便利箱
訓練も最終日だが・・・結局会得は出来なかった。
コツどころか感覚さえ何も掴めなかったので、かなり難しい部類の技術かもしれない。
シリウスも落胆したりはせず、気長にやりましょう!と息巻いていた。
訓練終わりには銭湯に行きたがる俺を引き摺りルッド宅へ帰宅させられた。
何でも、一緒に入れないと駄目らしい・・・あぁ俺の男パラダイス・・・いやこれだけだとヤバイ方向になるな。
とりあえず俺の訓練は一旦終了だ、他の人は続ければいい。
いよいよ調査に乗り込むのだ、まぁ目的は曖昧なものだけど。
「ふ~む、便利なものですじゃな・・・では、嵩張る物はシノ殿が運んでくださるのですな?」
志乃の能力も大分見せてしまっていたので、テントやら野営具、嵩張るものは異次元ボックスに入れることにした。
異次元ボックスも進化していて、最初スペースが足りないかなと覗いた時は何もなくて志乃以外は慌てた。
「ん、こっちじゃなかったこっち」
そういって、開いたままの扉の横に新しい扉が出てきたときは驚いた。
異次元ボックスのレベルは上がっていないが、収納部屋が3つになり大きさも20㎥まで広がっていた。
まぁ運び入れる手間は相変わらずなので、使い勝手は今までと変わらない。
交易商人垂涎ものだろうけど、狙うならそれなりに覚悟してくださいね?
一応町側に無闇に言わないでくれと伝えたけど、隠そうにも見せてしまったから・・・無理だろうな。
誰が異次元ボックス所持者かわからなくする手も考えたけど、手をかざす必要があるのでそれも無理だろう。
「では、積み込みを今日中に、明日出発でよろしいのですな?」
「ええ、大丈夫です」
今回の調査は大体2週間を予定している。
町の周辺になにがあるかを見てくるだけの簡単なお仕事です・・・というと簡単に聞けるけどな。
俺達が元いた町方面は森が広がっていたので除外し、それ以外の3方向を調べることにした。
一方向に大体3日程進み、4日程かけて町に戻るのを3回繰り返す。
10日経っても誰も帰ってこないようなら・・・一応救助部隊を編成するとは言ってたけど、シリウスと俺がいてどうにもならないなら町の防備を固めた方がいいと思うけどな。
柳はお留守番だ、当たり前だがケーナもお留守番だがさすがについていくと駄々は捏ねなかった。
エナは志乃が説教済みだし・・・後は荷物積んで出発するだけだな。
「これが、今回の荷物だ・・・運ぶのはこちらでやってもいいか?」
「いいですよ、どこに置いたかとかわからないと困りますからね」
「ん、あけた」
扉の大きさは異次元ボックスを開ける際に志乃が調整できるらしく、馬車ごと突っ込んでるものもあった。
「って馬車も持って行くんですか?」
「行きは身軽さを考えてもっていかないけどな、馬は限られているため数が揃わんからな」
放牧をしていたわけではないので馬は少ない、3頭ほど緊急用でつれていくけど・・・まぁ俺達は乗れないからいいか別に。
馬車ごとなのは出し入れと収納しやすさを重視した結果らしい。
まぁ引っ張るのは人間だけど・・・頑張れケイ。
「うおおおお!?マジで暗い!?でも見える!?どうなってんだこれ!?」
「いいから引っ張れケイ・・・進んでないぞ」
「え?俺も結構引っ張ってるぜ?カームの兄貴こそ・・・いや」
「オルト!レイク!さっさと押せ!さぼるな!」
「けっ!わかったよぅ」
「ちっ!何でこんなこと」
何であれで調査には参加しようと思うんだ?
馬車4台を収納しているのを眺めていると、いつぞやのトムスじいさん宅から出てきた男の人が俺に声を掛けてきた。
「ふんっ!お前がキサラギとかいうやつか?」
「・・・人違いです」
「あぁ!?ふざけとるのか!」
「・・・えっと、誰かとお間違いでは?」
「お前のような女を侍らせてる奴を見間違うか!」
「そうですか、別段珍しくないかもしれませんよ?」
「貴様!私が話しかけてるのに何だその態度は!」
「どちら様ですか?もしかしてどこかでお会いになりました?」
姿は一応見たけどね・・・エナに服を引っ張られた。
「おに~ちゃん、ボロボロになって帰ってきた商人さんだよ」
「・・・あぁ件の・・・どっちにしろ面識ないじゃん」
訝しげに商人見る、太ってはいないが痩せてるともいえない、中年太り一歩手前といった感じか頬がげっそりしてるせいか見た目より痩せて見える、取り巻きがいたのか後ろに2人程いるけど、少ないな。
「グゴール・ゴル・・・ゴル商会のグゴールだ、誰にも聞いてないのか?」
「ええ、興味ありませんでしたから・・・それでキサラギという人を探しているんですか?」
「き、貴様・・・ふざけるのも大概にせんか!」
荷物は収納し終えてないので、逃げるわけにもいかない。
俺はあからさまに嘆息をつき、対応することにした・・・面倒くさいです。
「キサラギタツヤです、初めましてグゴールさん」
「何で貴様に名前で呼ばれないといかんのだ!」
「・・・失礼ゴルさん」
「ふんっ!それで貴様腕が立つそうだな?」
「まぁそれなりには」
「わしが倒れている間に魔王が来たらしいが、それを殺したのも貴様というのも本当か?」
「一応倒しましたよ」
「証拠は?」
「・・・証拠?町の人・・・偉い人で言えば町長さんや司祭様が見てますね」
「そうか・・・では、貴様はわしの護衛としてこい」
「・・・はい?」
そう宣言して取り巻きと一緒にスタスタと去っていく背中を見る。
ついて来ていないことに気づいたのか後ろを振り向き戻ってきた。
明らかに怒っているのだけど、何で?
「貴様!ついてこいといっただろう!」
「嫌ですよ」
「何だと!?わしの護衛にするといっただろう!」
「それも嫌です」
「なっ!?わしが雇ってやるといってるんだぞ!」
「結構です、報酬も聞いてないけど魅力を感じません」
「ぐ・・・金ならいくらでもくれてやる」
「お金使えませんし、使えたとしても別の依頼ありますし」
「依頼?あぁ調査がどうこうのという話のあれか・・・あれに物資を援助したのはわしじゃ、お前は参加せんでいい、わしの護衛につけ」
「嫌です」
「貴様・・・」
「そもそも町中で何で護衛が必要なんですか」
「他の町に取引に行くからに決まってるだろう!」
「他の町があるんですか?どこに?」
知ってるなら調査の参考にしたいものだ。
「・・・ない」
「はい?」
「見つけていないと言ったのだ!」
「じゃぁ護衛も出来ませんよ」
「それを見つける為に出るのだろうが!」
その為の調査です。
どうしたものかと周りを見回すが・・・俺に任せるとでも言うようにフリッツさんは顔を横に振るし、町長さんは別の荷物の確認にどっか行ってるし・・・お?
「いい加減にせぬか!ゴル!」
「ぬ・・・司祭殿か」
「お主の欲にタツヤ殿を巻き込む出ないわ!」
「わしは商人だ!商人が護衛を雇って何が悪い!」
「タツヤ殿の手綱を握るつもりならやめとけ、お主じゃ器が違う」
「ぐぬぬ」
二人の会話を離れて聞いてる俺に誰かが肩を叩いた。
「あやつ、俺のとこにも良い武器を寄越せといって来たんだよ」
「あぁトムスさんがあの時怒ってたのはそういうことですか」
「あぁ・・・おめえも困った奴に目をつけられたな、怪我する・・・いや異変の前はあんなんじゃなかったんだが」
「商売が出来ないことに不安なんですかね」
「商人なら現実見ろってんだ」
司祭様の説得が通じたのか、俺を睨みつけた後足早に去っていった。
取り巻きは司祭様に頭を下げてから去っていった。
「たつくん大丈夫なの?」
「大丈夫って・・・何が?」
「ん~テンプレだと、何か報復されたり?」
「・・・その時はその時だな」
「ん、たつ自分のこともまもる」
志乃の言葉に志乃を見て優奈を見る・・・最後に美香を見て
「頑張るよ」
と答えておく。
「あ、兄貴終わったぜ・・・」
「お疲れケイ、志乃もういいよ」
「ん、おつかれけいさん」
「お、おう・・・ありがとよ」
「何照れてんだお前?」
「ち、違うぜ兄貴!?大丈夫だぜ!?」
まさかケイ・・・いや、まさかな。
「とりあえず俺達の荷物は入れたがキサラギ達のはいいのか?寝具もいらない言っていたが」
「自分のがあるから大丈夫ですよ、食料だけで」
「まぁ確かにキサラギ達の町にあったもんのほうが良いだろうな」
「おう、ゴルの奴のせいで忘れてたぜ!これを渡しに来たんだった!」
いきなり会話に入ってきたトムスさんに布を渡された・・・あぁ熊側のコート?いや、ローブか。
「とりあえず4着作っておいたぜ、大きさはどうだ?」
3人娘にも配り羽織ってみる。
「大丈夫みたいですね・・・志乃は後で美香に調整してもらおうな」
「ん、おおきい」
「まぁシノ嬢ちゃんは今後のことも考えてだな」
「折り返して縫っとけばいいかしら・・・」
「おお、暖かいね志乃ちゃん」
「ん、ゆうなお腹温まる」
とりあえず3人娘にも好評のようだ、毛皮というが触り心地はいいし、その割には通気性がいいし怪物の毛皮のせいか普通の毛皮より丈夫という話だ。
「よしよし、大丈夫そうだな・・・気をつけてけよ嬢ちゃん達、キサラギはともかく他の奴を盾にしていいからよ」
「あはは、たつくんがいるから大丈夫だよ」
「ん、たつつよい・・・たまにまける」
「ちょ志乃!?ま、まぁ達也だけに任せるつもりはないわよ、私達も出来ることはするから」
「お、おうそうか?おい、タツヤ?大丈夫か?」
大丈夫だ問題ない。
午後一杯で荷物を準備していたので、今日は英気を養い明日の朝出発だ。
「ぶーおに~ちゃん、本当に私置いていくんだ?」
「だから、エナのことまでは守りきれないって、ケーナは聞き分けがいいぞ?」
「けーなはたつにいがお留守番しろっていったからするの!」
「おーいい子いい子」
「ぶー」
夕飯を食べて風呂に入った後あたりからエナがまたぐずりだしたけど・・・まぁ一過性のもんだろ。
「じゃぁ今日は左腕私がもらってもいいよね?ユウナおねえちゃん!」
「え、だめだよ?」
「えー!?じゃ、じゃぁ右腕?」
「駄目よ?こっちは私のだから」
「え・・・え?じゃ、じゃぁ・・・おな」
「ん、だめ、わたしが温める」
「もー!おに~ちゃん!」
「たつにいけーなもおなか!」
「ん、けーなだとスペースぎりぎり」
「ケーナにまで裏切られた!?」
『私は体の中にでも入っておきましょうか』
俺の体が切り売りされている、体の中!?
「ヂヂヂヂヂ!」
「チチチチ!」
足は姉妹が確保してるし・・・まぁいいや”身体頑強””血行促進”さっさと寝よう、おやすみ。
「私にもおに~ちゃんちょうだい~!」
売り切れ御免。




