っておい、何だ如月達也!何だその気配は!と、止まれ!それ以上白炎に近づくな!』


 いやいや”左腕変化 精神体 黒”しつけは飼い主の義務って言うじゃないか?


『な、なんだその腕は!?イタイタイタイタイタイタイ!ま、待て!白炎が何かしたのか!?不手際をしたのか!?反逆なんぞ考えておらんぞ!?』


 左腕で頭を掴みつつしつけをする。志乃の頭を右手で撫でながら紹介してやる。


「この子は志乃・・・しがみついてるのは優奈、俺と同じく・・・いや、俺より上のご主人様として守護しろよ?わかった?」


『え?いや、如月達也が我の唯一の主では・・・痛い痛い!わ、わかった!し、志乃と優奈も主だ!わかったから!離してくれええええええ!』


「うむ・・・それとな、見た目で判断すると痛い目を見るからとりあえずその小さき者とか言う傲慢をへし折ろうか?」


『な、何をするんだ!?さっきから何なのだ!?何に怒っているのだ如月達也・・・あ゛あ・ああ・・あ゛・あ・あ゛・・あ・あ゛・あ・あ・あ゛・ああ・・・・あ゛あ゛あああ゛あああっー!!!」


 しばらくの間お待ち下さい、飼い主によるペットのしつけ中です。








『に、人間怖い人間怖い人間怖い・・・優奈様と志乃様と美香様・・・優奈様と志乃様と美香様・・・ぶつぶつ』


「よし、とりあえずこんなもんか」

「た、たつくん何もそこまでしなくても」

「ん、たつはおに」

「ご飯作ってる間に一体何が・・・それにえっと白炎だったかしら?どうかしたの?この子」

「こいつの為でもあるからな」


 まぁ白炎どころか双子も・・・ケイとオルトとレイクもビビっていたが、必要なことには手を抜かないぞ俺は。


 とりあえず、白炎を叩いて『アイタ!?』現実に引き戻し、白炎を交えて塩を欲しがってる勢力がアルラン以外にもあることを伝える。

 ただ、それに関しては白炎の方から解決策が出された。


「この角がねぇ・・・本当か?」


『う、嘘じゃない!本来折れることはないのだが・・・如月達也が折ってしまったからな・・・とにかくそれがあれば、2匹の小さき・・・ま、待て!えっと・・・遥と彼方?・・・うむ、遥と彼方の方の塩事情が解決するだろう』


 ちょっとしつけが厳しすぎたのか支離滅裂な白炎の説明を要約すると、俺が折った角は塩竜の力の源であったらしく、水にでもつけておけばほぼ無限に塩水が取れるとのことだ・・・質量保存の法則・・・いや便利だからいいけどよ。力の源折ったけどいいのかとも思ったが、俺から力をそれ以上にもらえたし、その内さらに強力になって生えるとのこと。


「つまり、遥と彼方に渡した角がなくなったらまた折ればいいんだろ?」


『つ、次はそう簡単には折れないからな!それに折られてたとしても第二第三の角が・・・お、折らないでくれると嬉しい』


「なくなったら折るかもな、俺じゃなくてこと姉という人が」


『人間怖すぎる・・・白炎はなんでこんな種族に喧嘩を売ったのだ?』


「無知は怖いことを知れて良かったな?」


 とにかく角は双子にあげることにした。所有権は折った俺にあるらしいし、あげたほうが面倒がない。


「いいの?達也兄さん?」

「これって実際凄い貴重だよね?」

「「太っ腹~!」」

「ま、こと姉という人にもよろしく言っておいてくれればいいよ」

「うん、こと姉もお礼を言いにくると思うよ?」

「敵には容赦しないし、スケベは潰しちゃうけど」

「「すっごい優しいんだ!」」


 まぁあげるにはあげるが、二人共回復しきっていないのでアルランで全快するまでは俺が預かることになった。フリッツさんは角をあげることに渋い顔していたが、俺と争うことになるのを考えると決定を覆せないだろう。それにアルラン以外に町があるなら交易の道も出来るからな。この双子に恩を売っておくのは町にとっても有利に働くだろう。そのこと姉の話を聞く限りでは義理は果たすタイプみたいだし。


「とにかく、サナダのボックスに詰め込んだ分があれば、当分は大丈夫だろう。白炎様は本当に守護してくださるのか?キサラギ」

「大丈夫ですよ、フリッツさん。不義理したら死ぬだけですし」


『さ、逆らわないぞ!・・・白炎を削って使うとか言わないよな?』


「あぁ白炎言い忘れてた」


『な、なんだ!?まだ、白炎をいじめるのか?』


「いじめないって・・・白炎があまりにも不快に思ったり、攻撃してくる奴は問答無用で殺していいぞ。そいつらはお前のいう小さき者だ、容赦しなくていい」


『たまに如月達也が凄く恐ろしく見えるのだが・・・』


「それと俺は達也でいい」


『わかった、達也・・・人間側が不義理をしない限りは守護をする事を誓う』


 よし、とりあえず明日の朝はとっととアルランに帰るぞ。

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