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回復薬(ポーション)

 着いた頃には日も暮れて真っ暗になっていた。月がなく、星の光だけなのでこの世界では夜は本当に真っ暗になる。夜目がきけばまた違うのだろうけど。


「あ、達也会議は終わったの?」


 ノックをして出てきたのは家主ではなく美香だった。


「今、エネお婆さん手が離せないのよ・・・優奈と二人で凄いわよ?」


 何となく想像はできるが、美香の案内で地下への階段を降りる。ケーナを抱いてるままなので慎重に・・・とはいっても暗くはなく、下から漏れる明かりで大分歩きやすい。日も暮れたし、帰りたいんだけど、どうするかな。


 階段を降りきって開いてるドアから中に入る。中では志乃とケーナが二人共毛布に包まって寝ており、テーブルの上には様々な薬草と木の実、それにすり鉢と・・・潰すやつなんて言ったっけ?


「すりこぎよ」


 美香に言われ思い出す。それ以外はよくわからん、色んな器具が散乱しているテーブルの上で一心不乱に何かをしている優奈とエネ婆さん。正直鬼気迫っていて怖い。何でこんな必死にやってるのこの二人。


「着いてすぐ、ずっとこんな感じよ?志乃とエナも最初は見ていたけどすることもなかったから寝ちゃったわ」


 2時間くらいだと思うけど、ずっとやってんの?よく集中力続くな。

 いや、そんなことよりもう夜なんだけど、どうするのさ?


『このままここにお泊りになるのでは?私はてっきりそうするものだと思っていましたが』


「そうね・・・優奈を置いていくのは・・・達也が嫌よね?」

「嫌ってわけじゃないけど、心配ではあるな。・・・あれ?そういやシリ・・・冬華は?」

「冬華ならあっちよ、ほら二人の向こう」


 美香に言われて優奈とエネ婆さんの向こうを覗くと、冬華がこちらに背を向けて何か作業しているのがわかる。雪と蒼はその冬華の傍にいる。何してんだ?


「優奈達のお手伝いで、ひたすらすり潰してるのよ。私も少しは手伝ったけど力が足りなくて」

「そんなに力いるのか」

「冬華がしてるのは相当硬いのよ・・・私じゃ実を潰すことも出来なかったわよ」


 しばらく見ていたが、動きがないので夕食を作りに2階に上がる。ケーナは反応がなかったのに不思議に思って見たら寝ていた。とりあえず志乃とエナと一緒に寝かせ、柳にこの場を頼んだ。


「えっと、勝手に台所使っていいのかしら?」

「まぁいいだろ・・・あ、材料どうするか・・・志乃起こすのもな」

「・・・まぁ後で断るか、補充すればいいと思うわ。とりあえずここにあるもので・・・」


 ガサゴソと戸棚を漁る美香を後ろから眺める。俺も一緒に来たのはいいんだが、別に役立つわけじゃないから、後ろから美香を見ることしか出来ない。いや、手伝えるとこは手伝うけどさ。


「そうね・・・これだけあるなら・・・って達也?あんまり人のお尻見ないで?」

「べべべべつに、尻見てたわけじゃないし!」


 ちょびっとだけだし!


「ふふ、達也も結構初心よね・・・(別に見るのは構わないけど)・・・とりあえず、これの皮むいて・・・包丁使えたかしら?」

「おーう、頑張る」


 ジャガイモっぽいなにかを受け取り、皮を剥いていく。包丁で剥いたことなんてないな、いやいや料理をほとんどしないから包丁以外でもほとんど剥いたことないよ。うん、芽はないからジャガイモよりは何とか・・・何とか・・・。





「えっと・・・達也って意外と不器用?」

「れ、練習と思ってくれ!」

「いいけど・・・そもそも持ち方が違うわよ・・・何で利き手と逆に持ってるのよ」


 え?普通右手じゃないの?


「利き手でいいわよ・・・ほら、こう持って」


 美香が包丁を入れ替え手を添えて指導してくれる。うむ・・・柔らかいです。違った、スルスルと魔法のように皮が剥けていく。おぉ・・・こんな簡単に切れるもんなんだな、手を添えてもらってるだけでこんな簡単に剥けるのか・・・ってあれ?これ実も剥き始めてないか?


「おい?美香?」

「・・・」


 薄く切る必要でもあんの?でも皮と一緒に器に入っているんだけど・・・皮も使えるの?じゃぁ何で皮剥いてんの?


「おーい?美香?」

「・・・」


 しまいには豆粒程になってしまった・・・さすがにこれ以上は危険と判断して手の動きを止める。


「美香?」


 そもそも後ろに回って抱きつく形で補助してもらっていたから、美香からはほとんど見えてないよな。今更気づくが中々恐ろしいことをしやがる。思いながら美香に向き合う。ってあぁ・・・。


 少し低いだけの身長差でしかない美香の頭が見える、俯いているのだ。耳は真っ赤だし、勢いでやったが恥ずかしかったのか。顔の前で手のひらを振ってやる。


「え、あ、うん、えっと?」

「落ち着け、皮は剥いたはいいが・・・こんな感じだが使うのこれ?」

「え?ちょ!?どうして止めなかったのよ!」


 気持ちよかったからボケーッとしてたとは言えないので、美香が止まらなかったから、こういうものかと思ったと言っておく。


「そんなわけないでしょ!もぅ・・・とりあえず私がやっちゃうわ?いい?」

「いや、そりゃいいけど」

「あ、別に達也が悪いわけじゃないわよ?私が悪かっただけよね」

「何とも言えません」

「そうしといて?えっと・・・座って見ててくれればいいから」

「イエッサー」


 邪魔にしかならないので、大人しく座っていることにする。おのれジャガイモもどきめ。


「達也はさ」

「ん?」


 美香が何かを煮込んだところで声を掛けてきた。何だろ深刻そうな雰囲気が。


「私達のことをどう思っているの?」


 お、おう?今こんな場面でその答えを求めてくるとな?しかも私達か。はぐらかすつもりもないが、恋愛感情とかの話だよな。実際問題・・・保護者の気持ちの方が大きいんだよな。


「今は保護者の気持ちが大きいな」

「それは・・・私達の誰も駄目ってこと?」

「駄目ってのが、恋人とか夫婦って意味ならちょっと違うな」

「はぐらかすの?」

「いやな、根本的にお前ら幼いんだよ」

「子供ってこと?」

「そうだな、日本でいえば美香は確かに結婚出来るかもしれないけど、その歳で結婚は稀だろ?」

「そうね・・・志乃なんて10歳だものね」

「恋人という話なら俺からすれば3人とも素敵な女の子には見えるぞ、ぶっちゃけ好きだな」


 そう言うと手が止まって振り返って俺の顔を覗き込んできた。 


「・・・そうなの?」

「吊橋効果的なものを考慮しても3人共魅力的だよ、そこは保証する」

「そう・・・じゃぁ私でもいいの?」

「うん?あぁうんそりゃそうだが・・・」

「あ、別に独占したいとか言うつもりはないわよ?」

「いや、それは・・・どうなんだ?ハーレムにしろと?」

「う~ん、正直日本ならともかく、この世界ではそんな法律ないと思うのよ。というより意味がないかしら?」

「そうかもしれないけど・・・不誠実というか」

「不誠実なのは無理やりとか、片っ端から声をかけることだと思うわよ?」

「美香の考えでは何人の恋人がいてもいいと?」

「そこまでは言わないわ、私達だって妬きもちあるわよ」

「今の俺達は家族と言うか一蓮托生な状態だからな、俺としては急ぐ必要もないと思ってたんだけど。・・・3人としてはハッキリさせときたいのか?」

「ん~、そうでもないわよ?今聞いたのは何となくだし?」

「な、何となくだったのか」

「そうよ?優奈と志乃の好意は気づいているでしょ?・・・私もだけど」

「あぁ、どんな鈍感男でも気づくだろ」

「私達を守ってくれると決めてると聞いたから、何となくどう思ってるのかな?って思っただけよ」

「答えとしては満足したのか?」

「そうね・・・この場でキスでもしてくれたら満足するかも?・・・あ、待って!嘘よ!貴方本当にやりそうだからストップよ!」

「はいはい」

「あ、別にしたくないわけじゃないわよ!?フェ、フェアじゃないだけよ!?」

「はいはい」


 積極的な初心って何だろうな。


「えっと・・・聞いたはいいけど、私だけ聞いても仕方ない気がするわね」

「優奈と志乃も言葉として聞きたいとか?」

「そりゃ女の子よ?いつの間にか傍にいて守ってくれる人が、自分のことをどう思ってるか何て普通は気になるわよ」

「まぁそれは俺も考えたことはある」

「でしょ?まぁ達也から好意を伝えるってのは難しいのかしら?」

「優奈はともかく志乃には襲われる気がする」

「10歳児に何を言ってるのよ」


 まさか、志乃の言動に情操教育が必要ないとでも?


「あれ?もしかして本当に襲われるの?」

「早急に情操教育というか、そっちの勉強頼むよ」

「わ、わかったわ」

「ところで、美香は自分への好意は気づいているのか?」

「・・・もしかしなくてもカームさんのこと?」

「そうだな」

「そうね・・・彼は紳士的だし、達也がいなかったら彼とだったかもね」

「・・・」

「でも、私を助けてくれて一緒にいて守ってくれたのは達也でしょ?いえ、別にそのお礼とかで好きにならないわよ?」

「わかってるよ」

「もしかして、カームさんが達也に何か言ったの?」

「まぁうん、そんなところだ」

「様子を見る限り、私を寄越せとかじゃないみたいだけど・・・達也は私達のお父さんじゃないからね?保護者はともかく娘を見る目は駄目よ?叩くわよ?」

「わかったわかった・・・今後はしない」

「やっぱりしてたのね・・・?」


 待て、そのお玉を降ろせ!


「次はないわよ?」

「はい」

「うん、まぁ達也の考えはわかったわよ。大丈夫別に好きだからどうこうして欲しいとかじゃないから。ただ聞いておきたかったのよ」

「おう、優奈達にはどうしよう?」

「わ、私にそれを聞くの?えっと・・・どうかしら?不安に思っているようだったら達也から気付いて声をかけるでいいんじゃない?」

「そうだな、俺からは手を離さないようにするか・・・でも構いすぎると女の子ってうざがらないか?」


 言った途端、頭を叩かれた。痛いです美香さん。


「いいわよ別に、というかそれは父親視線よ?駄目よ?」

「あ・・・」

「もぅ、雪と蒼に対する接し方でも大丈夫よ。・・・志乃は情操教育が終わってからにしてね?」

「了解了解」


 話は終わりのようで夕食が出来るまでは美香も俺も声をかけることはなかった。








「エ、エネ婆ちゃん・・・たつくんが大事な話してる気がする!でもこれ手を離せない!」

「む、むぅ・・・女としては行っておいでと言いたいが、薬師としては手を離しちゃいかんぞとしか言えないわい」


 地下では調合中なのか、二人が火にかけられた鍋の中身をかき回し続けている。手を止めることが出来ないようだ。


「ヂヂヂヂ」


『伝えるのは簡単ですが、タツヤ様の甲斐性の見せ所ですし、野暮はやめときましょう』


「たまに思うんだけどさ」

今度は何ですか?

「サブタイトルと書いてあることにズレがないかい?」

・・・サブタイトル何て飾り何です!

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