名前はつけません!
朝になるまで見張っていたが、特に何もなかった。
美香はひたすらワニ君の修理と補強、ついでに朝食べるスープに何やら色々投入していた。
あれって、優奈が採集してた山菜類だよな。まぁ毒物検知は出来てるみたいだけど。まだ、検証完璧とはいえないと思うんだが。そもそもどうやって動いてるのかもわからんあれを信用していいものなのかどうか。いや、優奈のことは信用というか信頼はしてるけどな。
そういや、近くに倒れていた狼も手当てを優奈がしていたけど、こいつは逃げないのか?
「ハッハッハッハ」
傷の手当を受けた後俺の膝元で蹲ってるんだけど、またペットが増えた気がする。
「お前はついてくるつもりなの?」
「クゥゥン」
別に媚を売らないでもついてくるのは構わないけどな、優奈が気に入ってるみたいだし。
「チチチチチ!」
「ガルル?」
おや、チビ助がそこは私のだ!とでもいうように飛び掛ってきた。
二匹は丸まりながら転がりはじめる、いや待て。
「こらチビ助、犬っころは怪我してるんだからじゃれあうな」
「チチチ!?チチチチチ!」
「うお?落ち着けよ別に一緒に乗ればいいだろ!」
「チチチ・・・」
2匹揃って膝の上を占領することで合意を得たようだ。
「達也は何にでも懐かれるのね」
「動物は嫌いじゃない、ちっこいのもな」
「おじさん達にも好かれてるわよ?」
「やめてくれ」
「何で起きたらまた仲間が増えてるんだキサラギ?」
「フリッツさん!ワンちゃんは家の子だよ!」
「い、いやサカグチの嬢ちゃんに文句は言ってないぞ?」
「むむむむ」
「わ、わかったよ、どちらにせよ俺達じゃなくてキサラギに許可とったんだろ?」
「たつくんにも懐いてるから大丈夫」
「ハッハッハ」
尻尾を振りながら優奈に抱き上げられてる犬っころ。
なんか、魔物の頃より小さくなってる気がするんだよな、半分くらいまで縮んでないか?
エネス婆さんなら何かわかったかもしれないけど、優奈のチェッカー君で調べても毒性とかしかわからないからな。
普通の狼型が1m50cmほど、今の犬っころが70cmくらいか、まぁ怪物みたいに問答無用で襲ってこないなら何でもいいけどな。
「ん、たつまた名前考えないと」
「えーとりあえず犬っころでいいよ」
「ガル!?」
チビ助だってシリウスだって結局名づけしてないから、このままでいいよ。
「ふむ・・・とりあえず川を遡ってみるか」
「いざとなったら筏で下れそうな速さですしね」
「そうだな、作るのはカームがいるしそんなに難しくは無いだろう」
フリッツさんと話し合い、川を遡ることにした。
「たつくんたつくん、気になるものあったら教えてね?それかこれに入れて?」
「はいよ・・・これに入れればいいんだなわかった」
袋を何枚か渡される、とりあえず目の前のキノコを突っ込んでおく。
「それは毒キノコだから入れなくていいよ~」
「あぁそうなのか」
緑色のキノコを捨てる。
1UPするかと思ったんだけどな。
川に沿って一同歩いていく、昨日よりは歩きやすいがそれでも道はない。
志乃が疲れ始めているのを見て犬っころが志乃に近づき、大きくなった。
「ん、のっていいの?」
「ガルル」
「いやいやいや?今大きくなったよな!?」
普通の大きさ、つまり1m50cmまで大きくなったぞ?どっから体積持ってきたんだよ!?
「たつ?大きくなるくらいでさわがない」
「ガル?」
「あーうん、まぁいいや・・・犬っころ?怪我してるけど大丈夫なのか?」
「ガルル!」
任せろとでもいうように頷くので、志乃を乗せてもらう・・・あれ?こいつも言葉理解してるのな。
しばらく隣を歩いたが、志乃に負担を与えないようにしてるのか上下にまったく揺れない。
これなら大丈夫だろうと美香の様子を見にいく。
「志乃は犬っころが乗せてくれた、美香はどうだ?」
「ふぅ・・・まだ大丈夫よ、少しずつ体力つけないとね」
「そうだな、わかった」
昼休憩を挟んで、途中で美香を背負って進んで、夜まで進み続けたが川の始まりには辿り着けなかった。
途中シリウスが何度か木の上で確認しても木々が邪魔をしているのもあって見通せなかったとのことだ。もしかしたら遠くに見える山から流れているのかもしれない。
今日の野営準備は俺と優奈、それとチビ助と犬っころで薪拾い。美香と志乃それにシリウスで食事の準備、テントの設営や周辺警戒は残りの人員で分担している。
川の近くなせいか、乾いてる枝が少ないな。時折チビ助と犬っころが渡してくる枝を選別しながら集める。一度痛い目にあってるから辛口めに選別しているせいか、だんだんチビ助と犬っころの機嫌が悪くなってきているような。とは言っても、生木は色んな面から駄目なのでここは心を鬼にする。
「たつくんたつくん、これも食べられるみたい。こっちは解熱効果があるんだって!」
「ある意味チートだなそれ、本いらず鑑定いらずか。いや、一種の鑑定か」
「あ、この木の実は駄目だね麻痺するみたい。見た目はドングリなのにね」
機械掌握って能力なのに植物マスターになりつつあるな。2匹の持ってくるスピードが機嫌の悪さに比例し、終いには選別だけで手一杯になってきたので、腰を据えて選別をする。
「ん~、ダメ、ダメ、ダメ、OK、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、OK」
3,4本に1本大丈夫って感じだな。いや待てよ?
「優奈、そのチェッカー君で枝のチェックはできるか?」
「ふえ?あ、出来ると思うよ?うわ!一杯集めたんだね」
「チチチチ!」「ガルルル!」
「喧嘩すんなー、でだ。ちょっと選別頼む、どうも前のことを思い出すと辛口になっちまう」
「はいよ~、え~っと、OK、OK、OK、ダメ、OK、ダメ、OK、OK、ノー!、OK!、OK!」
おや、俺の目もまだまだだな、良判定が格段に増えた。ついでに優奈のテンションもおかしくなった。
まぁいつものことだから俺も枝拾いをしよう。
「うん!どちらかというとたつくんが持ってくるのがダメだね!7割くらいダメダメだね!」
新事実!俺の目は節穴だった。
優奈がそう言った途端チビ助と犬っころが飛び掛ってきて地面に押し倒される。
「やめろ!落ち着け!話せばわかる!話せないけど!あ、こら舐めるな!」
今回は俺が悪いから無抵抗のまま気が済むまでなすがままにされた。お婿にいけなくなりそう。次は勝つ。
「帰ってきたか・・・いやキサラギ?水浸しだが川にでも入ったのか?薪が濡れては意味ないだろうが」
「拭く程度じゃ落ちなかったから川で洗ってきたんですよ、薪は犬っころが全部背負っています。優奈が乾いてるか確認済みなので問題はありませんよ」
諸事情により薄着だから、濡れてるせいもありかなり寒い。薪は任せ焚き火の傍で温まる。あ~生き返る。
「ん、タオル・・・たつお腹冷やした?」
「ありがとう、今温め中」
「チチチチ」「ガルルル」
さすがに悪いと思ったのか2人・・・・・・こいつらって匹で数えるか悩むな。まぁ2人ってことで、いいか。その2人がローブの上から体を擦ってくれる。
逆に摩擦熱で痛いので、懐に放り込んで夕飯を待つことにする。
ふと、ワニ君と目があった。あれ?直ったの?いや、直してたけどさ、火の傍ってまずくない?
「熊の毛皮とか魔物の素材で強化し終えたからこの子は大丈夫よ」
美香がスープの入った大なべを抱えたシリウスを引き連れて、疑問に答えた。
「熊って昨日のか?」
「何言ってるの、なめしてないのは使えないわよ。達也が仕留めた熊の毛皮をもらっていたのよ」
「あぁなるほど、最初の熊型か」
一回転して首が折れてあっさりお亡くなりになったあいつか。
昨日の熊型もあいつ並に大きかったが、別のことに気をとられていたおかげで、上空から一閃で真っ二つに出来た。
で、そのワニ君は何で起動してるんだ?ワニ君は俺をじっと見つめると隣に来て俺のローブの中に入ってきた。いや、今そこ先客が二人ほど。
「ん、狭い」
「チチチチ」
「ガルルル?」
いや、1人いつのまにか増えてるな。
ワニ君は無理やり中に納まると、そっとローブの合わせ目を閉じた。
いや、何だよ?
「温めてくれてるんじゃないかしら?それより志乃は息苦しくないの?」
「ん、大丈夫」
くぐもった声で返事が返ってくる。3人と1匹?がゴソゴソしていて、こそばゆいのですが。
「兄貴!テントってすげえな!あれ俺も欲しいくらいだぜ!って何してんだ?子供でも生まれるのか?」
うるさいわ!それよりテント建てられたのか、やりたいっていうから任せたけど大丈夫だったのだろうか。
「たつくん、テントはちゃんと出来てたよ、ケイ君こういうの得意なんだね?」
「おう!ユウナ、俺に任せとけってんだ」
鼻を擦るケイにカームさんが後ろから一言。
「ほとんど俺がやったがな」
「カ、カームの兄貴!?そりゃないぜ!?」
あぁカームさんがやったなら何か納得できる「兄貴ひでえ!?」精進しろよ小僧。
「とにかく、夕飯にしましょ?それに明日はどうするのか決めないといけないのよね?」
「ノザキの言うとおりだな、オルトとレイクはどこいった?」
フリッツさんが辺りを見回すのに釣られて俺も見回す、確かにいない。
ウォルさんも野営の準備が整ったらしく、焚き火の方に寄ってきた。そのウォルさんにフリッツさんが聞いている。
「ウォル、あいつらどこにいったんだ?」
「あいつら?・・・あぁオルトとレイクか?あの二人ならシリウスと一緒に川の方に行ったが?フリッツの指示じゃなかったのか?」
3人娘ならともかくシリウスをナンパして草むらに消えたってことはないと思うけど、一応探しにいくことにする。
ワニ君の配備を待って、俺とケイで川の方へ向う。
「あいつら川で何しようとしてんだ?シリウスの姉御もいるんだよな兄貴?」
「ウォルさんが言うにはな、あの3人が一緒にいる理由が思いつかないから、もしかしたら別々に行動してるかも・・・いや、いたな3人共」
「え?どこに?」
「あそこの土が盛り上がってる向こうだな」
「あぁ兄貴ってそういう能力持ってたっけ」
「まぁな」
木が倒れた時に隆起したのか、土の盛り上がりと大木を迂回しながらシリウス達がいる川辺を覗いた。
「いたな・・・・何してんだ?」
「シリウスの姉御水の中に入ってるな、何かの修行とか?」
「何で、こんなとこまで来て修行するんだよ、朝早くとかならともかく」
「それもそっか」
オルトとレイクは傍にいて、何匹か魚を抱えている。あれ?まさか。俺が予想した時には目の前で実行された。
「ヂッ!」―パンッ―
シリウスの右手が掬うように水に叩きつけられた。そして川辺の方に魚が飛んでいく。それをオルトが回収した。
「ヂッ!ッヂチ!」―パンッ!パパンッ!―
「おっとと」
「ふが!?」
今度は三回手を振ったと思ったら三匹の魚が俺達の方に飛んできたのでキャッチしておく。一匹はケイの顔面だ。
満足したのかシリウスが川から上がってきたので、傍による。
「まぁ、聞く必要もないけど・・・魚を獲っていたのはわかるが誰かに言ってからいけよ」
「ヂヂヂ」
忘れてたとでも言うように頬をかくシリウスを横目にオルトとレイクが抱えてる魚の数を数える。
1・・・2・・・13匹ちゃんと獲ってる。きちんと犬っころの分もカウントされてるのがまぁシリウスらしいというか集団を率いる長らしいというか、感心するわ。
「お、おいキサラギ!少しもってくれ!重いというか顔にまで鱗が当たって痛いんだよ!」
「ケイ!半分持ておら!」
「ととと、もう少し丁寧に渡せよレイク、俺はいいけど姉御が怒るぜ?」
「じゃぁオルトのは半分もつよ」
4人で等分して余った1匹はシリウスが持ち野営地に戻る。
「危険生物はいなかったのか?」
こいつのことだし、周辺の安全確認のついでだと思ったけど、やはり魚獲りはついでだったらしい。俺の顔を見て頷いていた。まぁ連日巨大な蛙は出ないだろうけど、一応ファンタジー的にはこういう川って主とか潜んでそうだよな。水深がどれだけあるかわからないし。
そう考えると筏で下るのは危ないかもしれないな。
「おお!お魚!よく考えたらこの世界初のお魚だよ!」
「ん、お魚・・・・・・みかさしみ?」
「うん?刺身がいいの?寄生虫の心配ないのかしら、優奈調べてくれる?」
「はいよ~、うん、一応大丈夫みたいだけど」
「いや、志乃?今回はやめとけ、外にいるからお腹壊すと大変だぞ」
「ん、ざんねん・・・焼くの?」
「えっと、このお魚さんだけ赤身だね大きいね」
「中の質もわかるのかよ。いや何で川に赤身魚がいるんだ?」
泳ぎ続けないと死ぬとかが赤身じゃなかったか?異世界だから違うのか?
はしゃぐ俺達を尻目にフリッツさんは冷静だ。
「ともかく、今から調理するのかノザキ?」
「そうね・・・下ごしらえだけして保存かしら?」
「俺もできるから手伝おう」
カームさんが着々とポイント稼ぎをしようとしている。いや、構わないんだけど・・・これに感想いれると俺が嫌な奴になるから基本ノータッチでいこう。あ、付き合うときは保護者に一言下さいね。
そう考えると俺と3人娘それぞれの関係って何だろうな、家族ではないし恋人でもないし。好意をもたれてるのはわかる。例え吊橋効果でもこんだけ一緒にいて息苦しさがないなら、4人共相性がいいんだろうな。誰か1人と恋人になったとしても関係は壊れない気がする。まぁこの世界を旅したり過ごせばそのうち関係は進むかな?焦ってやる必要もないか。
夕食後魚を手際よく腸だけ抜くと木箱に詰める美香。塩とか振らないのか?
「これでよしと・・・塩?志乃が保管するから腐敗の心配はしてないけど・・・そうね、下味だけ漬けておこうかしら」
塩やら胡椒を取り出し軽く振っていく。
「ハックション!?やべえレイク!風邪ひいたみたいだ!」
「こんなところでか?ってか、お前馬鹿だからひかねえって」
「何だと!?」
胡椒が2人組のところにいったらしく、オルトがくしゃみした。
「キサラギお前達香辛料も持っているのか?」
「あ~まぁここだけの秘密でお願いします」
「まぁ、そうだな。高級品ではあるが人間に必須なものではないな。それよりは塩か」
「川があるってことは海があると嬉しいんですけどね」
「そうだな・・・・・・最悪、海はあるが塩が取れないという可能性もあるが」
そういや海って何で塩水なんだっけ?石臼から出続けてるって子供の頃は信じていたけど。あの昔話は好きだった。
「ん、たつあしたどうするの?」
志乃の一言で明日のことを考えてないのに気づく一同。
「そうだったな、このまま行くと山の麓まで続きそうだから一旦川を渡れないか試してみよう」
「向こう側を通って帰還ですか?」
「そうだ、まぁ渡れそうにないなら諦めるが」
志乃が俺を見上げてくる、異空間は見せた回数も少ないので町側には気づかれていないんだよな。異次元ボックスだけでも目立つので隠すことにする。膝の上にいる志乃の口元まで腕を上げて抱きしめておく。
これは黙っておいてとの合図だ。わかったらしく、頷いたので腕を下ろそうとするも掴まれたのでそのままにしとく。苦しくなっても知らんぞ?
「幸い流れは緩やかだからな、水深がなければ歩いていくという手もある」
「じゃぁ明日は川の調査、渡れそうなら渡るといったところですかね」
「あぁ、カーム頼んだぞ」
「わかりました」
カームさんが頷き明日の方針が決まる。
さて、今日の見張り番を決めるか。
「え?ワニ君達は?」
美香が性懲りもなくワニ君を推して来たけど、昨日の今日ではな。いや、頼りにしてはいるが最低でも2人は見張りでつけたほうがいいということになった。
別に1人でもいいんだが、サボりそうな2人がいるからな。
とりあえず今日の夜番は俺とケイが最初、中盤にウォルさんとレイク、最後がフリッツさんとケイになった。
カームさんとシリウスは偵察での消耗を考えて除外した。オルトは明日以降に扱き使う。
3人娘とチビ助、犬っころは子供故に除外。
一応ワニ君達は昨日と同じように巡回してくれるらしい、何かあったら野営地に伝えるようにと確約させた。
毛皮で強化された1号君がやたら騎士っぽい雰囲気を出していたのは面白かった。俺は王様か何かか。
「ん、たつねる」
「おやすみ志乃」
「む~む~!」
「おやすみ優奈」
「いってらっしゃい」
「おやすみ美香、2人を頼んだ・・・・・・ちび助と犬っころもおやすみ」
「任せて」
「ヂヂヂ」
4人の子供がごねていたが、年長組に任せてケイと焚き火の前に座る。
夜空を見上げれば、星が少ないように感じる。太陽はあるが、月がないなこの世界。
仲間だから人扱いはするのに、名前は考えてあげない鬼畜それがたつくん!
「君が思いつかないだけだろう?」
・・・・・・・。




