町のペット
これで9000文字かぁ・・・長すぎるかないつもの2倍くらいあるんですが切ったほうがいい?
あれ?でも切ったら明日の分に追加されるだけか。
4日目、収穫を始めた皆を見渡しながらデニスさんと予定の確認をする。
「大分遠くまで来たな」
「そうですね」
「それにしても・・・やはり農地が広すぎるな」
「というと?」
「ここに飛ばされる前の農地とは広さが違う」
「目測でわかるものなんですか?」
「農家を舐めるなよ?こちとら何十年も引き継いできた農地で食い扶持を稼いでるんだ。全体の農地なんぞ目を瞑ってもわかるわ」
「職人ですね、農地が広がっているならいいんじゃないですか?」
「確かにありがたいが、町の農家だけじゃ管理しきれないな。町長に言って何人か回してもらわんとな」
「護衛も必要ですしね」
「全くだ、広がるのはいいが魔物はどうにかならんのか」
「空のはまだ見てないですけど、地中もいるんだから時間の問題でしょうね。昨日のリスも気になりますし。これからも魔物の脅威は常に存在すると思います」
「人ごとのように言うな・・・そりゃお前は強いが嬢ちゃん達もいるだろうが」
「あぁいやそういう意味じゃ、町の戦力増強が必要ですねって話です」
「それはそうなんだがな・・・昨日のあれを見たらどうにかなると思えんのだ」
「当たらない攻撃じゃ一生殺せませんものね」
「ふぅ・・・俺も収穫の指揮をとってくる、後は頼んだぞ」
「わかりました」
町側の問題は深刻だよなぁ・・・定住するわけにもいかないし何か解決方法ないかな。
特に何も無く昼休憩を迎えた。
「ん・・・たつ食べる」
志乃が手渡してくれた包みを受け取る。
「今日も緑の肉団子か?」
「あけてみる」
草の包みを除くとそこには
「うん?煎餅?」
「いやいや達也?どうやったら煎餅に見えるのよ」
いやだって美香さん、茶色のゴツゴツとした平べったいものですよ?煎餅じゃないのか?
「達也には不評だったからミンチにした肉とすり潰したジャガイモっぽい野菜を混ぜて薄く焼いたのよ」
ふむ・・・油で揚げず、衣のないコロッケみたいなもんか?
「そう言われるとそうかもしれないわね」
とにかく食べる・・・素朴と言うかファストフードっぽい感じだ、塩加減が絶妙だから手軽な美味しさといった感じか。
「いいな、これ美味しい」
「そう、よかったわ」
お菓子っぽい感じで食べられていいなこれ、肉入ってるからお菓子ではないけど。
「ジャガイモもどきは、ただ焼いてるだけって言うから蒸してみたら案外上手くいったのよ」
どんどんアルランの食事事情を変革させていってくれ。
「熊さんのお肉とジャガイモって合うんだね~たつくん」
うむ、君が熊肉だと思うならそうなんだろう。
「たつ、ゆうなはまだきおくそうしつ?」
記憶喪失とは違うのだよ・・・彼女は疲れているんだそっとしておこうぜ。
おやフリッツさんどうかしました?
「キサラギちょっといいか?」
「いいですよ、ちょっといってくる」
声をかけて離れフリッツさんと連れ立って歩く。
「昨日のリスの魔物・・・また出ると思うか?」
「可能性でいえば高いと思います」
「根拠は?」
「昨日のあれは偵察だったんじゃないかなと思いまして」
「偵察・・・つまり、後から襲撃する予定だということか」
「そうですね、いくらなんでも避けるだけ避けて逃げただけ・・・ってほうが不自然です」
「ならまた帰りに現れると思うか?」
「まぁ作物が狙いならそうでしょうね、人間が狙いでも疲れた後っていう意味じゃ帰りに注意です」
「そうだな・・・帰りはどうする?先行するか?」
「経験値とか言わないんですか?」
「からかうな、当たらないんじゃ撃退することも出来ない。次は一匹とは限らないだろ?」
そうですねと曖昧に頷く。
昨日の威力偵察で護衛の戦力を誤認してるだろうし偵察する知恵があるなら、最初に力を見せ付ければ逃げるかな?
さて、帰る頃合何だが・・・今度は自分達から来たな。
達といったように複数・・・それも20・・・いや30前後はいるな。
「チチチチチチチ」「チチチチ」「チチチチチチ」「チチチチチ」
馬車の上から睥睨してる俺から大体100m向こうにいるリス達が威嚇なのか鳴き始めた。
「た、たつくんリスさんいっぱいだね・・・あんなにいると可愛く見えない」
太っちょはリーダーなのか中央あたりで他に守られてるような配置だな。
ん?俺を見ている?”視力強化”こちらをガン見してらっしゃる、昨日俺のことは確認できなかったからか?
「キサラギ・・・どうするんだ?」
「そうはいいますがフリッツさん、俺が前にいって殲滅しようにも・・・半分は抜けられますよ、これ」
「それでも半分は止められるのかよ・・・兄貴」
多分な、太っちょが一番強い=一番速いなら何とか・・・細い方が速いとか言われたら、あの数はお手上げだ。
俺としては最悪馬車を囮にして逃げたい状況だな三人娘の頑張りには悪いけど・・・今は四人か。
「動きが無いな、俺からは何も言えんのだがどうするキサラギ、最悪馬車の何台か犠牲にするか?」
デニスさんから提案してくれるのはありがたいな。
相談してるこっちにあちらが痺れを切らしたのか、太っちょがこちらに歩いてくる。
相変わらず肉は多いが・・・足元が見えない割には速いな、スライド移動してるように見えて何だか不気味だ、ホバー移動でもしてんのかあいつは。
群れから離れ俺達から30m程手前で止まる、その間ずっと俺を見上げている。
「なんかご指名みたいだから行ってみます」
「確かにそういう風に見えるな」
「やっちゃえ兄貴!」
フリッツさんとケイさんに声をかけて馬車から降りる。
「ん、たつリスさんいじめるの?」
「え?あー・・・いや志乃?」
「ちがう、そういう意味じゃない・・・もしかしたらとどめさす必要ないかも」
驚いて志乃を見つめる、止めを刺さなくていい?
少し考える風に上を見た志乃は視線を俺に戻し、何か言いたげな目で見てくる。
多分言葉にできないのだろうとは思うけど。
まぁわかった。
「うん、まぁ志乃が言ったことは胸に留めておくよ」
「ん、気をつけて」
頭を撫でてから太っちょに向けて歩き出す。
「ヂヂヂ」
「いや、さすがに全くわからんぞ・・・?」
太っちょとの距離が5mをきったあたりで太っちょが鳴きだした、いや話かけてきた?
全くもってサッパリ解らないのが問題なんだけどな。
というかこいつ昨日は距離があったせいか大きく見えたが、2mもないな俺と同じくらいか。
「ヂヂヂ・・・ヂヂヂヂヂ」
「・・・えーと?」
「ヂヂ、ヂヂヂヂヂ!」
理解できない俺に業を煮やしたのか両手を構えたんだが。
え?何?戦えってことでいいのか?
「ヂヂヂ!」
一際大きく鳴いた後、ホバー移動してるかのような移動法で距離を詰めてくる。
まぁ”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”やればいいなら話は簡単なんだけどな?
初撃の太っちょの右ジャブを掴もうとして失敗。
速いな、強化してても避けるので精一杯か。
ジャブを掴みそこねて少し体勢を崩した俺を見て、今度は尻尾が体の後ろから現れて足を薙ぎ払おうとしてくる。
それを右脚で受け止める。
―― パンッ ――
何か驚いた顔をしているが、すぐに気を取り直して尻尾で右脚を絡め取ってきたので、絡ませた後に右脚を引く。
まさか力負けするとは思ってなかったのか、体の太さもあって右方向に回転する太っちょ。
左で殴りかかるが左腕で捌かれた、横目でよく捌けたな。
まだ尻尾は解けていない、そのまま右と左で殴り続ける。
まるで歴戦の武道家のように俺の左右の連打を左手一本で捌く太っちょ・・・俺が武道とかしてないからなのか余裕さえ感じられる。
埒が明かないのでしゃがみつつ尻尾を掴もうとすると、絡みを取り回転しながら下がっていった。
「ヂヂヂ・・・ヂヂヂヂヂヂヂ」
「だからわからないって」
まるでここからが本気だというかの気合を入れて太っちょが前進してきた。
左のジャブを右手で逸らし、左を放つも毛一本分で避けられ、しゃがみつつ足を薙ぎ払うがジャンプして俺に圧し掛かろうとしてきたので、蹴りの勢いで背を向けて両手を突き上げる。
その両手を太っちょの両手が包み込み握力で潰そうとしてくるが、ビクともしない感触に驚いたようで俺に支えられたまま動きが止まる太っちょ、っていうか重いわ!
足の力を抜き後転の要領で背中を地面につけ両足でけりあげる。
これはさすがに腹に決まり吹き飛ぶ太っちょ。
「ヂヂヂ!?・・・ヂヂヂヂヂヂヂヂ」
「ま、全く効いた様子がない?」
腹をさすってはいるけど・・・強靭な筋肉だが脂肪だに防がれたのか、効いてる様子がない。
反応強化でギリギリ対応できる速度か・・・なら。
”思考加速””反応強化””反応強化””腕力強化””脚力強化”
タイマン用だ、防御はある程度捨ててとっとと決める。
今度は俺から前進して太っちょに仕掛ける。
右を放つ俺に左で捌こうとする手を強引にかわし胸に当てる、衝撃で少しよろける太っちょに左で追撃するがこれは右手に受け止められた、受け止めてくれたならそのまま右手を掴み引き寄せつつ右で太っちょの左腕を攻撃する。
「ヂヂヂヂヂヂヂヂ!?」
さすがに腕は痛いのか右手で俺に攻撃してくるが避けられるやつは避け、有効打にならないやつは無視する。
その間も執拗に左腕を攻撃し続ける。
「ヂヂヂヂヂヂ!」
左腕がもう限界とばかりに鳴き、跳ぶ太っちょ。
俺を飛び越える程のジャンプで強引に腕を捻る気らしい。
空中で仕留めてやろうと右を振りかぶろうとしたところで尻尾で薙ぎ払われて吹き飛んだ。
その際掴んでた手を離してしまった。
「ヂ・・・ヂヂヂヂ」
「あいたた・・・久しぶりに攻撃もらったな」
顔を横から薙ぎ払われたんだけど・・・鼻にも当たったのか鼻血が出てるな。
太っちょは大分効いたのか、左腕を抑え息を整えているようだ。
「っだぐ、な゛んな゛んだよ゛」
鼻をつまんでるせいでふざけた声になったな。
「ヂヂヂヂ、ヂヂヂヂヂ」
まだ終わりじゃないとでも言うのか、体勢を低くして今までにない速さで俺に向ってくる。
つうか、足も見えないのにどうやって屈んでるんだこいつは。
”思考加速””反応強化””反応強化””両腕変化 黒”
ぬ・・・変化項目が多すぎたのか両腕の変化が中途半端だな・・・ひじ先からしか黒くない、それに頭痛がしてきた。
体勢を低く両腕を後ろに下げていた太っちょは隠していた手を俺に向けてはな・・・ちっ
急いで目をとじるが、砂か!さっきからやたら人間くさい戦いかただなこいつ・・・ぐふっ
「ぐあああ」
思わず目を庇い目を瞑った無防備な腹を拳が捉えたらしい。
吹き飛ばされ何度も転がる・・・コロス・・・いや、志乃の言ったことは最後まで俺は信じるぞ。
幸い砂は目に入らなかったらしく転がりつつ起き上がる。
奴の姿を探すともう目の前まで駆け寄ってきていた。
相変わらず体勢は低いままで両腕はもうその手は使わないのか・・・左右で乱打してくる。
体勢は低く俺の腹を狙う位置なんだが、対応し辛いが何とか黒い両手で捌く。
と、頭上に影がと思ったら尻尾に頭を叩かれた。
「ぐっ・・・がああああああ」
頭を殴られて下を向いた俺にここぞとばかりにラッシュしてくる太っちょ。
くそ・・・コロス?・・・うるせえ”身体頑強”両腕を戻し距離をとるため下がろうとするがピッタリくっついて離れない。
その間もひっきりなしに拳やら尻尾やらが俺を滅多打ちにしていく。
このまま俺が打ち倒されると・・・殺されないまでも蹂躙されるだろうな・・・ミナゴロシ・・・作物が取られるだけならまだしも・・・コロシコロサレ・・・傷つけるようなら・・・ブッコロス・・・
体を頑強にしてるからか、思考する余裕はまだあるうちに・・・ミナゴロシ・・・うるせえ!
”両腕変化 黒”
「ヂ!?」
避けも捌きも受けとめもしない、ただ肥大化した黒い両腕を体の前に盾のようにかざす。
さすがに黒の両腕の防御は抜けないのかやつの攻撃も軽く感じる。
それでも回り込んで盾の外から攻撃しようとでもいうのか、ホバー移動で左に回り込もうと太っちょがしたところで。
左腕を全力で叩きつけた。
対象は太っちょじゃない。
地面にだ。
「ヂィィイイイイ!?」
クレーターが出来るほどの衝撃で地面にどっぷり体をつけていた太っちょは浮く。
その体を右腕で捕らえ掴み地面に全力で叩きつける。
「ヂイイイイイイイイイ!?」
内臓を傷つけでもしたのか血を吐く太っちょ、衝撃でか体もいくつか裂けた。
いやまて・・・全力でやって耐えただと?
地面に抑えつけたまま、今度は左腕を振り上げ振り下ろそうとしたところで。
「たつくん!後ろ!」「達也!後ろ!」「ん・・・たつ逃げる」
やたら志乃の声が近いんだが・・・って異空間に引っ張りこまれて馬車の方に移動させられた。
「・・・志乃?」
「ん、あれ」
指差す方向には太っちょに殺到するリス型の群れ。
太っちょの傍までいくと囲んだ。
「わ、わ、たつくん鼻血!服もボロボロ!」
「やむを得ないわ、志乃異次元ボックスあけて」
「ん、救急箱」
止めるまもなく異次元ボックスから医療セットを取り出す三人・・・まぁ自己責任だし、悪いのは怪我してる俺か。
「とりあえずたつくん、鼻にこれ詰めとこ!」
「服をここで脱がすのは・・・ちょっとあれかしら?」
「ん・・・両腕だけ消毒しとく」
「わ、ほんとだ両腕が腫れてる」
「志乃は左腕お願いね」
「ん、任せる」
瞬くまに治療されていくのはいいんだが・・・両腕を大人しく差し出しながら俺はリス型の様子を窺う。
「あ、兄貴やったのか?」
「わがら゛ん、どどめはざぜでな゛い」
「ふむ・・・奴は群れのリーダーだったようだな」
「ぞのよう゛でずね゛」
そこで志乃が椅子に座るように促してきたので座る、そのまま顔を掴まれた。
「ん、終わるまでしゃべらない大人しくする」
わかったわかった、怒らないでくれ。
「たつ、とどめささなかったいいこ」
頭を撫でられる・・・いや、止め刺しかけたけどな・・・地面に叩きつけたときは全力だったし。
「達也・・・とりあえず洗って消毒して包帯はまいたけど、自分で治療してる?」
「いや゛、まだじでな゛い」
「ちょっと!」
「まだ、ぜんどう゛ば、お゛わっでな゛い」
「そうだけど・・・もぅ!」
心配は嬉しいけど、リス型次第だ。
クレーターの出来た地点ではリス型が円陣を組んで太っちょを囲んでる状態だ。
地点が低くなってるから椅子に座ってても中心地点が見える・・・立ち上がったぞおい。
のろのろとだが、五体満足・・・いや満身創痍なようだ。
フラフラしていたが、何やら怒り出したのか周囲のリス型が困惑している。
満身創痍でもその威圧は仲間を怯えさせているのか・・・と周囲を見渡し俺を見つける。
そのまま止めようとする他のリス型を押しのけ俺達・・・俺の方に向ってきた。
クレーターを登りきる前に椅子から立ち上がり太っちょの方に歩く。
「ちょ、ちょたつくん!?」
「あんただって満身創痍でしょうが!座ってなさいよ!」
「ん・・・いってらっしゃい」
「志乃ちゃん!?」「志乃!?」
三人娘を置いて太っちょの傍までいく、太っちょもかろうじて立っているのか震えている。
まさか武者震いとかじゃないだろうな?太っちょは俺をまっすぐ見た後膝をおった。
いや、膝なんて見えないからわからんが・・・低くなったってことは膝をおったか、座ったんじゃないかな。
「・・・え゛ーど?」
「ヂヂヂヂ・・・ヂヂヂヂ・・・ヂヂヂ」
騙まし討ちとかを考えなければこれは頭を垂れているって状態か?
太っちょが下げた頭のてっぺんを眺める・・・どうすればいいんだこれは。
「ん・・・たつ」
「じの゛?」
おや、志乃・・・戦意が無いとはいえ、近づくのは危ないと思うんだが。
「たつ、ペット」
「・・・べっど?」
「ん、ペットにすればいい」
つまり、なんだ?服従を誓ってるってことかこれは?
太っちょを見ると顔を上げて志乃を見た後コクコク頷いている。
え?
「お゛ま゛え゛、ごどばわがる゛の゛?」
あぁもう喋りずらい!何で両方に詰めてんだよ優奈!片方でいいだろうが!っていうかどっちもいらんわ!
「お前、言葉わかるの?」
再度俺を見つめてコクコク頷く太っちょ。
「つまりなんだ・・・えーっと、このリス達のリーダーはお前ってことか?」
コクコク頷く太っちょ。
「で、お前はなに?負けたからペットにでもなりに来たの?」
今度は少し考えた後・・・微妙な顔して(いや、そんな雰囲気な)コクコク頷く太っちょ。
「・・・それはお前の仲間もってことでいいのか?」
これには即答でコクコク頷いてきた、ついで頭を深々と下げた・・・あ、これは何かわかる。
「横槍いれてすみません?」
コクコク。
「はぁ・・・わかった、とりあえず相談するからここで・・・いや、お前も治療必要なら仲間のところに戻ってていいぞ」
俺の言葉に頷いたリスはその場で座った。
それを横目に志乃の手を握ってから皆のところに戻る。
と思ったら志乃に手を振りほどかれた・・・志乃?反抗期?
「ん・・・少しお話してる、たつは相談してくる」
「いや・・・でもな」
「だいじょうぶ」
うーん・・・割と頑固なんだね君は、さすがにそこまで信用は出来ないのでデニスさんとフリッツさんを呼ぶ。
「どうしたキサラギ、とどめをさすのか?」
「リスって美味いのか?」
そう言った二人にスタスタと志乃が歩みより両腕を一閃させた。
―― ゴンッ ――
「「ぬおおおお!?」」
男のあれを直撃である。
「志乃・・・そこは叩いちゃだめだ」
「ん?何で?」
「男はそこに共通な弱点を持っているんだ」
「そうなの?」
そうなんだよ、ほらみろ馬車の方にいる男は全員青ざめて内股になってるだろうが。
俺は志乃の手前、震えながらも毅然としている、本当だぞ!
「ぐ・・・サナダの嬢ちゃん、なにしやがる・・・」
「さすがに・・・この歳でも効くな・・・」
「ん、ペットなのに食べるとかひどい」
「「ぺっと?」」
蹲り腰を叩きながら不思議そうな二人・・・どんだけの勢いで叩いたんだよ。
これ、志乃に情操教育必要だろ・・・美香に頼もう早急に。
「なんかこいつ、服従誓うらしいんですよ」
「はぁ?キサラギ頭大丈夫か?」
「強さと引き換えに・・・」
「やかましいわ、こいつ話わかるみたいですよ」
それからあれこれデニスさんとフリッツさんが話しかけ、それに頷きで応じる太っちょ。
ちゃんと人間を襲うのか?には首を横に振っていたから縦にしか振れないとかじゃないはずだ。
「信じがたい話だが・・・こうして見ると、まじみたいだな」
「あぁ・・・どうするデニス?」
「どうするもこうするも・・・こいつらは何食うんだ?」
「そもそも何で襲ってきたんだ?」
襲ってきた理由は食べ物を求めて、昨日一人だったのはやっぱり様子見というなの偵察、今後はエサをくれるなら言うことを聞くし働くとのこと、ただし基本的に勝者の俺にしか命令を聞く気はないらしい。
以上が、YESかNOしか言えないこいつから頑張って聞いた結果である。
「ふーむ、とはいってもな魔物をペットか」
「どうしたものかな」
「いいんじゃないですか?」
「「キサラギ?」」
「いや、これはいい護衛になると思いますよ・・・こいつは別格かも知れませんが、俺の全力に耐えるだけの耐久力と、俺をボロボロにするくらいには攻撃力あるし」
「確かにそうだがな」
「だいたい護衛組みがまともに戦えないんです、贅沢いってる場合ですか?」
「ぐ・・・容赦ないなお前」
「現実を見ましょう・・・そもそも家の子が危険になりかけたら俺は形振り構いませんよ?」
そう言った途端に志乃は俺の手を掴み、おっさん二人は後ずさり、太っちょは恐怖を押し殺すかのように歯を食いしばり俯いた。
「ん、たつおこらない」
「あ、ごめん・・・こわかった?」
「こわくない・・・おじさんはこわがってる、へたれ」
男殺し志乃・・・恐ろしい子である。
「キ、キサラギの威圧はおかしいと思うんだが」
「生きた心地がしなくなるな」
「ヂヂヂヂヂ」
同意するかのように頷いてるんじゃねえ「ヂヂヂ!」必死に頭を下げてくる太っちょを見下ろす。
「それで、デニスさんどうするんですか?」
「まぁキサラギが言ったことが正しいからな・・・町長達には俺からも話す」
「いいのかデニス?」
「お前だってわかってるんだろうフリッツ」
「まぁ・・・な」
ケイはともかくレイクとオルトの何十倍もこいつらのほうが役に立つと思いますよ。
「さて・・・帰りますか、疲れました」
「おう、キサラギは馬車に乗ってていいぞ」
「いえ、町に着くまでは護衛の仕事に手を抜きませんよ」
といったところで志乃と・・・太っちょが俺の手を各自引いてくる。
「・・・なに?」
「ん」
「ヂヂヂ」
志乃は太っちょを太っちょは自分を指差した。
「帰りの護衛は俺達に任せろ?」
「ヂヂヂ」
わが意を得たりとばかりに激しく頷く太っちょ。
「わかった・・・いいぞ」
俺が許可を出すと仲間の方に走っていき、何やら説明しはじめた。
「キサラギ?」
「あいつらが護衛してくれるそうですよ、とりあえず馬車を動かしはじめましょう・・・そろそろ日が暮れる」
「確かにな・・・おーい!帰るぞ!馬車を動かしてくれ!」
それぞれが動き出し、日が暮れる直前に町に着けた。
「にしても・・・たまげたな」
「そうだな・・・確かにキサラギの提案が正解だったかもしれん」
「結構やるなぁあいつら」
帰り道、3匹のミミズ型が現れたが、現れる前に察知してた太っちょの指揮のもと瞬くまに狩られていく。
俺も察知はしてたから、優奈に目隠しして馬車の奥に押し込んだ「にゃ!?にゃー!?た、たつくん!?こんなところじゃだめだよ!?私がいくら可愛いからってだめだよ!?」何言ってんだこいつは「ん、ゆうなはおばか」「な、なにをー!?」もっと言ってやれ志乃。
肉は食べるかわからんが、ホクホクしてるように見えるから食べるんだろうな。
俺に渡してきたけど、料理したあと食わせてみるか。
とにかくも町に新しいペット・・・いや護衛戦力が増えたのは嬉しい誤算だ。
「もう!たつくん私を押し込めて何するつもりだったの!?」
「優奈・・・達也の苦労を考えなさいよ」
「え?私が悪いの!?」
「ん、ゆうなきおくそうしつ」
「そ、そうなの!?」
こっちはこっちで騒がしいなぁ。
太っちょが肩を優しく叩いてくれるのが目にくるぜ・・・空は綺麗だな・・・あれ?この世界で月ってみたことあったか?
「ヂヂヂ?」
考え込んだ俺を気遣ってか声をかけてくるが何でもないと答え、町に入る馬車を見やる。
後は受け入れられるかだがなんだが、どうとでもなるか。
町の入り口から駆けてくる町長と司祭を見てそちらに太っちょを伴いながら向う。
さて、どう説明したものかな。
「ちょっとおと~さん!私を馬車にずっと押し込めてなんなの!おに~ちゃんの活躍見れなかったし、怪我の手当てもしてあげたかったのに!」
「いや、数が多かったからいくらタツヤ君でもきついかなって思って」
「おに~ちゃんなら大丈夫だし!もう!バカ!」
「バ、バカとはなんだ!お父さんはお前の為を思って!」
「おか~さんに聞いてもらってどっちが悪いか判定してもらうもん!」
「な、メリーは関係ないだろ?待ちなさいエナ!」
太っちょの名前何にしよう。募集・・・いや2日くらいしか猶予がない予感。




