言葉わからずともノリで
「はぁなるほど・・・さきほどのはキサラギ殿が・・・凄いですな」
「本当にすみません・・・あの、怪我した人は」
「あぁいえいえ怪我はヤナギ様が治してくれましたし、如何せん掘るのも大変でしたからな、丁度良かったですよ」
町長さんは笑ってくれるが、吹き飛ばされたおじさん達は・・・あれ?気にしてないようだ。
「そりゃ兄貴、パンチ一発で当たってもいないのに吹き飛ばされたら文句言えるわけねえよ、基本的にへたれの集団なんだから・・・いや、へたれじゃなくても文句言わないと思うぞ」
ケイが俺の腕を気遣いながら説明してくれた。
「にしても・・・自分の攻撃で自分が怪我するって・・・兄貴どうなってんの?治るのそれ?」
「あぁ治療のほうはどうにでもなるけど、使いどころが難しいな・・・使っていいものやら」
「っても、使う時は一切躊躇わないと思うぜ?兄貴のことだから」
まぁ・・・そうだろうな。
修練自体は中途半端で止める方が危ないので引き続きつけてくれるらしい。
まぁ左腕が治るまでは足捌きくらいしか出来そうも無いけど。
完治までは3日くらいかな、普通の人はどれくらいかかるかわからんが・・・いや、普通の人じゃ治る可能性すらないかも。
今は暴れないように志乃とケーナの監視のもと、座って大人しくしている。
いや、暴れたわけじゃないんだけどな。
「ん、たつはあばれんぼう」
「たつにい元気ありあまってるの?」
この二人を監視につけたのは美香だからな、まぁさすがに誰もいなくても大人しくしているつもりだけど。
「それでは・・・調査のほうは1週間くらい待つということでいいのですか?それまでに治るとは思えませんのですが」
「3日もあれば治ると思うので大丈夫ですよ、期間の1週間はリス族の住処の完成を待ってからって意味ですしね」
ワニ君達の活躍もあって、予想より早く建築も進んでいる。
後はリス族の町での新密度をあげるだけだけど、不満があったのは軒並み柳と俺がつぶしたし、さっきの一撃が決定打になって大人しくなるだろう。
その間はついでに調査参加者の稽古をシリウスにつけてもらうことにした。
一応真面目に教えてもらえば、あの一撃が出るかはともかく生存率はあがるんじゃないかな。
オルトとレイクが逃げ出そうとしたが、フリッツさんが捕まえていた。
「お前らな・・・そんなんで調査には参加したいとか理解不能なんだが?」
「だってよぉフリッツ、さっきのキサラギの一撃見ただろ?」
「あんなん出来るようになるまえに死んじまうよ!どんな訓練したら、あんなことが出来んだよ!」
「しかも、それをやったキサラギの腕がひでーことになってんじゃねえか!」
「戦う前に死んじまうぜ!」
「大丈夫だ、お前らじゃキサラギと比べるだけ無駄だ、死なない程度に訓練は受けろ」
まぁ今日は穴の跡や俺の抉った地面を整地して、あしたからシリウス指導のもと訓練をすることになった。
「ヂヂヂ!」「チチチ!」
俺にやった最初の鬼教官みたいなの明日やったらお仕置きするからな。
「ヂヂヂ!?」「チチチ!?」
妙に気合入れてると思ったら、やっぱりやるつもりだったのかよ・・・真面目にやれ。
「ヂヂヂ・・・」「チチチ・・・」
俺だけの時なら好きにすればいいだろ。
「ヂヂ?ヂヂヂヂ!」「チチチチチチ!」
後でどうなってもいいならな。
「ヂヂヂヂ!?」「チチチチ!?」
そして翌日。
「よっしゃ!今日はえっとデブリスさん?が訓練つけてくれるんだよな?「ヂヂヂヂヂ!」ぎゃーーーー!?」
気合を入れるも名前を間違え押し潰されるケイ。
潰れたケイをエナがつんつんしながら。
「シリウスさんだよ、ケイおに~ちゃん」
「そ、そうか・・・シリウスの姉御・・・もぅ覚えたんで・・・苦しい・・・許してくれ」
「ヂヂヂヂ!」
「ぐえええええ」
「乙女を重いだなんて!って言ってるけど、逆に怒らせてどうするんだい?」
ケイは一言も重いなんて言ってないと思うんだが。
「あれ?ルッドさんも調査にいくんですか?」
「いや、私は行かないけど、カームは私の弟子だからね、今のうちに教えておけることを教えておこうかなと、それに訓練は参加するよ」
曰く、鍛えることは自分にとっても町にとっても悪くないから、暇な人・・・とはいっても収穫は終わったので、大抵の人は暇なのだけど。
経済も停止してるから、することがないのだ。
「あぁなるほど、何でこんなにいるのかと思ったらそういうことですか」
「うん、見学も合わせて・・・町の半数以上は集まってるんじゃないかな」
空き地自体はかなり広いので、別段いてもらってもいいけど・・・危なくないかな?
『タツヤ様が参加しなければ危険はないと思います、タツヤ様が参加される場合は・・・何人かは諦めましょう』
「ん、たつおとなしくしてる」
「そうだよ、たつにい?怪我してるんだからだめだよ?」
「あー、うん・・・わかったよ」
腕を使わない訓練くらいはやろうと思ったが、自重したほうが良さそうだ。
ぴったりくっついて離れない少女二人を見てため息をつく。
「あれ?エナは?」
いつもなら一緒になって監視してそうだけど、さっきいたよな?」
「ん、えなはくんれんするって・・・ゆうなとみかも」
「私達はたつにいを見ててってミカねえにたのまれたんだ!」
あ、そうですか・・・優奈と美香は訓練参加か・・・あぁあの学校指定のジャージを着てる二人組みか。
3人で訓練希望者の群れを眺めているとボードル町長と取り巻きが俺の周りでなにやら準備をし始めた。
「何してるんですか?」
「お久しぶりです、キサラギ様・・・キサラギ様の挨拶をする準備ですが、どうかしましたか?」
「え?」
この人は・・・確かカリル何とかっていう秘書さんだったかな、不思議そうな俺を見て納得したように一つ頷くカリルさん。
「あぁなるほど、緊張なさっているのですね?大丈夫ですよ、適当に声をかけてもらえればいいですから、挨拶の後は観覧席として御使用してください」
そんなことを疑問に思ってないんだけど?
やがて準備が出来たのか、シリウスが運動会よろしく訓練者の前に立つ。
「ヂヂヂ、ヂヂヂヂヂヂヂ!」
「「「「・・・」」」」
「ヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂヂヂ!」
「「「「・・・」」」」
「ヂヂヂヂ!ヂヂヂ、ヂヂヂヂヂヂ!」
「「「「・・・」」」」
「なぁ柳?」
『何ですか?タツヤ様』
「お前が通訳してやってんの?」
『いいえ?私は今日はケーナの傍にいます・・・人が多いですから』
「あぁうん、それでいいと思うぞ、俺も一応見てるし」
『はいありがとうございます、それでシリウスさんの通訳でしたね』
「あぁあいつら神妙に聞いてるけど・・・わかってんの?」
『結論を言いますと雰囲気とノリではないですかね?』
左右に少女二人がいなかったらズッコケてたことだろう。
未だに熱心に語っているけど、理解してるのって柳とルッドさんと・・・多分カームさんくらいじゃないのか?
白熱しはじめたのか、手振りまで加えて大仰な動作で演説を続けるシリウス。
「ヂヂヂヂヂ?ヂヂ!ヂヂヂヂ!ヂヂヂヂヂヂ!」
「「「「・・・」」」」
「ヂヂヂ・・・ヂヂヂヂヂヂヂィィィィィ!」
「「「「ぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」」」」
お前らがそれでいいなら俺はいいと思うよ?うん。
「みっちゃん、シリウスさん何て言ってたの?」
「解るわけないでしょう・・・こういうノリは苦手だわ」
「まぁまぁ私達もある程度動けた方がたつくんも楽になるよ!」
「そうね・・・頑張りましょう」
「ありがとうございますシリウス殿・・・続いては町の英雄、キサラギタツヤ様から言葉を頂きます!」
「おおおおおおおおお!」
ボードルさんがさぁ言って!というように背中を押してくるんだが・・・行けばいいんだろ・・・え?二人もついてくるの?「ん、きょうはかんし」「たつにい逃がさないよ?」いや、いいけどさ。
シリウスと入れ違いでシリウスが立っていた場所に立つ。
壇上があるわけではないので、視線は・・・俺もそんなに背が高くないからむしろ低いな。
多数の視線に晒されてるせいか、じっとりと右手が汗ばんできてるような・・・気のせいか。
「えー・・・っと」
「「「「・・・」」」」
おう・・・何言えばいいのかさっぱり思いつかないんですけど、助けて志乃?
志乃は俺の様子に興味ないのか訓練希望者達のほうを注視している。
ケーナは頑張れというようにキラキラとした目で・・・見るな!そんな目で見ないでくれ!
ええいままよ!”声帯強化”ところでええいままよのままってなに?ママ?お母さんなの?
「おはようございます!」
「「「「!!!!!!」」」」
声帯強化による声は、大気を震わせる。
「キサラギタツヤです!ご存知のことかと思いますが、森の守護者たるシリウス殿が皆さんに手を貸してくれるそうです!」
「「「「・・・」」」」
別に大声出してるつもりはないけど、スピーカーを使ってるかのような爆音が口から出る。
傍にいた志乃とケーナは耳を塞いでいるが・・・非難の目ではないので続ける、きつそうなら柳が何とかすると思う。
「先日は魔王がやってきて私が何とか撃退しましたが俺もずっとこの町にいれるわけじゃありません!」
「「「「ザワザワ」」」」
町に定住すると思っていたらしい人達が困惑しているようだ。
「幸い、リス族の方も町の戦力として参加してもらえるようになりました!」
「「「「・・・」」」」
リス族にボコボコにされたおじさん達が苦い顔をしている。
「だからといって!甘えるな!!!」
「「「「ビクッ」」」」
一層声を大きくし、恫喝のように威圧を・・・あ、優奈達いるんだっけ『いえ、優奈様達と傍にいる二人のことは私が何とかしますのでそのままどうぞ」ありがと柳。
「世界は変わった!領主もいなければ、守ってくれる兵士もいない!」
「「「「ビクビクッ」」」」
威圧が効いてるのか、何人かは青ざめているけど・・・そこまで強いものをかけてないはずだ。
「自分の家族は自分で守れ!自分達の町は自分で守れ!甘えるな!一緒に戦え!じゃないとまた死人が出るだけだ!」
「「「「・・・」」」」
守れのあたりで何人かの人の目が変わり、死人が出たと言ったあたりで大多数の顔が上がった。
「失いたくなければ鍛えろ!奪われたくなければ戦え!」
「「「「・・・!」」」」
あれ?俺は何を言おうとしたんだっけ?確か・・・寒いですが体を冷やさないように頑張ってくださいと言おうと思ったような?
「その手段はリス族の方が教えてくれる!自分の限界を鍛えろ!超えろ!・・・以上!」
「「「「・・・」」」」
ふぅ・・・えっと・・・?人間頭が真っ白になると勢いで凄いことを言うもんだ・・・何様だ俺は、ほら固まって動かない。
「「「「・・・」」」」
とりあえずカリルさん達が用意してくれた観覧席に行くか、二人もごめんな耳痛かった?柳が何かしたのか二人は白いモヤモヤで包まれていたけど・・・優奈達も同じかな。
「「「「おおおおおおおおおおおお!!!」」」」
去ろうと背中を見せたら、たくさんの声が後ろから迫ってきた。
うお!?何だ!?驚かせるなよ!
「い、以上キサラギ殿からでした」
人数が多いため5つ程の集団に別れることにしたらしい、大体一塊10人程かな。
もっといるように見えたけど、実際は見学者が殆どだったみたいだな。
暇人多いなぁ・・・ところで俺は囲まれている。
何に?そりゃさっきの演説聞いて興奮した暇人達に。
「いやぁわたしゃ痺れたよ!ひさしぶりに感じちゃったね!」
「やだもぅあんた、旦那とご無沙汰だったからって!」
「に~ちゃんに~ちゃん!凄い大きな声出せるんだな!?どうやったの!?」
「あの、キサラギ様・・・私クッキー焼いてきたのですの・・・良かったら」
「ちょっと!いつのまにそんなものを!寄越しなさい!私が食べガツガツッるわ!」
「ちょ!?何すんのよ!」
「うるさい!抜け駆けなんて許さないわよ!」
「にーにーだっこ~」
「みぃも~」
左腕の怪我を考慮してか抱きついてはこないけど、小さい子は遠慮してないけどさ・・・誰か収拾つけてくれない?
「ん、ゆうなとみかがんばってる」
「おねえちゃん達の班は体力づくりみたいだね」
『あの班は戦い方以前に土台作りからみたいですね』
「あ~」―― ペチペチッ ――顔を叩かないでくれ
「う~あ~!うー?」―― チュー ――指を吸うってことは
赤ちゃんの子まで押し付けられてそれどころじゃねえよ!・・・この子お腹すいてるんじゃないの?ちょっとお母さんどこー!?




