信者?獲得
獣人さんは不意に、ぽつりと「……名前、教えてくれ。」と言った。
「え? あ、はい……ニコレッタです。」
「俺は、ギルヴェルト。獣人族・オオカミ種、元獣人国レグルス軍・遊撃隊所属だった。今は退役して、傭兵をしている。獣人にとって毛並みは命だ。つまり、お前は俺の命を救ってくれたということだ。俺は、あんたのために剣を振るおう。」
「……ギルヴェルトさん……」
「ああ。」
「……これ、『魔法ガチャ失敗』じゃなかったんですね。」
ギルヴェルトさんの決意が重すぎて、頓珍漢な質問が口を出ていった。
「……失敗?」
彼は、小さく笑った。
その笑いは、初めて、完全に肩の力が抜けた笑いだった。
「……いや。これは、『誰もが引けるガチャ』じゃなくて、『その人しか引けない、特別なレアリティ』だ。
……お前は、ただ、『レアを引く時期が、あまりに早すぎた』だけだ。」
私は、深く深く息を吐いた。
――半年間、私は「魔法を使えない私」を嘆いていた。
でも、本当は――
私は、ただ『魔法の本質をまだ知らなかっただけ』だった。
「……ギルヴェルトさん。」
「ん?」
「もし、よろしければ……次は私の『体質』を、直してもらってもいいですか?」
彼は、一瞬目を見開いた。
「……お前の?」
「はい。……私が、ずっと、自分に押し付けてきた『弱さ』とか『不完全さ』とか……それらが、本当に『私の体質』なのか、それとも……ただ、『誤った設定』なのか……それを、一緒に確かめてみたいんです。」
グロウは、静かに私の手を取った。
その手のひらは、厚くて荒くて、でも、とてもとても温かかった。
「……いいぜ。」
広場の風が、そっと私の髪を揺らした。
——魔法師養成所を卒業した私は、魔法師団にも、研究所にも、行けなかった。
でも――
私は今日から、『変化の魔法使い』になる。
……まだ、LV.1のままだ。
まだ、何が変えられるかも、よくわからない。
でも、もう大丈夫だ。
だって『変える』ってことは、――
『誰かがまだ、何かを待っている』ってこと。
『まだ届けていない、『本当のあなた』が、この世界のどこかにちゃんといる』ってこと。
私は立ち上がり、ギルヴェルトに深く頭を下げた。
「……ありがとうございます。……これから少しずつ、『変化』を、覚えていきます。」
「……楽しみにしてるぜ。……お前が誰かの『変化』を、どこで、誰に、どう届けるか。隣で見ていたい。」
私は、歩き出す。
斜め後ろには、頼りになるギルヴェルトさん。
広場の向こうには、薬屋の看板が揺れている。
でも、今日はそこで止まらない。
風が私の背中を、優しく優しく押した。
……そうだ。
『変化』は、一人では、始まらない。
誰かがいてこそ成り立つ魔法なんだ。
私の物語は、ここからやっと、本当の序章に入るんだ。
……けれど、私はまだ知らなかった。
『本質』を変えることは、ただの人間にできるわけないってことを。
それによって、様々な騒動に巻き込まれていく――




