出撃よ魔王!
すんません!すんません!ゴールドとか見舞いとか台風とか残業とか色々重なって連休なのに書かなかったんです!決して浦風が一杯出たから浦風砲を量産してた訳じゃないんです!っていうか、台風の日に洗濯物を干さないでくれ!頼むから!
―プツンッ―
っつ!?・・・うん?えっと・・・蛸の接続が切れたのかしら?熱を感じた気がしたけど気のせいよね。別に憑依とか操作している訳ではないのだし。
自分の能力の大多数を占有していた大型生物との接続が切れたのを感じて絵美は我に返った。心配そうに覗き込んでいた優子に気づき声を上げようとする。
「けほっけほっ・・・悪いけど優子、水頂戴?」
「あ、うん」
優子の頭が上下逆で、頭が何やら柔らかいものに挟まれている感じから・・・これは。
「おっぱいね!」
「え?」
何言ってるんだこいつ?という優子の視線に耐え切れなくなったのか、単純に水が欲しかったのか顔を真っ赤にしながら水をせがむ絵美に優子は水を飲ませる。
「ぷはっ生き返ったわ!・・・誠司はいる?」
「・・・本当に大丈夫?」
さっきまで意識が飛んでいて、気づいたと思ったらおっぱい発言だ、能力の使いすぎで頭が・・・と優子は涙を堪えつつ絵美を心配する。
まずいわね、膝枕だったのね・・・そりゃ顔が上にあるのにおっぱいな訳ないわ!って、違う!優子が頭おかしい子を見る目で私を見てる!久しぶりに頭がスッキリしてるからテンションがハイになってるわね!
連日能力の使用により、意識の大多数を維持に専念していた為、そこから開放された絵美は清々しい気分だった。
「どうしたんだい絵美?」
2人の世界を作り出していた誠司と文哉だったが絵美の様子がおかしいことには気づいたらしく、2人して絵美の方にやって来る。
絵美と優子の視線は2人が繋いでいる手に釘付けだが、それに気づいていないのか誠司が改めて絵美に確認する。
「絵美?大丈夫なのかい?」
「大丈夫よ・・・いえ、大丈夫じゃないのかしら?」
「どういうことだい?」
「昨日蛸も送ったでしょ?」
「あぁその様子だと倒されたのかい?」
「みたいね、魚人と違ってかなり善戦してたみたいだけどね」
「ふむ・・・倒された時の様子とかはわからないんだよね?」
「そうね・・・いえ、最後熱さを感じたわ・・・でもおかしいのよね、そういうのは感じないはずなんだけど」
「そうか・・・絵美の身体には影響はないのかい?」
「だいじょう・・・ぶだと思うわ?むしろ接続が切れたからか頭が久しぶりにスッキリしてるわよ!」
そこまで口を挟まず誠司の手をニギニギしていた文哉が思い出したように言った。
「ん?そういやクラゲ?優子が浮遊クラゲとか呼んでたあいつらはどうなったんだ?」
「あら?そういえばあいつらの接続もないみたいね、というか現状送った魚人全滅かしら?」
それを聞いた優子が残念そうな顔になり
「あのクラゲさん可愛かったのにね」
と聞いた一同は「あれを可愛いと思うのは優子だけだ」と思ったが思うだけに留めた。
「ということは、後はあの蟹型と鯱型を送り出せば、魔王までの障害はなくなるのか?」
確認する文哉に対し、誠司と絵美が頷いた。
「そうだね、あの2匹の取りまきを出撃させてしばらく経ったら・・・悪いけど文哉頼めるかな?」
「任せろ!誠司の為だ必ず仕留めてやる」
「文哉・・・怪我だけはしないでくれ」
「魔王だからな・・・約束は出来ない」
「それは駄目だ!」
「仕方ないだろう相手は魔王だぞ?」
「そんな!文哉が怪我したら・・・僕は!」
「いい加減にしろ!魔王なんだ覚悟がなければ何も成せないだろ!」
「そ、そうだけど・・・」
「大丈夫だ、例え怪我しようが、必ず生きてお前の所に戻ってくるよ」
「文哉・・・」
「誠司・・・」
再度2人の世界に入った男を放置・・・絵美を引き摺りながら優子は魔王の取り巻き二人の前まで行く。
「あの2人がああなると長いから、今のうちに能力かけちゃおう?・・・絵美ちゃん?」
引っ張ってきた筈の絵美がいない、はて?と後ろを見ると両手を頬に当ててクネクネしている絵美がいた。
「はぁ~いいわぁ~何でカメラ持ってこなかったのかしら?脳内保存しか出来ないじゃないの!」
「カメラ何て余計な物なんて持ってこれないよ・・・現像の仕方なんて誰も知らないから使い捨てカメラも持ってくるのは諦めたでしょ?」
「ならデジカメの一個や二個!持って来れたでしょ!?あれなら画面で見れるわ!」
「電池が嵩張るし、プリンタだって必要でしょ?無理だと思うよ」
「指揮指令なんていらなかったわ!私に必要なのは脳内保存及び、現像具現の能力よ!」
「(そんな能力だったら早々に誠司君に切り捨てられてると思うけどなぁ)」
能力によっては脳内保存も現像具現も発現したかもしれないが、絵美にその適正はないようだ。願いが強くても無理なものは無理なのである。
「ほら!やることやったらいくらでも見ていいから、お仕事やっちゃおうよ!」
「そうね、今なら魔王だって出撃させられると思うわよ!」
「魔王は駄目だよぅ・・・誠司君の目的を出撃させてどうするの?」
頭に片手をやり呆れたように顔を振る優子に対し、絵美は魔王に向かって・・・
「って何で本当に魔王にやろうとしてるの!?」
「さぁ魔王!虫の巣に向かって出撃よ!」
ちょっと!?と驚愕する優子をよそに、指揮指令を発動する絵美。
「‐―‐‐‐――‐―‐――‐―――」
「ちょっと!可愛く顔を傾げれば許されると思わないことね!ほらさっさと出げ――」
「絵美何をしているんだ!」
2人の世界を作っている場合じゃないことに気づいたのか、慌てたように誠司と文哉が絵美の肩をそれぞれ片方ずつ掴み揺さぶった。
「え~ちょ――う――しが――いいから・・・揺さぶるな!」
「あ、あぁごめん・・・ってそうじゃない!何故魔王を出撃させようとしてるんだ!?」
「え?ん~~~~~~イケルかなと?」
「例えイケてもやらないでくれよ!?僕達の目的は魔王の核だよ!?」
「達って言っても誠司の目的じゃない・・・ちょ、文哉睨まないでよ!じょ、冗談よ冗談!・・・悪かったわよ」
文哉の静かな怒りを感じ取り慌てて言い繕う絵美。まぁ効いたら効いたで、儲けもんと思っていたのは確かだが、魔王はなんだこいつという雰囲気を出しただけで特に何も起きなかった。
2人に怒られた絵美は渋々・・・それでもやる気は十分なのか気合たっぷりに改めて蟹海老型と鯱型の方に向き直る。
「・・・よし!行くわよ!?・・・いいのよね?」
「強個体2匹は大変かもしれないけど、頑張って欲しい」
「はいはい・・・いくわよ!・・・蟹もどき!イルカっぽいやつ!虫の巣に向かって【しゅつ――】」
な、なにこれ!?一言どころか一文字でさえ体中から力が・・・ぐぬぬ!
「【げ――】」
え、絵美さんを・・・今井絵美様を舐めるんじゃ・・・
「【き――】」
舐めるんじゃ、うがあああああああああああ!
「【しなさ・・・出撃しろおおおおおおおおお!】」
指令を出し切ると、絵美は力を出し尽くしたのか崩れ落ちる、それを文哉が危なげなく支える。慣れた様子から察するによくあることなのだろう。
一方命令された蟹海老型と鯱型は魔王の方を窺うような仕草を見せた後、蟹海老型は斜めにギザギザ移動し、鯱型は地面を泳ぎながら洞窟から出て行った。
「さて、誠司?取り巻きはこれで全部出撃したが・・・魚人の数匹は問題ないだろ?やるか?」
「・・・いや、1日待とう。万全で臨みたいからね、出来れば絵美が動ける時がいいだろう。もし虫の巣が耐え切れずに全滅して、魔王と戦っているときに取り巻きが戻ってきたら目も当てれない」
「ふむ・・・俺は構わないが、あの二匹の強さは相当だと思うんだが?虫の巣すぐに崩壊するんじゃないか?」
「文哉、蛸のこと忘れたのかい?それに絵美は何も言ってなかったけど、この様子だと浮遊クラゲもやられたみたいだよ?」
「む・・・そういえばそうか」
大きさのインパクトのせいで蛸のことしか頭になかったが、一緒に出撃させた浮遊するクラゲ、浮遊クラゲと呼んだそれもいたのを思い出す文哉。
確かに蛸の方もかなり凶悪だったが、クラゲはクラゲで見えない、何やら電撃を出していたことから相当面倒な相手な筈だ。蛸がやられたというならクラゲも一緒にやられたと見るべきか・・・そうなると。
「誠司はあの二匹も倒されると見てるんだな?」
「うん、さすがについてすぐってことはないと思うけどね、蛸も3日程粘ったみたいだからね」
「蛸は耐久性が高かったのもあると思うが」
「そうだね、とはいっても海老蟹は攻撃力と耐久性、鯱型はあの特殊性から蛸よりも時間がかかると思うんだよね」
「それもそうか・・・まぁ、後は魔王だけだ。眷属召還をする様子もないんだろ?」
「うん、多分大丈夫かな?ともかく絵美の様子も心配だし・・・って優子大丈夫なのかい絵美は?」
誠司と文哉が見下ろすと絵美は口から涎をだし、半廃人みたいなことになっていた。
その絵美を膝枕しながら、絵美を介抱している優子は慣れた様子で脈やら呼吸・・・瞳孔の確認をしていた。
「大丈夫じゃないかな?意識の大半を制御に持ってかれてるだけだよ・・・いつもどおり?」
「それにしたって・・・女性として偲びないだろその状態じゃ、ほら拠点まで俺が運ぼう」
いつも通りとはいえ、女盛りの歳なのにこの状態はいけないと文哉がお姫様だっこで洞窟内の仮拠点に運ぶ。
「ふ~ん、優しいんだね文哉」
「な!?や、やめろよ誠司!何で絵美を運ぶときいつもそうなんだお前は!」
「いやいや?別に?そうだね、絵美が心配だから早く運ぼうか」
「せ、誠司!?」
こちらもいつも通りの反応ね・・・と思いながら優子は3人の後ろを着いていこうとしてその前に魔王を見る。
相変わらず、直立不動で揺ら揺らと身体を揺らしながら特に視点を定めることもしない魔王、その様子を確認し、優子も仮拠点へ向かった。
優子が部屋から出た後も魔王はその場を動くことはなかった。
『シズメロ・・・シズメロ・・・シズメロ・・・』
小さな小さな音を誠司達が最初に接触する前から、ずっと発している声を出しながら揺ら揺ら・・・揺ら揺らとじっと佇む。
その魔王は深海の王、時代が進めば億の魚人を統べ、大陸を沈め、天災をもたらす魔王。現状比較的まだ人類がどうにか対抗できる魔王の1体である。




