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見た目通りの名前

―― サスサス ――


 誰かが文字通りお腹を摩っている・・・揺さぶってるとかじゃなくてお腹を摩っている。

 つまりあれだろ・・・?


「おはよう・・・志乃・・・それ楽しい?」

「ん、おはよう・・・お腹温めないとけがする・・・まける」

「ぐはぁ」


 朝から俺の精神ポイントを削るとか絶好調だな志乃!?


「たつ?大丈夫?たりなかった?」

「いやいや、シノちゃんが倒したんだよ?」

「ん?えななにいってるの?たつは強いからたおれない」

「ぐふぅ」


 お、俺が倒れても第二第三の俺が・・・志乃をたお・・・す。


「お、おにいちゃ~ん!?」

「たつが起きたのにまた寝た」

「ヂヂヂ」

「あれシリウスちゃんどうしたの?」

「ヂヂヂヂヂ」

「えーっとご飯呼びにきたのかな?」

「たつくん、ご飯だよ~起きて~」


 あれ?何で俺より早く優奈が起きてるんだよ?


「何でって・・・もうお昼だよ?志乃ちゃんと仲良くお寝坊さんだよ?」

「何だと・・・?」

「そんな驚くことなの?みっちゃんが達也と志乃は昨日ので疲れてるみたいだから寝かせてあげましょうって言ってたよ?」

「何だそうなのか・・・昼まで寝てたのか」


 収穫護衛も終わって気が抜けたかな・・・ぼけーとしてると優奈が俺の顔を覗き込んできた。


「どうした?機嫌悪そうだな?」

「べつにぃ?みっちゃんの言ったことは信用するのに私は信じないんだぁ?」

「はぁ・・・全く「わぷっ!?」」


 頭ごと抱きしめて撫でてやる。


「作物収穫は一番優奈が良かったらしいぞ」

「あうあう・・・そうなの?」

「あぁだから優奈も寝てたら良かったのにとは思ったな」

「む・・・むぅ・・・私がんばった?」

「おう、護衛任務も大事だけど、結局作物の収穫が遅かったら意味ないからな、優奈は頑張ったよ偉い偉い」

「えへへぇ・・・ん・・・すぅすぅ・・・」

「おいこら、さすがに寝るな」

「ふぁ!?・・・たつくんのは魔性のハグだよ、危険だよ!」


 今更になって恥ずかしくなったのか、跳びのき部屋から出て行った。

 魔性のハグってなんだよ・・・魔法でもかかってんのか?


「たつ・・・おしおき」

「おに~ちゃん、今のはだめだよ!いけないよ!」

「はいはい、ご飯食べるぞ」


 子供二人をいなしてご飯を食べにいく、今日はどうするかな?さすがに休息にあてるべきかな。






 皆が待ってるところにいくとデニスさんとフリッツさんが座っていた。


「あれ?おはようござ・・・こんにちわデニスさんフリッツさん」

「あぁキサラギ起きたか良かった」

「おはようキサラギ・・・大分疲れが溜まっているようだな」

「あはは、そうかもしれません(別の要因なんだけど、まぁいっか)」

「ん、ひみつ」

「シノちゃん?どうしたの?」

「えなひみつはひみつ」

「シノちゃんが昨日からおかしい!」

「ん、しつれい・・・おせっきょう?」

「ごめんなさい!」


 朝から・・・いやもぅ昼だったけか元気だなぁ。


「たつくんさっきのやって!」

「あれは一回こっきりです、品切れです次回入荷を待て」

「むぅ~」


 大体俺からやると逃げるだろうが、さっきのは不意討ちだし。


「それでデニスさんとフリッツさんは収穫について知らせに来てくれたんですか?」

「それもある」

「というと?」

「まず、収穫についてだが・・・お嬢ちゃん達の働きもあって予定より多く獲れたし延期する必要もなかった」

「おぉよかったな優奈?」

「うん!」

「キサラギとシリウス達が狩ってくれた獲物も相当な量になったしな」

「じゃぁとりあえず来るかわからないけど冬は大丈夫そうですね」

「あぁ・・・というより保存さえしっかりすれば来年まで持つ量はとれている」

「そんなに取れたんですか」

「もともと税やら交易である程度は使うはずだったからな・・・今は領主はいないわ取引相手もおらん」

「そうですね」


 とりあえずまぁ町側の問題は解決かな、護衛もリス組がかなり戦えることがわかったし、後は調査くらいかな。


「あぁそれでだお前らの報酬なんだが」

「そういやそんな話ありましたね」

「忘れるなよ・・・キサラギ、労働には対価が必要だ。ましてお前はいいかもしれんが嬢ちゃん達もいるんだ、その辺はお前がしっかりするべきだ」

「あ・・・そうですね、気をつけます」


 まぁそうだな、護衛はともかく三人娘分の報酬は欲しいな。


「じゃぁ何をもらえるんですか?」

「とりあえずは当座の食料提供は当たり前として・・・正直なところ俺も困っている。何が欲しい?」

「そう言われてもなぁ」


 そう言った途端優奈が手を挙げ勢いよく喋りはじめた。


「はい!はい!たつくん!私あるよ!」

「・・・一応聞くけど何が欲しいんだ?」

「えっとね、剣とか防具?」

「うん?ん~ちょっと予想外だな・・・とりあえず筋力的に扱えないんじゃないか?」

「さすがに私じゃ無理だよ、たつくん使おうよ!」

「俺?」

「そうだよ!いつまでもジーンズに革ジャン程度の防具じゃそのうち一撃死だよ!」

「ん、しんじゃうのだめ。たつよろいきる」

「そういわれてみると・・・達也は武器さえ持たないものね」

「剣と防具ねぇ・・・正直、防具はともかく剣は扱ったこともないのに持ってもなぁ」


 逡巡する俺にフリッツさんが声をかける。


「ふむ・・・とりあえず見てきたらどうだ?」

「武器屋さんとかあるんですか?」

「武器屋と一括りにはできんな、鍛冶屋があるからそこで見てくればいい」

「そういや何人か武器持ってましたね」

「あぁそこで作られてのが殆どだ・・・ほら、これも鍛冶屋から買ったものだ」


 そういって剣を鞘ごと俺に渡してくれる。

 両刃の両手剣で切るというよりは叩きつけるを重視してるような外見だ。

 かといって刃は鈍らというわけではなく、触るだけで切れそうである。

 ほーっと眺める俺にフリッツさんが説明してくれる。


「そいつはクレイモアだな、ただ取り回しを考えて通常より短いがな、魔物相手だと通常のクレイモアのほうがいいかもしれんな」


 確かにクレイモアと言われるとゲームか何かで見たような気がする。

 それに、少し短いなと思ったのはそういう理由か。


「たつくんも冒険者に憧れたの?」

「ん?」

「凄い興味津々だよ?」

「あぁ、それはまぁ男だからだろうな」


 こういう武器は使う使わないにしろ男は大体好きなもんだ、俺も大好物です。

 そんな俺の姿を見てデニスさんが決めたようだ。


「よし!とりあえずキサラギの報酬は鍛冶屋で何かしらもらうでいいな?装備1セットは融通できるようにいっておく、こちらとしてもお前の戦力があがるのはありがたいからな。あぁいや永住してもらうってことじゃない顔を繋ぐことが大事なんだよ」


 なるほど、そういう打算的な考えは好感が持てる。

 一方的じゃなければ俺は何にでも納得しそうだけどな。


「それじゃ、キサラギ達が飯を食べたら行ってみるか、案内は「私がする!」・・・いや、俺も行くけどな」


 エナついてくるのはわかってるから、フリッツさんの見せ場を奪うなよ、しょんぼりしてるぞ。


「あら・・・じゃぁ早くご飯食べてくださいな」

「おぉすまんなメリー話し込んでしまって」

「全くです、せっかくミカさんが愛を込めて作ったご飯を貴方達は何だと思ってるんですか?」

「お、おう・・・す、すまん」

「ちょっとメリーさん!?」

「うふふふふ」


 あーうん、とりあえず食べてしまおう。


「たつくんあーんする?」

「しないでいい」

「たつ、あーん」

「いいから自分の食べなさい」

「おに~ちゃん!あ~「エナ!はしたないぞ!」もぅおと~さんうるさい!」

「あ、愛なんて込めて・・・込めたかもしれないけど!へ、変な味はしないわよね!?達也!?」


 あぁはいはい、いつも通り美味しいですから落ち着けよ。





 俺達とエナとフリッツさんで町を歩く、着いたのか先行していたエナが志乃と一緒にポーズを取りながら一軒の家を紹介した。


「ここがグレッドさんがいる鍛冶屋さんだよ、おに~ちゃん」

「ん、たつかじやさん」

「鍛冶職人はグレッドさんて言うのか?」

「うん、トムじいだよ!」


 グレッドさんなのかトムじいなのかどっちなんだよ・・・。

 煙突から煙を出してる家を眺める。

 水車併設してなくても鍛冶屋なんだなぁ・・・あれ?何で風車がないと鍛冶屋じゃないって思ったんだ俺は?漫画か何かだと併設されていたからだっけ?鍛冶って水を使うけど、風車って何に使うんだろう。

 いや、どっちにしろここに風車はないんだからまぁいいか。


「たつくん?どうしたの?」

「いや、何でもない・・・フリッツさん紹介は任せてもいいですか?」

「あぁ、わかった・・・まぁ別に彼は偏屈とかじゃないから普通に挨拶すればいいと思うぞ」


 そうなのか、何となくイメージで偏屈な爺さんが出てくるもんだと思ってた。

 じゃぁフリッツさんに任せなくてもいいかなと俺が先頭にドアをあけ「とっととけえれ!仕事の邪魔だ!」ようと?


―― バンッ! ――


「くっ、また来ますからな!」


―― ビタンッ ――


「ぐぎゅっ!?」

「たくっ状況がわかってねえのかあいつは・・・あん?」


 言い訳をしよう、気配察知はつけていたが完全に油断した。


「た、たたたたたたつくん!?」

「ん・・・たつ・・・すごくいたそう・・・だいじょうぶ?」

「あーあーまた鼻血・・・は出てないけど鼻が真っ赤よ?大丈夫達也?」

「おに~ちゃんがまた倒されたー!?」


 またとは何だまたとは・・・俺の状態に驚いたのか、最初に出てきた人は俺を見ていたが後から出てきた人を見て足早に去っていった。


「・・・フリッツか、何の用だ?調査用の道具と武器なら今作っているが」

「いや・・・それはいいんだが、そこの蹲ってるのがキサラギだ」

「あん?ドアにぶつかって蹲ってる・・・この小僧が町の英雄様だぁ?」

「あぁそうだ」


 今だに目がチカチカするが、挨拶は大事だろ。


「はじめまして、如月達也といいます。グレッドさんですか?」

「お・・・おう?そうだ俺はグレッド・トムスだ。トムスでもトムじいとでも呼んでくれ」

「わかりましたトムスさん」

「トムおじいって響きいいね!」

「ん、とむじー」

「ううん・・・お爺さんにいい思い出がないけれど、この人は大丈夫そう?こんにちわトムスさん、野崎美香です」

「あ、私は坂口優奈!」

「ん、真田志乃」

「エナだよ!知ってるよねトムじい」

「こりゃまた大人数で来たな・・・まぁ話があるんだろう?あがるといい」


 孫を見るかでもような目をして(主に志乃とエナだけど)トムスさんが中に招き入れてくれた。

 玄関潜ってすぐに仕事場があるのかと思ったけど、ここは販売スペースのようだ、色々武器が置いてある。

 武器を見てはしゃぐ俺達を横目に、トムスさんはフリッツさんと話しているのでそっちに行く・・・ってこら触るなよ危ないから「「はーい」」志乃?「ん、さわらない」美香には注意はいらんか。


「ふむぅ、キサラギ殿の武器と防具ねぇ」

「あぁ、何かないか?」

「キサラギ殿は何か武器を扱ってるのか?」

「いや、素人です。それと達也もしくは呼び捨てでいいですよ」

「おう?そうか、じゃぁタツヤは武器の使用経験はないんだな?」

「ええ・・・今のところ素手で戦ってきましたから」

「素手で魔王を倒す勇者ってのも聞いたことねえな」


 豪快に笑い肩を叩いてくる、かなりの衝撃によろめきつつ


「ぼ、防具くらいは何かないですか?」

「ん?あぁいや別に素人だからって武器を使っちゃいけねえってことはねえよ」

「そうですか?俺はてっきり」

「てっきりなんだ?」

「俺はてっきり、剣も握ったことのねえ素人に俺の武器を触らせられるか!家に帰って母ちゃんのおっぱいでも吸って来い!とでも言われるのかと、結構期待してたんですけど」

「いやお前何に期待してんだよ?」


 そこで袖を引かれる・・・ん?


「たつくんお、お、お、・・・ぃ、吸いたいの?」

「ん・・・まだでないからまって」

「ふ、二人とも?落ち着きなさい?ここは年長者がすべきなのよ」

「おに~ちゃんのえっち~」


 えーっと・・・無視しよう、うん。


「それじゃトムスさん何か使えそうな武器ってあるんですか?」

「そうだなぁ・・・おめえさん力はあるようだから・・・」


 奥にいったん引っ込みゴソゴソと漁る音がする。

 戻ってきたときにはトムスさんの手には数本の武器が握られていた。


「これなんかどうだ?グラディウスっていって片手剣だが肉厚で丈夫だ」

「取り回しはよさそうですけど・・・軽いですねこれ」

「そう言われると魔物に武器って効くのか?」

「一応ケイが何度か一撃を与えていますから効くと思いますよ」

「そうか・・・まぁ軽いってのは威力が出しにくいわな・・・じゃこれはどうだ?」


 ロングソードから始まりサーベルやらクレイモア、珍しいものでフランベルクに暗器まで見せてきた。


「って、どんな店ですかここは!」

「グレッド武具店といえば国でも結構有名だったからな」


 そういう問題じゃないと思うんですよフリッツさん?


「まぁ、どちらにせよ何一つしっくり来ないというオチに」

「我侭な野郎だな、男なら武器を見たら狂喜乱舞しろってんだ!」

「いえ、武器を見るのは好きですけど、自分で使うとなると慎重にならざるを得ませんよ」


 扱いミスって怪我したとか洒落にならんし。

 そこで黙って見ていた優奈が口を開く。


「トムおじい、魔剣とかないの?」

「んなもんあるかい!」

「えーじゃぁ特殊な武器は?」

「多分嬢ちゃんが望んでるような摩訶不思議な武器はねえぞ」

「えー!異世界なのに!」


 魔法もないのに無茶をいうなよ・・・ふと志乃とエナが運んできた物に目を惹かれた、重そうだね志乃?


「志乃?それはなに?」

「ん・・・奥にあった」

「何か埃かぶってて、シノちゃんがこれだーっていうんだけど、めちゃくちゃ重いよこれ!」


 布で包まれていて、剣なのか槍なのかもわからない物を志乃から受け取る・・・ってこれ結構重いな?


「ん?おう?そっちの嬢ちゃんはまた変なもん引っ張り出してきたな」


 包みを開く。


「・・・これは、剣ですか?」

「俺がわけーときに作った練習作だよ」


 包みを開くと黒い剣がむき出しでのぞいた。

 両手持ちが出来て刀身が1m程もある幅は10cmはあるだろうか、肉厚はそんなにない。

 柄も鍔も剣も全てが黒い・・・っていうか、これ全部鉄?


「いや、鉄じゃねえよ。俺達の世界では硬鉄こうてつって呼んでたな。鉄より丈夫で硬いんだが、まともな加工法がなくてな、火にくべても溶けやしねえし叩いても曲がりはしねえ」

「え?じゃぁこれなんで剣の形状してるんですか?」

「そりゃあれだよひたすら擦ったんだよ、同じ硬鉄こうてつでな」

「なるほど?」

「しかも全く同じ硬鉄がなくてな、そいつはとんでもなく硬かったのか、それが出来るまで大量の硬鉄を使うハメになったぜ」

「なんでまた・・・損しかしないような」

「それが鍛冶の基本修練の一つだったからなぁ・・・外れを引いちまったのさ」

「そうですか・・・思い出の品なら、これにするわけにはいきませんね・・・志乃戻しておいで?」

「いやいいぞ?」


 志乃に手渡そうと包みをまく俺にグレッドさんが言った。


「え?修行時代の思い出なんじゃ?」

「いや、おめぇ・・・それ無駄に重いし削っただけだから切れ味も無いんだぞ?思い出ってもしんどかったことしか覚えてねえよ、それに」

「それに?」

「ちっこい嬢ちゃんが持ってくるまで俺も存在を忘れていたからな・・・おめえが使ってやんな」

「まぁ丈夫そうで重さもいい感じなので俺はありがたいですけど」

「おう気に入ってくれたのなら俺も嬉しいぜ」

「とむじいわすれてたのに?」

「それはいいっこなしだぜ、ちっこい嬢ちゃん」

「ん・・・志乃」

「お、おうシノの嬢ちゃん」

「ん」


 志乃が一番強い気がしてきた今日この頃です。

 その後この剣に合う鞘ももらい腰に刺すのは重過ぎるので背中に背負う形で持つことにする。

 とっさに抜けないけど・・・対怪物用だし人相手にこんなの使えないから、まぁいいだろ。

 別に武器なくても戦えるしな。


「ん、たつなまえ」

「こいつのか?」

「そうだね、たつくん!名前をつけよう!」

「シリウスの悪夢が蘇るだけじゃないか?」


 散々ぎゃーぎゃ騒いだ後、碌な名前が出てこずもぅシンプルに黒塊こっかいと呼ぶことにした。


「むぅ・・・覇王修羅剣かっこいいと思うのに」

「ん、くろまじっくでいいと思う」

「やっぱり蜻蛉切とか、私達風なら胡桃割とかがいいと思うわよ?」

「おに~ちゃんおに~ちゃん伝説の黒い剣!とかどう?」


 うるさい、もう決めたからわーわー言わないの。

 よろしく黒塊こっかい

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