レベル2の怪物
高熱自体は翌日にはひいた、倦怠感はとれてないが全く動けないということもない。ただまぁ、急いで何かをする必要もないし、やや微熱は続いてるのでしばらくは安静にしていたいところだ。
足については外より中身を重視して治療をかけているので、外見が綺麗になったら治ったと思っていいだろう。骨も問題なくくっついた、多分曲がったりしてないので大丈夫だろう。
ところで俺達は今、朝食を終えた後、外に出ている。
「安静にすると言ったな?あれは嘘だ!」
「誰に話してるのたつくん?」
「たつ・・・やっぱりあたまが・・・」
自分に突っ込みいれたんだよ。それと志乃、何か辛辣じゃぁございませんか?
「だって、まだねつある・・・お腹冷やすから」
お腹?あぁ風邪か何かだと思ってたのか、気温も随分低いからそういうこともあるだろう。だが
「まぁお腹冷やすのは駄目だけど、今朝のあれは無いんじゃないか?」
「私は止めたわよ」
言うだけではなく、行動して欲しかったよ美香。
今朝朦朧とした意識の中・・・お腹に何か重さと・・・熱さを感じて目を覚ますと、志乃が乗っかっていた。よくある幼馴染が起こしに来てくれて、中々起きない主人公に業を煮やし、上に乗っかって起こそうとするあれである。よくはないと思うけど・・・あったら爆発するべきだろうけど。
ともかく、志乃が上に乗りつつ両手にカイロを持っていたのだ。寒い時のお供ホッカイロである。それを両手にもち俺のお腹にくっつけて温め?ようとしていた。
布越しとかならまぁ、耐えられるかもしれんが・・・彼女は直接お腹にこすりつけてるのだ。
思わず、アッチャアアアア!?と奇妙な声をあげて志乃を弾き飛ばしてしまった俺に罪は無い。
罪は無いが、優奈には怒られるし、美香は呆れてるし、志乃は泣きそうになるし・・・俺は悪くないと思うんです。いえ、ごめんなさい。
それから、お腹が冷えて熱が出ていたわけではなく、傷口から悪い菌が入ったからだよと適当な説明をしたのだが。
「・・・たつ、傷はもうない、うそつき」
能力も絡めて説明してない俺が悪い。そういう結論で落ち着いた。うん、熱かった・・・幸い火傷はないし、いたずらとか悪意をもってやったことではないので、怒る必要もない。
子供には優しくしないといけない。そういや昌吾が何やら別れ際にほざいていたが・・・
「いいか?たつや、優奈ちゃんと美香ちゃんに手を出すのはいい・・・いや、優奈ちゃんも大分まずいけど、それよりも志乃ちゃんには手を出しちゃだめだぞ!YESロリータ!NOタッチだ!お前とは友達になれそうなんだから、次会ったとき捕まっていたとか俺様は嫌だぞ!」
途中からは黒い右手に掴まれて宙に浮いていたが・・・その浮いてる昌吾に須藤さんが
「友達になれそう?昌吾様が?ちゃんちゃらおかしいですね。如月様と友達になる以前に貴方様には足りないもの、必要なことがあるでしょう?」
と、違う説教が入っていたけど。
まぁ子供に手をあげるような大人には、なりたくない。必要な時は・・・必要にならないように教え込もう、うん。
話が脱線したな。足は治ってないし拠点にいるべきではあったのだが、そうも言ってられなくなった。
治療優先で能力を使っていたととはいえ、余力で気配察知やらは使っていたし、美香の人形を高い建物に置いておくことで広範囲の見張りもしていた。
その視界の中でどうやら戦闘があったらしく、建物がいくつか崩れたり煙が上がっていたらしい。
俺の気配察知外だったので、言伝で聞いただけだが。人形の視力は持ち主に準じるらしく、そこまで詳細にはわからないようだったが、それでも戦闘の凄まじさはかなりのものだったようだ。
一応今は終息しているし、拠点からも離れているので大丈夫だとは思ったが、俺の体調が回復しきっていないし、戦闘になったら逃げられるかもわからないので、離れることにしたのだ。
とはいっても、松葉杖の移動はなかなかしんどい・・・いっそ、腕の怪物みたいに腕を変化させて腕歩行に・・・「却下よ、志乃が絶対に怖がるわよ、怖がらないとしてもそんな妙な行動しないでちょうだい」・・・まぁそうだよな。それにしても微熱のせいか、ぼやーっとする。・・・あれ?俺気配察知してたっけ?
「あれ?君達は・・・?」
「あん?人か?怪我してんのか」
「大丈夫か?」
道を歩いてたら角から、男三人が現れた・・・やっちまった。
三人は俺の姿・・・右脚に驚いたようだが、それもすぐに優奈達の方へ視線を送ってしまった。いや、一番華奢な男は俺の方を見ていたが。
残りのいかにも荒くれ者です!といった二人は優奈達・・・主に美香の方を見てニヤニヤ、多分女から言わせればイヤらしい顔をしてる。
「お前ら四人だけかよ?しかも、男は怪我してんなぁ・・・一緒にくるか?」
「そうだな、俺達なら怪我することなく守ってやれるぜ?お嬢ちゃん達どうだ?」
下心満載である。下心無ければ現状戦力が低下してるし、ありがた・・・駄目だわ志乃が嫌がってるから却下で。
立ち話し続けるのは危険だし、どこかの建物に入ろうと言われ・・・たが、見晴らしのいい所と条件をつける。
ちょうどいいことに、オープンカフェ風の喫茶店があったのでそこに一同席に着いた。
といっても七人全員は無理なので、俺と美香それに膝の上に志乃と荒くれ二人が一つのテーブル。別のテーブルには優奈と真と名乗った華奢な男が座っている。
それでまぁ・・・話し合いが始まったのだが。
「だからよぅ、俺達が守ってやるって。見ての通り強いんだぜ俺達」
「んな怪我しちまう野朗は置いておいて、一緒に来いよ。安全だし、食料のあてもあるしな」
「あてというと現状確保されてないのよね?それで安心しろと言われても、私達はうなづけないわよ?」
「あん?そりゃあれだよどっかのスーパーには、まだ食料があんだから大丈夫だろ」
「食料の話に限っては、ほとんどの飲食店は漁られたあとだと思うわよ」
俺達も食料確保は最優先でしてるしなぁ・・・っていうか、食料集めずに過ごしてたのかこいつら?
見た目通り強いって・・・能力のことを考えたら、そこの真とかいう方が強いかもしれないじゃん。
「そりゃ、漁られてるところもあったけどよ!大丈夫だろ、とったやつらから奪い返せばいいんだからよ」
「おう!人様のもんをとるたぁふてえ野朗共だ、俺達が叩き潰してやる」
「別にあんたらのじゃないでしょうよ」
「そんな辛辣なこというなよ野崎ちゃん・・・ところで名前は何で言うんだ?いい加減教えてくれよ」
「イ・ヤ・ヨ、何であんたらに名前教えないといけないのよ」
「何言ってんだこれから仲間になろうって言うんだぜ?それに俺の彼女になるなら可愛がってやるときに名前は必要だろ?」
話の飛躍が凄いな・・・知り合いすっ飛ばして彼女かよ。この世界じゃなければ、荒くれ風の男一人見ただけでも近づきたくないけど、この世界だと見た目じゃなぁ・・・威圧感くらいはあるけど、怪物の方がよっぽど怖いし。
というより、一応俺達のパーティリーダー俺なんですが・・・いや、話したくはないし、こいつらも美香としか会話しないから構わないけど。・・・何志乃?別に寂しいとかじゃないよ、面倒なだけ。大体、話したって益が全くないじゃないか。
「はぁ?何で私があんたの彼女にならないといけないのよ、寝言は寝ていいなさいよ」
「そんなつれないことを言うなよ~俺達ならあっちのほうでも満足させてやれるぜ?」
「大体怪我しちまうようなやつに、野崎ちゃんを任せてられないって」
「達也の怪我はあんたらに関係ないし!ちゃんと守ってくれてるわよ!」
何か美香さんがヒートアップしてらっしゃる。ヒートアップといえば、微熱がひいてないからか少し頭がぼーっとするんだよな、冷えピタとか異次元ボックスに入ってなかったかな「おい」ん?
気づいたときには、ゴツゴツした拳が顔面に接触していた。ッゴンと音ともに後ろに倒れそうになる。
幸い座ってる椅子に背もたれはなかったから、椅子ごと・・・というより志乃も巻き込んで倒れることはなかった。
それにlv4になってからというもの、能力を発動してなくても体が頑強になってるし力も増しているようだ。
そのおかげかは知らんが、眉間に思いっきりくらったがダメージらしきものは無い、痛かったけど。
椅子を基点にブリッジ状態となり、志乃が頂点に乗った奇妙なオブジェとなったまま、状況を把握する。
「あんたいきなりなにすんのよ!?」
「あん?なんかぼけーっとしてやがるし、突然の奇襲にも対応できないで守れないぞ?って俺が教えてやったんだよ」
「くくく、いやそうかも知れんが、お前の筋力増加で殴ったらあいつ死ぬんじゃね?てか死んだんじゃね?」
「っけ、女一人守れない野朗に生きる価値なんてねえよ!おら、野崎ちゃんもう行こうぜ!」
「ふっざけんな!」
つまり俺からみて左側に座っていた男が、左側に座ってぼけーっとしていた俺に奇襲の訓練をつけてくれたということか。なるほど、優しいね?答礼も必要だな。うん。
”再生治癒””回復強化”はそのまま”反応強化””思考加速””左腕強化”ひだりうで・・・一つでいいだろ
腹筋の力で起き上がりつつ、志乃に反動がいかないように右腕のほうに抱きかかえるようにしてから、左を放つ。反応して避けようとしてたけど、俺からはゆっくりにしか見えない・・・そのまま俺が殴られたところと同じ場所を殴りつける。
「ぶべら!?」
「な!?」
全力でやったら破裂しそうだし・・・適度に手加減したけど、生身の人間だったら陥没してる威力だろうな、まぁいいだろ筋力増加?もってるらしいし、死なんだろ。
殴られた男は地面を擦り二度三度回転しながら植木に突っ込んだ。
「てめえ!?いきなり何をしやがる!」
「はぁ?あんたらが最初にやったんでしょ!」
「ん・・・たつ、痛かった?」
「たつくん、腫れてない?ちょっと見せて」
まぁ痛かったけど、再生治癒のおかげか腫れたりはしてない。大丈夫といいつつ志乃の頭を撫でる。
優奈にも礼をいい吹き飛んだ男の方をみ・・・
「如月・・・上だ!」
何か影が植え込みの男のほうにかかったと思ったら、上から何かが落ちてきた。
「ぎ、ぎぎゃああああああ、いたいいたいたい!やめろ!やめてくれえええええええええええ」
それは卵に羽をつけたような形をしていた。大きさはそんな可愛らしいものじゃないけど。高さでいえば俺よりは低い1m50cm程だろうか。楕円形なので横幅が3m近くはある。卵の側面から足や腕が無数に生えていて体を支えている。
そんな卵型怪物の下にいる荒くれ者は食われていた。どうやら口は地面側にあるようで、少しずつ男が飲み込まれている。咀嚼音と、絶叫と共に
「きゃあああああああああ!?」
「た、たつくんたつくん!?卵!?卵が人を食べてる!?」
「たつ、見えない・・・なに?」
一応志乃の目線を遮ってはいるけど・・・あんまり意味ないかもなぁ・・・
「いてえ、いてえよぉ・・・やめ、やめろや・・・ろ・・ぉ・・ろ・・ぉ・・・」
しかも胴体から吸い込むように食っているからか、いつまでたっても悲鳴はやまない。
怪物の様子からみるに腕型怪物と同等な強さ、もしくは何らかの能力があるのだろう。もしかしたら人型の怪物がレベルアップするとああなるのかもしれない。
「これは、困ったね・・・レベル2の怪物か」
「・・・真はあれを何か知ってるのか?」
「いや、僕が勝手に呼んでるだけだよ。たまたま人型の怪物が大きくなる現場をね・・・怖くなって完成する前に逃げたしだけど」
「そいつがこれだったと?」
「それは、わからない・・・けど、違う気がする・・・ところで如月はどうするんだい?」
どうするもこうするも羽があって上からきた?最悪じゃねえか、今一番会いたくない怪物が機動力があるやつだっていうのに。とりあえず足を何とか・・・仕方ない。
全解除 ”右脚変化”
体から急激に何かが吸い上げられる気配に耐える。右脚が膨張し、それにともない包帯が千切れる。包帯のとれた足は真っ白だった。
数秒後には吸い取られる感じもなくなったので、変化を解除する。
動かしてみて大丈夫そうなので、これで完治しただろう。微熱はまだ続いてる。
ん?なんだよお前ら?
「たつくん?足が白くなって・・・治ったの?」
「達也説明を要求するわ」
「たつ・・・包帯ちぎっちゃった・・・」
あ、ごめん今日のは志乃が巻いてくれたもんな?後で巻きなおしてくれ。頷く志乃を確認して怪物の方はっと。
食事に満足してどこかに行ってくれることを期待してるんだが、駄目っぽいかなぁ・・・卵型の体の至るところに目がついていて、ほとんどの目が俺達ともう一人の荒くれの方に視線がいってる。
「ひ、ひっぃぃぃぃぃ!?た、助けてくれ!俺は逃げる!」
あ、ばか今逃げ出したら・・・荒くれが逃げ出し駆け出した瞬間、怪物の羽がはばたきを開始し・・・物凄い勢いで上に飛んで行った・・・横じゃなくて上?
視線でおうと放物線を描きながら、逃げた荒くれの上におりた・・・いや、押しつぶした。
「ぎ、ぎぃやああああああああああ!」
そっから先は最初の男と何も変わりない光景が続く。その間に逃げらないかと思ったが・・・問題が一つ、真が言うには二つの卵型がこちらを伺っているらしい、建物の上から。
そうなると下手に志乃の異空間で逃げるのは得策ではない、連続使用だと志乃がもたないし。
つまり、ここで殲滅なり行動不能にするなりしないといけない。
「真・・・お前戦える能力か?」
「あ、ごめん。僕の名前はまことって言うんだ」
「は?いや、まぁわかったけど、何でまた?」
「そりゃ、あいつらの傍にいたからさ・・・って、それは後にしよう・・・人型なら特に問題はないよ、レベル2の怪物はわからない」
「そうか・・・三人娘にほとんど戦闘力は無い、俺は肉体強化が主な能力だ・・・一応、真のいうレベル2の怪物なら倒した事はある」
「なるほど・・・僕の能力は・・・えっと念動・・・サイコキネシスってわかる?」
「ん?念力とかそのへんか?」
「そうそう、そんな感じ」
念力ねぇ・・・汎用性高くていいなそれ。だいたい、やれることは想像できるので援護は任せることにする。
「じゃぁ如月が前衛、僕が後衛だね?」
「そうだな・・・というより、真が優奈達守ってくれるなら、俺一人で殲滅してもいいくらいだ」
「自信満々だね」
「いや、さっきの変化でだいぶ体力持ってかれてるから、さっさと終わらせたいんだ」
怪我や不調がある場合、肉体変化はうまくいかないが治療目的で変化した場合どうなるかと考え実行したのが、さっきの白い変化だ。白くなっていたのには驚いたが、使用目的で色が変わるらしい。わかりやすくて助かる。
ただまぁ、治りかけだった足の治療で相当な体力やら気力を取られたので、乱用は出来ないだろうな。
さて・・・二人目の荒くれも食し終え、こちらをじっと眺めている怪物。お腹いっぱいなら帰ってもいいんですよ?
「如月、降りてきたよ」
振動と共に、俺達を挟む形で降り立つ二匹の新手。姿かたちは一緒の卵型。
「ギャーギャギャギャ ギャッギャ」
今度はギャギャ語かな?さっさと終わらせよう。




