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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

電車の幽霊

作者: ろろ

これはつい先日、私が実際に体験したお話なんですけど。


私の家、〇〇駅の近くにあって、先輩も知ってますよね。通勤にもその駅を使ってたんですよ。


そう、使っていたんですよね。今はもう使ってないんです。その駅自体、プライベートでも絶対に使わないようにしています。通過するのも嫌ですね。


1年位前かな。普通に朝会社行こうと思ってその駅で電車を待ってたんですけど、目の前で電車を待っていたサラリーマンがふと線路の方に飛び降りたんです。


走って来る電車がもう構内に入るなってタイミングだったものですから、あっと思った時にはもう目の前を電車が通過した訳ですよ。


あぁ自殺だ、最悪だって一瞬思ったんですけど、電車は何事もなく停車位置で止まって、周りの人達もなんのリアクションも無くて。


そこで初めて、霊の可能性を考えたんです。

実は私、実家お寺で霊感あるんですよ。

昔からそういうのが見えてて、あ、痛いなんて思わないでくださいね?


うん、あれは幽霊だって思って、普通に会社に行ってその日は帰宅しました。帰ってきた時向かいのホームを見てみたんですけどその人はいなかったと思います。まあその時はスーツ姿の後ろ姿しか見てなかったんですけど。


次の日も、同じ時間に同じ場所に向かってみると、また居たんです。その人。


その時はっきりと確信しました。幽霊なんだって。だって他の人と姿が被っていたんです。

うわ、地縛霊ってやつだって思いました。

その場所から離れられず、死んだことにも気づけないで永遠と同じことを繰り返しているんだって。


少し離れたところからその人の顔を横目で確認して見たんですけど、見た目普通のサラリーマンでしたね。結構若かったと思いますけど、すごいしんどそうな顔で。


そうこうしてたら電車が到着したんですけど、やっぱり直前で飛び降りてました。でも重なっている人も周りで待ってる人達ももちろんシカトしてて。


乗った電車の中でいくつか考えてみました。


あの男の人は仕事に疲れて、朝あの時間に線路に飛び出して死んだのかなって。

それで朝、あの場所あの時間に電車に轢かれて死ぬことを永遠と繰り返しているのかなって。


私長い間あの駅使ってましたけど、全く気が付きませんでしたよ。乗る場所にこだわりありませんし、朝の通勤時間で人もそこそこいますし、たまたまその場所で、たまたまその人が見えて、たまたまその人の後ろに並んだから気付けたんだと思います。


帰って来た時も向かいのホームから確認してみましたがやっぱりその人はいませんでした。朝限定ですね。


私、その人助けてあげたいなって思ったんです。

まあ、そういう事をした事もありまして、いわゆるお祓い的なこと。親の手伝いなんですけどね。


そこからしばらくは毎朝観察していました。なんだかんだ2週間くらいですけど、それでひとつ気が付いた事があって。


飛び降りるタイミングと電車の来るタイミングは関係なかったんです。その人、全く同じ時間に線路に飛び込むんですよ。


割と最初に言ってたじゃんって、そういう事じゃなくて、あの駅は平日と土日で電車の便が違くて、朝のその人が飛び降りる時間に電車は来ないんですよ。でもその人、その時間に飛び降りてふっと消えるんです。


平日もです。タイミングがなんかズレてるなとは思ったんですが、1度遅延したことがあって、その時もその人はいつも通りの時間に飛び降りてました。


最初私はその電車に轢かれて死んだ人だと思ってたんですけど、そうじゃなかったんです。


調べてみたら、あの駅が出来てもう100年近く経つらしいんですけど、前は違う名前だったらしくて、その時に人身事故があったらしいんですよ。


その記事も30年近く前でしたよ。よく見つけましたよね。私。

飛び降りたのは男性って事しか書いてなかったんですけど時間がドンピシャだったので多分その人じゃないかなと思います。


なんかすごくいたたまれなくて、もしかして誰にも気付かれ無いまま30年も死に続けてるのかなって。


だから私、助けてあげよう。成仏させてあげようって決めたんです。


あ、最初に言っときますけど、諦めたんですけどね。


まあ、続き話しますね。それを知った次の日、その人に話しかけたんです。なんて話しかけたらいいか分からなかったんですけど、とりあえず「大丈夫ですか?」って。


男性のスーツって今も昔もあんまり変わらないんですね。近くでまじまじ見てもそんな昔の人だとは思いませんでしたよ。


その人、えって顔して私の方見て、それで私もびっくりしたんですけど、すぐ泣き出したんですよ。


意外でしたよ。色々パターンは想像してたんですけど。「は?」って顔されるパターンとか。「俺が、見えるのか」とか、はたまたとり憑かれて私が線路に飛び降りるパターンとか。そうなってたらこの話できてなかったですよね(笑)


そのパターンは予想してなくて言葉に詰まったんですけど、すぐその人、「助けて下さい」って言って、そのすぐ後また飛び降りたんです。


次の日、少し早めに駅に行けば、その人と話せるかなと思って行ったんです。


やっぱりその人はいました。それで私、また話しかけて。

その人、私のこと覚えていたんです。


私、あなたのこと助けたいんですって伝えて、その人も泣きながら


「仕事に疲れて、線路に飛び降りて自殺した」

「何年経ったか分からない位あの電車に轢かれて死に続けている」

「死ぬのは毎回痛いし怖い」

「身体が勝手に動いてしまう、死にたくないのに、飛び降りてしまう、なにかに引っ張られるみたいに」

「どうすればいいか自分でも分からない、地獄でもいいからここから居なくなりたい」

「たまに気付いてくれる人はいるけど大抵の人は無視するか、怖がって逃げる」

「こうやって真正面から話しかけてくれるのは初めて」

こんな感じのこと言ってて。


って、いや結構喋るなって思いましたね(笑) 私も少し驚きましたけど(笑)


でも、ひとつ疑問に思ったんです。

あの電車に轢かれて死に続けているって言ったんですけど、そんなはずなくて、だって今走ってる車両は30年前に無かったはずですから。可能性として死んでしばらくしてから霊になったパターンもありますけど、もしかしてと思って。


以前調査した時見つけた記事を写真撮ってたので、そこに写ってた電車を拡大して見せて、これ?って聞いたら「それです」って言って。


そうこうしている間に時間が来て、その人は飛び降りていきました。でもその人、笑顔でしたよ。

きっと私がどうにかしてくれるって思ったんでしょうね。

それで私見えちゃったんです。私が乗る電車、その電車の少し前を走る感じで重なって走ってくる記事で見たあの古い形の電車が。


それでその人、グシャッて跳ねられて。鈍い音がした気がして。顔に何か生暖かい液体がかかったような気がして。

あ、これが本当に起こっていたことかって。


そうそう、これで1つ謎が解けましたよね。

あの人がなぜ来る電車に関係なく定刻通りに飛び降りるのか、それは自分を轢いた、電車の幽霊に轢かれていたからなんですね。


そう、電車の幽霊なんです。あの人は、あの電車に轢かれ続けていて、あの電車は、あの人を轢き続けている。これからもずっと。


それは、多分今も。


そんな感じで、私の話は終わりです。



えっいや、それでどうしたのって、どうにもしてないですよ。だって私にはどうすることも出来ないですもん。その日からその駅使ってないですし。言ったじゃないですか。諦めたって。


だって人や動物霊を成仏させるって話は沢山聞いたことありますけど、電車の霊を成仏させた話は聞いたこと無いですもん。


その後すぐ親に聞いたんです。その話をして、助けてあげられるかって。そうしたら人間には無理だって、もう二度と近づくなって言われて。


地縛霊は土地や物に縛りつけられているのがほとんどなんですが、それでも実態あるものに縛られているから、人間がどうにかしてあげられるんだって。


その人は多分、電車の幽霊に縛られちゃってるんじゃないかって。

そしてまた、その電車もその人を轢いたことを強く覚えていて、死後、まあだから壊された後、同じくその人に縛られちゃったんじゃないかって。

生前、いちばん強く記憶している行動を繰り返すらしいですから。

本来は記憶は残らないらしいですが、自殺した側、あの人が記憶を何故毎回引き継いでるかに関しては、分からないらしいです。それが無ければ、もっと楽に死に続けられるのに、可哀想ですよね。


言葉が通じる者同士で縛りあってたらまだ可能性はあったがそれも不可能。電車にはお経も言葉も聞こえないから。


お父さんはそう言っていました。


だからもう人の手には負えないんだって。

だから私はどうすることも出来ないんです。

少し申し訳ないですけどね、こんなことなら最初話しかける前にお父さんに確認なりしておけば、その時点で手を引いて、その人に変に希望を持たせなくて済んだから。


もう二度と私があそこに行かないことを知った時、どんな事を思うんでしょう。

案外、それで私の所に来ちゃったりして(笑)


良ければ行ってみてください。〇〇駅、朝〇時〇〇分〇〇秒。〇番線〇号車の階段側に1番近い出入口で、多分飛び降り続けてるはずですから。


はい。これで、私の話は終わりです。

じゃあ、次は先輩の番ですね。怖い話、聞かせてください。

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