初めての夜番
「兄貴はこういうこと慣れてるのか?」
「こういうことって夜の見張りのことか?」
「あぁ、なんか兄貴なら当たり前に見えるぜ」
「いや、俺はそもそも外で野宿自体の経験は少ないぞ」
「そうなのか?」
「あぁ、俺達の世界じゃ野宿も安全だからな、見張る必要もないよ」
「そうなのか・・・・・・平和なんだな」
「危険な猛獣がいない地帯でしかキャンプ出来ないようになってるからな」
「それって、野宿っていうのか?」
「雰囲気を楽しむんだよ」
ふ~ん、とケイが弱まった焚き火に枝を追加した。
俺とケイが見張りを始めてから3回ほどワニ君が定時連絡に来た。
青いバケツを叩いたら異常なし、黄色いバケツなら危険が迫っている、赤いバケツは襲撃ありといった風にしているが、赤色別にいらないような?いらないっていうか手遅れだよなそれ?志乃と優奈が楽しそうにワニ君達に言っていたから口は挟まなかったけど。
あぁ強化された1号ワニ君だが、どうやら使われた素材やご主人から受け取った愛か何かで強くなるようだ。1号相手に他の3匹が模擬戦をしたが、あっというまに3匹を叩きのめしたからな。
得意げな1号はその後美香に怒られてたけど、まぁ同時期に作られたんだし愛の差は無いだろうから、素材の優劣が勝敗を決めたんだろうな。
もし、ドラゴンがいてそいつの素材が手に入ったら凄いことになりそうだ。
ちなみに魔王の核も試そうと思ったけど、そんな気持ち悪い珠は使いたくない!とのことで腕と一緒に保管してある、たまに我が・・・・・・気持ち悪い・・・・・・と幻聴が聞こえるけど、放置だ。関わると碌なことにならない気がする。
「でさぁ兄貴俺の能力ってどうやったら強くなると思う?」
やっべ、何がでさぁで話が繋がったのか全く聞いてなかった。内心焦りつつケイの疑問に答える。能力のレベルアップか、まだ確信がないんだよな。
「ケイは今レベル2だったか?あぁまぁ内緒にするから」
「ん?そうだぜ?別に内緒にしなくても皆に言ってるぜ?フリッツさんとか」
「リーダーに言うには構わないが、まぁそれは後でいい。それで強くなる方法だったか?」
「おう!兄貴の能力だって、一つじゃないんだろ?それにレベルも高そうだ10とか?」
「いや、仮説だが一応話しておくか。ちなみにレベル10ではないぞ。」
「なんだ、そうなのか。仮説ってなんだ?」
「え?あー仮説ってのは俺の予想ではってことだな、でその仮説だとレベル1からレベル2にあがる条件はとりあえず使うこと、それに能力の固定化だな。ただ固定化は必ずしも必要ないとは思うが」
「使うことはわかるけど、固定化ってなんだ?」
「便宜上そう呼んでるだけだ。ケイでいえば、能力名は武器強化だろ?で、ケイはこう思ったわけだ。剣を強化すれば凄い切れ味になるに違いないと」
「おう!実際、魔王がきたときも斬れたんだぜ?あの時は兄貴に助けられたけど、護衛の時も何体か倒せたしな」
「その武器強化の範囲は剣だけなのか?」
「え?そりゃ武器といえば剣だろ?カッコイイし!モテそうだし!」
「つまり固定化ってのはそういうことだ」
「え?どういうことだよ兄貴?」
「あー俺が武器強化を持っていたとしたら、腕も武器の一部と見なして強化するってことだ」
「へ?何で腕が武器になるんだよ折れちまうぜ?」
「まぁそうだな、別に固定化しない能力者はいたからな」
つまり俺とかな。同じ能力でも考え方が違うと出来ることと出来ないことが出来るようだしな。
実際、俺の肉体変化と昌吾では全くの別物みたいなことになっていたからな。いや、やろうと思えば俺は触手の一本や二本生やせそうだが、昌吾に肉体強化はしないのか?と聞いたら「はぁ?何で肉体変化で強化出来んだよ?頭大丈夫か?」と言ったのでアイアンクローで浮かべといたが。
能力名が同じでも、使う人によって違うのはわかる。俺がそれに疑問を覚えたのは、思い込むとそれが使えるということだ。逆にそれが出来ないと思い込んでいるなら使えない。優奈の電力なしで動いてる機械掌握を見て考えついた。
優奈の場合電気は気合でだけどコンセントタイプは繋がっていないと、動かないという固定観念があるから、エアコンは動かせない。
もしかしたらコンセントに刺しさえすれば動かせるのかもしれない。どちらにせよ電力・・・・・・動力が精神で動かせている事実がある。
そして極めつけは志乃の異次元ボックスと美香の人形操作だ。あの二つは元々あった能力で試行錯誤していたら生まれた能力だ。志乃の異次元ボックスなんて目の前で生まれたからな。
確か志乃なんて異次元ボックスが先に2に上がったろ?異空間もすぐに上がったが。どちらにも共通しているのが俺に聞いて実際に使ってみたことによる能力の固定化だったからな。
美香だってそうだ、俺が能力の想像をして実際に考えたことを美香に伝えたら人形操作が出てきた。つかうことで、人形憑依も人形操作もレベルが2になった。優奈も懐中電灯を光らせたらレベル2になった。
考え込んだ俺が固定化の説明に難儀してるのかとケイは勘違いしたようで、自分の聞きたいことをまず聞くことにしたようだ。
「ふ~ん?まぁ固定化はいいや、レベル2からは上がるのか?」
「上がるぞ、条件はよくわからん」
「え?そうなのか?」
「あぁ仮説でもないのならあるけど、聞くか?」
「おう!仮説は難しいからいいや!つまり兄貴はどう考えてんだ?」
「多分だけど戦闘の参加は条件の一つだと思う」
「戦闘?俺も結構やってるけど、上がらないぜ?」
「何というか、全力というか死力を尽くすというか、そんな感じか?」
「え~?魔王の時だって死にかけたぜ?」
「死に掛けただけだろ?実際は戦ったのは俺なんだから」
「あ、それもそうか。つまり兄貴は死に掛けろっていうのか?」
「いや、そうとは言わない。何だろうな自分の達成感というか、俺がやった!みたいな感じか?」
「つ、つまりどういうことだよ?」
「死ぬ気で戦え?もしくは死ぬ気で鍛えろ?」
「はぁ・・・・・・まぁ地道にやれってことだよな、わかってるんだよ。けどあの日死んだタロス達のことを今でも思い出しちまうんだ」
「・・・・・・そうか」
「あ、いや兄貴に文句言ってるわけじゃないぜ?兄貴が来てくれなければ俺だって町の皆だって死んでただろうしな」
「そうだな」
「でもまぁ俺が強ければ兄貴の救援までは持たせられたかもしれないって思うわけだよ」
「たらればをしてたらキリがないぞ」
「そうだけどな・・・・・・まぁがんばるよ」
―トントンッ―いつの間にかいたワニ君、この子は3号かな?が俺の肩を叩いて緑のバケツを渡してくる。
緑のバケツは交代の合図だ。ワニ君達は時間がわかるらしく、朝までの時間を調整して教えてくれるらしい。どんな便利機能だよ。
ともかく、バケツを受け取りウォルさんに変わってもらいレイクの欠伸にエールを送り、俺達のテントに入る。
ちょうど美香の隣があいていたのでローブを布団変わりに寝転がる。
多分地球でいうところの3時間ほどの見張りになると思う、とすると冬の日が暮れる速さを考えると今は11時ってところだろうか、起きるのは5時くらいかな。シリウスがいるから7時くらいまで寝ても大丈夫かもしれないけど、シリウスと美香は起きるの早いからなと横にいる美香を見つつ眠ろうとすると。
目が合った。
「(あら?達也見張り終わったの?)」
「(すまん、起こしたか?)」
「(何か見られてると私起きちゃうのよね)」
「(あーすまん、俺も寝るから寝直せおやすみ)」
「(・・・・・・)」
「(おい)」
「(いいじゃない、役得役得♪)」
思いっきり腕をとられたが、外は寒かったせいか美香の体温が心地よい。
次第に意識が遠のいていき俺も眠りに落ちた。直前に頭を何かが撫でていたような・・・・・・。
うぅ?お腹重い”身体頑強”付け忘れてた?いや、今つけたけどそれでも重い。
体にかかる重さに意識が浮上しはじめる。
目を開けば3人が乗っていた。志乃、チビ助、犬っころ。それぞれが胸からお腹まで占領している。
テントの入り口から漏れる光を見て、上体を上げる。
足元まで転がる3人をそれぞれ横に並べ体の調子を確認、寝不足は特になし。
まぁ俺は最初の方だからな、一番きついのは中盤の見張りだろう。一旦寝て、仕事してまた寝るって中々体にきそうだな。昔テスト勉強の一夜漬けで寝ると起きるを逆にしてやったことがあるが、頭には入るがテンションがハイになってテスト後の反動が凄かったな。
3人の頭を交互に撫でながら考えていると優奈と目があった。
「うにゅ?たつくんだぁ・・・」
目があったのは錯覚だったのか、閉じた目のままこちらに向ってきたので頭を手でつっかえ棒のようにする。
「うぅ?届かない?何で?」
両手をこちらに伸ばしてくるが俺の方が長いから触れもしない。と思ったらそのまま倒れてきたので、3人にぶつからないように慌てて支える。
「優奈起きろ、顔洗いにいくぞ」
「にゅ?うぅ・・・?あれたつくん?見張りは終わったの?」
「もぅ朝だよ、とりあえず顔洗いにいこうか」
「うぅ・・・う?・・・うん、いく」
3人を起こさないようにテントから優奈と一緒に出る。
途端冷たい外気が俺達を迎えてくれた。
”思考加速””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”
「さ、さぶ!?」
「あーローブもってこなかったのか?とりあえずこれ被ってていいからいくぞ」
「ええ!?たつくんこれ渡したらTシャツとジーンズだよ!?さ、寒いよその格好!」
「パジャマに言われたくない、顔洗ったら着替えるからさっさとする」
ローブを被せるとふがふが嗅いで大人しくついてきた。いや、嗅ぐなよ!
「おぉこれは中々・・・濃い匂いがする」
「へ、変態かお前は」
テント傍にあった大きな壷(大体1mほど)を手に持って川に向う。
川に入り・・・・・・”体感調整”ある程度冷たさを麻痺させて水を汲んで優奈がいるところまで持っていく。
「ほら、顔洗え」
「うぅ・・・たつくん風の子か何かなの?ありがと、えっと・・・うぅ・・・冷べた!?」
優奈が顔を洗いもう一度壷に水を入れて戻る。
優奈が着替えると言って、テントに入っていくのを見つつ朝食を作ってる美香の所へ壷を持っていく。
「おはよう、美香、シリウス」
「おはよう、達也。寒くないの?」
「ヂヂヂヂ?」
「あんにゃろローブ持って行きやがった」
それと馬鹿じゃないのって首を傾げるなシリウス!
「とりあえず、お茶飲む?はい」
「おぉ、ありがと」
一口、緑茶?パックか何か出したのか?
「それ、優奈が昨日採集したやつよ、緑茶みたいに水で煮出せばいいっていうからやってみたのよ」
「乾燥とかやらなくていいのか?」
「えぇ、そのままの方が美味しいんですって」
「確かに緑茶の味というか、まぁ美味しいが。あのチェッカー君は納得できない」
「達也も機械に詳しくはないんでしょう?動力のこととか考えるだけ無駄だと思うわよ?そんなこといったらワニ君達どうなるのよ」
「そういえばそうだったな」
でもあっちは動いてても疑問を感じないんだよな、人形だからか?
それにしてもあぁ茶が美味い。
「ん、たつ何飲んでるの?」
「おや、おはよう顔洗った?」
「ん、まだ一人でいっていい?」
「あぁ行くから待ってくれ」
温くなっていたお茶を飲み干し、立ち上がる。カップを美香に渡して。志乃の手をとり川へ行く。
「あれ?チビ助と犬っころは?」
「ん、起きてすぐ川にいった」
「あいつらも俺かシリウス無しで勝手に行くなって徹底しないとな」
川にいけば、この寒いなか川の中で暴れる二人。いや、襲われてるな。
よく見れば、川に引きずり込まれているチビ助を犬っころが懸命に引っ張っているようだな。
”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”
一息に川に飛び込み、チビ助を掴んでるらしき黒い影に左腕を叩き込む。ここまでくると俺の腰まではある。
―パンッ―左腕が何かを叩いた感触を感じるとチビ助が解放されたので右手でチビ助を確保、犬っころの上に投げて岸に上がれと手で指示。
犬っころがチビ助を乗せて陸に向うのを確認しつつ、黒い影に注意を払うと左脚が何かに掴まれて引っ張られた。
一息に引きずり込もうとしたのだろうけど、生憎とそんな柔な能力じゃない。
左脚をそのまま蹴り上げてみる。
そいつには手足が生えていた。そいつには鱗があった。そいつには口がありエラ呼吸と同時に肺呼吸も出来るらしい。口をパクパクさせてまるで金魚のようだ。嫌、金魚といえば金魚か。立ち上がったそれは魚の胴体に手足をつけた生物、まぁ魚人と呼んでおこう。大きさは俺の胸程か。
「パクパクパクパク」
声ではない、口の開け閉めでかなり音が大きい。で、こいつは怪物でいいのかな。俺を見ても戦意が落ちないってことは、人間も捕食対象なんだろうな。
気配察知には3体の魚人らしき反応がある。1体が陸に向おうとしたので黒塊を掴もうとして、忘れたことに気づいて、石を拾って投げる。
外れたがこちらに注意を引きつけることは出来た。3体とも俺を狙うことにしたようだ。
「ヂヂヂヂ!」
と、陸に向おうとしていた一匹はシリウスが叩きつけた黒塊によって血を噴出しながら川に沈んだ。
そのシリウスはこちらに来て黒塊を渡してくれた。
「すまん、忘れてたから助かる」
「ヂヂヂヂ!」
多分戦士が武器を忘れるな!って怒ってると思うけど、まぁそれは後にしてくれ。
「ふっ!」
水に潜られる前に俺が蹴り上げた方に斬りかかり、有無を言わさず胴体を半分にした。
残りの一匹はどうやら逃げたようだ。追う手段がないのでそのまま待機し、しばらくしてから陸に戻る。
「さて・・・チビ助と犬っころはシリウスからお説教受けて来い」
「・・・チチチ」「クゥゥン」
「ヂヂヂヂ!」
2人とも首根っこを掴まれて野営地に連れて行かれた。
「じゃぁ志乃顔洗って俺達も戻るよ」
「ん、たつあれは放置するの?」
「まぁ、触る気が起きないから自然に還元しようと思う」
なんというか、魚に手足が生えると触りたくない、食べるなんて持っての他だ。食わず嫌いと言われようが美味しいと言われようが俺は嫌だぞ!
「ん、たつ冷たい」
「俺も川に入ったから寒い、早く着替えに戻ろう」
「ん、お腹までぬれてる早く温める」
志乃にも促され野営地に戻る。今日は筏作りかな、物作りは楽しいから好きだ。
これが俺の限界だ!難しいことなんて書けない!
「威張らないで欲しいね?」




