第二話
「おはよ、伊織ちゃん」
「おはようございます。あれから連絡ありませんでしたけど、いい週末を過ごせましたか?」
「杏子さんの寝顔が超可愛いかったです」
昇降口で合流した我が親友に、私は真顔でそう言った。
伊織ちゃんはいつもの笑顔のまま固まり、取り出した上履きを落とす。
こんなに取り乱した伊織ちゃんは珍しくなかなか見られない。
私も取り出した上履きに履き替えながら伊織ちゃんが再起動するのを待っていれば、掴み掛らんばかりの勢いで迫られた。
「まさか本当に一緒に寝たんですか!?」
「声、大きいよ」
「すいません。え、でも展開早すぎません」
「別に一緒には寝てないよ」
詳しくは教室に向かいながら話そうか。
それは昨日の朝の事。
午前7時。
それが私の休日の起床時間。
布団が名残惜しいが身支度をして、庭の畑の水やりに向かう。
季節に合わせて様々な野菜が育つここは私の癒しだ。
水やりと簡単な手入れを終わらせ手を洗い、郵便受けから新聞と広告を回収し水分を補給するためにキッチンへ。
冷蔵庫を開ければ、昨日入れた父さん用の夕飯がそのまま入っていた。
泊まり込みも珍しくはないが、昨日のような特別な日くらい帰ってくればいいのに。
まぁお詫びの電話が杏子さんにあったみたいから別にいいですけど。
昨夜は私が手料理を振る舞い、ささやかではあるが杏子さんの歓迎会をした。
私も杏子さんも饒舌な方ではないが、話はそれなりに弾み、僅かだが心を開いてくれた気がする。
そう、信じたい。
それに思っていたほど緊張というものは長続きしないようで、夕飯が終わるころには杏子さんが同じ家にいるという状況に慣れだしていた。
昨夜の事を思い出してへらへらしていると、真横で炊飯器がピーっと鳴り、蒸気が噴き出した。
一瞬驚いたが、すぐに炊きたての白米の香りが胃をくすぐり、腹の虫が小さく鳴く。
そう言えば、朝食はさっそく杏子さんが作るって張り切っていたっけ。
私としては食パンとトマトジュースで十分なんだけど、杏子さんは朝は和食派らしくご飯がなければ一日が始まらないそうだ。
リビングでトマトジュースを飲みながら新聞を読んでいれば2階からピヨピヨと音が聞こえ始めた。
明らかに人工的なこの音はもしかして杏子さんの目覚ましの音だろうか。
じゃあもうすぐ降りてくるよね。
心の準備をして、もう一度寝癖がないか手ぐしで髪を整える。
…………あれ?
音が鳴り始めてから早3分。
人の動く音がしないまま、鳥のさえずりだけが聞こえ続けていた。
気になって二階に上がってみるが、確かに鳥の声は杏子さんの部屋から聞こえている。
驚かさないように軽く、でも相手に聞こえるようにノックをする。
「杏子さん、お早うございます。杏子さん?」
もう一度、とんとん。
「お休み中すいません。鳥さんが鳴いてますが」
とんとん。
返事がない。
さすがに心配になってきたので、一応断りを入れてから、杏子さんの部屋の扉を開けた。
「…失礼します」
カーテンは閉められていて薄暗い部屋。
まだいくつか中身の入った段ボールが置いてあるが、間取りは私の部屋と同じだから迷うことなくまっすぐベットへと向かう。
枕元で相変わらずピヨピヨと鳴き続ける目覚まし時計に、朝からご苦労様ですと心の中で呟き役目を終わらせる。
これだけ近づいても身動き一つしない杏子さんに目をやれば横向きで丸くなって枕を抱えて寝ていた。
知らない場所に単身乗り込んで体力的にも精神的にも疲れていたのでしょう。
それならこのまま寝かせてあげたい。
しかし杏子さんのこの体勢はもしや胎児のポーズだろうか。
とてつもなく可愛いのだけど。
今度動物系の抱き枕を買いにいきましょう。
牛がいいかな、羊がいいかな、ヤギがいいかな、きっと草食動物が似合うと思います。
ベットの横にしゃがみ、目線の高さを合わせれば、静かに寝息をたてて眠る穏やかな顔が間近に見えた。
いつもは髪で見えない顔も今はすべて余すとこなく見えていて、初見での印象が間違っていなかった事を教えてくれる。
整った顔立ちをしているのに隠すのはもったいないと思うが、個人の自由だから深くは聞かない。
でもいつか遮るものもなく、目をまっすぐ合わせて話せるようになれたらそれはとても嬉しいことだと思う。
もし本当にそうなったら嬉しすぎて気絶するかもしれないけど。
杏子さんのご尊顔を心ゆくまで目に焼き付けて、次に目に留まったのはふわりとした真っ黒の髪。
自分自身の髪型にまったくこだわりがないから、普段は他人の髪にもそんなに惹かれることはないのだけど。
今日に限っては、というより杏子さんに限っては、いたずら心というか、好奇心というか、触れてみたいと思った。
そして思ってしまえば、もう止まれない。
ゆっくりと頭に手を伸ばしながら、慣れないことをする緊張からか私の心臓は速さを増していく。
そして髪に触れる直前、暴れる心臓の音が聞こえたのか、それとも手が影になってしまったのか、ピクリと動いた瞼がゆっくりと持ち上がった。
「…んぅ」
ゆっくりと開いたまぶたから覗く真っ黒の瞳が、私のそれと確かに合った。
本日のファーストコンタクトです。
「おはようございます」
「…おは、よう?」
ぼんやりとしながら疑問形で返してくれた。
不思議そうな顔をしているのはまだ寝ぼけているからか、それとも結局急停止できなかった私の手が杏子さんの頭を撫でているからだろうか。
抵抗されないので調子に乗って撫で続けていると、杏子さんの顔がふにゃっと心地よさそうにゆるんだ。
あぁ、寝ぼけているのですね。
極上の笑顔を朝からありがとうございます。
もうおなかいっぱいです。
幸せな時間は一瞬にして過ぎ去るもので、極上の笑顔のすぐ後、急に目を見開いた杏子さんは、飛び起きるようにして私から離れた。
残念、お目覚めですか。
あ、そんなにそっち行ったら壁に…「いたっ」当たりましたね。
「あ、ああおおはよう!」
「おはようございます」
冷静に本日三度目のあいさつをする。
ここで動揺しては罪を認めるようなものだ。
けして一瞬で距離を取られた事を落ち込んではいけない。
「勝手に部屋に入ってすいません。目覚ましが鳴っているのが聞こえたので」
「えっあ、ごっごめんね、朝ご飯作るって言ってたのに、もうこんな時間」
「大丈夫です。引っ越しで疲れていたのでしょう。今日は私が作りましょうか?」
「ううん、頑張るって、言ったから」
「では私も少しお手伝いします。卵焼きぐらいならすぐにできますから」
せめてそれぐらいの手伝いは許してほしい。
昨日購入したパンダ柄のエプロンをつけている杏子さんを近くで拝見したいのだ。
そんな下心を秘めた私の言葉に何故だろう、落ち込んでいた杏子さんの目が一瞬輝いた。
「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「はい」
許可が出たので張りきって卵を巻くとしましょうか。
「いただきます」
「いただきます」
二人、手を合わせ食べ始めるのは初めての共同作業で出来たもの。
目の前に並ぶのは白米にお味噌汁、卵焼きに鮭の塩焼き、ホウレンソウのお浸し。
実に簡単な品ばかりだが、いつも平日の朝はお弁当のおかずを少しつまんだりするぐらいだし、休日はそもそも食べなかったりするから、こんなに贅沢な朝食は生まれて初めてだ。
ちなみに私は卵焼きと鮭とホウレンソウを担当した。
食べてもらう人を意識したからか、なかなか美味しくできたと思う。
ふと、顔を上げれば正面の杏子さんの箸が進んでいない。
「どうかしましたか?」
「…すごいね、涼ちゃんは」
「何がでしょう?」
「…………」
え、何故また少し落ち込みモードになっておられるのでしょうか?
もしかして卵焼きは砂糖を入れる派でしたか。
言ってくれば甘くしたのに、私はどちらも好きなので。
「手際とか、すごくいいし、気づいたら私お味噌汁しか作ってないし。卵焼きの形すごくきれいだし」
「普通の卵焼きですが」
「…………」
しまった、失言でしたか?
そういえば料理はあまり得意ではないと言っていたような。
作りたいという気持ちだけでも嬉しいのに。
「ご飯、炊き加減がちょうどいいです。それと貴女の作ったお味噌汁もおいしい」
「…ほんとに?」
「はい、とても」
特に濃さがちょうどいい。
伊織ちゃん曰く、私の作る料理は少し薄味らしいから杏子さんの口に合うか心配だったけれど、この様子だと大丈夫そうだ。
味の好みはだいぶ近いようで嬉しくなる。
「卵焼きは口に合いましたか?」
「あっうん、おいしいよ。すごく、おいしい」
慌ててもきゅもきゅと卵焼きを頬張る杏子さん。
可愛いですけどゆっくりでいいですよ。
リスのような杏子さんを脳内に保存して私も食べるのを再開した。
「ということがありました」
「はぁ。涼さん顔が蕩けてますよ」
「続き、聞く?」
「いえ、今日はここまででお願いします。朝からおなかいっぱいです」
もうすぐチャイムもなりますし、教材を用意し始める伊織ちゃん。
いや、まだ10分前だよ。
相変わらず真面目だね。
私なんていつも先生が教室に来てから準備するよ。
とは言え、話し相手が前を向いてしまったので私も用意する。
「ではもしかして、今日はお母さんの手作りお弁当ですか」
「いや、実は今日の朝、杏子さんが朝が苦手なことが発覚して」
「あら」
今日も時間通りに起きた小鳥さんは元気に鳴き続け、30分遅れて起きてきた杏子さんは泣きそうになっていた。
大慌ての杏子さんを落ち着かせて、食卓に着かせた時点でもうお弁当は完成していた。
もちろん私の手によって。
その時の杏子さんの顔は絶望に満ち溢れていた。
申し訳なく思いながらもお弁当とほぼ同じ品ぞろえの朝食を泣きそうな杏子さんと一緒に食べた。
そして行ってらっしゃいをしてもらい、浮かれたまま学校へと来て、伊織ちゃんと合流し今に至ると。
「微笑ましいよね」
「私も朝は苦手なので気持ちはよくわかります」
「私は得意な方かな」
就寝時間も早いし畑の世話もしたいから早起きはそれほど苦にはならない。
「でも今日の夕飯は杏子さんが作ってくれるって」
「良かったですね」
「うん」
「涼さん、また顔がゆるんでますよ。ほら、しゃんとして」
「伊織ちゃんはお母さんみたいだね」
「ふふっ、光栄です。…でも、うら若き乙女をお母さん呼ばわりはいただけませんねぇ」
「え、あ、ごめっ」
笑顔で鼻をつままれました。
痛かったです。
一つ学んだ。
『お母さんみたい』は褒め言葉じゃないんだね。
気を付けないと。
午後6時。
部活動を終え、まっすぐ杏子さんがいる我が家へと帰ってきた。
玄関の扉を開け、自宅へと入りリビングへ向かう。
足取りが早くなってしまうのは、こんな事を言っては伊織ちゃんに笑われるだろうが、少し不安だったのだ。
もしかしたらこの幸せな二日間は幻で、一度家から出ればもう杏子さんは消えてしまっているのではないかと。
だって私は誰もいない家しか知らない。
リビングの扉を開ければ、料理の香りが胃をくすぐる暖かなそこには、あたりまえだけど、杏子さんがいた。
鞄も持ったままぼんやりとキッチンに立つ杏子さんの後姿を眺めていれば、むらむら…いや、何でもない。
「あっお帰り、涼ちゃん」
「…ただ今帰りました」
リビングのテーブルの上には料理本が開かれていた。
見えていたページに書いてあったのは煮物初級編。
何から何までが初級編なのでしょうかね。
「もうすぐご飯炊けるから」
「では先に着替えてきます」
「あっ涼ちゃん」
「はい」
杏子さんが何かを言おうとして、黙る。
この間にもだいぶ慣れてきた。
「お……手洗いとうがい、してね」
御手洗い?
いや、普通にうがい手洗いの事だよね。
「いただきます」
食卓に並ぶのは白米、筑前煮、揚げ出し豆腐、ほうれん草のすまし汁
オール和食ですね。
白米が好きと言っていたので、和食が好きなのだろうと思っていましたが見事です。
むしろ洋食は嫌いなのでしょうか。
私の得意料理のほとんどが洋食なのですが、披露する機会はないかもしれませんね。
「どう…かな?」
「美味しいです」
「そっか、いただきます」
安心したように杏子さんも手を合わせる。
いただきますって素直に言える人って素敵だと思うのですが、私だけでしょうか。
「あっ、先生今日は少し遅くなるけど帰るって連絡があったよ」
「そうですか。では初めての…」
ああ、まずい事に気がついてしまった。
「初めての?」
「…いえ、初めての家族団欒ですね、と」
そして初めての、夫婦の、アレですね。
常識に疎い私でも知っていますよ、そういう習慣がある事は。
本で読みましたから。
初めての夜、ですよね。
私はいつもより早めに就寝した方が良いのでしょうか。
「今日は早めにお風呂入れましょうか」
「お風呂…」
お風呂という言葉に反応して、杏子さんの顔色が花が咲いたように明るくなった。
なんだかわかりませんが、そんなに喜んでもらえると私も嬉しいです。
なんて、油断していた私は、次の杏子さんの言葉に一瞬にして撃墜された。
「一緒に、入る?」
……え?
…………え?
誰と誰が?
父さんと杏子さんが?
いや、そんな浮かれた宣言をするような人には思えないから、私と一緒にということなのだろうとは思うけど。
「いえ、一人で入ります」
「…そっか」
何故残念そうな顔をするんですか。
私はもう17歳でお風呂に入れてもらうような年齢でもありませんよ。
って、動揺しているのは私だけですか。
杏子さんは黙々と食べ続けているし。
「えっと、学校は楽しい?」
「…あ、はい。楽しいですよ」
急な話題変更で返事が遅れてしまったのは仕方がないと思います。
けして破廉恥な事を考えていたわけではないですよ。
「農業部、だっけ。どんなことをするの?」
「今日は白菜の定植…苗を畑に移す作業と、あと弥三郎さんの散歩をしました」
「やさぶろうさん?」
「学校で飼っているヤギです。休耕中の畑の雑草を食べてもらうんです」
「…きゅうこう」
「休ませている畑の事です。ずっと同じ畑を使っていると土中の栄養素がどんどん減ってしまうので、畑を交代で休ませるんです」
弥三郎さんのふんがそのまま畑の栄養になるので一石二鳥ということだ。
「…涼ちゃんはすごいね」
「すごくはありません。もし興味があるのでしたら、うちの畑で何か育ててみますか?」
「いいの?」
「はい。今の時期からならカブなどがいいでしょうね」
「涼ちゃんも、一緒に?」
そこ、こだわりますね。
「貴女さえよければ」
「じゃあ、お願いするね」
カブはもともと育てる気だったので、私がほとんど世話をするつもりだ。
まぁ少しでも杏子さんの仕事の息抜きになればいいか。
「では今週末、時間があれば種を買いに行きましょうか」
「うん。ありがとう、涼ちゃん」
こちらこそありがとうございます。
今週末は一緒にお出かけですね。
ごちそうさまをして、食器を二人分まとめて持ち流しに向かう。
さすがに家事を全てやってもらうのは心苦しい。
ここからは私の仕事です。
「後片付けは私がしますので貴女は休んでいてください」
「え、えっと、でも」
「父さんの分はお願いしても良いですか?」
「あ、うん。分かった」
流しで食器を洗っていても、背中に視線を感じる。
自分が何もしないのが落ち着かないみたいだ。
そんなに気を使わなくてもいいんですよ。
今まで私が全てしていたから慣れてますし。
「あの、涼ちゃん。私、お風呂用意しておこうか?」
「そうですね、お願いします」
お風呂、そんなに好きなんでしょうか。
私も嫌いではないがそこまでの情熱はないなぁ。
さて、洗い物は全て終わったが、杏子さんが戻ってこない。
うちのお風呂はボタン一つでお湯が沸かせるから、それほど難しい事はないと思うのだけど…。
使ったタオルを洗濯機に投入するついでに様子を見に行けば、杏子さんは石鹸の予備や洗剤の入った棚の前で固まっていた。
「どうしました?」
「あ、涼ちゃん。えっと、これ…」
「入浴剤ですか?」
「どれ、入れる?」
あ、それでそんなに悩んでたのですか。
すいません、無駄に種類が多くて。
色々と試してみたくなるもので。
「適当に貴女が選んでくれれば良いですよ」
私がそう言えば、杏子さんは少し困ったような顔をした。
あぁ、なるほど。
薄々気付いてはいましたが物事を決断するのが苦手なんですね。
こんな環境では余計に遠慮もしてしまうでしょうし。
「ではクローバーはどうでしょう」
杏子さんの後ろから手を伸ばし、私が取り出したのは緑のパッケージの入浴剤。
以前使用した時は全くクローバーの香りではなかったですが、なかなか良い香りだったので気に入っている。
「私のおすすめです」
「じゃあ、これにするね」
「はい」
クローバーの入浴剤を宝物のように受け取り、何故か嬉しそうな杏子さん。
そんなに高いものでもないのですが。
消耗品ですし。
今日は私が決めたけど次は杏子さんに選んでもらおう。
ゆっくりで良いから杏子さんのオススメも知っていきたいと思う。
体を包むのはクローバーらしからぬ、クローバーの香り。
杏子さんは父さんを待つそうなので、一番風呂を頂いてしまった。
頭も体も洗ったし、あとは体を温めて出るだけだ。
湯船に入り、ぼんやりと考える。
一日の終わりに入るお風呂は記憶と感情の整理の場だと私は思う。
昨日の事、今日の事、未来の事。
そしてそのすべてに登場する杏子さん。
明日からまたいつもの私でいるためには、いらない感情を選んで捨てなければならない。
それなのに、温まって緩んだ頭は余計なことを考える事をやめない。
課題はもう終わっているし、お風呂から出たら体が暖かいうちに寝てしまおう。
寝付きは良い方だしさっさと寝てしまえば、次に起きた時にはもう何事も終わった後のはず。
どうなんだろう。
耳栓とかした方がいいのかな。
壁は薄くはないが防音ではないし。
もし、何か聞こえてしまったら…。
はぁ……あつい。
頭が体が、瞼が、のぼせたように熱くなる。
沸騰したように頭が思考を止めたがるのは自己防衛のため。
これ以上の想像を許さないため。
父さんと杏子さんが、性行為を行うのは夫婦の営みとして当然の事で。
杏子さんからしてみれば、父さんのおまけである私がそれをどうこう思うのはおかしな話だ。
というかもうキモチワルイ、わたし。
変な妄想とか自重しろよ、わたし。
だけど我が儘な私の心は、締め付けるように痛みを増す。
この胸の痛みをのぼせたせいに出来るほど、私は無知ではなかったし、子供ではなかった。
なんだかシリアスに向かっているような気がしないでもない。
次はお出かけ編です。