続 ・ 作物収穫護衛任務
「たつ、あーん」
まぁ待て志乃?
「またない、あーん」
少し考えてみようぜ?
「考えない、あーん」
とにかく落ち着いてくれよ。
「落ち着いてる、あーん」
いやいや、ほらあれだよ「たつ」はい。
「今日のは私が手伝った、がんばってこねた、食べて?」
「・・・はい」
「ん、あーん」
大変美味しゅうございます・・・材料があれじゃなければ一杯食べたいです。
「達也、贅沢はよくないわよ貴重なお肉なんだから・・・それに達也が狩ったのだから遠慮せずにどんどん食べていいのよ?」
ぬぅ・・・でもこのハンバーグってあいつの肉だろ?
「そもそもたつくんが食べようって言い出したって聞いたよ?何で嫌がってるの?」
「な、なんだと?」
「うん、ケイ君が言ってたよ?」
おのれケイ!
「たつ、あーん」
はい食べます・・・今日のは頑張ったのか積極的を通りこして付きっきりで食べさせてくれるな。
「たつ、おいしい?」
「イエスマム」
思わず変な返事を返すくらいには美味しいです。
どちらかというと牛肉に近いんだな・・・そりゃハンバーグとしては美味しくなるわけだ。
「おに~ちゃん私も!やったの!だからあーん」
だからの意味がわからんが食べてやる。
「エ、エナ?その私にも・・・」
撃沈され続けたせいか勢いがないルッドおじさん、娘を持つお父さんの気苦労がここにある。
「それを達也が言うの?」
「心を読むな!」
「顔に書いてあるわよ」
くそう・・・む、なんですかメリーさん俺は二人のあーんで精一杯なんですが。
突き出されるフォークに刺さる肉。
えー?
「はい、タツヤさんあーん」
「えー」
「あーん」
「・・・」
「アーン」
パクッと食べる・・・ルッドおじさん大丈夫だ妻も娘も奪いはしないから、そんな親の仇の如く見ないでください許してください。
「いや~このハンバーグ美味しいね、みっちゃんこれって熊さんのお肉なの?」
「え?」
「ふえ?どうかしたの?」
「い、いえ何でもないわ・・・えっとそうね・・・熊じゃないけど美味しいお肉よ?達也が狩ってくれたのよ」
「ふ~ん?たつくん凄いね!」
「あ、あぁ・・・」
美香達と密談ターイム!
「(どういうことだ?)」
「(どうやら嫌すぎて記憶から消したみたい?)」
「(ユウナおね~ちゃんしばらく馬車の中で呆然としてたくらいだもんね)」
「(ん、ゆうなはきおくそうしつ)」
記憶喪失とはちょっと違うけどな・・・どんだけトラウマになったんだ優奈。
うかつに肉体変化で触手っぽいものに変化するとまずいなこれは。
「お肉美味しい♪」
楽しそうに食べる優奈を見やり、肉体変化の使用には注意を払うべきだと考えた俺である。
「よーし、始めよう・・・キサラギ今日も頼むぞ」
「このまま怪我人無しで終えたいですね」
「全くだ」
デニスさんと収穫風景を眺めながら一息つく。
大分町から離れたところの収穫になってきたので、道中も結構気を使った。
幸い気配はないし一応空も定期的に見て確認している。
下については直接現れたらお手上げだけど、振動という前兆があるからさほど心配はしていない。
「兄貴!今日はどんな魔物が出るかな?」
「出ないほうがありがたいんだけど?」
「そりゃそうだけど、そろそろ俺の力も見せたいじゃん」
「あまり見せびらかすもんじゃないと思うけどな」
「兄貴がそれを言うのか?」
俺のは不可抗力というか、戦ってるの実質俺だけだから俺は除外じゃないか?
「俺の力は武器強化だからな!早く兄貴にも見せてやりたいぜ!」
「・・・ケイ」
「な、なんだよ」
「あまり自分の能力・・・いや能力持ちってのは口に出さないほうがいいぞ」
「な、なんでだよ?」
「自分の力をぺらぺら喋る奴は信用できないし対策もされる。力を授かっていることが明るみになると怖がられたり利用されたりするぞ」
「兄貴みたいに力で黙らせればいいじゃんか」
「俺は別に力の誇示はしてない・・・つもりだ」
「確かに兄貴は見せびらかしたりはしてないけど、手遅れじゃね?」
「言うな・・・ともかくあんまり自分のことをぺらぺら喋るな・・・それに」
「それに?」
「男は背中で語ってなんぼだぜ」
決まった!一度は言ってみたい台詞!
「え~?自分の偉業を自慢してなんぼじゃね?凄いことやればモテモテになるしな!」
うむ、こいつとはわかりあえないな。
「そういえば、ケイは収穫に参加しなくていいのか?」
「俺は護衛だからな!兄貴と一緒にドンと構えてるんだ!」
「・・・後ろのデニスさんはそうは言ってない顔をしてるけど?」
「へ?」
「ケイ・・・お前じゃキサラギの100分の1も護衛にならん、とっとと収穫班に戻れ」
「い、いや!俺だったやれるぜ?そりゃあ兄貴ほど規格外じゃないけどさ」
「つまり、お前の飯はなくていいってことだな」
「ええ!?そりゃないぜ!?」
「キサラギは護衛しつつも熊やら細長いやつを狩って食糧事情に貢献してるんだぞ」
「ぬ・・・ぐ」
「町の住人であるお前が役に立たないでどうする」
「わ、わかったよ、やるよ!やればいいんだろ!」
「とっとと行け」
またな兄貴~との声を残し収穫に戻るケイ。
「オルトとレイクには注意しないのか?」
「するだけ無駄だろう?」
そりゃそうか。
ケイも力が余ってるから収穫とか地味なことは耐えられないんだろうけど、収穫も相当重労働だと思うんだがね。
地味なイメージが問題なのか。
まぁそれでも注意で素直に仕事に戻るあたりは素直でいい子じゃないか。
「なぁ?ごく潰し二人組み?」
「さっきから喧嘩売ってんのか!」
これだけ言っても、堪えた様子がない二人には呆れを通り越して感心?するわけないな。
「キサラギよぅ・・・今日は何も来ねえのか?」
「俺に聞かれてもな、魔物に聞いてきたら?」
「その魔物がどこにいるってんだ!」
「落ち着けよレイク、騒いだら魔物が寄ってくるぜ」
「なんだオルトびびってんのか?」
「び、びびってねえし!いや、お前だって昨日のやつみて一目散に逃げたじゃねえか」
「お前もそうじゃねえか!」
喧嘩するのはいいんだけど・・・俺から離れてしてくれないかな。
多分一番安全な場所にいたいんだろうなこいつら。
そりゃ俺の傍は安全かもしれんが、俺の機嫌が悪くなれば危険地帯になるんじゃ?
俺も収穫に参加したいな・・・止められてるからいけないけど。
仕事はきっちりやるのだ、俺が油断して三人娘が怪我しましたとか冗談じゃない。
「でよぉキサラギ、どうやったらモテるんだ?」
話全く聞いてなかったけど・・・こいつらは。
「そうだぜ、ノザキの嬢ちゃんもべっぴんだが、サカグチの嬢ちゃんだってちょいガキっぽいがありゃあ2、3年で化けるぜ?アルランの鷹の目と呼ばれた俺の目に間違いはねえぜ!」
「いやいや、サナダちゃんが現時点で一番だろ?」
「はぁ・・・?オルトおめぇ・・・ロリコンだったのか」
「あの嬢ちゃんはガキの癖にあの色気はやべえぜ」
ふむ・・・殺すか。
「たつくんたつくん!お昼ごはん!」
能力使用を決意した直後に優奈に呼ばれた。
まぁいいか運が良かったな。
「おい?なんか気配を感じたんだが、俺もキサラギみたいな能力を得ちまったか?」
「俺もだ、あれ?これ死んだかも?って気配を感じ取れたぜ」
「それが無くなったってことは」
「俺達に恐れをなしたんじゃね?」
今日の昼食はつみれというか肉団子というか、そんな感じのものだった。
外だったから手軽さ重視って話だったけど、何で草ベースで肉にあうソースが作れるんだ。
「美味いが謎すぎる」
「謎ってなによ・・・もしかして口に合わない?」
「いや、美味しいが・・・緑の肉団子・・・違和感が」
「おいしいのに文句いわない、たつ」
「はい」
美味でございます、はい。
「オルトとレイクは右側からケイとウォルは左側から、それぞれ距離をとりつつ攻撃しろ!」
フリッツさんの野太い声が響き渡る。
「こんな雑魚俺だけでいいってんだ」
「レイク!油断するな!」
「よっしゃ強化!・・・あらあああ!」
ケイが左腕を狙って斬りつけているが、かわされている。
「キサラギ・・・どう思う?」
「え?俺に聞かれても・・・能力でごり押しをしてるだけで戦闘のプロとかじゃないですよ?」
「む・・・そういえばそうだったか」
フリッツさんは指揮と観察に専念するのか、俺の横で見守る形だ。
ケイ達が何と何で戦っているかに関しては、収穫も無事終わり帰る段階になって俺の気配察知に反応があったことからこんな状態になった。
ちなみに突然現れたわけじゃなくて、行きで通った道に気配察知が届かない範囲で居座ってたらしい。
帰ろうと移動したら気づいたからな。
それでまぁ1匹だし前々からのフリッツさんの要請もあったしフリッツさんに伝えてこうなった。
戦えそうな怪物だったら戦闘経験のため教えてくれという要請だったからな。
「おりゃあ!この!くそ!避けるな!」
「落ち着けケイ、むやみやたらに振り回すな!強化してるんだったら大振りの必要は無いだろ」
「けど、ウォルさん!こいつ意外にすばしっこいぜ?」
ケイ達が相対してる魔物はリスだ。
リスの形のまま人より大きく・・・2mくらいの太った二足歩行するリスといった感じだ。
あの太った体でよく剣を避けるもんだ・・・感心するわ。
足回りの筋肉が優秀なのか、それとも太ってるのは見掛けで毛皮の下は全て筋肉なのか知らないが、かなり素早い。
4人がかりで剣やら槍で攻撃してるのにも関わらず全く当たる気配がない。
「攻撃はしてこないな・・・リスだからか?」
「リスって草食でしたっけ?」
「いや、草食の話をしたら昨日のミミズはどうなる?」
「あれは、馬車を狙ってましたし」
「そう言われるとそうだがな」
避けてるだけで攻撃はしない、かといって逃げることもしない。
考えられることは。
「味方の援軍待ちとかじゃないですよね」
「・・・俺も今それを考えたところだ」
道を塞いでるから大回りしないと馬車が通れないし・・・横をすり抜けるか?いや、危険すぎるか。
「キサラギの感知内には何もないのか?」
「一応・・・今のところはないですね」
しばらく4人と1匹の戦闘?を眺める。
「おい、いつまでこのお遊戯は続くんだ?」
「デニス・・・一応真剣に俺達はやってるんだからお遊戯ってのは」
「当たらないんじゃ普通に剣を振った方がまだマシなんじゃねえか?」
デニスさんも動きのない状況にうんざりしてきたようだ。
「・・・もう少しやって進展がないようなら、キサラギ頼めるか?」
「わかりました」
にしても本当に当たらないな・・・リスの動きを”視力強化”よく見てみる。
太ってるのはもしかしたら冬眠とか飢えに対する蓄えなのかもしれないな。
それに奴はどうやら目がいいらしい、殆ど皮一枚・・・いや毛一本ギリギリで避け続けてる。
しかも、二人同時とか危ないとき以外は馬車の方を見ているような?
馬車に登って見渡しても、収穫された跡地ばっかりで隠れるようなところもないし・・・空にも何もいないし援軍待ちってわけじゃないのか?
「キサラギ?どうした?何かいたか?」
いきなり馬車に登った俺に驚いたのか、フリッツさんが険しい顔で聞いてくる。
「あぁいや、どうも馬車の方を見てたので気配察知の外から来てるのかなと思ったんですけど。見渡す限りは収穫跡地と草原ですね」
「・・・そうか」
それからデニスさんと何ごとか話してたけど、俺に向き直って。
「悪いが時間をかけすぎてる・・・キサラギに倒してもらおう」
「わかりまし「逃げる気か!待て!」・・・た?」
見やればリスがバックステップで距離を離しはじめていた。
「待て!追うな!」
慌てて追おうとする4人をフリッツさんが制止する。
「でもフリッツさん!」
「どっちにしろキサラギでもないと追いつけないだろ」
「けっ!俺がそろそろ本気を出そうかなってときによう」
「よく言うぜ」
諦めた4人の配置を戻して町に帰る。
リス型は・・・途中で横にそれ町から離れていくな。
「結局なんだったんだ?あの魔物の目的は」
「さぁ・・・もしかして」
「ん?なんだ?」
「いえ・・・思い過ごしでしょう」
まさかとは思うけど偵察?
ともあれ3日目も無事終了。
ペースに乱れはなく、むしろ順調なので5日目には終われるだろうとデニスさんは言っていたけど、そうであって欲しいな。




