さて、状況を説明してくれ
「で、えーと蟷螂の人さん?」
「はい、達也様」
「達也でいいです」
「いえ、そんな訳には・・・」
「貴方から様づけされる云われはないので」
まぁひどいと悲しそうな顔をしているが目から悪戯っぽい感じが消えていない。ところで美香はどうなったんだ?
「美香はどうしたんですか?」
「美香さんにはこのお洋服ですか?何分私共は作ったことがない物なので、大変助かっております」
「それはいいんですけど、材料はあるんですか?」
「えぇ蜘蛛族の方が糸作成を得意としていて、そこから敷物を作ることはあったので、それを応用して作成しています」
「そうですか・・・数日はそれに手がかかりそうですね」
「申し訳ございません、ですが美香様の手腕ならこちらも自力で出来る者がでると思いますので、申し訳ありませんが美香さんのお力をお貸しください」
お力をとつけたので、俺からは何も言わない。美香を貸せなら張り倒していただろうけど、そんな俺の胸中を読んだのか、薄く微笑むと蟷螂の人は千那に向き直る。
「それと、千那様には大変感謝しております。まさか本当に私の願いを叶えて頂けるとは思いませんでした」
「んぅ?ふぇんなはなにもしふぇないぞ?」
こら、食べながら話さない!というか、そういえばそうだよ。
「この際蟷螂さんの願いは置いておきます、けど他の虫人の方は納得しているんですか?」
「全員が全員そうとは言えませんが、天からの恵みと捉える者もいれば神からの試練と考えている者もいるようです、基本身体能力も向上しているようで、甲虫族の方は喜んでおられました。問題は服を着てなかった為か突然芽生えた羞恥心にひどく混乱が起こりました」
「それを美香が気づいて今何とかしていると」
「ええ、とにかく人族に近づくことは出来ました」
この分だとこの世界全体の虫人が擬人化してそうだけど、発端が千那なだけに勝手なことを願うなとは追求し辛いな。蟷螂の人からの願いとは誰も知らないのが救いではあるけど・・・俺達が知っているのはともかくとしてだ。
「そうですか・・・とりあえず貴方が願ったということは、こちらとしても秘匿します」
「ええ、ご配慮に感謝致します」
俺としてはもう話は終わりでいいと思っている。願った理由?千那が口走っていたからな、碌なことにならないだろうから俺からは何も言わない!触れない!聞こえない!
「あら?達也様?・・・達也さん?」
「・・・何ですか?」
「願った理由は聞かれないのですか?」
「・・・聞きたくないです」
「そんなこと言わずに、是非ともお聞きください」
「嫌です!」
要は虫人達が擬人化しました。お終い。
「今回の話はそれだけだ、いや~良かったですね蟷螂のお方」
「あらら、どうしても聞いてくださらないのですか?」
怪しく目を光らせて迫ってくるんじゃねえ!
「わかりましたよ・・・で、何で人間になりた「達也さんのお子を授かるためです」・・・だから聞きたくなかったのに」
お子を授かる?と志乃が首を傾げているが、優奈は理解したようだ。目を怒りモードだと表現しているのか、両手で目を吊り上げて顔を近づけてくる。
「たつくん!」
「はい、何ですか優奈さん?」
「さんつけはいやー!」
「何だ優奈」
「えへへ・・・はっ!違うよ!えっと・・・蟷螂の人と結婚するの!?」
「しないしない、その人の世迷言だ」
「そうなの?」
「そうだ」
少なくとも俺は許諾した覚えはない。許諾するつもりもない。というか志乃の前でそういうのはNGです。優奈も一応アウトだけど、この娘の場合、ノリと勢いで怒ってるフリをしている節がある。現に、近づけた顔を俺の頬にすりすりと・・・
「って近いわ!」
「わ!?・・・怒らないからいいのかと思った」
「ん、たつ私もやる」
「駄目です」
志乃が私もと寄って来たが、くるっと回して背中側にしてから腕の中にすっぽり納める。すかさず、雪と蒼を志乃の上に乗せ、動きを封じる。
「ん・・・雪と蒼ふかふか」
すりすりのことはいいのか、手元の雪と蒼を撫ではじめたので一安心・・・いや、蟷螂の人が悪戯っぽい顔を若干苛立ちに変えている。
「達也さん?返答をお聞かせ願いませんか?」
「却下だ却下!」
「それは何故ですか?見たところ、達也さんのお仲間とはそういう関係になっている人はいないようですが」
観察眼がいいのか、良く見てやがる。傍から見ればハーレム状態だが、一切手は出してない。出しちゃまずいからな。
まぁ、美香に言われたこともある。ここはハッキリさせておくか。
「何故も何もない、もうこの娘達と予約済みだ。行きずりの関係でそういうことはしない」
「たつ?ほんと?」
2人を撫でていた手を止めた、志乃が顔はそのままで聞いてくるのでポンポンと頭を撫でるように叩いてやる。くすぐったそうにしてるがどこか嬉しそうだ。
「たつくん?」
「うん?何を驚いた顔をしてるんだ?」
「えっと・・・たつくんがそういう事をハッキリさせるとは思わなかったの」
「ハッキリとはさせたが、人数てきに不誠実になるかもしれんな」
「ん~私はいいかな!みっちゃんも志乃ちゃんも大好きだから」
「ん、私もいい」
嬉しそうな2人に対して、雪と蒼は感心するような視線を向けてくる。それを撫でながら不満そうな蟷螂の人を見る。
「では、冬華さんはどうなのですか?」
そこで冬華の名前出されてもな・・・あいつの意思はわからん。俺を様づけしているらしいが。いや、冬華は蟷螂の人に関係ないな。
俺はバッサリと思考を切り捨て、切り替える。
「冬華や雪、蒼は関係ないな。とにかく貴方とはそういう関係を持つ気はない」
「何故です?」
「しつこいな・・・だかっ!」
”反応強化””思考加速””腕力強化””腕部硬化”
― ギンッ ―
間一髪だった。蟷螂の人の腕の袖から刃物が飛び出した直後、それを志乃に突き立てようとしたので、腕を硬化させて受け止める。
ヤンデレってやつか?それにしても
「蟷螂の人って過激ですね?それとも虫人の掟で、夫は奪い取るものとか?」
視線は蟷螂の人に固定したまま、いつでも殺せるように頭を切り替えながら、聞いてみる。
「いえ、そういうことではありませんよ?ただ、その娘達がいなければ貴方と添い遂げられるのですよね?」
どういう思考でそうなったかわからんが・・・未遂で終わったとはいえ・・・な?
優奈を視線で俺の後ろに下げ、志乃は今動かせないので右手で庇いつつ、雪と蒼を下に降ろさせる。千那は既に戦闘モードで優奈を庇える位置にいる。
「今、ここでこの娘達に危害を加えるってことは俺は貴方を殺しますけど?」
「どうしても私を受け入れてくださらないのですか?」
どうする?いっそ一回きりの関係でも持って、逃げるか?いやいや、禍根しかのこ欄だろ。ここでこの人と戦闘するか?戦闘力はわからんが、多分いけると思うが。
観察を続けると、俯いて何やら口元を動かしているように見えるが。
「・・・ない・・・・い・・・ない・・・い・・・めない・・・ない・・・とめない」
掠れ声がどんどん大きくなってきている。これは、駄目そうか。
「認めない!」
「あぁそうかよ!」
手の甲から肘までにかけて刃物を生やし(せっかく美香が作ったというのに)交差させるように俺に斬りかかってくる蟷螂の人。
それを硬化させた左腕で受け止め弾き、相手の両手が浮いたところで志乃を右手で回すように後ろのベットに放り投げ、両手の上がっている蟷螂の人の鳩尾に左肘を付き込む。大分イライラしていた俺は手加減抜きに鳩尾を打ち抜いた。
「くふっ!?」
肺から空気を全て出したのか、打撃と酸素不足で一時的にフラフラしている蟷螂の人が息を吸い込もうとした瞬間を狙う。
”右腕変化 白”
息をするためにか顔を上げた蟷螂の人の顔を右手で掴む、そのまま繋がりを作って適当に力を流し、わざと体調が悪くなるように流れをかき乱した。
「っ!?・・・ぅ」
どうやら意識混濁により失神したようだ、白目を向いて仰向けに倒れはじめたので慌てて、頭をぶつけないように肩を支えてから、ゆっくりとベットに運んでやる。
「たつくん腕大丈夫?」
心配そうな優奈と志乃に無事だと頭を撫でながら答えて、千那に言う。
「千那とりあえず縛るから、縄とってくる間見ててくれ。万が一目を覚ましそうな・・・構わない首を落とせ」
「ふむ?まぁ、そこまでせんでもいいとは・・・に、睨むなよぅ・・・千那はわかたったぞ?」
今回は気絶させただけだが、本来なら殺している。実力差があったから、気絶で済ませたんだ。とにかく志乃に異次元ボックス(資材・素材系)をあけてもらい、縛る為の太い紐を取り出す。それで適当に蟷螂の人を縛り終えたところで、誰か来たな。
「うぉ!?ど、どうしたのだ!?まさかこれが拘束ぷれい?というやつか!?」
頭の角と・・・肩の甲殻の色から見るにカブトムシの人か?ランニングシャツみたいに肩を出した作務衣のような物を着た、虫人(擬人化)が入ってくる。
そして、縛った蟷螂の人を見た第一声を聞いた俺は思わず突っ込んだ。
「っ!?ぐふっ・・・さすがにいい一撃だ・・・この姿になったおかげか強くなったが、お主はさらに上か」
「あ、すまん。思わず突っ込み入れただけだ・・・で?カブトムシ族の人かな?部隊長の」
割といいところに入ったのか、膝をつかないまでも苦しそうに頷くカブトムシの人。顔を歪めながらも蟷螂の人を見てどうしてそんなことになっているのだ?と改めて聞かれたので、信じるかどうかはわからないが一応説明してやる。
蟷螂の人に求婚?されたので、断ったら襲われたと。細部は省いたがまぁそんなところだろ。
「ふむ、なるほど。またこいつはそんなことをしたのだな。長の代理で私から謝罪しよう」
「怒らないのか?」
意外なことでもないか?またと言ったし擬人化以前からヤンデレだったのかもしれないな。
「いや、殺さないでくれて感謝しているくらいだ。長は可愛がっているからな。それに、こうなっていないこいつは優秀だからな。死なすには惜しい」
「そうか・・・それで?またと言っていたが、頻繁にこうなるのか?」
「いや、昔、集落の戦士にこっぴどい振られ方をしてな」
「その戦士は?」
肩を竦めて優奈達を見たので、相当惨い状態の死体だったのだろう。
「まぁともかく、この人の要求には答えられない」
「駄目なのか?」
「・・・そうだな、駄目だ」
「そうか、まぁ今回のは誰がどうみてもこいつが悪い、まぁ惚れるのはわからんでもないが前回みたいなのならともかく今回はこいつが悪いな」
ちなみに件の戦士が何をしたかを後で聞くと、付き合っていたのだが、唐突に他の女とくっ付き、蟷螂の人をあしらったようだ。まぁ気持ちはわからんでもないが、俺も気を付けよう・・・薬の実験台とか、ぬいぐるみの素材にされたりとか、異次元空間でズパーは勘弁願いたい。
「そういや、カブトムシの人はなぜここに?」
「その呼び方どうにかならんのか・・・あぁ美香さんのおかげでとりあえず1人1着はどうにかなったようでな、美香さんに達也殿を呼んで来てくれと頼まれたんだ」
あぁ美香が許可出さないと優奈達通してくれそうにないもんな。
蟷螂の人はカブトムシの人がどうにかするそうなので、俺達も外に出ることにした。




