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核放棄

作者: 雉白書屋

 ついにこの日が来たと、誰もが思ったことだろう。すでにこの世にいない人々までもが。

 

「……ここに宣言させていただきます。本日をもって、この地上、この星から核兵器を完全になくすと!」


 核兵器を所持する全世界の国々が新たに提唱された平和条約に同意し、核兵器を一つ残らず宇宙に向けて破棄することが決定されたのだ。

 ここまで長い時間かかった。目を覆い耳を塞ぎたくなるような大惨事もあった。しかし、今日この日、それが報われることは間違いないだろう。

 世界が一国に統一されたわけでも兵器そのものを所持していないわけでもない。しかし、大小さまざま、戦争の果てに人類は痛みをようやく学び、この時、世界は一応の平和を手にしていたのだ。


 集められた各国の核兵器は一つのロケットに搭載され今、首脳陣に見守られる中、空に打ち上げられる。

 打ち上げ失敗、墜落、大惨事。危ぶむ声も聞かれたが、それはまず起こりえない。現代の宇宙産業は大きく発展を遂げているのだ。

 今ある平和も、資源豊富な他の惑星を見つけたことが大きなきっかけ。地球の資源を巡り小競り合いなど馬鹿馬鹿しい。ただ単に各々で破棄するだけでは、ごまかしやすく、また面白みに欠ける。平和を象徴とする星を一つ夜空に浮かべ、これを機により一層絆を深めようじゃありませんか、というのが今回の趣旨であり、皆どこか浮かれ調子である。そして……

 

 ――スリー


 ――ツー


 ――ワン


 カウント後、白煙上げて空へ向かったロケット。その神をも想起させる荘厳な姿。それを追放し、重圧から解放された人々は手を取り合い、喜びを分か合った。

 大気圏を抜け、ロケットは無事に宇宙へと飛び立った。地球を遠く離れ、なおも直進を続けた。地球に影響を及ぼさない地点での爆破。地上からはあの夜空に浮かぶ星々の輝きのような光を目にすることができるだろう。一時だが、夜空に平和の星を作り出し、しかし、我々のこの星、地球の平和は永遠のものにする。そう心に誓い、人々は夜空を見上げその瞬間を待った。


 が……ゆっくりと宇宙空間を行く巨大な隕石と衝突し、爆発。軌道を反らし、また砕けた隕石群が地球に降り注ぐこと。これを因果応報とは言うまい。

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