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他所からみたら迷惑でも内輪は仲良し


 


 思い出せることは少ないが、この世界に来る前の磯田文哉という男は順風満帆だったと思う。

 決められたレールを走り、時には速度を上げ走り抜け、特に事故も起こさずにたどりついた。

 文哉には才能もあったし、努力もしたのだろう。特に感慨も沸くことはなく、それでも反抗するような気持ちでもなかったので、ひたすら決められた通りのレールを走った。


 いや、レールではなく、歯車か・・・と文哉は思い返す。


 機構全体が不具合なく、回り続けられるように、大事だが別になくてもいい歯車として、自身は生きてきたのだ。確かに自分が欠ければ機構としての回る速度は落ちるかもしれない、だが、それも数個の歯車で補えるだろう。

 あると助かる、しかしなくても困らない。自分はそんな男だったのだ。


――いや、というよりこれはなんだ?


 仰向けに倒れているのだろう、暗い洞窟・・・天井を見上げて文哉は我に返る。


――何か、不思議な気分だ。


「ふ、文哉!おい文哉!」


 遠くで自分を呼ぶ誠司の声がする。


――遠く?インカム・・・はまだついてるのに?


 奇跡的に頭に装着したインカムは壊れることなく誠司の声を文哉に届けている。


――あぁ衝撃で一時的に混濁しているのか。


 身体が動かないのにも関わらず文哉は冷静でいられた。怪我をしている感じではないが、衝撃で身体が一時的に麻痺しているようだ。

 そう分析を終えた文哉は視線だけで、今の状況を魔王の位置を確認する。


 どうやら魔王は自分に留めを刺そうとしているようだ。ゆっくりとだが、こちらに近づいてきているようだ。

 いや、ゆっくりに感じるのは文哉だけで、鋭敏になった感覚がそうさせているだけだろう。

 誠司達の目には近づく魔王と、倒れている文哉の姿が映っている。


「せ・・・い・・・じ・・・」

「文哉!?動けるか!?」


――おかしい、インカム越しでなく誠司の声が近い気がする。


「とりあえず、ひ、引っ張る!?」

「絵美ちゃん足持って!」

「わ、わかったわ!」


 倒れた文哉の傍には誠司、絵美、優子の三人が勢ぞろいしていて、絵美と優子で文哉を抱えようとしているようだ。

 だが絵美も優子も力があるわけでもなく、文哉の体格のよさも相まって、遅々として進まない。


 そんな3人の前には誠司が深海の魔王と対峙していた。


「くそ!これは僕の責任だ!文哉はやらせはしない!」


 勇ましく魔王を睨む誠司の足は震えることなく、毅然としていた。


――あぁやっぱり誠司は凄いな。








 歯車が外れた気がした。

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