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司祭と町長と懺悔

「司祭様、はいお水!」

「ん・・・おじいさん死んじゃだめお腹温める?」


 ほとんど死に掛けの爺さんをエナと志乃が介抱している。

 

「シノちゃんシノちゃん?お腹温めると元気になるの?」

「ん・・・温めないと怪我する」


 お腹信教がエナにまで・・・


「あっちゃああああ!?」


 お爺さんお還りなさい。誤字ではない!


「ぬ、ぬう?エ、エナ?サナダ殿が持っている熱い物体はなんじゃ?」

「ん~?何かお腹温めないといけないらしいよ?」

「ん・・・怪我する前に」

「な、なにをー!?」


 にしてもあれだな・・・爺さんも幸せだな、美少女に介抱してもらえるなんて爆発しろ。


「たつくんはあれ以上のことしてもらってると思うよ?」

「む・・・俺が爆発するべきか」


 ところで美香なんだが・・・やりすぎたと反省しているのか静かに部屋の隅で体育座りしている。


「いや・・・あれは反省とかじゃなくて・・・たつくんの止め方が・・・」


 仕方ないじゃんか、結局ワニが全然止まる気配ないから羽交い絞め・・・まぁ後ろから抱きついてみたんだよ・・・そしたら美香が真っ赤になって、ワニも止まったんだよなぁ。

 どちらにしろ爺さんは途中で力尽きて齧られまくったけど。

 まぁワニ君もいっぱい種類がいるらしくプラスチックで加工されていない量産型ワニ君だったらしい。

 ってか、そういうぬいぐるみは作れるのな・・・そこは不器用じゃないのか。

 俺も二度目の羽交い絞めだったせいか余裕もあり結構な時間そのままにしていたのも悪かった、美香は離してほしくなさそうだったしいいかな~って思ってたところで志乃に「そろそろはなす」と怒られてしぶしぶ離したのである。 

 ともあれ、真っ赤になった美香は動きの止まったワニを抱えて隅っこに座ってしまった、何かぶつぶつ言ってるけどさすがに聞くのはまずいだろ。


「ぶーあれはさすがにみっちゃんずるいと思うんだ」

「なんだ?優奈もハグして欲しいならするぞ?」


 一人も二人も変わらん、それに。


「な、なななななにいってるの!?そういうのはまだ早いんだよ!だ、だめだよ!」


 こいつ初心すぎて自分からはともかく相手からされるのは恥ずかしくて駄目らしい。


「まったくもう!おとめを何だと思ってるの!?そうホイホイと抱きついていいもんじゃないんだよ!?」


 お前、寝るときの自分見て同じこといえんの?


「それはこれあれはそれだよ!」


 意味わからんわ!ん?扉の外に気配・・・一人か




――― コンコン ―――


「コーンニドル司祭様いらっしゃいますか?」


 爺さんのほうに目をやると


「む?ボードル殿か・・・今開けますぞ」


 爺さんが扉を開けると、中年のおじさんがいた。







「おお、キサラギ殿ではないですか・・・もうお体は大丈夫みたいですな?」

「ええまぁなんとか」

「それはよかった・・・私はアルランで町長をしております、ボードル・アルランと申すものです。すでに何人かに言われているかもしれませんが、町を代表してお礼申し上げます。この度は町の救援まことにありがとうございました。おかげで滅びずに今日を迎えることができました」

「えっとまぁどういたしまして」

「ふふ、お礼を言われすぎて辟易してきましたかな?」

「いや・・・慣れてないもんで」

「ふむ・・・ですがキサラギ殿はそれだけのことをしてくださったのです。胸をはってよいと思いますよ」


 そう言われても恩にきせて振舞うのは俺には無理だ。


「ところでボードル殿、今日は如何した?」

「おぉ司祭様そうだったそうだった、調査についてなのです」

「それについてか・・・キサラギ殿も協力してくれるそうじゃし、キサラギ殿達にも話してくれんか?」

「おぉ本当ですか!?これは心強いキサラギ殿よろしくお願いしますぞ」


 死人が出ないようには善処します、怪我は有る程度は目をつぶってください。


「では、キサラギ殿も聞いてくだされ。先の戦いで何人か亡くなった者はおったが、何とか調査にまわすだけの人員は確保できました」

「ふむ・・・力の保有者は何人になった?」

「若い奴で力の保有者はほぼ全滅したのじゃが、わしら中年の何人かは生き残りましたので・・・調査員は15名程となりました。そのうち力を授かっている者は9人程です」


 9人か・・・能力者が町に何人いるのか知らないけど、防衛は大丈夫なのかそれ?それに。


「その9人の力って戦闘できるものなんですか?」

「いやそれがのう・・・力を授かったせいか増長したのか、戦闘系じゃない者も参加を表明していてのう」

「え・・・それは大丈夫なんですか?」

「まぁ調査に役立つものもおるじゃろうし、一応大人じゃからな、その辺は体力でカバーすることになると思われますが・・・まずいですかな?」


 いや・・・まずいもなにも。


「予めいっておきますけど・・・俺の優先順位はこの子達三人ですからね?」

「もちろんですじゃ・・・ん?その娘達も連れていかれるのですか?」

「えぇ一応は力を授かってますし・・・失礼ながら町に置いておくよりは傍にいた方が安全を確保できますので」

「いやいや、いい心がけじゃと思いますぞ・・・あからさまに嫌ってるとか警戒してる訳じゃなく、かといって無警戒でもない・・・それくらいのバランスなら丁度いいと思われますぞ」


 これで心証悪くされるかもとは思ったけど、理解ある人でよかったよ。

 

 しかしそこで別の人から待ったがかかった。


「え!?三人って私は?おに~ちゃん!?」

「ん?エナは連れて行けないぞ」

「な、なんで!?」

「エナの命に責任が持てないから」

「む~!シノちゃん達は守るのに!?」

「まぁ・・・志乃達は守らないと・・・いや、守るって決めてるからな」

「むー!じゃぁ私も!」

「駄目だ」


 まぁエナがぐずるとは思っていたが・・・どうするかな。


「もういいよ!おに~ちゃんのばか!知らない!」


 あー子供の必殺技もう知らない攻撃が・・・志乃?

 エナが駆け出した瞬間志乃が回りこみ右手を閃かせ、エナの頬に一閃


―― ッパーン ――


「ァイタ!?」


 衝撃で尻餅をつくエナ・・・え?なにこれ?


「エナ・・・その我侭と言い方はだめ」

「な、なによ!シノちゃんはいいよね!守ってもらえて」


 尻餅をついたエナに志乃が目線を合わせるかのように座った。


「ん・・・エナにはおとうさんとおかあさんいる・・・けど私達にはいない、エナの命の責任はおじさん達にある、たつにはない」

「そ、そうだけど!」

「べつにたつはエナが危ない目にあっても助けないとはいってない、外に連れていけないって言ってるだけ」

「む・・・そうなの?」

「たつは基本やさしい・・・たまに冷たいけど、でも守ってくれるときはかっこいいから問題ない」

「むぅ・・・」

「それに、たつにバカとか許さない」

「え?あれ?シノちゃん?」

 

 おや?恥ずかしさで悶絶としてる間に何やら雲行きが・・・


「し、シノちゃん?まってまってまって!?ごめん、私が悪かったから!我侭言わないから!」

「ん・・・反省はいいこと・・・でも今回はお仕置きが必要だと思う」

「まってー!?」

「おじいさん別の部屋お借りします」

「お・・・おう・・・ど、どうぞですじゃ」


 志乃がエナを連れて別の部屋にいってしまった。

 

「たつくん・・・志乃ちゃんは怒らせないようにしよう」

「そうだな」


 ストレートすぎて恐ろしいわ!

 ボードル町長が部屋に消え去った二人を眺めた後


「な、なかなか良い娘のようですな?」


 その感想で落ち着けるなら出来た人だわ


「ええまぁ・・・ところで調査はいつからの予定なんですか?」

「おっとそうだった、一応早いうちを予定しておりますが」

「そうですか・・・俺達デニスさんから作物の収穫護衛を引き受けてるんで、それが終わるまでは参加できません」

「な、なんと!?デニスが大丈夫だと言っていたのはこのことだったのですか・・・何から何まですみません、本当に助かります」

「いえ・・・それでその調査員予定の人も作物護衛にまわせませんか?」

「ふむ?というと?」

「どのくらいの戦力なのか目で見ておきたいんですよ」

「なるほど・・・確かにぶっつけ本番でいきなり調査するより効果的ですな、顔合わせも必要でしたし」


 ボードル町長はしばらく考えるかのように目を閉じていたが・・・


「わかりました、全員とはいかないかもしれませんが作物護衛に何人かまわすとします」

「明日の朝からやるみたいなんで、来れそうな人は東門集合ってことだそうです」

「わかりました、では明日の朝顔合わせにしましょう」


 とりあえずここでの用はなくなったんだけど・・・


「志乃ちゃんのお説教長そうだよね」


 1つだけとはいえ年下に説教されるとか・・・いや、俺も叱られるから同じか。

 手持ちぶさたな俺にボードル町長が話しかけてきた。


「キサラギ殿は今日はもうご予定はないのですかな?」

「ええまぁ・・・とりあえずは明日までは暇です」

「なるほど・・・では、我が家で夕食など如何ですかな?」


 ん?ん~ありがたいっちゃありがたいんだが


「すみません、明日の朝に護衛ですから今日はエナのところでお世話になろうかなと」

「あぁなるほど、確かにそちらのほうが不備も起こらないでしょうしな」

「それに、ボードル殿のお食事に誘われたら次の日は使い物にならんじゃろ?」

「これは手厳しい」


 あっはっはって笑ってるけど、え?夕飯食べるだけだろ?何されるんだよ?


「あぁキサラギ殿はしらんか・・・こやつ・・・酒乱の気があっての、飲んだら周囲を巻き込んで酔いつぶれる悪癖があるのじゃ」


 うわぁ・・・最悪な酔い方じゃねえか。


「さ、さすがに客人を迎えたときは抑えておりますぞ!」

「どうかの?この間も・・・」

「キ、キサラギ殿はお酒は飲めますかな?」


 お酒・・・年齢的にはともかく、飲めるのか?


「いや、俺の世界だと丁度飲んでいい年齢にはなったんですけど、飲んだことはないですね」

「おぉ!それは勿体無い!是非一度我が家で飲んでくだされ!」

「・・・その時はわしも呼ぶんじゃぞ?何かあってからじゃ遅いからの」

「もちろん司祭様もどうぞ!私の秘蔵を出させて頂きますよ」

「それは楽しみじゃのう」


 好き嫌いの前に飲めた方がいいだろうな、肉体変化でアルコール分解とか出来ないかなぁ。


「お、おに~ちゃん・・・ごめんなさいでした」

「うお?・・・お、おう?お説教終わったのか?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 おい志乃トラウマになってねえかこれ?しがみつくエナをあやしつつ志乃を探す。


「あれ?志乃は?」

「シノちゃんは礼拝堂見てくるって言ってたよおに~ちゃん」


 礼拝堂?気配察知で探る・・・何人か向こうにいるなどれが志乃だ?


「とりあえず志乃を回収して帰るか」


 優奈とエナを促して。


「「うん」」


 えっと・・・美香はまだ座ってんのかよ。


「美香~帰るぞ~」

「わ、わかったわ・・・あれ?志乃は?」


 その志乃さんを回収しにいくのだよ。






―― 礼拝堂 懺悔部屋 真田志乃 ――


「――というわけでわしゃぁ・・・あぁ何てことを・・・あの時の後悔が今でも胸に残ってしまって一体どうすればいいんじゃろうか」

「ん・・・後悔しても意味はない」

「な、なんと・・・」

「後悔するだけなら誰にでもできる、やってしまったことに目を背けているから後悔が消えない。まず、やってしまったことを謝る。その人がいなくても自分に区切りが出るまで謝る。それから二度とそんなことがないように一生懸命に生きる」

「ぬ、ぬぅ・・・しかし謝ったところで・・・」

「謝りもせずに後悔するとか意味はない、あなたが本当に許されたいのであれば自然と言葉にできるはず。もういないのであればお祈りはかかさずに冥福を祈ればいい」

「いや、別に死んだわけじゃないんですけど・・・でも確かにわしゃ後悔はすれども謝りはしなかったそれを許してくれとかなんという・・・ありがとうございます、これからは謝罪の気持ちを忘れずに生きます」

「うん、お腹を温めればよく眠れる」

「なるほど・・・心を豊かにするにはまず、お腹からということですじゃな?ありがたやありがたや」



――――――




 礼拝堂に隣接してる懺悔室の前に大量の人が・・・並んでるんですが・・・志乃?どこ?


「志乃~?」


 人は居るけど探し人がおらず、体が小さいから揉みくちゃにされてないだろうな?

 少し焦る俺の後ろから


「ん、たつ」


 と、左手を握ってきた。


「こら志乃!勝手にどっか行かない!」

「ん、ごめんなさい・・・ちょっと礼拝堂に興味があった」

「まぁ・・・危険なことはなかったようだけど・・・こんだけ人がいて無事だったのか?」

「ん、私は一人だったから大丈夫・・・たつ・・・おんぶ」

「え?おんぶ?」

「ちょっとつかれた・・・説教しすぎた・・・おんぶ」


 エナの説教にどんだけ体力使ったんだよ・・・顔色がちょっと悪いな抱っこでもいいけど、おんぶがいいならそうするか。

 しゃがんで志乃を背負う。


「よし、じゃぁルッドさん家に帰るか」

「志乃ちゃん大丈夫?」

「大丈夫ゆうな・・・ちょっとつかれただけ」

「確かに少し顔色悪いわね」

「急いで帰ろうおに~ちゃん!」


 具合悪い子いるからゆっくりでいいんだぞ。









 俺達が去った後の礼拝堂では。


「司祭様!?懺悔室の女神はいずこに!?」

「め、女神?」

「あの方に私の罪も聞いてほしいのです!」

「いや、この教会にはわししかおらんが」

「女神様のおかげでよく眠れそうです、感謝をお伝えください」



「な、何が起こったのじゃ?」





志乃はどこに向おうとしているのか。

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