肩こりから致命傷まで
「優奈?ご飯出来たんだが・・・進捗はどうなんだ?」
「たつくん?しんちょくってなに?」
「え?あぁ・・・進行具合ってことだ」
「えっとね、もう少しかな?」
夕食が出来たので呼びに来たんだが・・・何してんだ?冬華が鍋をもって、鍋を回転させている。片手で鍋を持ち逆の手で回転をつけている。バスケットボールとかを指で回すみたいに横回転に。それ意味あんの?
「これはですな・・・分離させる為なんですじゃ」
「分離っていうと」
シリウスが器用に高速回転させている鍋を邪魔にならないように覗いてみる。いつから回してるかは知らないけど、確かに内側と外側で色とか質感が違う。遠心分離ってやつか?
「ユウナによると分離させた後しばらく放置し、上澄みが回復薬になるそうですじゃ。沈んだ固形物は搾りカスということですな」
「ほぉ~・・・でもこの回転の仕方は・・・冬華しか出来ないのでは?」
「そうですなぁ・・・ろくろを借りてくれば、ある程度は再現できると思うのじゃが、トウカ殿ほどの抽出は難しいですのう」
「棒でかき回すのは駄目なんですか?」
その質問には優奈が答える。
「えっとね、ハっちゃんによると・・・とにかく横回転だ!何だよね」
液晶を見せてもらうと、確かに画面の中で壷がクルクル回っている・・・説明に映像まで使えるのかよ。
「それで、横回転の回数分だけ効果も取れる量も増えるの」
「なるほど」
「あ、トウカさんそこまででいいよ~ありがとう」
「ヂヂ」
頷いた冬華がゆっくりと鍋をテーブルに置いた。回転が少しずつ収まり鍋の中が安定するにしたがい濃い緑色の固形物は沈み、薄緑色の液体が上にくる。この澄んだ薄緑色の部分が回復薬になるのか・・・不思議と美味しそうなイメージを受けるな。匂いは・・・この地下室がそもそも薬の匂いで充満してるからよくわからん。
「ちょっと飲んでみよっか」
優奈が木杓子ですくって飲もうとしたので一旦止める。
「ふぇ?何で大丈夫だよ?」
「一応チェッカー君で調べとけ」
「え~?・・・む~・・・うん」
「出来を疑ってるわけじゃないよ、念の為なんだから膨れるな」
「んにゅ・・・えへへ・・・しょうがないなぁ」
頭を撫でてやり、チェッカー君にチェックさせる・・・画面を見れば高品質ポーション3級と出ている。級まで出んのかよ。えっとなになに・・・患部に塗るもよし、飲んでもよし、肩こりから致命傷まであらゆる怪我病気に対して効果あり・・・範囲広いな!?
「ペロッ・・・うん、味も特に問題ないね!これで3級かぁ・・・結構頑張ったのにね」
「最初の泥のような物よりは格段に進化しとるでな、ユウナあまり気を落とすのではないよ」
「大丈夫だよエネ婆ちゃん、3級だと・・・うん、致命傷にも効果あるのか~」
「致命傷の幅にもよるが・・・まぁ凄いのは何となくわかった」
「後は、清潔な容器だね!」
「ガラス何てないみたいだけど・・・どうするんだ?」
「・・・あ、ないんだっけ?・・・たつくんどうしよう?」
「・・・ガラスの精製なんぞ俺にはわからん・・・砂集めて火にかければいいのか?」
確か砂がガラスなんじゃなくてガラスの素となる粒が含まれるとかだったような・・・勉強しっかりしとくんだったな。適当に砂・・・砂?砂って土じゃないよな?ってことは・・・川までいかないと駄目か?川に砂あったっけ?石だらけだったような。川の中にはあるかな?
「ふむ・・・がらすですかな?それは何なのですかな?」
悩む俺達を見て、エネス婆さんが質問してくる。
実際に見せようにも志乃はまだ起こしてないから、なんか透明で硬いけどもろいやつですと説明する。
「ふむ・・・それですと陶器でも構わないのですよね?」
「あ、そりゃそうか」
「地球だと薬イコールガラス瓶だったもんね・・・清潔なら陶器でも大丈夫だね!」
清潔な容器ならあるので、とりあえず沈殿させるため放置することになった。
「ところでみっちゃんは?」
「あ、そうだったご飯だよご飯・・・早く上に行ってくれ、忘れてたとか言ったら怒られる」
「は~い」「ヂヂヂ」「チチチ」「ガルル」
「おや、夕食を作って頂いていましたか・・・すみませぬのう」
「あぁいえ、むしろ食材勝手に使わせてもらっちゃって・・・」
その辺は配給なので問題ないですじゃ、と声を聞きつつ眠ってる3人娘を起こす。
「志乃、エナ、ケーナ・・・起きろ~ご飯はちゃんと食べてくれ」
眠っている3人の頬を叩くが・・・『息吹は暖かな風とともに呼び覚ます”目覚”』柳が何やら呟き、3人に白い霧が流れ・・・3人共目を覚ました。
「便利なのは便利なんだけど、その文言って・・・何か適当くさいな?
『失礼な・・・適当ですけど・・・一応前文があった方が効果は上がりますので』
即興だったのかよ!いや、違うよ!俺の疑問は最後の発動文言だよ!あっちが適当じゃないんかい!
『そっちは正式ですよ?何かおかしいですか?』
「もういいよ・・・ほら、ご飯食べに行くよ」
「ん・・・ごはん?」
「あれ?おかえりおに~ちゃん」
「たつにいだっこ~」
ケーナを抱きかかえて皆の後に続いて上へ、別に先頭をいかないのは美香に怒られないようにするためではない。
「遅かったわね?達也?見てたわよね?達也はご飯は冷めてた方が好きなのかしら?毎日冷やし中華がいいのかしら?」
階段を上ると般若がいた。
「ごめんね、みっちゃん・・・調合がキリ悪かったから待ってもらったの」
「そうなの?なら・・・仕方ないわね、スープだけ温め直すから冬華ちょっと手伝ってくれる?」
「ヂヂヂ」
助かった優奈!ケーナごと抱きしめて頭を撫でてやる。
「わわわわわわわわ!?た、たつくん!?」
あ、さっきの話のせいか、本当に雪と蒼に対するスキンシップみたいになったわ・・・まぁいいや。
「え!?続けるの!?・・・あぅいいけど・・・あぅあぅ」
「ん、たつどうしたの?」
不思議がる志乃をよそにスープが温まるまで存分に撫でてやった。うむ、怒った美香を鎮めたのは俺的には相当嬉しかったらしい。
「それで回復薬?は完成したの?」
食事が終わり後片付けの後、食休みでお茶を飲んでいると美香が質問してきた。まぁ答えるべき優奈が地下室にまた篭ったからなんだろうけど。
「一応高品質ポーション3級だったか?が出来てたな」
「あ、成功したのね。・・・一日で成功するものなの?」
「さぁ?」
基準がわからん、でもまぁ調合方法自体はハカセが研究してくれるからな。普通に調べて何種類も薬草を何通りの方法で調合すれば回復薬になるとか調べるだけで一生が終わりそうだ。そう考えれば、1日で完成品が出来てもおかしくはないかもしれない。
実際は冬華の力とエネス婆さんの技量、そして優奈のハカセによる複合効果で出来たわけであって。回復薬が出来る事実があったとしても1世代で作れるものではない。ましてや、1日とかありえない。どれだけのことをしてるのかこの一行は全く理解していないのだ。
「効果はどんな感じなの?栄養ドリンクみたいな感じなの?」
「肩こりから致命傷まで効くらしいぞ・・・チェッカー君によると」
「・・・えっと?飲んでも塗ってもいいのよね?幅広くない?」
「万能薬なんだろ?地球で売ったら大もうけ出来そうだな」
「そういえばこの世界の経済ってどうなるのかしら?」
経済以前に流通がないんだよな、貨幣価値ってどうやって決めるんだ?国が決めるんだっけ?いや、信用が高い人が保証として作ればいいのか・・・どっちにしろ王様とか国か。
「どちらにせよ、この町以外・・・俺達が前にいたあの町なのは無理だから、普通に集団で生活してる集落がいくつかないと経済なんて発生しないだろうな、商人はいるから・・・経路さえ確保出来ればすぐに生まれるとは思うけど」
「それもそうね・・・最初は物々交換になりそうね」
物々交換で済めばいいけどな、アルランは食料事情が豊かだけど全部の町がそうではないだろう。ないならどうする?作れないならどうする?長期的に考える頭があるなら移住するなり、狩猟するなり手はあるだろうけど、短絡的に奪おうとする奴が皆無なんてことはありえない。
「何で怖い顔してるの?」
「・・・俺って顔に出やすいのか?」
ポーカーフェイスは得意だと・・・思う、うん。
「顔というか、雰囲気?何ていうのかな?わかりやすい?」
「ぐふぅ」
「まぁ、あんまり達也が気に病むことでもないでしょ?それとも何とか出来るの?」
「無理だな」
「じゃぁ考えるのはいいけど、それをどうにかしようと考えない方がいいわよ?」
「そうだな」
次の調査が回復薬の完成待ってという話だったか・・・ん?この音って。
「あら、雨かしら・・・そういえば、この世界で雨って初めてね」
「タイミングいいなぁおい」
まるで雨を降らすの忘れてたから降らしてみるかみたいな感じなんだが・・・まさかな。
窓の外の雨をしばらく眺めていたが、ここは薬師の家だったのを思い出して、戸締りをしっかりした。
「この分だと優奈達は朝までするのかしら?」
「適当に寝るとは思うけどな・・・まぁ冬華もエネ婆さんもついてるから大丈夫だろ」
「そうね・・・ところで患者さん用のベッド使うしかないのかしら?」
薬草専門とはいえ施療院もかねていたのか、病人用の部屋もきちんとあった。とりあえずここを使う許可をもらって・・・また3幼女は床で寝ていたので、一人ずつ抱きかかえてベッドまで運ぶ。
優奈は集中しすぎて俺の声も届かなかったので、小声でおやすみと言って地下室から出た。
『私は寝る必要はないので見ておきますよ、その代わりと言っては何ですが、ケーナをお願いします』
あいよ、うちのお姫様を頼んだ。
ま、まだ1時間更新するのかい?
「もう少しで好きな場面にいけるんだ!」
もう少し日常描写減らせばいいじゃないか
「全部書きたいんだ!」




