おや虫人達の様子が?
「・・・・・・・・?」
「―――検討」
「―――承認」
「―‐―承認」
「‐‐―棄権」
「―‐―‐承認」
手寅は山の上にいた。そこから宗治と想い続けるモノの訓練なのか、人間になる教育なのかよくわからない修行を眺めている。何せ、宗治が斬りつけながら怪物に色々恋のイロハを教えたりと無茶苦茶だ。
「そもそも達也は人妻じゃないから当てはまらないと思うのだけど・・・まぁ別にいいのかな?」
あれも大分人間に近づいて来ている。達也が関わっているので手寅が手を貸してもいいが、宗治の教育を眺めていると、決議の票が回ってきたので手寅はそちらに意識を回す。
「え?へぇ面白いことしてるんだね、うん、私も承認するよ。まぁ元々いつかはする予定だったけど・・・それにしてもこの種族が一番最初?相変わらず達也の周りは面白いなぁ」
かくして何かが承認されたようだ、誰が何を承認したかは定かではないが、碌でもないことなのは確かだろう。
日の光を感じ目が覚める。窓の位置から顔に日はかからないと思ったが、太陽の位置が違うのか?目を開けるとガラスのような物で出来た天窓から、光量を落としながらベットに降り注ぐように工夫されていた。
「なにこの無駄・・・いや、時計がないから便利技術か」
「ん、たつ起きた?お風呂!」
「あぁうん、おはよう志乃。とりあえず蟷螂の人にいい場所ないか聞こうか」
別に村の外に作るのも構わないけど、もしかしたら風呂があるかもしれない?いや、野営の時には入りませんっていってたな。確か脱皮をするから必要ないと・・・そういや蟷螂の人達の脱皮は終わったのかな?
何日かかかるものだったら、ちょっと困るな。
起き上がり・・・冬華まだ怒ってんの?
「ヂヂヂ!」
ふんっとでもいうようにベットの脇に立っていた冬華が顔を背ける。悪かったよ。確かに俺のデリカシー?がなかったな。まぁいいや冬華だし。
「ヂヂ!?」
それで・・・と千那は大丈夫なのか?というかどこいったあいつ?
ベットの上にはいない、ふと勘に従ってベットの下を見るといた、顔面を地面につけシャクトリ虫みたいな格好で・・・寝てるのかあれ?息出来ないだろ?いや、息する必要はないのか?つついてみると反応があったので放置する。
「ん、たつおふ・・・ゆうな?」
志乃に引っ張られるようにドアに向かおうとすると優奈が扉の前で仁王立ちしているのが見える。
「何してんだ優奈?」
「たつくんここは通さないよ!」
今度は何を思いついたのこの娘?
「いや、志乃との約束だし、風呂の用意をしたいんだけど・・・優奈はいいのか?」
「お風呂!?あ、そういえば昨日入ってないから私も入りたい!・・・って駄目だよ!ここは通さないよ!?」
「ん、ゆうなおこるよ?」
「し、志乃ちゃん、えっと・・・ちょっと耳貸して?」
何やら優奈が志乃に耳打ちをする・・・頷いた志乃は俺の方を向いた。
「ん、・・・たつ」
「おう?」
「ここは通さない」
お前もか志乃!?いや、風呂はいいのか?
「とりあえず、落ち着くまで駄目」
「落ち着く?誰が?」
「えっと、誰がというか皆が?今みっちゃんが対応してるけど・・・もしかしたらかなり時間かかるかも?」
皆?虫人達に何かあったのか?昨日の脱皮に何か問題あったとか?いや、虫人全員が脱皮したのか昨日?
疑問しか浮かばない俺に対して説明する気はないのかとにかく扉の前にたつ2人。
「いやいいけどね?それで?美香は何に対応しているんだ?というか護衛なしで外に出たのかあいつ?」
「え?あ・・・あ~たつくん心配?」
「そりゃ冬華と千那がここにいて、美香が1人歩きは・・・ちょっと怒った方がいいか?」
「ヂヂヂ!」
冬華が慌てたように外に出て行った。いや、怒るのは美香の方なんだが。
「た、たつくん冬華ちゃんもちょっとだけ気が抜けてただけだと思うんだ!」
「ん、とうかちょっとだけしかわるくない」
「いや、冬華に怒るわけじゃ・・・いや、緊急事態だったんだろ?次から気を付ければいいよ」
まぁうん、それで?
「聴力強化とかで俺が自分から把握していいのか?」
「あ、えっとね・・・何と言うか説明し辛いというか?」
「ん、たつえっち?」
「何が!?」
「あ、ううん、たつくんが知っても・・・えっちだね!」
「だから何が!?」
「あはは、えっとね、虫人さん達・・・蟷螂の人さんにおっぱいが出来てたの!」
おっぱい?おっぱいくらい、あっても不思議じゃないだろ?あの人雌蟷螂っぽかったし。そういや蟷螂って交尾の後、雄が食われるんだよな。この世界でも・・・あの人の旦那さんになる人は食われるのか?
「ん、たつそうじゃない」
「あぁ、えっと?」
「えっと、だからね?ん~し、志乃ちゃんどう言えばいいのかな?」
「ん、ゆうな、ふつうに言えばいい、むしひとさん達人間になった」
「人間?」
人間?いや、待ておっぱいが出来た?昨日はそんな生殖機能なかったよな?というか、虫は哺乳類じゃないだろ!え?つまりなんだ?
「擬人化・・・いや、人間に近づいたってことか?」
「う、うん。慌てたみっちゃんに朝起こされて、私も見たんだけど、虫人さんの名残はあったけど、普通に裸の人がいたの」
「裸?あぁ、服を着る文化がなければそうか」
「あ、でもね?同時に羞恥心が芽生えたみたいで、今蜘蛛の人が紡いでた糸や布で大急ぎでみっちゃんが指導してお洋服作ってるの」
「そんなの異次元ボックスから・・・数が足りないし服が対応してないか」
「うん、それなら一から教えた方が早いわ!ってみっちゃんが燃えてたよ?」
まぁうん・・・状況はわかった。それで原因だが・・・思いあたるのは。
「千那?」
未だに見てるこっちが息苦しくなる体勢の千那をベットに放り投げ、たたき起こす。
「んぎゃ!?・・・うぅ・・・?あたま・・・痛い・・・」
「千那、昨日何した?蟷螂の人に何を頼まれた?」
「んぅ?・・・あやつが、人間になるにはどうしたらいいですか?と聞いたから、そんなの任せておけ?うん?千那は何かを頼まれて残っていたアクセス権で・・・うん?何かを議題に上げたような?うん?」
何を言ってるのかさっぱりだが、原因はやっぱりこいつか・・・どこに何を議題にあげたんだこいつ?というか議題?議会か何かがあるのか?
「そもそも何で蟷螂の人は人間になりたがったんだ?ん?というか、人間になったってどういうことだ?」
駄目だ、俺も混乱してるのか、頭がまとまらない。逆に千那はようやく目が覚めたのか、スッキリしたような顔で思い出すように上を見ながら話す。
「昨日・・・集落に入った辺りでか?達也と子作りする為に何が必要ですか?って聞かれたから人間になれば出来ると思うぞ?と答えたのだ」
「・・・ほう?それで?」
「それで、ご飯食べてて達也がいっぱいいて?何で達也がいっぱいたのだ?それなら千那が、1人くらいもらっていいのか?」
「え!?たつくん増えるの!?私も1人専属で欲しい!」
「ん、一日中お腹温めてもらう」
残念ながら肉体変化で分裂は出来ないんだよな、変化させた後に身体から離れたら・・・手が千切れたとして、その手を個別に動かすなんて真似は出来ないだろう。それだと別能力になるだろうな。
「俺は1人だ、適当に分け合ってくれ?ん?いや、そうじゃない、それで人間になる為に何をしたんだ?」
「千那は議題に出しただけだぞ?」
「その議題ってのはなんだ?」
「う~ん」
首を可愛く傾げながら上を見たり横を見たり・・・ちょっと待て何で千那まで俺が着ていた服を着てるんだ?配ってんのか?保存してんのか?・・・確か洗濯物は美香が担当してるはずだが、一度どうなってるのか聞いて・・・無駄な気がするからいいやもう。普通男女逆な気がするんだが。反応に困るわ。
俺が別のことに思案していると思い出したのか、ポンと両手を合わせ一言。
「覚えてない!」
「・・・もぅボケが始まってるのか?」
「違うぞ!何というか、千那はアクセス権をまだ持っていたから、達也がいっぱいいたから、機嫌も良かったから、うん?そうそう、それで残りの力で議題にあげたのだ!」
「わけわからんが、どこに議題を上げたんだ?」
「どこ?どこ?・・・千那はどこにあげたのだ?」
「知るか!」
声を荒げるとあっという間に涙目になり、震えだす。あぁ千那を怒るとそうだっけ。
「あ、あぅ?せ、千那悪いことしたのか?蟷螂の人の願い聞いちゃ駄目だったのか?ごめんなさい・・・」
「あぁうん、別に怒ってはいないんだけど・・・まぁいいや」
宥めつつ、今もドアに仁王立ちの2人を見る。よくよく見れば俺が先日着てたやつだよなそれ?俺の視線に気づいたのか、服は渡さないしここは通さないよ!と胸をはる2人。ないくせ・・・イテテテテ!
「たつくん?怒るんだよ?」
「ん、お腹冷えるからそんなこと考える」
2人してホッペ引っ張るな、悪かったよ。
「将来に期待だわなイタタタタタ」
「たーつーくーん!」
「ん、たつばか!」
蒼と雪も起きたのか、ホッペを引っ張られてる俺を見て足元にきて丸まり・・・こら。
「もぅ朝だから起きな2人とも」
「チチチ?」「クゥン?」
首を傾げながら見上げると、また眠たそうに服の中に潜り込もうとするので頭をグリグリ撫でながら、ふと思いつく。
「千那?虫人達は擬人化?出来たんだろ?冬華や雪、蒼達は無理なのか?」
本人達に意思確認はしてないから何ともいえないけど、犬耳っ娘とかリス耳っ娘とか無理か?あぁいや好みの問題もあるにはあるが、意思疎通が今は不便すぎるんだよな。2人ともそれを聞いて期待するように千那を見る。やっぱり獣っ娘になりたいのか?
何故か小馬鹿にするように鼻で笑おうとしている千那の顔をつまむ。
「いひゃい!たつあはばふぁだにゃ!アフフェスフェンはもぉにゃいふぁ!」
「アクセス権・・・ねぇ」
アクセス権というと上位の者に対する?議会ならシステムとかか?それとも世界に対しての?
思案している俺をよそに扉がノックされ優奈が出て行った。と思ったらすぐに戻ってきた。
「たつくん蟷螂の人がこっちに来たみたい、話があるんだって~」
蟷螂の人?ってあぁ脱皮(擬人化)が終わって、服も支給されたのかね。全裸だったら部屋に入るのを優奈が許可しないだろう。
「失礼いたします」
え?優奈が礼儀正しく入ってきただと!?珍しく行儀が良い優奈を褒めようと思ってドアの方を見ると、知らない女の人が立っていた。
白い上下の作務衣?を着ている、色白で顔は欧州系だろうか、少なくとも日本人の顔をしていない、外交系の顔立ちをしている。
そんでもって頭に触覚があった。
うん、あれは触覚だよな?思わず3度見したけど、どう見ても触覚にしか見えない。人間としての顔に触覚が付いている。違和感を感じないくらい自然についているせいか、4度見直しても触覚がついている。あぁうん、何度見てもあれは触角だよな?
それに前で合わせている手の甲が甲殻みたいな光沢があるんだけど、ええっと?
「ええっと・・・?どちら様ですか?」
俺が聞くと、目の前の人?は、何が可笑しいのか手を口に当てながら、妖艶に微笑んだ。
「あら、ひどい?昨夜はあんなに楽しく過ごしてくださったのに・・・もぅお忘れになってしまわれたのですか?」
悪戯を成功させたような顔で微笑まないでくれます?まぁ勘違いする要素ないから大丈夫だとおも・・・あぁうん。
「たつくん私達が寝た後何かしたの!?」
「ん、たつどういうこと?」
「誤解だ・・・とにかくこの人は誰なんだ優奈?」
「え?蟷螂の人だよ?」
あぁうん、本当に擬人化したのか・・・つまりこの人が蟷螂の人ね・・・。
俺の不躾な視線にも嬉しそうに微笑み返してくる蟷螂の人らしき人に心の中でため息をついた。




