雨上がり
「グルグルグル」
「チチチチチ」
雨が上がったので蒼を散歩に連れ出すことにした、いつのまにか雪は蒼の上に乗っていた。名前をつけてから喧嘩しなくなったなこの二人。
ついでにエナとケーナを家に帰してきた。さすがに4日くらいお泊りになったからな、エナはともかくケーナはホームシック寸前だった。それでも雨がやむまではたつにいといる!と聞かなかったけど。
アルランの町はそれなりに舗装はしっかりしていたけど、さすがに地球ほど水はけが良いわけではないので土の塊やら穴が出来ている。まぁ人的被害も物的被害もないようだしな。長期の雨ではあったけど、風も吹かなかったのが幸いしたのだとは思うけど。蒼は靴を履いている。美香お手製のブーツだ。あまりにも外に出たがるので、これで我慢しなさいと蒼に美香が作ってやったのだ。作ってもらってから1日中それを抱えて早くやめとでもいうようにずっと外を見ていた。
それを見て志乃が照る照る坊主を作り初めて、なぜか美香がノリ気になって布で作った巨大な照る照る坊主が家に吊るされた。一人暮らしのエネス婆さんの様子を見に来た何人かが腰を抜かして逃げていったので、外そうとするもちびっ娘達に止められるし。
「ガルル?」「チチチ?」
いつの間にか足が止まっていたのか二人が不思議そうに俺を見上げたので、何でもないというように首を振り歩く。
訓練もその間出来なかったらしく、さっそく訓練場の整備をしてるのを横目にみつつ町を軽く周って帰る。
「たつくん、おかえり~」
「ただいま優奈。あれ?優奈が出迎えって珍しいな?回復薬はもういいのか?」
「うん!とりあえず高品質は5本出来たんだ!5本中4本は3級だけど」
「そうなのか?ちなみに3級じゃないやつは1級だったのか?」
「ううん、2級なの」
「そうか、まぁ3級でも十分なんだろ?」
「う~ん、1級を目指してるんだけど・・・たつくんに効くかが問題だよね」
俺に効く?そういえば柳は俺には回復魔法?呪文?が効きづらいと言っていたな、それを気にして頑張ってくれてたのかな?怪我しすぎだよな俺。無理するなとか言うつもりはないので、頭を撫でてから家に入る。
「えへへ、頑張る!」
優奈は井戸に用事があるようでそのまま井戸の方へ、雪と蒼もなぜかついていった。
家に入るとエネス婆さんが待ってましたとばかりに声をかけてきた。
「おぉタツヤ殿帰って来られましたな?とりあえず、回復薬は完成といっていいでしょう。効果も確認ずみです」
「そうですか、じゃぁ準備が出来次第第二調査隊出発ですかね」
「そうですのう・・・ところでタツヤ殿に効くか試して欲しいのじゃが、この中品質飲んでみないかの?2級なのですが」
「わかりました」
小さい陶器からコップに注がれた薄緑色の液体を飲んでみる。
味は、まぁ薬っぽい味と言うか独特な甘みがあるかな?苦くないので子供でも飲みやすいだろうな。飲んだはしから体に活力が漲るのがわかる。体感でわかるとか凄いもんだな。
「かなり効果ありますねこれ、体感ですが・・・凄い効果があるのがわかります。生憎と怪我したり疲れてるわけじゃないから、検証としては微妙かもしれませんが」
「いやいや、タツヤ殿に効くかが重要なので効いてるなら成功なのですよ」
「俺に効けば成功?」
「ヤナギ様がいうにはタツヤ殿の身体は変化と進化・・・それに何か別の要因もあるようじゃが直接的な薬や魔法・・・回復や毒物に対しての耐性があるとのことなのですよ、じゃからユウナは品質に拘っていたのですよ」
効きづらいのか・・・毒物はともかく薬に耐性がついてるのは困るな。
「まぁその辺はユウナが何とか出来ると思うので、大丈夫じゃろうて」
「エネス婆さんもありがとうございます、あんなに夜遅くまで付き合ってもらって」
「いやいや、薬師冥利につきる時間でしたぞ?得難い経験でしたな」
心なしか若返っているようにも見えるんだけど・・・回復薬の副次効果とか、いわないよな?
昼頃俺達は町長さんの家に・・・行こうとしたがエネス婆さんの助言で役場の方に向った。実際役場にいたけど、そりゃそうか。
「おぉ、キサラギ殿そろそろ来てもらおうかと迎えを出そうかと思ってたところです」
「雨が上がったんで、状況が動くかなと」
「そうですな、詳しくはフリッツとウォルにお願いしますよ」
町長さんが目を向けた先にテーブルを囲んで調査団メンバーが全員揃っていた。オルトとレイクもちゃんといる。
「おう、キサラギ来たか。明日には西に行こうと思うがいいか?」
「いいですよ、補充は今日中に出来ますか?」
「あぁ、サナダの嬢ちゃんが大丈夫なら、今から保管してもらうか」
「わかりました、志乃よろしくな?」
「ん、しまっちゃう」
荷物はそれでいいとして先に聞きたいことを聞いておこう。
「ウォルさん川への影響どう考えてます?」
「そうだな・・・大雨ってわけじゃなかったが長時間降ったからな、氾濫してるのは確実だと思うが、町から見える範囲では変化がないから川まで行ってみるしかないな」
「町に影響がないのはよかったですね」
「あぁ・・・後は、とんでもないことになってなければいいんだが・・・期待は薄いな」
そこまで話していると荷物を取りにいくぞと声をかけられて外に出る。
「む、貴様は・・・」
あぁまた会ってしもうた・・・えっと・・・ゴゴール・グルさんだっけ?
「グルさん?」
「ゴルだ!相変わらずふざけた奴だな!」
「すみません」
「ふんっ!・・・また調査に行くきか」
「明日には行くみたいですよ」
「無駄なことを・・・それで、貴様はいつまで町にいるのだ」
「さぁ・・・いつかは出て行きますけど」
「その時はわしの護衛として雇うからな」
「・・・」
「おい!返事はどうした!」
「気が向いたらで」
この人怒ってばっかりなんですが・・・志乃は我関せずとばかりに異次元ボックスをあけて、荷物をしまい始めてるし。
「・・・その娘が何でも持ち運べる能力の持ち主か?」
「・・・そうですけど?」
否定しようにも、意味がないレベルには浸透してるからな。
「その能力は莫大な利益を生み出せるとお前は理解しているか?」
「使いどころですね、まぁだからといってそんなことしませんけど」
「・・・その娘はわしが預かろう」
「あ゛?」
視界が暗くなり、ゴルに俺の威圧が集中していく。ゴルを中心に人が尻餅をついたり腰が抜けたのか這って離れていく。取り巻きは白目をむいて倒れた。ゴルはさすがの商人の胆力か歯を食い縛って青ざめている。それでも日本の足で立っているが。
「預かるって何を言ってるんですか?」
「そ、そそその能力を活かせば!しししょ、商売としては神にだってなれるのだぞ!」
「だから?」
「だだ、だから・・・わしがそれを・・いか・・・」
話の最中も俺の威圧が高まっていたのか、舌がもつれしまいには倒れた。
「ん、たつ」
終わったと判断したのか、志乃が俺を引っ張ってきたので・・・落ち着こう。片手を顔において目頭を揉む。威圧すると目が疲れるのは何でだろう。
「たつ?」
「たつくん回復薬目薬みたいにさしてみる?」
「ん、あぁ・・・いや、大丈夫だ」
周囲を見回せば、特に騒ぎが起こってない・・・あれ?
「そりゃ兄貴に喧嘩売ってる人に同情とかする人いないって」
ケイの説明が全てなようで、見ていた人間は全員頷いていた。それはいいけどゴルさんと取り巻きどうするかな。
「放っておけばいい、ほれミカの嬢ちゃん・・・頼まれてたやつだ」
「ありがとうございます!志乃これもお願い」
「ん、開けた」
トムスさんが美香に何か細長い箱を渡そうとして・・・重すぎたのか落としそうになったのを掴み取る。
「何これ?」
「なんだ聞いてなかったのか?何でもワニ?が使う装備が欲しいと前から頼まれていたんだが・・・雨の中、人形が尋ねてきたんだぞ、びっくりしたわい」
「ワニ君達が武器が欲しいって懇願してきたのよ・・・私は武器は作れないから、トムスさんにお願いしようかなって思ったら自分達で行くっていうからメモを持たせて送ってみたのよ」
「お、おう?ワニ君達は強くなるのに余念がないんだな」
念の為箱の中身を見てみよう・・・槍?剣?斧?盾?なんか色々入ってるんだが・・・4匹だったよな?疑問に思ってトムスさんを見る。
「ん?あぁ中身の多さが気になったか?まぁ雨の間ずっと俺のところで武器の訓練と選定していたからな大丈夫だ、俺が保証する」
「そうですか・・・いや、いいんですが。代金はどうします?」
「ん?ワニが毛皮とか鉱石を渡してくれたからいらんぞ?毛皮もそうだがあれだけの純度の鉱石をよく見つけたものだ」
「いつのまに・・・巡回中に拾ったのか?いやどこにしまってたんだろ」
「ん、わにさんの預かってた」
あぁ志乃ね、そりゃそうか。とにかく木箱を武器用の異次元ボックスに入れておく。魔王核とかいうのが黒く光るとかいう「おい!何で無視するのじゃ!」謎現象をしているのを確認して出る。「おーい!」
「たつ、あのくろいたまどうするの?」
「放置だ放置!関わると碌なことにならない気がする!」
「だったらたつくん、捨てればいいんじゃないの?」
「いつのまにか枕元にありそうで怖いんだよ」
さすがに邪魔だったので、ゴルさん一行を道路の端によせておいて、荷物をしまう作業を終わらせる。
「よし、これでいいだろう・・・キサラギは今日はどこに泊まるんだ?」
「多分ルッドさん宅だと思いますよ」
「わかった、じゃぁ明日は朝に西門集合でいいな?」
「わかりました」
ところでゴルさんの時3人共・・・いや6人共大人しかったな?
「たつくんがやらなかったら私がケチョンケチョンにしたよ?」
「ん、たたく」
「志乃、ちょっと勉強が必要だと私も思ったわ?寝る前とか少しお話しましょうね?」
「ヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ」
「チチチチチチチ」
「ガルルル」
後半の3人はさっぱりわからん。
「おに~ちゃんおかえりなさい!」
待ち構えていたのか、玄関前でエナに捕まった。
「あらあらタツヤさん何だかお久しぶりです」
「おや、今日はうちに泊まれるのかい?」
夫妻も出てきた、歓迎されるのは悪くない・・・メリーさんは抱きつこうとしないでください。ほらルッドおじさんが!
「むむむ、泊まるのはいいが、メリーもエナも渡さないぞ!」
それでも泊めてくれるおじさんに惚れそうです。




