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斬ってよし!突いてよし!叩いてよし!

試行錯誤継続中。

「硬すぎんだろ!?」


 何度目になるかもわからない一撃を打ち込んだ虫人が呻く。


「ぼやくな!・・・ぬ!?回避行動!」


 戦士長が一人カブト・アマドの号令と共に部隊が回避行動を取り、直後地面毎薙ぎ払われる。


「ぐあああああああ」


 体勢を崩した蜂族の虫人に蟹海老型は止めとばかりに鋏型の鈍器を振り下ろす。


「ふんっ!」


 直前にアマドが割り込み両手の甲殻で交差するように受け止める。アマドの全身は以前のように甲殻が至る所に見られた。戦闘形態とでもいうべきだろうか、虫人は基本的には武器を持たないようだ。各々が種族の特徴を武器に戦っている。甲虫族であるアマドは戦闘時甲殻を纏うことが出来た。


「た、助かりました。戦士長」

「うむ・・・ふんっ!」


 蜂族の戦士に応えつつ、気合を入れて受け止めていた鈍器を弾き飛ばす。横目で第二部隊が突撃しているのを確認し自分の戦士団に指令を出す。


「第一部隊は一旦距離を取れ!」


 第一部隊が後退した直後、第二部隊が蟹海老型の横から攻撃を開始した。


「おらあああああ!」

「間接を狙え!」

「ぜぁっ!・・・っつ、間接さえ切れる気がしない!」


 第二部隊は蟷螂族や鍬形族で構成されており、第一部隊の守りで相手の隙を誘い出し切り込むといった戦法を主にとっていた。しかし、その攻撃力が高い第二部隊でさえ海老蟹型の甲殻を打ち破ることが出来ないでいた。


「まずいな、アマド」

「お前でも無理かアムド」


 全隊が一度距離を取ると、海老蟹型も小休止とでもいうように威嚇で持ち上げていた鋏を降ろす。それから視線を外さず第一・第二戦士長の2人は言葉を交わす。


「あぁ間接を狙っては見たものの、傷一つつかん。いや、正確には傷くらいはつくんだが、甲殻にしろ間接にしろ瞬く間に治っているぞ」

「なに?」


 第二部隊は傷をつけることは成功していた。しかし、傷をつけても異常な再生力ですぐに塞がれてしまうのだ、傷を広げようにもこちらの攻撃速度より再生速度の方が速いとアムドは呟く。


「毒や酸もだめだねぇ」

「・・・キンゾル、いきなり背後から現われるな」

「ん?あぁごめんよ、どうも変異前の癖が抜けないんだよねぇ」


 アマドがキンゾルと呼んだ男は長身長躯で浅黒い皮膚、さらには白衣のような長いコートを着ていた。色に関しては現状白しか作られていないので仕方がないとはいえ、雰囲気と話し方と相まって眼鏡でもかければどこぞのマッドサイエンティストに見えるだろう。さらには戦闘中だからか目が大きく複眼状態になっている為、子供が見たら泣きそうな風貌になっていた。実際アマドとアムドは揃って一歩大きく距離を取った。


「傷つくなぁ・・・同じ戦士長で仲良かったのに・・・変異前の方が仲良かったよね、僕達」

「あ、あぁすまん・・・どうも慣れなくてな」

「それよりキンゾル、毒が効かなかったと言ったな?試したのか?」


 アムドにそんなこと扱いされたキンゾルは一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに戦士長の顔つきになると報告をし始めた。


「うん、僕らの中でも隠密に特化してる物が毒を注入しようとしたんだけど、まず針が通らなかったね」

「あぁそうだろうな」

「次に酸だけど、一応かけるにはかけたけど、異常な再生速度で溶ける端から治っていたよ」


 あれはむしろ再生速度の方がやっかいだねぇと言うキンゾルに頷くアマド。ついでならどうする?とキンゾルに視線で問う。虫型の時から戦士長は仲が良く、こうした困難、強敵には幾度となく打ち破ってきた。そうした時、打開策を出すのは大抵・・・。


「出来るかどうかはわからんが俺が大穴を開けるそこから毒を入れてくれ」


 頭脳派のキンゾルではなく、冷静派のアマドでもなく、突貫型のアムドなのだ。


「出来るかどうかわからないって・・・アムドそれは作戦とはいわないよ?」

「ふむ・・・能力が今一把握出来てはいないのだが、とりあえず・・・一発だ、一発は出来る」

「能力か、そういえばアムドはどんな能力だったのだ?あぁ、いやすまん、能力は秘匿するものだったな例え親兄弟といえどな」


 思い出すのは訓練場で暴走する虫人達に対して達也が淡々と、語った話だった。






「能力は秘匿した方がいいと思いますよ」

「なぜだ?相互に知っていた方が連携を取るにしろ訓練をするにしろ有用ではないか?」


 能力について相談をしたいと達也に言ったところ、思案しながら返ってきた言葉に意外そうな顔をしてアマドは問う。


「あ~集落的にはそうかもしれませんね。でも能力が限定されるような気がするんですよね。自分で確定するって解っては来たんですが、どうも他人から見て確定出来ることもあるような気がするんですよ」

「む?どういうことだ?」


 いや、俺も考えがまとまっていないのでと言う達也にこれ以上の追求をしなかったアマドだが、キンゾルと一度会ってもらって、話し合いをするというのもありかもしれんと考える。


「とにかく能力は秘匿した方がよいと達也殿は考えるのだな?」

「そうですねぇ・・・一応はそうなんですけど、能力がさっぱりわからないって人は相談するのもありだとは思います」

「む、そうなのか?」

「さすがに何もイメージ出来ない、知らない物は発動条件さえ整わないと思いますよ。(というかうちの3人娘、3人共俺の意思が能力確定に関与してるんだよな)」

「ふむ・・・なら能力の名や効果は伏せて相談するくらいはいいのだろうか?」

「そうですね、嘘・・・とまでは言いませんが、必要な情報は絞って模索するのがいいと思います」

「あいわかった!今から相談したい者を募るので達也殿は相談にのってやってくれぬか?」

「え?俺でいいんですか?俺にとってはメリットしかないんでいいですよ」




「考えるのはいいんだけど、アムド行ってしまったよ?」


 回想するアマドにキンゾルが声をかける。


「な、なに!?」


 見れば、海老蟹型に進み出ようとしているアムドの姿。慌てて第一部隊を召集しつつ海老蟹型の注意を引くことにするアマド。


「ええい、相変わらず冷静そうな顔して、単純思考な奴だな!第一部隊注意を引きつつアムドのサポートをするぞ!」

「「「「おおおおおお」」」」


 海老蟹型の前面を囲うように第一部隊が展開していく。それを見つつそれじゃ僕もとキンゾルが動こうとすると自分の部下であるブルーノが声をかけてきた。


「キンゾル隊長!」

「うん?どうしたんだいブルーノ」

「さっきの話、俺にも参加させてください!」


 おや?とキンゾルは思った。話を聞かれる距離まで近づかれていたのか?戦士長3人が戦闘中にも関わらず気配を捉え切れなかったが・・・性格のせいでいくらか評価が落ちているが、変異後も含めて彼も有望化部の一人だねぇ。


 キンゾルは頭に3人程の若者を思い浮かべ笑みを浮かべつつ、ブルーノに頷いてやる。


「いいよ、アムド隊長が蟹海老型に大穴をあけたら僕と一緒にあの海産物に地獄を見せてあげようか」

「あ、ありがとうございます!」


 ローザとか女好きってところがなければいい部下なんだけどねぇ。


 やった!キンゾル隊長達に一目置かれるチャンスを手に入れたぞ!それに・・・達也とかいうあの男なんていなくても集落は俺達が守れるってことを見せてやる!


 変異前は情緒が安定しなかった自分の性格だが、歳を食ったせいか、変異したせいかはわからないが少しは落ち着いてきたと・・・思うとブルーノは思う。思えば浮気してから散々な目にあっている気がする。ローザに不満があったわけではない、だけどあの兄弟を見れば・・・本意ではないのではないかと考えてしまったのは確かだ・・・だから弟の方が突っかかってきたときに・・・とはいえローザに殺されかけたが。


「おいブルーノ!?」

「うぉ!?」

「うぉ?じゃないだろ!キンゾル隊長についていかなくていいのか?」


 気づけばアムドが第一部隊の作り出す隙を窺っていながらも何やら集中しており、アムドのいる辺りの周囲が歪んでいるようにも見える。


「お、おう!」

「ったくしっかりしろよ!」


 仲間の声を背にブルーノはキンゾルの背中を追う。







 サスケは自分達が(勝手に)王と慕う達也の命令通りに、終始戦闘のサポートに徹していた。とはいっても武器の類をまだ受け取っていないし、身体能力はともかく訓練も殆どしていない、経験も足りないのでやっていることといえば、小石を拾って蟹海老型が攻撃動作をしたり防御動作の時を狙って指弾の要領で弾いて柔らかそうな目を狙うくらいだ。狙いも訓練不足故か外れる事の方が多い。


 しかし、速度は十分であり、なにより狙いが正確になっていることがこの場で蟹海老型の注意を一番引いていた。蟹海老方がサスケを狙おうと動こうにもアマド達虫人が邪魔で思うように動けないようだ。


 サスケとしてもこの程度のサポートで王の使命は果たせているのだろうか?という疑問はあるが、姿を見せないという指令を最上位に設定している為、前面に出る事が出来ない。


 周囲に生えている木々を飛び移りながら、蟹海老型と一緒に来た魚人を当て見で吹き飛ばしながら姿を消すといったことも同時に行っていた。


 戦闘部隊ではないが集落の危機の為、念のため門の防衛に出ていた虫人達からすれば、魚人の煩わしさが本体に及ばず、部隊番号を振られていない自分達でも何とかなる数に減っており、何匹かの魚人が瀕死になっているのだ、疑問は覚えるものの追及してまで解明しようとする者はいなかった。


 そしてなにやら第一部隊の者が一層気合を入れ直し、一際荒々しい気配を出している鍬形族の男が周囲を歪ませながら集中しているのをみてサスケはそろそろ戦場の流れが変わると見て、一番高い木に移り戦場を見渡す。






「ふんっ!」

「隊長それしか言ってないですね」

「うるさい!一番気合が出るんだよ!」


 隊の士気は問題ない、攻撃が一切効かない相手でも士気を落とさず、脱落者を出さずに維持出来ている。というより、さっきからこいつ別のことに気を取られていないか?


 顔の周りを払う動作が多くなってきているが、虫にでもたかられているのか?


「とはいえ、好機だな」

「隊長!次来ます!」

「おう・・・ふんっ!・・・だっしゃああああああ!」


 蟹海老型が地団駄を踏むように両手の鋏を大きく振り下ろしてきたのに対しアマドは両手の甲殻を太く強靭に変化させ対応する。


【甲の甲殻】


 よくわからんが俺の能力は硬く太くなることだ!理屈とか難しい事はキンゾルに任せる。


 初めて両手を使い攻撃してきた蟹海老型に対し、アマドも能力全開で迎い撃つ。そして両手を振り下ろす程の隙を作ったということは。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


【部位強化】


 アムドの能力は単純だった、今は一点のみだが身体の部位を強化できる。その能力を自身の肩から生えている二対一組・・・この時点で2つを強化しているがアムドはそんなことは考えてもいない。その角を強化し、強化によって長く硬くなった角を蟹海老型に向けながら突進する。


 元々の身体能力に加え変異後による強化で常人では太刀打ち出来ない身体を手に入れたアムドの身体は、比例してとんでもない速度で海老蟹型に突っ込む。


 さらに、直前で飛び身体を回転させながら、まるでドリルのようになったアムドは両手を振り下ろし脇が隙だらけだった海老蟹型に突っ込んだ。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ジャリジャリと岩を無理やり削岩するかのような音をたて、回転しながら蟹海老型の甲羅を削っていくアムド、ゆっくりだが確実に甲羅に皹が入っていく。なまじ、体重がありたくさんの足により踏ん張りも効く蟹海老型は受け流すことも出来ず。両手を振り下ろした格好のまま脇腹を抉られていく。


「おおおおおおろろおおおろろろろろおろろろろろろろろろろ!?」


 回転と勢いのおかげで地面と平行になりながらも未だ地面に落ちないアムドだったが、回転に対する酔いには弱かったらしい。夕食で食べた蛸・・・吸盤を撒き散らしながらも、尚戦意は落ちていないようだ。


 ・・・周囲にはとんだ迷惑だが。


「うおおおおおおお!?アムドてめええ!」


 一番の被害者は両手の鋏を受け止めているアマドだろう。蛸の吸盤が顔やら甲殻にひっついてひどいありさまになってきている。それでも振り払ったりしないで、押さえつけているのだ。これが戦士長の意地だとでもいうように彼はその場から動かなかった。


 蟹海老型は泣き声はあげなかったが、苦悶するように身体を揺らす。


 それを見てキンゾルとブルーノもこれなら毒が通ると、近づいていく。


 そしてようやくといった感じで回転が止まり、地面に着地・・・出来ずにッグシャと潰れたアムドを横目に抉れているであろう傷に向かってキンゾルは手のひらから針を、ブルーノは尻尾針を向けようとして気づく。


「穴が」

「傷が」

「「あいていない!?」」


 いや、正確には穴もあいているし抉れてもいる。だが、いまだ甲殻部分を削りきっておらず、キンゾルの針もブルーノの尻尾針も通るとは到底思えなかった。


 しかし、もう一度アムドに突っ込んでもらうには時間が足りない、なにせ既に端から修復が始まっている。まぁ、もう一度とはいってもアムドは攻撃を受けていないのにも関わらず瀕死であったが。彼の今の状態を見てもう一度やれという鬼畜はいないだろう。


 どうすることも出来ずアムドを回収して下がろうとした二人の前に制止と共に一人の戦士が飛び込んできた。


「どけい!キンゾル隊長、ブルーノ!」

「え?あれ?ローザ君?」

「ロ、ローザ!?」


 戦士として認知されているが、専ら補給部隊の護衛に従事しているローザには今回の戦闘にも門の警護を言い渡しているはず、それに彼女は戦闘時少々あれなので、集落の共通認識でなるべくさせない方向でというローザが蟹海老型と対峙する。


「ロ、ローザ君?なぜ君がこっちに?」

「門の方は大丈夫なのかよ!?」

「だまれぃ!んなことより、アムド隊長つれてとっととさがれぃ!」

「「あ、はい」」


 アムドを回収する2人を横目にローザは両手から鎌を生み出す。


「・・・夕食時にえらいめいわくな客め・・・とっとといねぃ!」


【切断】


 切ると思ったモノを切る、ただそれだけの概念能力を持つローザは特に気負うこともなく、両手の鎌を薙ぎ払う。


 しかし鎌程度で斬るには大きさも威力も足りないだろう当たり前のようにキンッと音を出す甲殻。蟹海老型の甲殻からすれば撫でられたようなものだ、傷なんてつきようがない。


 とはいえ能力がなければの話ではある。音をたてたところからパックリと切れ目が入っていき、体液と共に蟹海老型の身体が折れる。


 声鳴き悲鳴を上げ、アマドに抑えられていた鋏を無理やり振りほどき両手の鋏で身体を支える蟹海老型。


「・・・アムドの立場がないね」

「相変わらず口調が変わるんだな・・・ってそんなことよりキンゾル隊長」

「もうこれもう一度斬ってもらった方が早そうだけど、それなりに消耗するようだ。ではやろうかブルーノ君」

「はい!」


 能力発動には体力を使うのか一撫でともいえる攻撃を放ったローザは大きく息をついていた。


 ローザを気遣いながらも、今だ反撃らしい反撃をすることも出来ない海老蟹型に2人はそれぞれの針を突き刺し毒を注入する。


 途端さらに苦しみ出した蟹海老型は泡を吹きながら力無く地面に横たわる。


 終わって見ればあっけないものだった、被害はないものの終わり方のせいか疲れがどっと襲ってくる戦いではあった。一同が安堵するなか木の上から影が飛び出してきた。


「む!?何者だ!」


 いち早く気づいたアマドが飛び出してきた影に対して構える。


 随分と小柄・・・いや、ぬいぐるみ・・・だと?


 飛び出してきたのはサスケで、彼も飛び出してきたわけではなく弾き飛ばされたのだ。







 蟹海老型がローザによりほぼ戦闘不能にされた時、サスケは一部始終を木の上から見ていた。門の方もどうやら片がついたようだと人安心したところで、それを見た。


 黒いヒレのようなものが地面を張って移動している。いや、潜っているのだろうか。それにしても土が盛り上がっておらず、まるで土の中を何かが泳いでいるように見える。


 そこまで考えたところで今日一番の危機感を覚えたサスケはその黒いヒレに向かって小石を撃ち込む。


 黒いヒレは土の中からでもわかるのか、もしくは黒いヒレに目でもついているのかサスケが撃った小石を避けながら、どうも蟹海老型の方に向かっているようだ。


 毒も打ち込み止めを刺したところで気が抜けている一団を狙っていることに気づいたサスケは王の最上位命令を破棄し自分の姿を見せることで警戒心を高めることにした。


 黒いヒレに一直線に突っ込んだサスケは途中拾った棒切れで突こうとしたところで、地面に潜んでいたものは牙を向いた。


 鮫?いや、鯱だろう。鯱が地面を泳いでいた。サスケがヒレに攻撃をしようとしたところで地面に顔を出し大きな口を開け、歪に並んだ歯をむき出しながらサスケを食らおうと襲いかかってくる。


 サスケは棒切れを手放しつつ、鯱型の歯を蹴り鯱の突進力を利用する形で大きく吹き飛ぶ。


「シャアアアアアアアアアアアア!」


 蟹海老型と違って鳴くことは出来るらしい鯱はその巨体を一度大きく見せつけるかのように大きく地面に打ち上がり、その勢いのまま地面に潜って行く。


「なんだあいつは!?」

「新手か!?」

「というか、このぬいぐるみなんだ!?」

「かわいい」

「地面に潜ったぞ!?」

「何で土の中泳いでいるんだ!?」

「ワニだよなこのぬいぐるみ?」

「水系ってことは敵か?」

「かわいい」

「馬鹿ヤロウ!こんな可愛いぬいぐるみが敵とかお前の目は腐ってんのか!?」

「ぶっころすぞ!」

「わ、悪い。自分でもどうかと思った」

「かわいい」

「落ち着け!来るぞ!」


 やいのやいのとサスケを囲みながら騒いでいた戦士達に注意喚起するアマド。


 しかし狙いは隙だらけに見せつつも臨戦体勢を整えていた戦士達ではなく、方や目を回し、方や肩で息をしているアムド、ローザだった。





「っち、こっちにきてますキンゾル隊長!」

「的確な判断だね、嫌になるよ」

「おろろろろ・・・俺は自分でどうにかする、ローザを連れてさっさと下がれ」

「何言ってんですかアムド隊長、意地でも防いで見せますよ」

「よくいったブルーノ君・・・とはいってもローザ君動けそうかい?」


 アムドは立ち上がることも出来ず、ローザは立っているのがやっとで返答することもせず、首を力無く振る。


「シャアアアアアアアアア!」


 そこへ地面を泳ぎながら高速で突撃してきた鯱型とその後ろから追随してきたアキレアが飛んでくる。


「「「「アキレア!?」」」」

「ローザ姉ちゃんから離れろおばかぁ!」

「シャアアア!?」


 口を大きく開けたところで横合いから蹴られた鯱型は困惑しつつも体勢を立て直しながら再度地面に潜る。アキレアを口の端に引っ掛けてだ。


「ぬぁ!?」

「アキレア君!?」

「ね、ねええちゃ・・・ぶくぶくぶく」


 幸いというべきか、鯱型の周囲の全ては水みたいになっているらしく、地面を轢きづられて削られるようなことはなかった。結果、水の中を無理やり引き摺りまわされることになったわけだが。


「ぬ!?ローザ君駄目だよ、まともに動けないんだろう!?」

「だまれぃ!アキレアが!アキレアが!」

「うぉ、また戦闘モードになってる!ローザ俺がアキレアを助けるから!」

「ブルーノにぃ期待できるかぃ!」

「ひでぇ」





 


「ぬぉぉぉぉぉ、っぶは!・・・っごほっごほ・・・やい!このぶくぶくぶく!っぷは!この魚やろう!よくもローザぶくぶちゃんを!この!この!」


 引き摺られながらも戦意を滾らせるアキレアは自由な足で鯱型を蹴る。しかし、水(土)の中なせいか思うように威力が出ず、不安定な体勢でさらに変なことをしたせいで、土(水)の中に自分から潜る格好なった。


「ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶく!(ぬぁー!離せばかー!)」


 離せ馬鹿とはいうが、アキレアは片手を鯱型の歯と歯の間に突っ込んでおり、しかも自分で握り締めているのだ、力を抜けば簡単に抜けられるが、思いつかない辺り冷静ではないのだろう。






 自分達の周囲をぐるぐると泳ぎ続ける鯱型を見やりアマドは歯噛みした。


「くそ!あれでは手が出し辛い!」


 遠距離攻撃が出来る戦士もいるが、アキレアに当たることを懸念してか手が出せないでいた。それに土の中を自在に泳いでいるのだ狙いをつけ辛い。抱えたぬいぐるみを手にどうしようかと思案するアマド。


「隊長ずるい!私にも!」

「っていうか、なんで動いているんだ?」

「かわいい」

「この衣装もなかなか理に適っているというか、隠密性が高そうだな」

「つまりスパイか?」

「いや、忍者だろ?」

「かわいい」

「ってことは敵の間者ってことじゃねえのか!?やっぱ敵うぼぁ!?」

「ぶっころすぞ!」

「だからお前は何でこんな可愛いぬいぐるみにそんな酷いことが言えるんだ!?」

「ぐふ・・・ぶ、ぶっころすのほうが早くなかった?」

「かわいい」


 なすがままにされていたサスケがふと一点を見つめたと思うと、アマドの腕の中から消失する。


「「「「「消えた!?」」」」」

「つまり必要な情報集めたから敵の当主に報告しに行った・・・まて、落ち着け」

「「「「「ぶっころす!」」」」」

「ギャーーー!?」


 




”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””身体頑強””気配察知”


 え?これどういう状況?周囲を見回しながら現われた達也一向は困惑していた。蟹っぽい海老っぽいなにかが倒された横で、物凄い形相のローザさんを説得している、長身の黒い肌の男とブルーノとかいう虫人、そしてどうも酔っ払いみたいにふらついているアムド。リンチされている虫人。手の中を見つめて呆然としているアマド。サメっぽい何かがアキレアらしき子を地面を泳ぎながら引きずり回している。


「ん、たつあれ楽しそう?」


 たつも出来る?と期待を込めた目で見てくる志乃に対し難しい注文だなぁと苦笑しながら撫でる達也。


 そこへ唐突に足元に現われるサスケ、驚きはしたものの慣れたのか視線を合わせるように屈む達也。


「お疲れサスケ・・・で、これどういう状況?引きずり回されてるのアキレアだよな?」


 コクッ頷くサスケを両手で撫で回していた達也だったが、とりあえずアキレギアの頼みごとを済ますかとサスケを志乃に手渡し、立ち上がる。


「んじゃ、冬華と千那はここで待機な。もうあれしかいないみたいだからさっさと終わらそう」

「千那はいいのか?魔装しないのか?」

「ヂヂヂヂヂ」

「え?連れてけって?まぁ冬華もいけっていってるみたいだし、まぁいいか、おいで千那」


 千那が不満そうに呟くと冬華が千那を押して達也に押し付ける。敵はあれしかいないのは気配察知でわかっていたし、美香が残りのワニ騎士君達を出したのを見て、連れていくかと千那に言う。


「そんじゃとりあえず魔装・剣でいいか」

「わかったぞ!」


 両手で達也の手を握った千那は身体を溶かし黒い液体から黒い剣の固体になっていく。


「大分形態変化もなれてきたな」

「千那にお任せだ!」


 久しぶりってほどでもないけど、なんかテンション高いなと思いつつ。未だにコントみたいなことになっている戦場へ足を踏み出す。







「とはいっても?正直どうするかな」

「ぬあああああぶくぶくぶく!あ、達也・・・ぶくぶくぶくさん!?た、たすぶくぶくぶく」

「何か命の危険性が感じられないせいか楽しそうに見えるなあれ」

「おー、アキレアは凄いんだな」


 多分地面が水みたいになってるのはあの鯱型の能力だろうな、さすがにアキレアが発現したというのは無理がある。見た感じ手を離せばいいだけだとは思うが、混乱してるのか思いつかないみたいだな。いや、力尽きて手を離したとき土の中だと問題がありそうだ。今の内にケリをつけるか。


「千那?」

「うん?」

「魔装」

「うん!」

「シャベル!」

「うむ、魔装・シャベ・・・シャベル!?」


 変形事態に千那の意思はほとんど関係がないというか、達也が流し込むイメージで形が決まる。戸惑いながらも達也がイメージした物の通りに変形していく千那。


 そうして出来上がったのはシャベルだった。


 大きさは普通のシャベルではなかったが、シャベルはシャベルだった。出来上がった巨大シャベルを達也は担ぎ。


”両腕変化”


 今までなら片腕ならともかく両方の腕変化させると肘までしか出来なかったが、戦いを続けた結果か両方とも肩まで変化出来るようになっていた。片腕のみみたいに肥大化は出来ないようではあるが、この場合は両腕を変化させた方がバランスがいいと達也は判断した。


 そもそも千那がいなかったら片腕変化で地面毎抉り飛ばしていただろう。


「そんじゃ、まぁ・・・」

「た、たつや?なんかこの形態、千那嫌だ!」

「何言ってんだ、斬ってよし、突いてよし、叩いてよし、ついでに掘れる!最強の千那だぞ?」

「そ、そうか?た、達也がいうなら千那・・・いや、駄目だ!これやだーーーー!」

「はっはっはっは!」


 シャベル(千那)を振り回し遠心力を加味して、目の前を横切ろうとした鯱の数メートル手前から地面を掬い取る。


「シャアアアアアアアアアアア!?」

「のぁあああああああああああああ!?」


 どんな力が加わったのか推し量ることも出来ない。なんせ、達也がいる地点を起点に数十メートルの地面が根こそぎ空中に吹き飛ばされた。


”思考加速””反応強化””腕力強化””脚力強化””脚力強化””身体頑強”


「シャアアアア!?」

「のおおおおお「よ?アキレア」た、達也さん!?」

「いや、なんかアキレアに達也さんって呼ばれるのむず痒いな兄さんでいいよ兄さんで」


 空中にいるアキレアと鯱に肉体変化で追いついた達也はアキレアを抱えつつ、千那に声をかける。


「よし、千那?魔装」

「う~達也なんか、き、きら・・・いじゃないけど、うー!」

「そんなに嫌だったのかよ、わかった(多分)もぅ使わないから機嫌直せというか、今は機嫌取ってる場合でもないか、魔装・大剣」

「うー!うー!」


 うーうー言ってる千那をよそに強引にイメージを流し大剣に変化させる鬼畜達也である。千那にとってもシャベル状態じゃなければ何でもいいのか、文句を言いながらも大剣に自身を変化させる。


「シャアアアアアア!」

「多分能力は【泳ぐ】【水泳化】とかだと思うけど、空中を泳ぐという発想がないあたり残念だったな?」

「シャアアア!?」


 そのまま変化させた大剣で鯱型を一刀両断すると、一緒に浮いていた土の塊を蹴りつつ、元いた場所に着地する達也とアキレア。


 背後では大量の土砂が鯱型の身体と混ざりながら、達也が空けた穴に戻っていく。


「アキレア君!」

「あ、ローザ姉ちゃん!・・・達也兄降ろしてくれ!」

「はいよ・・・あ、そうだアキレア」


”肉体変化解除”


「え?・・・っつああああ!?」


 ごちんっと拳骨を振り下ろした達也を見上げるアキレア、能力を使用していなくても痛いものは痛い。


「アキレギアが心配してたぞ?」

「っつ!・・・うん、ごめんなさい」

「ま、ローザさんを助けたかった行動は悪くない」

「うん」

「あの達也さん?」


 姉の勘か達也が打ち降ろした拳骨の意味に気づいたローザが目配せで後は私に任せてくれませんか?と達也に問う。それを見た達也も仲間達の方へ踵を返す。

 






 痛いのとアキレギアに心配させてしまったことに落ち込んでいたアキレアにローザは声をかける。


「アキレア君?大丈夫?」

「っつ!大丈夫!ローザ姉ちゃんこそ大丈夫だった?」

「えぇ、でもあんまり感心出来ないわよ?」

「ね、姉ちゃんだって警護の人から聞いたぞ!勝手に持ち場離れたって!」

「うん、でも私は強いわよ?」

「あぅ・・・でもやられそうになってた」

「そんなことないわよ?一撃で真っ二つにしようと思ってたもの」

「ぅ・・・俺余計なことした?」


 さらに落ち込むアキレアを見てゾクゾクしているのか、なぜか恍惚の表情を浮かべたローザが優しく諭す。


「そんなことないわ・・・ありがとうアキレア」

「ほ、ほんと!?」

「ええ、だからこれからも私が危ない時は助けて・・・一生傍にいてくれる?」

「うん!俺頑張るよ!」

「ほんとにほんと?」

「うん!」

「本当に?一生?」

「う、うん」


 今更ながらローザの顔を改めて見たアキレアだったが、彼曰く後悔はしなかったらしい。










後日談


「アキレア本当にローザと付き合うのかい?なんか最近の2人を見てると違う意味で危険な感じが」

「大丈夫だよ、レギア兄ちゃん。ローザね?獲物を見つけたような目をしてたけど綺麗だったんだ」







「うふふ、私の可愛いアキレア・・・絶対に離さない」

 次話、ようやっと伊藤グループVS深海の魔王

 

 矛盾







 な、なるべく早く更新します。

 

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