異世界だと欲望に忠実になる傾向あり?
日の光とともに覚醒しはじめる寝起きはいい方だ、ここはどこだっけとは思わない。が、すぐ傍で息づかいが聞こえる、そして右腕が痺れている・・・け、血流促進。痺れ解除おおお!念じつつ元凶を見る。
あどけない寝顔に癒されそうになる、だが痺れのせいで怒りの方が強い。いや、子供にキツくあたるのもな頭を撫でながら声を掛ける。
「坂口さん、起きてくれ右手がピンチなんだ」
「う、うにゅ?んぅ・・・ん~?ん~おはようおにい」
「兄になった覚えはない、右手離してくれ」
「あれ?たつくんだ・・・夜這い?」
「ぶっ飛ばすぞコラ」
右腕の痺れから怒りが有頂天だ。
「え、え?ご、ごめんなさい、ごめんなさい」
「・・・はぁ、なんで引っ付いたんだ?」
「怒ってる?」
「ナンデ、ヒッツイテ、イタンダ?」
「あ、あぅ・・・夜にね?トイレいったんだけど、暗くて怖かったから、急いで戻ったらたつくんの布団だったの」
「手を離したらひっつくって、言ってたしな、まぁいいや」
「いいの?」
「いいよ、怖い時は無理やり起こしていいぞ、そこまで鬼じゃない」
そう言って上体を起こす。急速に痺れがとれた、便利な能力だな。視線を感じて下を見る、坂口さんがぼ~っと俺を見ている。どうでもいいが、女の子に限らず、子供のこういう仕草は破壊力高いな、暗黒面に落ちそうだ。・・・何のだよ?
「どうかした?」
「おにいみたい」
「・・・兄がいるのか?」
「ううん、なんでもない、顔洗ってくるね!」
パタパタと走り去っていった。誰かと重ねあわせてるのかね?とにかく俺も着替えとかするか
二人して外に出る準備をする。戻ってくるきは無いけど、重要なものを除き確保は容易だろう。食べ物はさすがに持てるだけ持っている。とはいっても移動を阻害しない程度だ。
「アイテム収納能力とか欲しいな」
「あれが一番便利だよね」
無い物ねだりをしても仕方ない、出発。
「どこいくの?」
「とりあえずお店を探そう、出来ればスーパーとかコンビニだな」
警戒・・・耳を強化しつつ進む。
夕方まで店を探し、適宜補充をした。日も暮れはじめたところで、悲鳴が聞こえて二人で顔を見合わせる。
俺は無視しようとしたが、坂口さんが乗りきだ。
「様子は見にいくけど、自衛手段がないから絶対に指示を守れよ?」
「うん」
返事だけはいいんだけどな。
悲鳴の出処は、工場?もしくは倉庫だと思われる建物からのようだ。二人して開かれた(観音開きのドア)から中を覗く。
人が四人いる。男が二人入口側、座り込んでるのは・・・はだけた?破れた?服をまとっている女、多分悲鳴の発生源だ。最後の一人は男か?二人の足元、倒れているからわからんが、刺されたのだろう。血溜まりに沈んでる。2人組の片方が手に血まみれナイフ持ってる。
うわぁ関わりたくない・・・が、横をみれば坂口さんは震えながら、こちらを見上げている。縋りつつ、期待しているように見える。どうにかしろと?
改めて中を覗く・・・かなり高いが男二人の頭上に開いている窓がある。急ぐか。
「上から侵入してみる、ここから伺ってもいいけど後ろに気をつけてな?」
頷くのを見て取り、急ぎ建物の横にまわる。目標の窓を見つけるが、やっぱたけえ4mはあるな・・・周囲に台になるものもない、仕方ない・・・足を強化・・・跳ぶ!
特に苦もなく窓の縁に手をかけ音を鳴らさないように、腕を強化しつつ体を引き上げ中を覗く・・・動いていないようだ
「さてと?悪漢から助けてあげたんだから、お礼をもらう権利が俺たちにはあるよなぁ?」
っとナイフを持っているほうが喋りはじめた。
「いやぁ可愛い子が襲われてるから、思わず刺しちゃったぜ」
「じゃ、じゃぁそのまま出て行ってよ!」
「おいおい、こんな据え膳を見逃したら男が廃るぜ?」
「男ってみんなそうなの!?最低!」
「あんま、ギャーギャーいうなよ、萎えるだろ」
ううむ、助けはしたけど下心満載?って感じか。
「な、なぁもういいだろ?さっさとやっちまおうぜ?」
「そうだな、安心しな可愛がってやるぜ?」
うし、躊躇いを捨てろ、殺す!
窓からナイフを持ってる男に飛びかかる。頭上からの襲撃な為、頭に着地する格好になった。
スタンピングの要領で相手の頭の斜め上から蹴り潰す。
― ゴキンッ ―
首が折れた感触を感じつつ着地。
「な、お前なんだよ!?」
答えず、崩れ落ちる男からナイフを奪い取り・・・一息に心臓目掛けてつきこむ!
「ぐぼ・・・な・・んな・・・ん・・」
ふぅ・・・何とかなった・・・それに人殺しか・・・強化してたのは反応速度だ、イメージは難しいが反応させずに殺れたことから、正解だったのだろう。
「あ、あんたは何なのよ!?」
「気まぐれだ、それより換えの服はないのか?」
「うるさい!あっちいってよ!」
まぁ男不信にもなるよな・・・バタンという音とともに唐突にドアが閉まり。閂をかけている坂口さんが目に映る。
「た、たつくん」
うん?坂口さんが中に入ってきた。慌ててるな。
「どうした?」
また、来ちゃった♪って言ったら教育が必要だが。
「変なのが三匹きたの!モジャモジャなの!もうそこなの!」
ドンドンドンッと凄い威力で扉を殴ってる・・・おいおい、鉄の扉が歪んできてるぞ!?
「今度はなんなの!?」
「怪物がきてるんだ・・・どうにか逃げないと」
昨日のと同じでも三匹はまずい、増えるかもしれない。ふと階段があるのに気付く。視線で先を追うと屋上に続いてるようだ。
「坂口さん!その階段をあがって上にいけ!」
「え?たつくんは!?」
「バリケードみたいなもんを作るから、先に扉開けてきて!」
頷き上に駆け上がるのを横目に、周囲にある荷物を手当たり次第、扉の前に置いていく、っておい!?座り込んだまま動いてねぇ!
「って、あんたも上に行け!モタモタすんな!」
「な、なによ偉そうに!放っておいてよ!」
「アホかああ!今、上に上がらないと入ってきた怪物に、屋上いくの見られたら俺たちも困るんだよ!」
「うるさいうるさい!男なんて信用出来るか!」
「あぁもう面倒くさい!」
「え?きゃあ!」
一刻の猶予もないのに、手を煩わせるんじゃねえよ!座り込んでる女を抱え上げる。お姫様抱っこじゃない、荷物のように肩に担ぐ。
「降ろしなさいよ!」
「うるさいバカ、舌噛まないよう黙ってろ!」
腕力強化と・・・脚力強化!お?出来た!ありがてえ。
物凄い勢いで階段を登り、開かれた扉から屋上に入る。下から雄叫びとともに破砕音が聞こえる、ギリギリ間に合ったようだ。荷物・・・女性をゆっくり床に降ろし、扉を閉める前に階下をみやる・・・案の定食ってやがる、仲良く三匹で分け合って偉いですね?外見は三匹とも昨日の怪物と一緒だった。
そこまで確認して、音を立てないように扉を閉める。多分大丈夫だろ、あんだけ食料あれば満足してくれるだろ?してください。
「たつくん・・・大丈夫なの?」
「とりあえずは・・・大丈夫だろ、男の死体が囮になってる」
「そうじゃなくて!手が血塗れだよぅ・・・」
あ~ナイフは刺したままだったが、結構な血がついてるな。
「俺自身の怪我じゃないから大丈夫、ってか怖くないのか?」
「ふぇ?なんで?」
「なんでって・・・思いっきり人殺しなんだが」
「そうだけど、悪意でじゃないし・・・というより、よくわからないの」
まぁ死なんて日常に感じるのは難しいけどな・・・身内以外は気にしないタイプか?とにかく血を落とすために、コンビニでゲットしたウェットティッシュで拭う。坂口さんが拭こうとしてきたが、目線で制して自分で綺麗にする。他人の血なんて触るもんじゃないしな。あ、そうだ・・・ステータス
″肉体変化 lv2″
やっぱりな、同時に二箇所強化出来たから、もしやと思ったがレベルアップした事を知らせる機能はないのか。これだと、何でレベルアップするのか、わからんな。
黙って手を拭く俺に不安を感じたのか
「やっぱり手痛いの?ごめんなさい・・・」
うお、目に涙溜まってるし!
「い、いや考え事してた、謝るなよってか泣くなよ?」
「だって私が助けてあげてって・・・」
「言ってはいないだろ?」
「で、でも・・・私は何もしてない!」
あ~うん、どうするかな・・・任せっきりが嫌だったのかね?面倒くさい・・・げ、本格的に泣きそう!?
「あ、あれだ、坂口さんが怪我した方がめんど・・・じゃなくて、え~っと、女の子にカッコつけたかったんだよ」
「う~」
手は綺麗になったんだがな・・・とりあえず上体を掴み胸まで引っ張りこむ。
「ふ、ふぇ?あ、ん・・・んにゅ~」
頭も撫でてやる、ってか頭撫でると変な声出すなこの子・・・しばらくその体勢のまま落ち着くのを待っているとし視線を感じ、ってあ~放置してたな、そういえばいたなぁ・・・視線の方に顔を向ける。
「なによ・・・こっち見ないでよ」
相変わらず、不信度マックスだな。手荷物もないし寒々しい格好だな。
「坂口さん?服をあの女の人にあげれない?」
「あ、うん。そうだね・・・って、たつくん見ちゃ駄目だよ!」
調子戻ったかな?女性の方は坂口さんに任せて建物の周囲を確認する。
改めてみると高い建物が少ない・・・精々三階だてのアパート?があるくらいだ。怪物やら人やらは見当たらない。まだ東に集中してるのかね?
見回りを終えて、二人の所に戻る。体格に差があったが、何とか着れるサイズを渡せたようだ。改めて女性を観察する。栗色の髪を後ろでショートポニーテールにしている。顔立ちは、まぁ美人だろう、少しきつ目だが整ってはいる。背は160あたりか?俺より少し小さい感じだな。ちなみに坂口さんは頭一つ分は小さい。スタイルはそれなりだろう、服を押し上げて主張する程度にはある。
黙って観察している俺に何かを感じたのか、睨みつけてくる。・・・ん?敵意は感じないな?
「何ジロジロ見てんのよ!」
「すまん、ようやく服がまともになって、思わず見たんだ、他意はない」
「ふ、ふん!どうだか!」
「も、もう美香さん、さっきはお礼いうって・・・っふが!?」
「だ、黙りなさいよ!?」
あの短時間で随分仲良くなったなぁ・・・放置してご飯の準備でもしよう。
飯は準備しながら野営について考える。テントも布団も持ってないんだよな。服で代用したとして、外だと肌寒いしな・・・焚き火するか。
見回した時に角材の束を見つけたのを思い出し、焚き火する。
″パチパチ″
焚き火とか憧れるけど、実際は管理が面倒なんだな・・・二人も寄ってきて、手をかざしはじめた。坂口さんが隣に座り・・・引っ付こうとしたので、引っぺがす。そのやり取りを呆れた目で見てる女性が聞いてくる。
「ねぇ・・・何も聞かないの?ってか何で助けてくれたの?」
「だから、この子に助けてやれって・・・言われてはないけど、そんな感じだな」
「意味がわからないんだけど・・・まぁ・・・と」
「お礼なら聞こえるように、言うべきだぞ」
「うっさい!聞こえたならいいじゃない!そもそも、ここは何なの!?」
「あんたも異世界組か・・・」
「あんた言うな!」
うぅ・・・会話するのが疲れるタイプですか?そうですか、もぅ放置しようかな・・・ええい、だから引っ付くな!
いきなり黙って、坂口さんの相手を始めた俺に、業を煮やしたのか怒り出す。
「私は野崎美香よ!あんた何なのよ!こっちむけええ!!」
怒ってらっしゃる、ここは巫山戯るとまずそう。
「俺は如月達也、20歳だ」
「そ、そう・・・4つも上なのね」
ふむ16か・・・割と大人っぽい外見だったから、同じくらいかと思った。口に出したら殺されかねんな。話し続かないなぁ・・・見かねたのか坂口さんが声をかける・・・ひっつくな・・・もぅ好きにしてくれ
「美香さん、襲われてたんですよね?」
「そ、そうよ。達也がころ・・・倒した男が刺した男と、昨日から一緒だったんだけど・・・さっき急に襲いかかってきて・・・服を破かれたあたりで、2人組が」
「あぁいや、もういい。酷い目にあったんだな」
「そこをたつくんが助けたんだね!」
「たつくんって?」
「達也だから、たつくんなの!」
「そ、そう?」
やめろ、俺が呼ばせたわけじゃねぇ、こっち見るな!つか、こいつも呼び捨てにしてたな・・・最近の女の子は遠慮を知らんのか。
とりあえず飯食べよう・・・野崎さんの荷物は下だろうし、仕方ないか。荷物の一部を出し二人に聞く。
「食べたいもの選びな~色々あるぞ」
昼に色々回ったおかげで食料は豊富だ。とはいっても、レトルトばっかだが・・・野崎さんが疑わしげにこっちを見てる
「私にもくれるの?」
「おう、好きなの食べな」
「何が狙い?」
め、めんどくさい。
「無償だ!タダだ!善意だ!ありがたる必要ないから受け取れ!」
「む・・・施しなんていらないわよ」
「まぁまぁお腹空くと怒りやすくなるよ?美香さん、食べよ?」
年下に宥められたせいか、素直に選びはじめた。男性不信なのは、わかるけどさ。
それぞれ選んだものを食べて就寝の雰囲気になる。
「さて、俺はドアの前で見張っておくから、君らはそこで寝な」
「「やだ」」
「え、え~ホワイ?」
「一緒に寝るの!」
「油断させといて何するつもり?」
ろそろ切れてもイイよね?ため息をつく。
「わかった、そばで寝るから二人でくっついて寝ろよ。そうすりゃ双方の望みも叶うだろ」
なんか坂口さんがぐずっていたが、無視して寝る準備・・・とはいっても布団も枕も服で代用するしかないけどな、体痛めそうだな。
二日目は色々あったが、何とか終了だ。
さ、寒い・・・。