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1号2号3号4号

 今俺達はご主人達が寝てる間の護衛についている。

 言葉は発せられずともお互いの位置と意思疎通は出来るので問題ない。

 火の傍には近寄れないので、ご主人の仲間の傍にはいけない、熱くないのだろうか?

 水にも近づけないので、川の傍へは巡回できない・・・これは後でご主人に対策をしてもらおうと俺は考える。


―3号より1号へ、定時連絡・・・異常なし―


 俺達は二手に別れてご主人達のテントの周囲を巡回している、必ず一方は寝床が見える範囲にいるようにしている。


―1号より3号へ、ご苦労・・・こちらも異常なし、引き続き巡回をすべし―


 3号に送り返すと、すぐに―了解―との意思が返ってくる。

 俺達を作りだしたご主人は綺麗な女性だ、最初はただのぬいぐるみだった俺達に丁寧に補強をしてくれて、命まで吹き込んでもらった。

 そんなご主人はご主人のご主人にご執心らしい。

 正確にはご主人の王なのかもしれない、ご主人の他にも2人程慕ってる人間がいる。

 いや、王には何人もの人間やら動物・・・はたまた精霊にまで慕っているものがいるから、何とも言えないが。

 でも3人が一番慕っているのはよくわかる、寝るときの隙の無さは見てて感心するくらいだ。

 俺達は普段はご主人のバックに入っているが、意識がないわけではなく、動かないだけだ。

 必要ならご主人を身を挺して守る必要があるからな、それに命のオン・オフなんていくらご主人でも無理だ。

 一応ご主人の手前、止まってと頼まれたら動かないフリはしている、ご主人のお仲間黒い髪の少女は気づいてる気がするが、言わないってことは察してくれてるのだろうか。

 もう一人のやたら元気な方は4人の潤滑剤になってるようにみえる、基本的に王もご主人も黒い髪の少女も無口なほうだし、彼女がいなければとっくに精神がおかしくなっていそうな雰囲気もある。

 王には何かが巣くっているようだし、悪いものではないようだが、あれは一体何なんだろうか。

 精霊に聞いたところ、気にしなくても害はないと言ってはいたが。

 ちなみに精霊曰く、私と貴方達は似たようなものなので様づけも敬う必要もありませんとのことだ、むしろ同じご主人を持つことで親近感を持たれた。


―3号より1号へ、緊急!狼型4体を発見!―


 む、敵か!


―1号より3号へ、見つかったのか?―


―3号より1号へ、こちらの位置も野営地も見つかってはいない模様―


 なら大丈夫か?


―3号より1号へ、しきりにご主人達が通った道を匂いを嗅いでいるので時間の問題かと―


 ぬ、そうか匂いか・・・私達には備わっていなかったから盲点だったな。

 匂いを嗅ぎ取れるなら野営地が、ご主人が見つかるのも時間の問題だな、よし。


―1号より3号へ、こちらも向うその場で待機―


 了解との意思を受け取り急ぎ3号と4号が待つ場所に2号と向う。

 




 着いた時には匂いの特定が終わったのか狼型が一直線に向っていた。

 我々4匹はやつらの正面に立つ。

 我々に匂いが無かったせいか、いきなり現れた俺達に驚いている。

 さすが消臭剤を使った洗濯だ、我々の隠密生を何倍にも高めてくれてるらしい。

 元気な見た目とは違い手元では丁寧に洗ってくれたご主人の仲間に改めて感謝する。


「「「「ガルルルルル」」」」

 

 ふんっ犬っころがご主人に害をなそうとはいい度胸だ!

 俺達はそれぞれ王から渡されたエストックを構える。

 一本足りないので4号はダガーを両手に持っている。


「グルッ!」


 奴らは1:1で戦うようなことはせず我々を撹乱するつもりらしい、我々の周りを回りはじめた。

 機敏性は奴らに分がありそうだ、しかし我々にはご主人から頂いた体と鋭利な武器がある。

 四匹で互いの背を庇いあい備える、持久戦だ。


「ガルルルル!」「グルルッ!」


 最初に二匹が同時に飛び掛ってきた、2号と4号で迎え撃つ3号と俺は残りの2匹を警戒する。


「ガルッ!」


 ―キンッ!―2号が噛み付きに合わせて剣を振るい牙を弾く、反転した狼に追撃しようとしたところで別の狼が飛び掛かろうとしたので、俺はエストックを突き出しそいつを牽制する。

 

「キャンッ!」


 3号と4号が連携で一匹の狼を撃退したようだ、見れば一匹の狼が喉から血を流しながらのたうち回っている。

 これで4:3・・・数の上では優位に立てた。

 我々はそれから1匹ずつ確実に削っていく。

 2匹目は2号が押さえつけてる間に3号が後ろから串刺しにした、3匹目は逃げようとしたところですかさず俺が斬りつけ、怯んだところを4号が仕留めた。

 最後の1匹を我々は睨みつける・・・周りは中々悲惨な状態になっている。

 

「ガルルルルル!」


 最後の1匹となった犬っころは逃げる様子がない・・・ふむ、武人の矜持というものがこの狼にもあるのかもしれんな。

 そんなことを考えていたせいか、対応が遅れた。





 最初に4号が後ろからの襲撃で吹き飛ばされた、続いて2号、3号が吹き飛ばされ、私は後ろから何かに圧し掛かられ身動きがとれなくなる・・・一体何が?


「グルルルルルル!グルアアアア!」


 我々の眼はワニ故に首を動かさず上を見ることも出来る・・・そのご主人から頂いた目で俺に圧し掛かってる奴をみる。

 こいつは・・・熊型というやつだろうか・・・王が倒したものと変わらない大きさだ。

 リス族が倒していたのはもう少し小型だった。

 つまり、王ではないと勝てない相手だということだ。

 幸い、吹き飛ばされた仲間はご主人の技術が優れていたのか、綿が出ているものはいない、ほつれがあるかもしれんが・・・いや、俺の背中は裂けているようだ・・・力が抜けていく。

 我々の動力は綿だったのか・・・今更ながらに新事実に気づく。


「グルルルルルル!」

「ガルルル!」


 熊型は我々には興味はないようで狼型を威圧している、まぁ我々を食べてもお腹を壊すだけだしな。

 俺を抑えたまま熊型は周囲の狼型を貪りはじめた、最後の狼型は仲間が食われるのを見ているだけしか出来ないようだ。

 それはそうだ、体格が違いすぎる。いくら牙を突きたてようと、何度噛み千切ろうと一撃をもらえばそれで終わりだ。

 狼型は熊型と比べて小さい、つまり食事も一瞬だ、食べるところも少ないだろう。

 瞬く間に3匹の死体を貪った熊型は最後の一匹に見やる。


「グルルルル」

「ガルルル・・・」


 どうやら虚勢だったようだ、逃げないのはさすがだと思うが、体は小刻みに震えている。

 熊型は俺から足を退けたが爪がひっかかり引き摺られる形になってる。

 熊型が狼型に近づくたびに私から綿が抜け、力が抜けていく。


―2号より1号へ、だ、大丈夫か1号?―

―1号より2号へ、俺はもうだめだ、お前らは野営地に戻ってご主人・・・いや王に伝えるんだ―


 俺の言葉に3匹は頷きあい、何を考えたか熊型に特攻した。


―おい!待て!お前ら!王に伝えて助けてもらうんだ!俺のことはいい!上手くいけば治してもらえるはずだ!―


 応答はない、ひたすら熊型に飛び掛り、弾き飛ばされる3匹。

 遂に熊型の爪が4号を捉えてしまった、一撃で体から綿を撒き散らし地面に倒れる4号。


―4号!?おい!逃げろ!お前らまで壊れる必要ないだろ!―


 2号3号は俺の絶叫に構わず、熊型に対峙し続ける・・・狼型は何を思ったかこちらに加勢を始めた。

 くそっ!馬鹿共が!俺だけの犠牲で終わらせればよかったものを!ぬいぐるみの体では涙は出ない。

 それでも残った綿から何かがこみあげてくる気がする。





 狼型も吹き飛ばされ、2号もついに捕まってしまった、3号もすでに沈んでいる。

 くそ・・・力が足りなかった、いやご主人のせいじゃない我々の判断ミスだ狼型を倒せたからって慢心したせいだ。

 我々は綿を詰めてもらえば復活できるだろう・・・しかし、次の俺が俺である保証はない・・・それにご主人は悲しむだろう。

 出来れば王よ、ご主人を末永く頼む。


 そこまで願ったところで2号を握っている両手に力が入っていき真っ二つに引き裂こうと・・・





 ―ザンッ!―王だ王が来てくれた・・・遅すぎますよ、どこぞの英雄か何かですか貴方は。

 唐竹に頭から股間まで真っ二つにされた熊型が声も上げることもなく絶命する。

 2号はボロボロだが綿が出ていないので大丈夫だろう。


「もぅ!何で早く言わないの!」


 倒れる俺を優しい手が拾ってくれる、いや感触は感じられないがご主人の手だ優しいに決まってる。

 ご主人の仲間も散らばった我々を拾ってくれる。


「ん、綿でちゃってる」

「大丈夫よ、洗って綿を詰め直して縫い直すから」

「ん、じゃぁ汚れてる部分はすてる?」

「そうね、そうしてくれる?」


 黒い髪の少女が4号を拾い上げ汚れてる部分の綿を容赦なく引きちぎっている、4号はビクンビクンッしてるが生きてはいるようだ。

 ご主人達は綿をそこら辺に捨てずに何かの袋に詰めていた。


「血の匂いが酷いな・・・さすがに真っ二つはやりすぎだったな」

「兄貴こいつどうするんだ?持って帰るのか?」

「そうだな・・・カームさん皮剥いで肉は・・・中身は埋めるでいいですかね?」

「肉は加工が大変そうだったからな、ミカさんの負担も増えるしそうしよう、皮剥ぎは任せろ・・・キサラギは持ち上げてもらえるか?」

「わかりました」


 王が熊を掴み木の上に吊るしている。

  

「とりあえず直りそうな範囲で良かったわ、もぅ!カームさんが気づいてくれなかったら、貴方達大変なことになってたわよ?」


 やはり焚き火の傍の人間は起きていたのか。

 我々もまだまだだな・・・ぬいぐるみに疲れなどはないが、綿が減ったせいか力が入らない。

 そんな俺をご主人は優しく撫でてくれて、4匹揃って小さくなった後バックに丁寧に仕舞われた。

 小さくなると思考が遅くなる、次は油断せずにご主人を守ろうと思う、そして王に褒めてもらうのだ。






―ワニ君1号の見張り番より―






「カームさんありがとうございました、おかげでこの子達も一命を取りとめました」

「い、いえ!私がもう少し早く気づいていれば」


 美香がお礼を言いながらカームさんに頭を下げるとカームさんは動揺し照れたように手を顔の前で振る。

 そんな美香の手元にはワニ君達がいる、睡眠は十分とれたのでワニ君を治すついでに俺達は見張りをかって出てる。

 志乃と優奈は包まって寝かせているけどな。


「では、私も睡眠をとります・・・キサラギ頼んだぞ」

「わかりました」


 カームさんも睡眠をとりにテントへ。

 美香があっという間に直した一匹のワニ君を手に取る。

 今のワニ君は小さい物で20cm程しかない、今は応急措置で同じ素材を使っているらしいが、町に帰ったら怪物の素材使って強いものにする!っと息巻いていた。

 直したといっても、汚れは所々あるので・・・叩いたり拭いたりしながら周囲の気配を探る。


「まぁ頑張れ、お前のご主人様も俺も期待してるぞ・・・ワニ君?」


 思わず語りかけてしまったが、顔が少し嬉しげになったのは気のせいだろうか。


「達也!トムスさんに専用の武器を頂きたいわ!」

「そ、そうか、帰ってから相談してみるよ」

「私も一緒にいくからね!?」

「わかってるって・・・ワニ君も武道家の訓練受けさせるかね」

「それもいいかもしれないわね」







 1号・・・ずるくないか?何でお前だけ声をかけてもらってんだ?そうだ!別にお前がリーダーじゃないじゃないか!もう一度綿を千切ってもらいたい、癖になる。うるさい!作った順番なんだから1号は俺に決まってるだろ!それに1号がリーダーやるべきだって言ったの2号じゃねえか!4号!?ご主人の仲間に変なことをするなよ!?


 我々は強くなる、王とご主人達のために。





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