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「それで、ここは一体どこなんだ……」

シンクレアとアテもない逃走劇のようなものを繰り広げた気がしたが、どうやら相方の方はそうでもなかったようだ。

眼前には、巨大な建造物がその威容を誇示するように、そびえ立っていた。

別段建築様式に詳しいわけではないが、目の前の建造物にかなりの金がかかっていることは容易に理解出来た。

俺をここまで引っ張ってきた張本人は、ここにはいない。

ここで待つように命令(少なくとも俺にはそう思えた)した後、無駄に頑丈そうで大きい門の向こうへ姿を消した。

正確な時間は分からないが、結構な時間が経っているような気がする。

それでも、シンクレアが姿を現す気配はない。

暇を持て余した俺は、門の中を見える範囲で見物することにした。

門と建物の間には、広大な庭園が広がっていた。

リアルでは、お目にかかれないような色取り取りの花が咲き誇っている。

WEO特有の植物だと思うが、意外にも庭園の色調は乱れていなかった。

「綺麗だろう、私の自慢の庭園なんだ」

「ああ、WEOの奇抜なデザインの植物を混ぜていながら全体のバランスが取れていて……って」

振り返ると、いつの間にか長身の女性が立っていた。

中世の騎士のような鎧を着こなした美少女だ。

視線を顔へ移すと気の強そうな瞳が、クロードを射抜いていた。

「君はここら辺では見たことが無い顔だが、ここに何か用かな」

口調は穏やかだったが、クロードの背中には冷や汗が流れた。

強い圧迫感

プレッシャー

と言えるものが彼女から放たれていたからだ。

間違いなく、目の前の少女は自分を警戒している。

「えーっと用事があるというか……ないというか……俺は連れられてきただけで、よく分かっていない……ん……だが……」

語尾がどんどん小さくなっていったのは、煮え切らない俺の態度に少女の圧迫感

プレッシャー

がどんどん高まっていったからだった。

「お前、ここに何しにきたんだ?」

こっちが聞きたいぐらいだよ、という言葉を飲み込んで俺は沈黙する。

体の良い言い訳が見つからなかったというだけはなく、相手の警戒の仕方が異常だと思ったからだった。

ちょっと門から中を覗いていただけで、これだけ警戒されるというのは少しおかしくないだろうか。

「おい、私の話を聞いているのか」

黙ったままのクロードに不信感をあらわにした少女は、腰に差した長刀に手をかけていた。

一触即発の空気。

「アンタ達睨みあって何してんの」

それを破ったのは、シンクレアの呆れたような一言だった。


「客人であったのなら、もっと早く言ってくれ思わず切って捨てるところだったぞ」

ヘビに睨まれたカエルよろしく固まっていたクロードの代わりに少女への説明を終えたシンクレアに連れられて俺は、無事に門をくぐり中へと入ることが出来た。

「リンヤは、ああ言ってるけど本当に切りかかってくるから気をつけたほうがいいわよ」

どうやら今、涼しい顔で物騒なことを言った少女はリンヤと言う名前らしい。

本当に切りかかってくるってなんだよ。そこは笑うとこなのか?

建物の中に入ってわかったことだが、思っていたよりも広い。

そして無駄に豪華絢爛だった。

カーテンから置物、絨毯にソファーなど、ぱっと見ただけでも、どれもがオーダーメイドの特注品であることが分かる。

更に気になるのは、自分を見つめる視線だ。

突き刺さるような視線がいくつも自分に注がれている。

そのどれもが女の子だった。

驚くべきことに永遠と続くかのような廊下を歩いている間にすれ違ったのは、全員女の子だけだった。

(それだけだったらまだマシだったんだけどな……)

嫌な予感しかしない。

縦も横もクロードの身長を優に超えた扉の前で、シンクレアとリンヤは立ち止った。

「着いたわよ」

扉の向こうは、広間だった。

中央に一際存在感を放つ玉座の他には何も無い。

「ご苦労さまーん、後はわたしとお兄さんが二人っきりでぇお話するから二人共部屋から出てってね」

やけに間の抜けた声は、玉座の主のものだった。

明らかに、玉座と不釣合いな小さな体。

金髪ツインテールの美少女。

「ふざけないでよ、クロードは私がここに連れてきたの。誰の命令でもなく、私の意志でね。アンタの命令なんて知ったこっちゃないわ」

「シンクレアッ!貴様、誰に向かってそのような口を利いているのだ!」

すぐさま、リンヤが長刀を鞘から抜き払いシンクレアに突きつけた。

「面白いじゃないの、私とやろうっての?」

シンクレアも好戦的な笑みを隠そうともせずに、魔法陣を浮かび上がらせた。

「だ~か~ら~さーリンヤちゃん」

セラのサファイアをはめ込んだような瞳が危険な色を帯びる。

儚い印象を受ける細く白い腕が、微かに前後する。

恐らく、その時に何が起こったのか理解出来たのは俺だけだっただろう。

リンヤの体は、一瞬にして吹き飛び壁にたたきつけられていた。

グラリ、と壁にめり込んだ体が前のめりに崩れ落ちる。

「ココで、武器抜いちゃダメだって前も言ったじゃん」

何事も無かったように、セラは笑っていた。

「シンクレア、言うことを聞いてくれないか」

リンヤ以上の圧迫感をセラから感じる、というより昔からこいつは、そういう奴だった。

俺の顔が真剣だったのを見て、シンクレアはしぶしぶといった感じで頷いてくれた。

後ろで体の動かない様子のリンヤを引きずったシンクレアが扉を閉める音がして、やっと生きた心地がした。

「久しぶりぃクロードにい、元気してたぁ?」

二コッとまるでさっきまでの出来事が嘘のように、天使の笑みを振りまくセラ。

そうなのだ、こいつことセラと俺は旧知の仲、一年前の仲間だった。

もう会うことはないと思っていたが、星の巡りが悪かったか。

「シンクレアが俺を此処に連れてきたのは、お前が命令したのか?」

その問いに対してセラは、馬鹿にしたようにフフンと鼻を鳴らした。

「そんなわけないじゃん、シンクレアは私の言うことなーんも聞かないもん。さっきの見てたでしょ、ほっんと生意気なの。そのうち手がすべっちゃうかも。それよりさ、今の私を見て何か言うことあるでしょ」

俺は改めて玉座にふんぞり返るセラに視線を移した、彼女が我が物顔でそこに座っているということは……。

「ギルマスになったのか」

この建物について、ある程度の推測はしていた。

個人が所有するにしては、規模が大きすぎる上に調度品はどれも一級のものばかり、そこから導きだされるのは必然的に絞られる。

この城とも言える拠点は、セラが取り仕切るギルドの本拠地なのだろう。

「ぴんぽんぴんぽーん、大ッ正解です~さすがクロードにい、私のことよく分かってるじゃないの~」

子供のようにはしゃぐセラを見ていると、一年前に戻ったような懐かしさがする。

「でもさ、でもさ私のギルドの名前知ってる?」

セラは嫌な感じする笑みを浮かべて、俺を見つめた。

ギルドの名前を調べるのは簡単だ、俺はセラのステータスを開きギルド欄をチェックする……って、これは……。

「セブンス……エッジ……?」

「どうどうどう? 驚いたでしょ~私、今セブンスエッジのギルドマスターをしているセラって言うのよ~」

セブンスエッジ。

一年前ギルドマスターが突如引退することで、解散したはずのギルド。

俺の……ギルド……だ。

リアルが色々とゴタゴタしておりまして、全然更新しなくて申し訳ありませんでした。

不定期ではありますが、また更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

追記 PSO2が楽しみです

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