残された時間
洋平
「取り合えず、こんな作戦でいくが、いいか?」
深雪
「いいですよ。」
花音
「いいんじゃない。」
黒谷
「わかりました。」
相澤
「…がんばる。」
三枝
「がんばります。」
場所は闘技場から教室に変わり、残り一週間となった大会の作戦を決めていた。で、今のは、大会の初戦から決勝までの前後衛を決めていた。ちなみに俺は決勝までは魔法をあまり使わず、刀で戦う。
洋平
「じゃあみんなに背中は任せた。」
作戦会議終了。
とくにやることがないから…。
洋平
「…寝よう。」
さっき、男子全員相手にしたから魔力が消耗しているし、なにより眠気が凄い。
俺は机に顔を伏せて、意識を手放した。
洋平
「……ここどこ?」
俺は教室で寝ていたはずなんだが、今目の前に広がる光景は一言で言うと神殿。そして気のせいか、あちこち光っているように見える。
洋平
「何なんだここは?」
誰に言うつもりはなくただ言ってみた。
???
「さぁ?何でしょうかね?」
洋平
「!?」
俺は驚き、声がした方を見た。
そこには女神がいた。
比喩表現ではなく、本当に女神がそこにはいた。
背は高く、優しい顔つき、さらには彼女自身から光が溢れているように見えてしまう…ってまさか…
洋平
「光の精霊?」
???
「あら、よくわかったわね。私は光の精霊、ルーメンよ。」
洋平
「俺は片桐洋平です。一つ聞いていいですか?」
ルーメン
「いいですよ。」
洋平
「何で俺がここにいるんですか?ここ、貴女の聖域ですよね?」
ルーメン
「ん〜、確かにこの場所を構成したのは私だけど、ここは元々貴方の夢の中よ。たまたま貴方が話しかけやすい場所で寝てくれたからこの場所に呼んだの。」
洋平
「つまり、ここは俺の夢の中で、俺はそこに呼ばれただけってことですか?」
ルーメン
「そうね。私が勝手に貴方の中に入り込んで、場所を構成して、貴方を招待したのよ。」
洋平
「そうですか。一応聞きますけど、何の為にですか?」
ルーメン
「もちろん貴方と契約するためよ。」
洋平
「…いいんですか?俺なんかで…」
ルーメン
「何言っているのよ。貴方は知らないでしょうけど、競争率高かったんだからね。みんな貴方と契約したがっていたけど、なかなか自分の聖域に来ないから、自分たちから行こうってなるし…ってこの話は別にどうでもいいのよ。」
洋平
「精霊も大変なんですね。」
ルーメン
「そう思うなら聖域に来て欲しかったわ。」
洋平
「いや俺にはそんな資格ないと思ってましたから。」
精霊と契約するにはそれなりに条件がある。まず契約する精霊の属性を扱うことができること。次に、精霊の聖域を見つけること。さらに聖域内で精霊に認めてもらう。これが正攻法である。たまにこの方法ではない別のやり方で契約する人がいるらしいが、俺は詳しくはない。
ルーメン
「光の妖精を従えてよく言うわね。」
妖精?リナのことだろうか…
洋平
「妖精?精霊ならリナがいますけど?」
ルーメン
「私たちからしてみればあれは妖精よ。そうね…貴方たち人間風に言うなら子どもね。」
洋平
「へー。なんか納得できる。」
ルーメン
「それで、契約してくれるわね?」
洋平
「もちろんです。本当なら俺が頼み込むところです。」
ルーメン
「契約成立、…我が名において、片桐洋平と契りを結ばん。」
洋平
「…我が血において、精霊ルーメンと契約を結ばん。」
俺とルーメンの足元から魔方陣が展開し、共鳴した。これで契約したことになる。
洋平
「よし、これからよろしく。ルーメン」
ルーメン
「こちらこそ。それじゃあ私は帰るわね。」
洋平
「わかった。」
ルーメン
「今から呼び出されるのが楽しみだわ。」
ルーメンは言い終わるとその場所から消えた。
そして周りが光に包まれ…
洋平
「!?」
花音
「わ!?どうしたの?急に起き上がって?」
洋平
「いや…、何でもない。」
俺は辺りを見回し、自分の教室であることを確認した。
洋平
「少し…、夢を見ていた…と思う。」
花音
「どんな?」
洋平
「言葉では説明しづらい。」
リナ
「洋平様、さっき光の精霊が来ませんでしたか?」
洋平
「リナも光の精霊だろ?」
リナ
「私じゃなくて、別の精霊です。」
花音
「え?何どうゆうこと?」
洋平
「そうだった。俺のレパートリーがまた一つ、増えたんだった。」
花音
「光の精霊まで召喚できるようになったんだ〜。」
洋平
「まぁね。ところで他のみんなは?」
花音
「帰ったよ。今放課後だし。」
洋平
「マジで…」
花音
「マジで。」
教室にある時計を見るとすでに17時を越えていた。
洋平
「あまり大会まで時間がないのに…」
花音
「結構あるんじゃない?」
洋平
「一朝一夕で強くなれるわけないだろう。魔法は覚えれるけど、肝心の魔力はそうもいかないんだからな。」
花音
「なら、洋平はどんだけ凄いのよ。」
洋平
「俺だって人並み以上に努力してたんだよ。昔は…」
花音
「へ〜、ちなみにいつ頃の話?」
洋平
「中学に上がる前だから、小学生のときだな。」
花音
「私とは次元が違いすぎる…」
洋平
「と、言うことだ、あまり悠長な時間は残されてないんだよ。」
花音
「半日なら全力で全試合いけるんだけどな〜」
洋平
「最低でも一日、全力で魔力を使えたらいいんだけど。」
花音
「最低で一日!?無理よ!」
洋平
「これは悪魔で願望、試合は後半戦からキツくなりそうだし。」
花音
「そうだね。試合に勝ち続ければ相手は強くなるだろうし。」
洋平
「まぁそうゆうこと、だから、次からは基礎魔力を上げる方針だから。」
花音
「わかった。」
残った日数でどれだけできるかわからないが、やれるだけやっておこうと、俺は思っていた。