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気持ちの整理

「何か4人ともゲッソリしてない?どうしたの?」


 聞くな優奈、男の不毛な争いの結果だ。疲れた。どんだけ威圧しても冷や汗だけで耐えやがったこいつら。さすがに殴り合いはしなかったが、俺も気力を使い果たした感じだ。

 スケベ3人衆にいたっては水浴び終わったよ~と優奈が現れると共に崩れ落ちた・・・いや、泣き崩れた。

 そんなに見たかったのか、気持ちはわかるんだが・・・一応嫁入り前だから許すことは出来ない。あぁ風呂といえばメリーさんも自宅でよく入ってるからそっちを覗けば?と言ったら今度は恐怖に顔を引きつらせて逃げていった。


 例え気力を使い果たしていても足は動くので町に向けて歩く。俺は方向感覚に自信がないんだよな、カームさんとシリウスが方角をきちんと確かめているので心配はないけど、一人になったら容易に迷子になる自信がある。

 帰りの道は見渡す限りの草原で、木に登れば町があるだろう方角はわかる、立ち上る煙がうっすら見えるし視力強化でギリギリといったところだが。


「ん、らくちん」


 志乃は気に入ったのか最初から犬っころに乗せてもらってる。

 美香も今日は最後まで頑張るとは言ってるが道が道だけしな、カームさんも気になるようなので早めにギブアップさせた方がいいかもしれない。偵察に集中出来ないのは困る。俺が背負ってもそれはそれで集中出来ないかもしれないが・・・カームさんはどうする気なんだろうな。町を出る前に決めて欲しいんだが。


「たつくん、これ持ってて」

「なんだこれ」


 先ほどまで何かを仕切りに拾ってる優奈が袋ごと渡してきた。中身を見れば木の実?ドングリではないが胡桃のような形をしていて、殻は薄く透けていて中は黄色なのがわかる。


「これね~中身取り出して乾燥させてすり潰して、もう一つ別のこっちの赤いのと水で溶かすと薬になるみたい」

「調合法までわかるのか?」

「チェッカー君は安全か危険かだけだよ?」

「え、まさかチェッカー君とは別の何かがあるのか?」

「ふふふ、優奈の秘密の七道具だよ!」


 多分7つで済まないだろうな。


「で、チェッカー君じゃないやつって何だ?」

「調合方法がわからない?登録しとけ!その内考える!模索研究ハカセのハっちゃんだよ!」


 優奈がバックから器が二つ・・・これ天秤だよな、天秤の器がなく天辺に器が置いてある。優奈によるとこの天辺のお皿におくと登録されて、今まで登録してきた物から有効な調合法を研究し、天秤にくっついている液晶に表示してくれるらしい。例によって何で動いているのかは謎。いや、誰が研究してくれてんだよ?ハカセか?どこにいんだよ。ちなみに優奈の発明品?いつ作ったのかは知らないけど、それらが使えるのは優奈のみ、優奈以外が触るとうんともすんとも言わない。


「で、ハっちゃんによるとこの薬はポーションみたいになるみたい!」

「あぁなるほど、それで嬉々として集めているのか」


 ポーションといえば冒険者必須アイテムといって過言ではないからな。優奈曰く、飲むと体力回復、治癒促進、患部にかければ、消毒と治癒促進を同時にしてくれるという優れものらしい。なんだその不思議回復薬。割合や調合はかなり難しいから帰ったらエネ婆ちゃんと練習しないと!と息巻いていた。

 

 町に帰ったら調合する時間は待つかな、ポーションの効果を聞いた限り量産する意義は高いし、調査にも役立つだろうしな。後でフリッツさんに話しておくか。

 オルトとレイクにも言ってなるべく拾いつつ道中進む。あの二人も文句は言うが必要だと言うと拾ってくれるんだから・・・ツンデレ?






「ほぅそんな便利薬が出来るのか」

「うん!調合が難しいからエネ婆ちゃんとこで作っておきたいんだ、フリッツさんどう?」

「わかった、町に戻ったら多めに休息日をとろう、といってもサカグチ以外は訓練だな」


 今日の野営中優奈がフリッツさんに自分から話して生産時間を確保していた。訓練か、俺はまた手押し相撲かな。


「ヂヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂ?」

「タツヤさんは大人しくしてないと、また怪我しますよ?だ、そうだぞ。確かにキサラギお前は少し自重する必要があるぞ」

「わかってますよ、カームさん。怪我して出発できませんとか馬鹿みたいですしね」

「あぁそれにお前が怪我するとミカさんが悲しむだろう?」

「え、あ~はい」


 うむ?聞いておく?聞いちゃう?聞いていいの?いや、俺が聞くべきことなの?逡巡する俺を見てかカームさんから切り出してきた。


「俺はミカさんに懸想してしまったらしい」


 懸想って・・・いや、まぁ気づいてはいましたが、俺に言われても。


「だが、ミカさんはお前のことが好きだ。それはお前もわかってるんだろう?」

「えっと・・・それは、まぁ一緒にいましたし」

「あぁ勘違いするな、お前じゃ相応しくないとか、俺の方がミカさんを好きだとか、そういうことを言いたいんじゃない」

「はい」

「キサラギとしてはミカさんだけに目を向けるわけには、いかないんだろう?」

「そうですね」

「それが不誠実だとは俺は思わない、女3人を守りながら魔王を倒すなんて俺には出来ないからな」

「・・・」

「だが、それでお前が無茶をして怪我してミカさんを心配させるのは・・・わかっちゃいるんだが怒りが沸いてくるんだ」

「・・・」

「いや、守った結果なのだから筋違いなんだが、前回の訓練で負った傷は単純にお前の失敗だよな?」

「ですね」「ヂヂヂヂ」

「守った結果の傷はいい、だがどうでもいいことで怪我はしないようにしろ。結果ミカさんを死なせてしまったとか言ったら、その時は俺も怒る・・・と思う」

「善処します」

「すまんな・・・ミカさんに気持ちを伝えるわけにはいかないからな」


 俺としては、本人同士の同意なら文句はないんだけど・・・カームさんの選択がそっちなら何も言う気は無い。


「まぁそのなんだ・・・頑張れよ」

「はい、ありがとうございます」

「別にお前を心配したわけじゃない・・・偵察にいってくる」


 シリウスと一緒にカームさんを見送る・・・そういやシリウスいたな。


「ヂヂヂヂ?」

「普通空気読んで離れるぞ?」

「ヂヂヂヂヂ!」


 ガーンといった仕草をしているが、何で離れなかったのやら。ってうわ!何だよ!怒ってんの?イタタタタ!


 シリウスとしては達也もしくはカームが逆上して暴れるのを防ぐ為にいたのだが、その必要はなかったので安心はしたが、人の気もしらない達也が言った台詞に憤慨したのだ。






 今日の夜番は俺とフリッツさんが最初だ。


「キサラギ、町が落ち着いたらどこに行くんだ?」

「そうですねぇ・・・他の町を見つけに行くか、一旦元いた場所に戻るかですかね」

「そうか・・・町に残るつもりはないのか?」

「う~ん、それも選択肢の一つではあるんですが、優奈の目的がギルド・・・冒険者の普及ですからね」

「その為には旅が必要か」

「何が必要かは俺も本人もサッパリ解ってませんけど、町にいるだけで作れるものではないですからね」

「いや、そうだな。お前達を町に留めてはいけない気がするよ」

「トラブルメーカーに近いですからねぇ、まぁ俺がいなくても大丈夫ですよ。ケーナと柳は俺でも勝てるきはしませんから」

「そうだな・・・しかし、ケーナもお前が救ったんだろう?」

「仕上げはしましたけどね、ほとんどは柳とケーナの頑張りです」

「くくく、まぁお前はそういう奴か」

「どちらにせよ、調査が終わるまではアルランにいますよ。そもそも出て行ったら帰ってこないわけじゃないですしね」

「そうだな」

「というか、帰ってきたときにリス族と戦争でもしてたら、俺はリス族の味方しますからね?ケーナはこっちに引き込みます」

「・・・善処しよう。いやそうならないように死力を尽くす」


 フリッツとしては町の英雄にそんな姿を見せるのは忍びないし、町長もそうだろう。本音でいえば達也が敵に回った場合勝てる気がしない。文字通り全滅するだろう。柳様がいるが・・・ケーナと達也の関係を見れば敵に回らないまでも傍観といった姿勢をとる気がする。いや、達也と柳様が全力で戦った場合どちらにせよ町は消えてなくなる予感がする。

 考えてみれば、人間が精霊様と戦って周囲の被害の心配をしてしまうのは何かがおかしい気がするがまぁ達也だしなと考えるのをフリッツはやめた。


「ところでフリッツさん、カームさんをけしかけましたね?」

「・・・気づいたのか?」

「いくらなんでも唐突すぎましたから、誰かに何か言われたのかと思ったんですがフリッツさんでしたか」

「ちっカマをかけることもすんのかお前」

「基本的には行き当たりばったりですよ、そうせざるを得ません場合がほとんどですし」

「まぁそうだな、カームにどうするかさっさと決めろとは言った」

「カームさん俺に告白してきたんですけど」

「・・・あいつの好きなのはお前だったのぐほぅっ!」


 フリッツは達也に鳩尾を殴られた、強化無しだが反応強化により反応させずにクリーンヒットだ。


「カームさんが好きなのは美香ですよ、美香に言わずに俺に頼むみたいなことを言ってきました」

「なんだ、玉砕さえしなかったのか・・・難儀な男だなあいつも」

「もう一発いります?」

「ま、待て。別にちゃかしたわけじゃない」


 笑顔で拳を構える達也に鳩尾を押さえつつ後退するフリッツ。


「俺はてっきりあいつはノザキに告白するもんだと思ってたんだよ」

「まぁ、カームさんの気持ちは受け取ったのでいいですけどね」

「何を言われたんだ?」

「・・・責任と願いですかね」

「ふむ?まぁ男だけで決着出来たなら良かったな。カームは決闘とか挑む可能性も考えていたんだが」

「決闘で女をどうにかしようと考えていたら完膚なきまでに叩き潰しますよ?」

「なんだ、お前らの世界じゃ一般的じゃないのか?」

「ないというか・・・常識的な問題ですね」

「こっちじゃ貴族様やら英雄様が結構やっていたけどな、盛り上がるもんだぞ?」

「景品が人間じゃなければいくらでもやっていいと思いますよ」


 俺が最も毛嫌いしてるのは自分の物が奪われることだ、延長線上になるが人の物を奪おうとするやつも大嫌いだ。盗賊なんぞ見つけたら3人娘に気づかれないように殲滅する例え気づかれても多分殲滅するだろう、これはこの世界に来て決めたことの一つだ。盗賊しないと生きられないなら潔く死ねとも思うくらいだ。少し過激すぎるかもしれないけど、俺はそう決めた。


「お、おい?皆起きちまうから、何だか知らないが落ち着けよ。む?ワニが帰ってきたぞ」

「あれ、おかえり定時連絡?」


 少し早い気もするが確か3号と4号だったかな、どうした?

 3号と4号は、黄色のバケツを叩いた・・・何か来たか。黒塊を掴み聞く。


”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”


「俺が行けばいいかな?」


 3号がしばらく虚空で連絡でも取ったのか、動きを止めた後俺を見て頷いた。


「わかった、フリッツさんちょっと行ってきます。4号は待機して応援が必要になるか、もしくは野営地に直接向ったら赤いのを叩いてくれ」

「わかった、気をつけろよ」


 4号が頷くのを確認し、3号の案内で野営地から離れて茂みの向こうへ。

 この辺は草原と林くらいしかない、どうやら林の中で何かがあったようだ。3号の先導がもどかしくなったので指を指してもらい抱えて走る。すぐについたけど。


「おう・・・これはまた、1号奮戦してるじゃん」


 川から出てきたのかはわからないけど、魚型が5体ほど。いや、陸に上がったせいか弱っているように見える。何で陸にきたのかは魚型に聞いてくれ。

 考えてる間に1号が2号の牽制で体制を崩した魚型をエストックで串刺しにした。


「これは・・・任せてもいいかな」


 3号を見やると、ダメとでもいうように首を振った。まぁ無理して俺達でやるよりは応援をきちんと呼んだことは評価すべきか。

 黒塊を握り直し、1号の前にいき魚型と戦闘を始める。






 結論からいえば1分もかからなかった、弱っていたし、水から出た魚型なんぞ何も怖くない。


「よし、帰ろうか・・・よくやったぞお前達」


 4匹を順番に撫でて野営地に戻る。引き続き見張りは続けるようだが、尻尾を振り回して嬉しそうだったのが微笑ましかった。






「魚?昨日のやつか?何でこんなところに?」

「さぁ・・・魚の考えですのでわかりません」


 暗かったから周囲の気配しが探らなかったけど、調査するべきだったかもしれないな。


「予想以上にワニ君達が頑張ってくれてますので大丈夫でしょう」

「そうだな・・・にしても美香は多才だな」

「あのワニ君・・・自動なんですよね」


 その日のアクシデントはそれだけで交替まで何も無かった。明日町につくかな。

あぁさっさとたつくんに戦わせたい!でもいきなり戦闘したら意味わかんない!前の町なら連日戦わせられたのに!

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