自爆系主人公
昨日迎えにいく約束をしていたので、町長宅へケーナを迎えに。
「おはよう!たつにい」
「おはようケーナ・・・もう歩け回れるのか?」
「ん~もうちょっとかかるってヤナギは言ってたよ?」
「そうか、じゃぁ今日は俺が抱っこでいいか?」
「うん!」
”腕力強化””脚力強化””気配察知””反応強化”
ケーナを抱っこして・・・何だよ、志乃とエナも?「「だから違う」」背が足りなかったな。
昨日もそうだけど街中をケーナと連れ立って歩くと人に声をかけられる。
「あら・・・キサラギ様おはようござ・・・ケーナ!?」
「おはよう、おばさん」
「おぉおはようございますですじゃキサラ・・・ケーナ!?」
「おはよう、おじいさん」
寝たきりだった割には随分顔が知られてる、愛されてますな。
そんなことを数度繰り返せば、着くのは遅くなるわけだけど、何とか作業場についたのだが。
目前に並ぶ光景に目を疑う。
「まだ、埋まってたのか」
土に埋まったおじさん達が怨嗟の声をあげようとして口をつぐんだ・・・あぁ俺の後ろに柳がいるからか。
「柳?そろそろ解放してやれば?」
『私は構わないのですが、ケーナのお父上が反省の色が見えないので昼までこのままにしてくださいとのことです』
「あぁそう・・・」
そんな話をしてると騒ぎ始めた埋まったおじさん達。
「ち、違う!俺は反省してる!反抗的なやつらがいるんだ!」
「腹減った!」
「そうだ!俺は反省してるのになんで!」
「腹ペコだぁ!」
「っていうか、反抗的なやつ誰だよ!出て来いよ!」
「お腹が空いてもう死にそうだぁ!」
「そうだ!そもそも俺達が埋められたのはそいつのせいだ!」
そうだね、お昼まではこのままでいいんじゃないかな。
死にそうだぁと聞いてケーナが助けにいこうとしたが、俺の腕からは抜け出せまい。
こういう人は痛い目に合わせないと二度、三度と繰り返すからな・・・まぁ二度目は俺と柳で徹底的につぶすけど。
うるさい、首×25を放置してリス族のエリアへ行く。
「おぉやってるやってる、シリウス進捗どうなの」
「ヂヂヂヂ」
「ははは、全くわからん」
「ヂヂヂヂヂ!」
左手でケーナを抱えてるので、右手でシリウスを抑える。
ケーナを迎えにいくときに別れたけど、順調そうで何より。
「じゃぁ今日もワニ君達お願いね?」
―― コクコクッ ―― スタタタタッ ――
昼まで作業を眺めたり、手伝ったり、昼食の準備をしていた。
昼食にしようかと声をかけようとしたところで逆に声をかけられた。
「おぉキサラギ殿・・・朝以来ですな」
「あれ?ボードルさん?ケーナの様子見に来たんですか?」
「いえ、それは心配しておりませぬ・・・あやつらを掘り起こそうと思いましてな」
見れば、町長さんの後ろにはフリッツさん達護衛メンバーをはじめ何人かの力自慢なおじさん達がいた。
「柳に言えば掘り起こしてもらえると思いますけど、俺から頼みましょうか?」
「いえいえいえいえ!馬鹿なことをしでかして精霊様を怒らせた奴等にこれ以上精霊様とキサラギ殿のお手を煩わせるわけにはいけませんので!」
「そうですか?わかりました」
恐縮したように俺と柳に各々挨拶したあと首×25の所に向うおじさん達。
「柳、どうにもなりそうになかったり、怪我しそうなら掘り起こしてやれよ?」
『・・・わかりました』
不満そうだな、思わず苦笑が漏れるけど、もうちょっと痛い目をみてもらうかな、柳なら怪我まではさせないだろうし。
「ヂヂヂ」
昼休憩も過ぎ掘り起こすのを眺めてる俺にシリウスが・・・多分声をかけてきた。
「なんだよ?」
「ヂヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂヂヂヂ」
『お暇なら稽古をつけましょうか?と言っておりますよ』
「稽古?リス族秘伝の武術とか?」
「ヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂ」
『秘伝かどうかはわかりませんが、タツヤさんの身体能力なら、ある程度は教授できると思います。だそうです』
ん~ケーナと顔を見合わせて考えるが、まぁ利益しかないからやるかな。
「ケーナ、志乃達と一緒にいてくれるか?」
「うん、たつにい訓練するの?」
「あぁ、教えてくれるなら教えてもらおう」
『私は通訳で残ったほうが良いですか?』
「いや、柳はケーナの守護精霊だろ、優先順位を間違えるな」
まぁついでに志乃達も守ってやってくれ。
『・・・そうですね、ではお気をつけて』
「ヂヂヂヂ!」
気合を入れるかのように鉢巻を取り出して頭に・・・手が後ろまで届かないようだ、泣きそうなシリウス・・・あぁうん、結べばいいのな。
「ヂヂヂ!」
改めて気合を入れなおしたのか修行をはじめる。
「ヂヂヂヂ!」
とは言っても雰囲気で読み取るしかないんだけどな。
とりあえず構えから!とでもいうように両手をやや低めに構えるシリウス、真似してみる。
―― バシンッ ―― 「アイタッ!?」
いつのまにか肩にいたチビ助に、持っていた木の枝で手を叩かれた。
「え?え?な、なんだよ?仕返しかなにか?」
弄くり回しすぎたかな・・・チビ助は首を振ると今度は手は叩かず押さえつけるように高さを調整してくる。
もしかして、この姉妹鬼教官のつもりでやってる?元々の性格とは違う気がするからごっこみたいなもんか?
「チチチチ!」
集中とでもいうように頭をペチペチ平手で叩いてくる、わかったよ。
シリウスの見様見真似でひたすら、模倣する。
― パシンッ ―「アイタッ!」
「こ、こうか?」 ― ペチペチッ ― 「あぁ頭が高いと」
「チチチ!」「ヂヂヂ!」
― ペチッパシンッペチッパシンッ ―
「たつくん、よく怒らないよね~」
「ん、もてあそばれてる」
「おに~ちゃん特訓になってないと思うんだけど、気づいてるのかな」
「まぁシリウス達は楽しそうだし・・・鬱憤を解消してるんじゃないかしら、達也はよく耐えるわね」
「たつにい楽しそう・・・ううん、段々顔が引きつってるように見えるよ?」
『あの姉妹は恐ろしいことをしますね、後が怖いのですが。ケーナ非難しませんか?町の外まで』
「ヂヂヂヂ!」―― シュッシュッ ――
ええと、腰を低く相手に向って半身・・・で、片方の手は相手側に伸ばし手首を垂直に首と頭を守る、逆側の手は地面と並行に手のひらは上でお腹を守ると。
ひたすら叩いて満足したのか、まともに教えはじめたリス姉妹。
とはいっても―― ペシンッ ――っ!容赦なく修正してくるけど。
えーと、ここから体の回転と逆向きにするときの力を利用して殴ると・・・なるほど。
シリウスが殴るときに軸足の方を踏み込めというように見本を・・・こいつの足元見えないんだが?
あぁチビ助が見本見せてくれるか?ってか、足元見えない奴からどうやって教わってたんだ。
「えっと・・・踏み込む足じゃなくて軸足の方を重視するんだな?」
こうか?「チチチ!」もっと?「ヂヂヂヂ」うお、シリウスの足元の地面が沈んだ、見えないけど本人が数センチほど沈んだからそうなんだろ。
「つまりえっと・・・”脚力強化””身体頑強”ようは」
「たつくん大分様になってきたね~、動きが綺麗になってきた」
「ん、くるくる」
「そうね、まぁ一つの型をずっとやってるし・・・かれこれ何時間かしら?そろそろ夕飯の準備しなきゃいけないわね」
「おに~ちゃん、頑張るなぁ」
「たつにい今は楽しそうだね、柳どう?」
『あれを会得したタツヤ様に殴られたくないですね・・・っ!不変にして不毛”固地硬地”』
「つまり、こうか!」
脚力強化をし体を回しながら軸足を思いっきり踏み込み地面の反発を利用する、踏み込んだ足は補助だ。
―― ズドンッ!!! ――
柳が何やら叫んだと思ったら俺とリス姉妹を囲むように土の壁が四方八方に出来上がる。
俺の踏み込んだ足は放射状に地面に皹をいれた、どうやら踏み込み方がいいと地面に影響は少なくなるらしい、達人になると枝の先に立てると後でシリウスに聞いた。
で、まぁ不完全ながらも地面の反発を利用して体を回転させながら拳を前方に放ったのだけど、前方の壁が―― ドゴンッ! ――と吹き飛び「「「「ぎゃああああ!?」」」」悲鳴が聞こえた、シリウス姉妹は壁に叩きつけられた、ついでに俺の左腕も裂けた。
「痛たたたたた・・・ちょ・・・痛い痛い!」
「ヂヂヂヂヂヂヂ!?」
「チチチ!?」
壁が解除され、すぐに優奈達が駆け寄ってくる。
「た、たつくん!?何!?何で腕切れちゃってるの!?」
「ん、たつはすぐけがする・・・いたそう、きゅうきゅうばことってくる」
「あんたはもう!戦闘でもないのに何で怪我するの!?馬鹿なの!?達也!?」
「おおおお、おに~ちゃんの腕が血だらけ!お、お湯もらってくるね!」
「えっと・・・ヤナギ?治してあげられない?」
『出来なくもないですがタツヤ様に効き目は薄いですし・・・タツヤ様は自己治癒の方がいいと思われます。そっちのほうが強靭になりますので』
皆の声をどこか遠くに聞きつつ、痛い痛い”再生治癒””回復強化””痛覚麻痺””血流操作”治癒系は二重で強化できないからな・・・とりあえず、痛みを麻痺させて血の流れを意図的に止めてから周囲の様子を改めてみる。
柳が作った壁を貫通したのか、俺が拳を放った先・・・首×25が埋まっていた場所が大きく抉れておじさん達が呻いている。
「・・・柳、悪いがおじさん達の治療してやってくれないか?」
『・・・はぁわかりました、重度の怪我人はいないようですが、見てきます』
「頼む・・・その、ごめんなさい」
『いえ、壁が間に合ってよかったです』
柳がおじさん達に近づき何やら詠唱しはじめる『生命の源、始原の始まり、彼のモノを癒し祝福を与えよ”癒水”』呻くおじさん達に水が降り注ぎ、呻き声が収まった。
「後は・・・シリウス姉妹は大丈夫か?」
「たつくん!・・・あれ血止まってる?動かないの?とりあえず・・・えっと・・・消毒してもいい?痛くない?」
「一応血は止めてる、そのせいか動かせないけど・・・悪いけど頼めるか?痛覚麻痺させてるから痛みはないから遠慮なくやってくれていいよ」
「ん、とりあえず、あらってからしょうどく」
「ざっくりいっちゃってるわね・・・神経が切れてないといいけど・・・優奈は支えて?私が洗うわ」
「ミカおね~ちゃんお湯持ってきたよ!」
「ヤナギってあんなこともできるんだ」
「ヂヂヂヂヂヂ」「チチチチチ」
『調子に乗るからです・・・いえ、不可抗力でしょうけど・・・さすがにあそこまで威力が出るとは』
「ヂヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ」
『そうですね、腕も強化していたら・・・もしタツヤ様が完全に会得して全力で放ったら町の一角は吹き飛びそうですね、ましてや黒の腕、黒の脚を使った時には・・・恐ろしくて考えたくもありません』
「とりあえず、固定もしたし消毒したし包帯もまいたよ?どう?たつくん」
「おぉ・・・何かどんどん手当てが上手くなっていくなぁ」
「ん、たつはけがばっか、お腹温めた?」
「本当にもぅ・・・何でパンチ一発で自分の腕と周りが壊れるのよ・・・」
「おに~ちゃん自分は大事にしないとだめだよ?」
「たつにいの力ってすごいんだね」
いや参った、まさか空振りで色んなものが吹き飛ぶとは・・・漫画か!しかも直前に感に従って体を頑強にしておいてよかった・・・多分、無強化でやってたら手が爆散してたんじゃないか?
中途半端のほうが怖いから教えは受けるけど・・・強化は身体頑強だけにしとこう・・・戦闘に使うかは何とも言えない。




