マルディアス探訪者
アイスソードを殺してでもうばいとりたいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。
アルツールの片隅で、アイスソードを振り廻す男がいる。君の首には、土のトパーズがある。炎のロッドを持ち、セルフバーニングを唱えることもできる。
君は思う。これは奪わない奴の方が、よっぽどどうかしている、と。そしてあなたたちは、痛快に彼を惨殺し、アイスソードを掠殺しようではないか!
しかし君の心は言いはしないか? アイスソードを振り廻しても所詮は使わないのだから、だから僕は二本買う愚をしないのだ、と。もしそうとすれば、それは諦めているだけの話だ。
君は決してアイスソードが欲しくないわけではない。しかし僕は、そういう反省を君に要求しようと思わない。又、「殺してでもうばいと」って、ポストでガラハドを笑いあうことが、君をそんなに偉くするだろうか? なぞとききはしない。その質問は君を不愉快にし、又もし君が、考え深い感傷家なら、自分の身の上を思いやって悲しみを深めるに違いないから。
僕は礼儀を守ろう!
僕らの聖典に曰く、およそイエス・ノオを他者に委ねるべからず、そは本能の犯す最大の悪徳なればなり、と。又曰く、およそイエス・ノオを他者に委ねるべからず。人は奪う、これ悲しむべし、君は奪わず、奪うべきか、仲間に誘うべきかに迷い、迷いて二本買う。故に甚だしく人なり、と。
ガラハドを殺す男よ、君はただ正直に生き給え。決してネットに向かって、「殺してでも うばいとる!」と叫んではならない。「冒険」のねうちを安く見積もり給うな。ミームは、音響としては騒々しいものであるけれど、人生の流れの上では、ただ静粛な足跡であるべきだ。
アイスソードを二本買う男よ、君の迂遠なる行動の中で、巨人の里での購入に妥協してはならない。そして、それをしないために、君のアイスソードは、一段と高尚な、そして唯一のものになる。
マルディアスの宝の地図は、行き詰まっていると人々はいう。当然の話だ。宝の地図の仕様は、宝探しとすら言えない。
狂人たちの先駆者としての立派な足跡は認めなければならない。そして彼等はよき天分をもつ研究者である。しかし正しい見方からすれば、あれらはコレクションアイテムではない。
ことに青の剣は、地図の入手に、常に現実の運を要求する。そして或時は音楽家のように、拍と曲の知識を要求する。レベル5地図は「レベル5の宝が手に入る」と考えらるべきであるのに、この、マルディアスの地図は「内部データ」を当然のように要求する。
此の如き認識を持つ狂人種のために、「レベル5地図」は美しき奇跡であるかも知れない。そして先人たちの検証結果は我等を導くものかも知れない。
しかし、アイテムを手に入れるために極大の試行を担ぎ出すのは、むしろ旅を陳腐にする。運は試行回数の裏打ちによって確かなものにはならない。むしろその日々は、色褪せたものになる。
ケレンドロウズは、シルバーからの一振りだけでも立派な貴重品であったのだ。
いつであったか未実装のクロスクレイモアは最も悲しい装備品であると、プレイヤーの誰かが落胆していたのを記憶している。日本人らしい悪趣味な指摘であると言わなければならない。
成程、蒐集癖のある人間ならば、アルティマニアにあるクロスクレイモアを設定ミスでは読みすごせない。我々は、叶わぬ妄想に深く心を吸われる。それでいい。なぜ「極低確率」が「極低確率」のままアイテムとして通用できぬのであろうか?
コンプリートはそんなにも煌びやかなものであろうか? 体験はそんなにも無味乾燥なものであろうか?
すべて「一途」がほとばしるとき、人間は「詩」を求めるのである。その人その人の容器に順って、ウハンジを殺し、奇病に間に合わず、魔の島に気付かず、水竜の神殿を通り過ぎ、マリーンに騙される。それが一番冒険に必要なのだ。これ程素直な、これ程素朴な、これ程無邪気なものはない。この時冒険は最も高尚なものになる。
素直さは効率の反対である。そして、この素直さから、その人柄にしたがって、フロンティアの村々が順にほろびていくのなら、それはそれで一番正しい。
そしてエスパーダ・ロペラは、かなり本質的に、「生きた冒険」の証ではある。こなれたプレイヤーは往々にして楽に奇病をクリアする。それもまた良い。
日本では、やり込み要素として古来支持されてきたものに、強くてニューゲームがある。勝れた心構えの人によって用いられたなら、引継ぎも立派なやり込みになる筈である。
非売品が増える。少なくとも今の引継ぎ要素は、遺憾ながら話にもならない。僕の知る限りで、「引継ぎ要素」を「昇華」させたゲームは、30年前のクロノ・トリガー。最近のゲームでは、エルミナージュ。それだけ。
狂人たちのスタイルは、データを飛躍しなければならない。「矜持」や「美学」を求め始めてもいい時期だ。
ジュエルビーストを襲え! シルバーを連れ廻し給え。ネットのデータを模倣し給うな。彼等から、それはLPが低い、そんな装備で大丈夫かと嘲笑されることを欣快とし給え。しかしひねくれた配信者になり給うな。インプレッションの卑屈さを学び給うな。
既知の衒学をふりかざして、アビスブルーの価値を語り給うな。見給え。リマスターをプレイするものが、「狂人剣だ!」と叫んだとすれば、おかしいではないか。それは君のデータをあさましくするだけである。すべからく「狂人」になろうとする心を忘れ給え。
ギユウ軍の教えを御存じ? あれは君に指図しない。しかし或日、最後の秘密として冒険者の背を押したことを御存じ?
人は物語を作ることを御存じ?




